IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

12 / 167
雪兎君がガチ戦闘。セシリア戦では不完全燃焼でしたので今回は雪兎が暴れます。
セシリアの出番?すいません雪兎のために犠牲になりました。

今回は雪兎の初期から所持していた最後のパックが登場。


6話 決戦!謎のIS 兎、乱入す!?

「遮断シールドがレベル4に設定、アリーナの全扉がロックされています!」

 

「三年の精鋭チームにシステムクラックを行わせていますが手間取っているようです!」

 

「アリーナの生徒達がパニックを起こして扉へ詰めかけています。このままでは怪我人が!」

 

「織斑君!凰さん!返事をしてください!」

 

次々に寄せられる報告を聞きながら真耶は必死に一夏と鈴に退避を勧告するも二人は聞き入れようとはせず、生徒の避難のため謎のISと交戦を開始してしまう。

 

「一体どうしたら・・・・」

 

「落ち着け山田先生」

 

「織斑先生!なんで落ち着いていられるんですか!?」

 

実の弟が襲われているというのに妙に冷静な千冬を見て真耶は問う。

 

「確かに事態は最悪に近い。だが、不幸中の幸いとでも言おうか。アリーナには天野がいる」

 

「天野君?彼一人で一体何がーー」

 

「だから落ち着け山田先生。あいつはあの束の弟子だぞ?そろそろ・・・・」

 

「あ、アリーナの扉のロックが解除されました!えっ?でも精鋭チームはまだ・・・・」

 

何故急に扉が開いたのか?それを疑問に思っていると管制室に通信が入る。

 

『とりあえずアリーナ内の内部隔壁と扉はアンロックしました。でも外部隔壁と出入り口のロックは別口・・・・多分あのISから発しているプログラムで秒数単位でパスワードが変えられてるようで解除できませんでした』

 

「上出来だ、天野」

 

通信を入れてきたのは雪兎だった。更に言えば三年の精鋭が手こずっていたアリーナの扉のロックをあっという間に解除していたのだ。

 

「ついでで悪いがアリーナにいる織斑と凰の二人のことも頼めるか?」

 

『遮断シールドぶち抜いていいならやりますよ?』

 

遮断シールドのレベル4ともなれば並のISでは突破は不可能なレベル(零落白夜などの例外はあるが)。それを雪兎は容易く「抜ける」と言い切った。千冬が慌てていなかったのは雪兎の実力をよく知っていたからに他ならない。

 

「出来れば穏便にいきたいところだが緊急事態だ。特別に許す」

 

『了解しました。では少し荒っぽくやるんで、観客席の生徒の退避が完了次第突入します』

 

そう言うと雪兎は通信を切ってしまう。

 

「だ、大丈夫なんですか!?それに今彼とんでもないこと言いませんでした!?レベル4の遮断シールドをぶち抜くだなんて!」

 

「安心しろ。あいつはあの天災の弟子で高速の妖精(ラピッド・フェアリー)の弟だ。それに私の弟弟子でもある」

 

「あ、なんだかその面子を聞いたら急に安心しました」

 

ISの開発者で世界有数の天災・篠ノ之束、第1回モンド・グロッソ優勝者・織斑千冬、最速のIS乗りと名高い天野雪菜、最強(凶)の世代と呼ばれたこの三人の弟子・弟分が普通な訳がない。

そして、この三人と面識の有った真耶から不安感が抜けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、生徒も退避終わったようだし俺もそろそろいきますか」

 

三年や教師の誘導で観客席の生徒が退避したのを確認すると雪兎は雪華を展開し遮断シールドの前に立つ。

 

「【S:ストライカー】リミットリリース。フルブレイカーモード起動」

 

雪兎のその言葉で右腕のシールドが大きく展開し、セシリアを破った時に使用した杭打ち機(パイルバンカー)が姿を現す。だが今回はそれだけではなかった。撃ち出す杭に高出力のバリアフィールドを展開させ、それを大きく振りかぶって構え、遮断シールドに杭を叩き込んだ。

 

「これで本当の全力全壊!限界突破(リミテッド・オーバー)星屑破砕(スターダスト・ブレイカー)!!」

 

それは謎のISが遮断シールドを破ったのとは比較にならない轟音をあげて遮断シールドを文字通りぶち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡る。一夏と鈴は摩耶からの通信を切り謎のISと対峙していた。

 

「くそっ、なんなんだよこいつは」

 

何度か攻撃を加えてみるも遮断シールドを破ったであろう高出力ビームと人が乗っているとは思えない動きに翻弄され一夏と鈴は疲弊し、二人のISのシールドエネルギーも底をつきかけていた。

 

「・・・・でも、何か変だよな、あいつ」

 

「変って何よ?」

 

「あいつの動きって何かに似てる気がするんだよ」

 

「コマとか言わないわよね?」

 

「そりゃあ見たまんまだろうが。あー、なんていうかな。昔自動車メーカーが作った人型ロボットあったろ?」

 

「いたわね。工場見学で雪兎がやけに興奮してたのを覚えてるわ」

 

「あれに似てないか?」

 

「言われてみれば・・・・それに私達が会話してる時はあんまり攻撃してこないし」

 

「もしかしてあいつはーー」

 

『無人機だ。あのISに生体反応は無い』

 

「ゆ、雪兎!?」

 

一夏と鈴が謎のISの正体を探っていると雪兎から通信が入った。

 

『お前らの予想通りさ。ありゃコアの周りに細工して無人機として改造したものだろう』

 

「それ、ほんとなの!?」

 

『俺がそんなくだらん嘘をつくとでも?』

 

「そうね。あんたはこの手の分野で嘘は言わないもんね」

 

雪兎が断言する以上、あのISは無人機なのだろう。

 

『さっきアリーナの扉のロックは解除した。観客席の生徒が避難完了次第、俺もそっちに加勢する』

 

「遮断シールドは?」

 

『織斑先生の許可は取ったからぶち抜く』

 

「で、俺はどうすればいい?」

 

『多分、俺がシールドをぶち抜こうとすると妨害行動に出るはずだ。それを邪魔してくれ。その後は俺がやる』

 

「オッケー、こっちはシールドエネルギーがジリ貧だから任せるわ。美味しいとこ譲ってあげるんだからちゃんと決めなさいよ?」

 

『ああ、文句出ねぇくらいに決めてやるよ』

 

そして観客席の避難が完了し雪兎の合図で二人は謎のISの注意を雪兎から逸らし、雪兎は限界突破星屑破砕で遮断シールドをぶち抜きフィールドへと降り立つ。

 

「待たせたな。幼馴染二人の試合を邪魔してくれた礼はキッチリ利子つけて返してやる」

 

そう言って雪兎は雪華を装甲切換(アーマー・チェンジ)させる。黄色から赤へと色合いを変えたそのISは両手にはシールドと一体化したガトリングガンが、他にも各ハードポイントに多数の銃器を搭載している。

 

「釣りはいらん。全弾持っていけ」

 

雪兎は敵向かって距離を詰めながらミサイルやガトリングガンにサブアームで保持したアサルトライフルなどを敵に向けて容赦なく叩き込む。その光景に一夏と鈴は唖然となる。無理もない。それは鉄の雨とも思える圧倒的物量による面制圧攻撃だったからだ。

 

「な、何よ、あれ・・・・」

 

「まるで動く弾薬庫だな」

 

無人機もこれには成す術もなくただの的と化していた。元よりこの狭いアリーナというフィールドで雪兎の使う面制圧を得意とする射撃武装運用試作型パック【G:ガンナー】の相手をするのは無謀であった。しかも、雪兎は高速切替(ラピッド・スイッチ)という技能を有しており、これにより瞬時に弾を拡張領域より補充できるのだ。正直な話、これが無人機でなく有人機であったなら絶望もいいところである。

 

「これくらいやっときゃいいかな?」

 

無数の弾丸を撃ち込まれ砂煙の中から現れた無人機は見るも無惨なことに両手の武装は木っ端微塵、脚や推進部も逃走防止のために破壊、コアがあると思われる胸部以外は破壊し尽くされていた。それを確認すると雪兎は無人機へと近付き残骸を回収する。

 

「任務完了。あー、久しぶりにぶっぱなしたからスッキリしたぜ」

 

この時、一夏と鈴は思った。「こいつだけは本気で怒らせちゃ駄目」だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして後に無人IS襲撃事件と呼ばれる事件は幕を閉じた。残骸は無論IS学園に事件の原因究明の手掛かりとして引き渡された。

 

「ほんと今回の事件は雪兎がいなかったらヤバかったんだな」

 

事件を改めて振り返り一夏はそう感じた。

 

「まあ、アリーナの損害はあの無人機より雪兎のISによるものの方が大きかったそうだがな」

 

その当の本人は自主的にアリーナの修繕を行っているらしいが。

 

「それでも何もできなかったわたくし達よりはご活躍されていましたわ」

 

アリーナの扉のロック解除に一夏と鈴の救出と相手無人機のコア確保。これを一人でやったというのだから恐ろしい。

 

「俺も精進しないとな」

 

「その通りだ」

 

「わたくしもお手伝いしますわ」

 

「一夏がどうしてもって言うんなら手伝ってあげなくもないわよ?」

 

一夏も鈴と和解したようでラバーズの面々はいつも通り騒ぎ出す。

 

「ふぁー、朝っぱらから元気なことで」

 

一方、アリーナの修繕などで寝不足気味の雪兎は取り戻した平穏を噛み締める。だが、これはこれから続く波乱の物語の一幕にすぎないことを知るのはほんの一握りの者達だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の地下にある関係以外立ち入ることのできない特別な場所で例の無人機の解析は行われていた。

 

「やはり無人機のコアは未登録のものか」

 

「ええ、各国のコアとデータを照合してみましたが該当するコアはありませんでした」

 

「・・・・」

 

「織斑先生?何か心当たりでも?」

 

「いや、ない。今はまだーーな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆー君元気にしてるかなぁー?」

 

その女性は変わったISを纏っていた。紺色の必要最低限と言える装甲と背後に妖精の羽を思わせる非固定浮遊部位を持つIS。それを操るのは高速の妖精(ラピッド・フェアリー)と呼ばれる最速のIS操者・天野雪菜。今現在彼女はレースの真っ最中なのだが、周りに他の選手の姿は無い。そう、彼女は現在単独首位を独走していた。

 

「いっくんやほーきちゃんにりんちゃんもいるって聞いたし大丈夫か。ちーちゃんもいるしね」

 

そこでようやく二位の選手が雪菜を視界に納める。

 

「追い付いたぞ、天野雪菜!」

 

「やっときたんだ。やっぱ第2世代相手(・・・・・・)じゃこの娘(・・・)の本気にはついてこれないか」

 

そう、彼女が纏うISは第3世代機(・・・・・)しかし、そのISはどこの国が作ったものでもなかった。たった一人の天災がたった二人の親友の内一人に作った彼女専用機なのだから。

 

「悪いけど今回も私が勝たせてもらうね。今日の試合に勝ったら私のお願いを叶えてもらう約束してるんだから」

 

「お願いだと?」

 

「うん、IS学園の教師(・・・・・・・)前からお願いしてたんだけど中々OKもらえなかったんだよねー。それじゃ。チャオー」

 

そして再び加速していく雪菜を二位の選手は悔しそうに見送った。

 

「待っててねー、雪兎。今、お姉ちゃんが会いに行くから!」




とりあえず一巻のエピソードは終わりました。
そしてエピローグ部分でも登場しましたが、次章ではとうとう雪兎の姉・雪菜が本格的に登場です。もうお分かりかと思いますが、束・千冬に並ぶブラコン(シスコン)です。
他にも本作のヒロイン(予定)のシャルやラウラも参戦しかなりカオスなことになります。
という訳で結構早足でしたが一章はこれにて閉幕です。



次回予告

クラス対抗戦は結局ドロー。しかし、次のタッグトーナメントで優勝すれば一夏か雪兎と付き合えるという噂が流れ始める。
そんな中、二人の転入生と新教師がIS学園にやってきた!
しかも転入生の一人は三人目の男!?そして新教師は・・・・

次回

「姉襲来!?新教師は俺の姉!?転入生は貴公子と黒兎 兎、色々あってパンクする」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。