IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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聖剣事変もそろそろ終盤。
雪兎がまたやります。


111話 聖剣VS聖剣 兎、ぶった斬る

雪兎達がレピオスを下した頃、残りのメンバーもそれぞれ特訓の成果が出ているのか善戦している。

 

「はぁっ!」

 

「くっ!」

 

タリアスと戦う鈴とセシリアは龍咆等の特殊武装の半数が宇宙空間では使えない為、鈴が前衛を務め、セシリアが射撃で鈴をフォローする。

 

「これが本当に代表候補生の実力か!?」

 

「あら?情報が古くてよ」

 

「今の私達はプロジェクト・フロンティアの所属よ。それに、私達もそこそこ修羅場を抜けてきたんだから!」

 

以前の鈴達であったならばおそらくタリアスには敵わなかったであろう。しかし、異世界での戦闘経験や二次移行を経た鈴達にとってタリアスは敵たりえなかった。

 

「ついでだからあんたには私のとっておきを見せたげる!【四聖龍】!!」

 

鈴がそう叫ぶと、鈴の周囲に四色の龍が顕現する。それぞれが炎、氷、風、雷の属性を持ち、それを宇宙空間であろうと行使可能という煌龍に発現した単一仕様能力こそが【四聖龍】なのだ。

 

「いっけぇえええ!!」

 

鈴の号令で四龍はタリアスに襲いかかり、正確に武装だけを破壊していく。

 

「止めはあんたに譲ったげるわ、セシリア」

 

「ありがとうございますわ、鈴さん。では、踊り狂いなさい・・・・私とこのブルー・ティアーズ・ガブリエルの奏でる葬送曲(レクイエム)で!」

 

すると、今度はセシリアのブルー・ティアーズ・ガブリエルから放たれたビットがタリアスを取り囲む。

 

「こ、今度は一体・・・・」

 

六芒閃光陣(ヘキサクロス・レイ)!」

 

そして、ビットから無数のBTレーザーが放たれタリアスを襲う。しかもこのレーザーは全て(・・)追尾してくるので回避は出来ず、タリアスは徐々にビットの囲いからなる六芒星の中央に追い詰められる。

 

「これで終わりですわ・・・・カーテンコール!」

 

止めにランパードランチャーから極太のBTレーザーが放たれタリアスを貫く。

 

「ご安心を・・・・非殺傷設定ですので」

 

白目を剥くタリアスにセシリアはまるで演奏を終えたバイオリニストのような例をしながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当たらないっ!」

 

サダルの操る【尽きぬ水瓶(イニィグゾォースタァブル・アクエリアス)】は両肩に装備した大型のビームカノンを主とする第2世代IS。それ故に近接戦には向いていない。それでも水瓶のような堅さで高い防御力を持つが・・・・

 

「ほらほら」

 

「こっちだよ~」

 

スピードは一般的なISより遅く、コメット姉妹のグローバル・メテオダウンに翻弄され。

 

「こちらもお忘れなく」

 

その隙をエリカが突いていく。

 

「このままでは・・・・」

 

焦ったサダルは逆転を狙いビームカノンをチャージし始めるが、それはエリカの狙い通りだった。

 

「雪兎さんに教わったやり方ですが・・・・これ、結構有用なのよねっ!」

 

何とエリカはチャージ中のビームカノンの砲口を狙い射ちビームカノンを破壊したのだ。

 

「しまっ!?」

 

「追撃、いくわよ!」

 

「うん!」

 

片方のビームカノンを破壊されバランスを崩したサダルをコメット姉妹がサウンドビットとハンドガンで追撃。そこで更なる隙を晒してしまったサダルにエリカの放った射撃がヒットしていきサダルのISは戦闘不能にされてしまった。

 

「投降して下さるかしら?」

 

「・・・・好きになさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

「そんな攻撃、当たりはしないよ」

 

「・・・・油断大敵」

 

「くっ、他の者達よりはマシとはいえ、これはキツいな・・・・」

 

レグルスと交戦するベルベットとカロリナのペアは相手が元世界第二位とあって苦戦していた。レグルスも勝ち切れないこの状況に苦い表情をしている。

 

「ベルベットさん、提案がある」

 

「・・・・何?」

 

最初こそカロリナのことを少し煩わしく感じていたベルベットだが、何度かフォローされてきた事から提案を聞く程度には信用するようになっていた。

 

「私が何とかして隙を作るから、ベルベットさんは撃てる最大の一撃をお願い」

 

「・・・・いいでしょう」

 

ベルベットが頷くとカロリナはストール・ブラードを背面に回しショットランスを構えてレグルスへと突撃する。

 

「ふっ、何か相談していたようだからと警戒してみたが、大した事は」

 

「さっきも言ったけど・・・・油断大敵」

 

レグルスが手に持つ大剣でカロリナを迎え討とうするが、カロリナはレグルスと接触する直前にストール・ブラードを前面に移動させバリアフィールドを展開させ、勢いが乗り切る前の大剣を受け止めた。

 

「何っ!?」

 

「大剣みたいな重量系武装は勢いが乗り切る前が一番隙になる」

 

そこにショットランスでバリアフィールドの内から弾丸を連射してレグルスを怯ませる。

 

「うぐっ」

 

「食らいなさい、これが今の私の全力よ!」

 

カロリナがレグルスから離れたところでベルベットはレグルスに接近し左右の腕から0距離でヘルアンドヘブンの分子制御能力を発動。右で分子の動きを止め、左で活性化させる事で装甲に温度差と分子の高周波振動によるダメージを浴びせ防御性能を下げ、そこにハンドマシンガン、多連装ミサイル、グレネード、止めに大型ミサイルを叩き込みレグルスを吹き飛ばす。

 

「・・・・師匠のコールドフレイムに似てるとは思ったけど・・・・そのIS、興味深い」

 

何とかレグルスを下したベルベットとカロリナだったが、カロリナはベルベットのIS【ヘルアンドヘブン】に興味津々のようだ。

 

「今度、分かーーメンテさせて」

 

「今、分解と言いかけなかった?」

 

カロリナも雪兎の影響を受け(おそらく最も影響を受けている)メカオタクになりつつあった。そんなカロリナに呆れつつも、ベルベットの表情は少しだけ晴れやかなものになっていた事にはまだ気付く者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

「ふっ!」

 

「くっ」

 

アレシアとロランのコンビは元々コンビネーションの得意なアレシアと女性の動きを見てに合わせる事を得意とするロランというペアであった為、初めて組むとは思えないコンビネーションでストレアを追い込んでいた。ストレアのIS【抗議する天秤(プラテストゥ・リブラ)】は各所に追加装甲を纏い、状況に応じてその装甲をパージする事で戦い方を変えたり、パージした装甲を敵にぶつけてダメージを追わせる、装甲をパージしてダメージを軽減する等といった戦術を得意するISなのだが、今は既にアレシアとロランにその追加装甲を剥がされチクチクと攻撃され続けていた。

 

「ほらほらほら!」

 

「まだ弾数は残っているのでお返ししよう」

 

アレシアは刃の接触部のみを加熱し相手を溶断する蛇腹剣【ヒートウィップ】とヒートチャクラムで滅多斬り、ロランは自身のISから伸びるコードをストレアがパージした装甲に突き刺しハッキングし、その装甲につけられたガトリングガンを使って牽制しつつ、自前のレーザーライフルでストレアを狙い射つ。ちなみに、追加装甲もロランがコードを突き刺しハッキングして強制的にパージさせたのだ。地味にやり方がえげつない。

 

「私達にはもう後が無いのだ!」

 

それでもストレアは諦めず、レーザー重斬刀でヒートウィップやヒートチャクラムを弾き、ロランの射撃を回避する。

 

「知らないわよ、そんなの」

 

「それに君達のしている事には(正義)が無い」

 

ストレアの攻撃はロランがコードを刺した装甲を盾にする事で防がれ、レーザー重斬刀もアレシアのアームブレードでバラバラにされる。

 

「なっ!?」

 

「ごめんね、この娘の(アームブレード)は高周波ブレードなの」

 

「そして、フィナーレだ」

 

止めにロランがサーベルで残りのシールドエネルギーを削りストレアも行動不能になってしまう。

 

「すいません、レピオス・・・・」

 

それと同時にストレアも意識を失った。

 

「うーん、(アレシア)(パーフェクト)(ヴィクトリー)ね」

 

「君、イタリア人だろ・・・・」

 

他の面子に比べて完勝に近い勝利だったが、何とも締まらない幕引きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、突入班は何とか無人兵器を無力化してエクシアがいる中枢・制御室に辿り着いた。

 

「ここにエクシアが・・・・」

 

「チェルシーさん・・・・」

 

幼い頃に生き別れとなってしまった姉妹の再会。だが、それは感動的なものではなく、世界の命運を賭けた場であった。

 

「はっ!」

 

制御室への厚く堅い扉も参式を得た千冬の前では紙切れ同然に斬り裂かれ、突入班が中に入り見たものは繋がれたコードが触手のように身体に巻き付き制御室と一体化している少女・エクシアの姿だった。

 

「一夏」

 

「ああ、やるぞ、白式!白凰!」

 

『はい!』

 

『ガッテン!』

 

そんなエクシアに一夏は近付くと早速夕凪燈夜を発動させようとするが・・・・

 

「一夏っ!」

 

それを阻むように制御室に広がるコードが一夏を襲う。

 

「うおっ!?」

 

『聖剣が彼女(コア)を奪われまいと抵抗しているようです!』

 

「くそ!どうしたら・・・・」

 

エクシアから引き離されてしまった一夏が歯噛む。

 

「シャープガンナー!」

 

「一夏様!」

 

だが、そんな状況を打開せんと一夏に迫るコードを聖とチェルシー射ち落としていく。

 

「聖、チェルシーさん・・・・」

 

「世話の焼ける男だ」

 

「突破口は私達に任せろ」

 

「一夏はエクシアを!」

 

続いてエクシアへの道を阻むコードをマドカ、晶、箒の三人が破壊し突破口を開く。

 

「いけ!一夏!」

 

そして、千冬が直近で一夏を守りながら進み・・・・

 

「今度こそ!」

 

「『『いっけぇえええ!!』』」

 

一夏達の手がエクシアに届き、白い光と共にエクシアにまとわりつくコードを吹き飛ばす。

 

「・・・・これで任務完了、だな」

 

光が薄れると一夏の手の中にエクシアが抱かれていた。

 

「よくやった。後は脱出するーー」

 

誰もがそう安心したその時、聖剣内部にアラートが鳴り響く。

 

「い、一体何が!?」

 

『織斑先生!緊急事態です!』

 

「何があった、真耶!」

 

『今まで沈黙していた聖剣が突如チャージを再開しました!目標は・・・・バッキンガム宮殿です!』

 

「な、何だと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ、絶対に何かあるとは思ってたが、こんな仕掛けしてやがるとは!」

 

おそらく敵対している勢力に内部に侵入されコアを失った際に発動する仕掛けなのだろうと雪兎は考えつつ、雪兎は一人聖剣とバッキンガム宮殿の射線上へと移動していた。

 

「織斑先生、聖剣の砲撃は俺が何とかします。そのついでに聖剣を破壊しますので早く脱出を」

 

『やれるのか?』

 

「知ってるでしょう?俺は出来ない事は言いませんよ」

 

『・・・・デュノアを泣かせるような真似はするなよ?』

 

「・・・・なるべく」

 

それに関しては雪兎は断言出来なかった。

 

『雪兎・・・・』

 

そこにシャルロットが通信を入れてきた。

 

「心配するな、シャル。死にはしないだろうから・・・・怪我ぐらいはするかもだが、そんときは看病頼む」

 

『・・・・絶対だからね?』

 

「ああ」

 

そう約束して雪兎は通信を切り、聖剣を見据える。

 

「つうわけだ・・・・俺の今後の為にも消えてくれ」

 

そして、雪兎は聖剣対策として用意していた切り札(ジョーカー)を切る。

 

「こい、【EXCEED:No.01・Excalibur(エクスカリバー)】」

 

現れたのは銀と青の騎士を彷彿とさせる装甲に黄金の剣。そう、この装備はとあるゲームに登場する騎士王アーサー=ペンドラゴンを模したパックであった。

 

「さあ、どっちの聖剣(エクスカリバー)が勝るか・・・・比べようじゃねぇか!!」

 

そう言って雪兎が両手でエクスカリバーを構えるとその刀身が変形し、溢れんばかりの黄金の光を放つ。

 

「いくぞ!【約束されし勝利の剣(エクスカリバー)】ァアアアア!!」

 

その光の奔流は同時に放たれた聖剣の砲撃と衝突し拮抗し始める。

 

「まだだ!リミットオーバー!!」

 

すると、雪兎は出力制限を解除し、雪華の全エネルギーをエクスカリバーへと注ぐ。

 

「ぶち抜けぇえええええ!!!」

 

エクシアとISコアを失いエネルギーの不足していた聖剣にそれを抑える力はなく、雪兎の放った光に呑まれ聖剣は光の粒子となって消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんつっうデタラメな出力だよ、アレ・・・・」

 

「今回、雪兎がシャルロットの手を借りてたのって、この出力確保する為だったんじゃ・・・・」

 

「でなければあいつ一人で亡国の連中は狩られていただろうな」

 

「でも、アレって前にガン=ザルディの時に使ってたやつと同じEXCEEDだよな?」

 

「今頃、全身筋肉痛になってたりして・・・・」

 

『・・・・その通りだよ・・・・助けて、動けん』

 

「もう、今いくから待ってて、雪兎」

 

こうして後に聖剣事変と呼ばれる戦いは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『み~つけたっ!』

 

そんな雪兎達から少し離れた場所。ISとは似つかない血のように赤い装甲と全身に張り巡らされた管のようなもの、コブラの意匠が施されたパワードスーツらしきものを見に纏った何者かが嬉しそうにそう呟いていた。




次のエピローグで聖剣事変と今章は終了です。
最後の怪しいやつは何者かって?
それは次章をお楽しみに。


次回予告

聖剣から救出されたエクシアの治療なども済み、聖剣に関係したアレコレが片付いた頃、IS学園に新たな人物が赴任してきた。その名は・・・・

次回

「後片付けと新たな仲間 兎、暗躍する」

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