IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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今回もABから一人ゲスト登場。今後の展開の関係で原作とは年齢が異なっております。


107話 聖剣の脅威と亡国の影 兎、疑う

聖剣のものと思われる攻撃はフランスに限ったものではなく、その被害は欧州各国にも及んでいた。雪兎達はすぐに他の面々と連絡を取り、一度フライング・ラビットで全員を集めるとイギリスにあるセシリアの屋敷で情報交換を行う事になったのだが・・・・

 

「で、雪兎さん。そちらの方々は?」

 

「すまん、こいつら三人ともついてくるって聞かなくて・・・・というか、そっちも一人増えてね?」

 

「ちょっと色々あってね」

 

そう、そこには雪兎と共に一緒にいたコメット姉妹や現場で偶然居合わせたロランがおり、一夏達の方にも赤いロングヘアーに四角いフレームの眼鏡をかけた目付きの鋭い少女が一緒だったのだ。

 

「まあいい、さっきから箒にアプローチをかけてる馬鹿がオランダの代表候補生・ロランツィーネ=ローランディフィルネィ。そんでこっちの双子がカナダの代表候補生のコメット姉妹だ。オレンジの方が姉のファニール。水色の方が妹のオニールで、双子は俺の知り合い」

 

どうもロランは箒に一目惚れしたようでしつこくアプローチしているが、箒を一夏が庇いそんな一夏に箒がときめいている。それを面白くないと鈴とラウラがロランを焚き付ける。雪兎と話しているセシリアと楯無も話はしつつも視線は時折そちらに向けられていた。

 

「あっ、ファーちゃんとオニちゃんだ!」

 

「雪菜お姉ちゃん!」

 

「久しぶり」

 

雪兎が紹介を終えると元々知り合いの雪菜がコメット姉妹を抱きしめ再会を喜ぶ。

 

「彼女はベルベット=ヘル。歳は雪兎君達の一つ上でギリシャ(・・・・)の代表候補生よ」

 

ギリシャ(・・・・)?」

 

一方楯無からベルベットの紹介を聞いて雪兎の表情が強ばる。無理も無い、ギリシャと言えばIS学園を裏切ったフォルテ=サファイアと京都で交戦した闇夜の星座のレグルスことシルヴィア=メルクーリの母国。それ故に雪兎のギリシャへの心象は米国に次ぐレベルで悪いのだ。

 

「私の目的は祖国を裏切ったあの二人を倒す事。祖国も私も貴方と敵対する気は無いわ」

 

「なるほどね・・・・祖国を貶めた奴とかつての親友(ライバル)をこの手で、ってとこか?」

 

「!?」

 

ベルベットが驚いたのは自分とフォルテがかつて代表候補生の座を争うライバルであり、親友だった事を初対面の雪兎に看破されたからだ。

 

「驚くこともないだろ?年の近い後任の代表候補生ともなりゃ面識ぐらいあったのはすぐに判る。それにそのフォルテ=サファイアへの敵愾心はかつての友情の裏返し」

 

「流石ね」

 

「まあ、あんたがこの作戦に加わる理由は理解したが、今回の最優先事項は聖剣だ。私情で俺達の邪魔はしないでくれ」

 

「私はフォルテを討てればそれでいいわ」

 

そう言ってベルベットは下がっていった。

 

(こいつは少し監視しといた方がいいな・・・・)

 

そんなベルベットを見て、雪兎は敵対こそしないだろうが、ベルベットの危うさに気付き何かしらの問題の火種になりそうだと感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、聖剣攻略の為に各ISのメンテを行う事になったのだが、その前に雪兎は会っておかなければならない人物がいた。その人物はチェルシー=ブランケット。セシリアの家に仕えるメイドにしてセシリアの姉のような存在だ。何故彼女と会わねばならないのかというと、それは彼女が聖剣に深く関係しているからだ。

 

「すまんな、セシリア」

 

「構いませんわ。それに私にも関係のあるお話なのでしょう?」

 

ちなみに二人が話している場所は屋敷の執務室。かつてセシリアの母親が使い、今は家を継いだセシリアが使う部屋だ。無論、防音も完璧である。

 

「ああ、多分だが、セシリアの御両親とも関係のある話だ・・・・だろ?チェルシーさん」

 

「流石ですわ、雪兎様。もうそこまでお調べになっていらっしゃるとは」

 

丁度そこにお茶の準備を終えたチェルシーが部屋に入ってきた。

 

「さて、まだるっこしい事は抜きにしてストレートに訊くぞ?聖剣の操者・・・・いや、生体コア(・・・・)になってるエクシア=カリバーンってのはあんたの妹だろ?」

 

「!?」

 

その言葉にセシリアは耳を疑った。何故なら今までチェルシーに妹がいたなんて話は長い付き合いになるセシリアにしても初耳だった。

 

「その通りでございます」

 

そして、チェルシーもそれを肯定した。

 

「これは俺が独自のルートで調べた情報なんだが、エクシアは重い心臓の病を患っていたらしい」

 

しかもそれは当時の医療では治すのが困難な病で、それを知ったセシリアの両親はとあるルートで入手したISコアをエクシアに埋め込み生体融合させエクシアを延命した。更に聖剣は元々来るべき時の為にセシリアの剣として作られた物で、聖剣の開発において主導権を握りたかった米国はそれを良しとせず、策略で列車事故に見せかけてセシリアの両親を殺害した。なお、エクシアの戸籍は生体コアにされた段階で抹消されているらしい。そう雪兎は語る。

 

「そ、そんな・・・・お母様やお父様が?」

 

「はい、私も雪兎様程ではありませんが個人的に調べてはいました。雪兎様のおっしゃる通りかと」

 

「更に問題なのはコアの出所だ」

 

「と、言いますと?」

 

「亡国機業・・・・どうもそのコアはあいつらから提供されたものらしい」

 

つまり、今回の一件には亡国機業が関与している可能性があるのだ。セシリアからすれば両親が亡国機業と関係があった事の方がショックだろう。

 

「安心しろって言い方はおかしいかもしれないが、セシリアの両親があいつら(亡国機業)に関与したのはその一件だけだ」

 

「私もそのように聞いております」

 

むしろ本格的に関与する前に暗殺されたと言った方が正しいかもしれない。

 

「セシリアには悪いが、俺は聖剣を破壊するつもりだ。あれはまだこの世界には早すぎる兵器だ」

 

「ちょっと待って下さい!聖剣は構いませんが、チェルシーの妹は!」

 

「救うさ。暴走は一夏の夕凪燈夜でなんとかなる。エクシアも俺と束さんでなんとかしよう」

 

それを聞きセシリアとチェルシーは安堵する。

 

「この事は作戦にも関わる事だから後で他の連中にも話すが、構わないな?」

 

それに対しセシリアとチェルシーは頷いた。すると、雪兎は席を立ち扉へと近付く。

 

「俺の話は以上だ・・・・まあ、他の連中に話す必要は無さそうだけど、な」

 

「「「「わ、わわっ!?」」」」

 

扉を開くと盗み聞きしていたのか、一夏達が雪崩れ込んでくる。

 

「ったく、盗み聞きとは感心しないな?」

 

「い、一夏さん!?それに皆さんも!?」

 

「え、え~っと・・・・」

 

「どっから聞いてた?ってか、チェルシーさん、あんた知ってたろ?」

 

「はてさて、何の事でしょうか?」

 

「まあいい、聞いてたんなら話は早い。俺達が何をすればいいかは判ったな?」

 

「妨害してくるだろう亡国機業を掻い潜って聖剣に突入」

 

「エクシアって娘を一夏が助けて脱出」

 

「それから聖剣を破壊、だね?」

 

「だが、資料で見た聖剣は巨大だ。そう簡単に破壊出来るのか?」

 

「問題無い。手は用意してある・・・・聖剣には聖剣を、な」

 

ラウラの問いに自信有り気にそう答える雪兎。そして、表情を一変させ一夏達に問う。

 

「それよりもお前らメンテは済んだんだろうな?後でちゃんとチェックするし、それで半端な状態だったならどうなるか、わかってんだろうな?」

 

「「「「・・・・」」」」

 

その雪兎の言葉に一夏達は雪兎から目を逸らす。どうやらこちらが気になってメンテの途中に抜け出してきたようだ。

 

「さっさとやってこいっ!!」

 

「「「「イ、イエッサー!!」」」」

 

雪兎の一喝で一夏達は慌てて執務室を飛び出していった。

 

「まったく、あいつらは・・・・」

 

「ふふ、お嬢様は良き御友人に恵まれましたわね」

 

「ええ、本当に」

 

そんな様子を見てセシリアとチェルシーの主従コンビは笑みを浮かべるのであった。




という訳で今回はベルベットが参戦。
第二部に出す用に年齢を一つ下げました。多分、最近ABに参入したグリフィンもそうなります。

こちらではチェルシーはダイヴ・トゥ・ブルーを盗んではいませんが、別のISで参戦させます。
黒兎隊については次回で・・・・ログナー=カリーニチェ?あいつは出すの面倒なんだよなぁ・・・・

次回は作戦会議とかになりそうです。


次回予告

雪兎達が聖剣攻略を話し合っている頃、亡国機業も聖剣を奪取せんと行動を開始していた。そして、ISの本来の活躍の場である宇宙にて双方が激突する。

次回「激突する宇宙 兎、宇宙へ」

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