IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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更新が遅れるとか言っておきながら数日で更新です。深夜、寝れずに筆が乗りました。
今回はデュノア社訪問回です。
事件開始は原作よりもう少し遅れます。
そして・・・・久しぶりのシャルロット視点です。


105話 父と娘の再会 兎、歓迎される

シャルロットside

 

「(戻ってきたんだ・・・・)」

 

僕は今フランスのデュノア社の前にいる。本当はお母さんのお墓参りだけするつもりだったのだけど、雪兎がデュノア社に、父に呼ばれていると知って僕もついてくる事にしたんだ。

 

「大丈夫か?シャル」

 

「う、うん、大丈夫」

 

どうやら顔色が悪くなっていたようで、それを見た雪兎が心配してくれたけど、これは僕が乗り越えなきゃいけない事だからと慌てて元気を装おう。

 

「気持ちはわかるが無理はすんなよ?」

 

それでも雪兎にはお見通しだったようで、心配しつつも僕の気持ちを尊重してくれた。

 

「来たか」

 

そんな僕達を出迎えてくれたのは案の定僕の父(アルベール=デュノア)だった。

 

「よく来てくれた、天野雪兎君。それとシャルロット」

 

だが、その父は僕が今まで見た事の無い穏やかな顔をしていた。

 

「お招きいただきありがとうございます、アルベール社長。その表情からして片付いた(・・・・)みたいですね?」

 

「ああ、つい先日にな。君の協力もあっての事だ、感謝する」

 

「それは何より」

 

雪兎は父がそんな顔をしている理由を知っているどころか関わっていたようで、そうにこやかに父と話している。その事を咎めるように雪兎を見るが、雪兎と父は苦笑するだけだ。

 

「シャルロット、彼を責めないでやってくれ。シャルロットに黙っているよう頼んだのは私だ」

 

「理由は後でちゃんと説明するから」

 

二人がそう言うので仕方なく引き下がると僕達は父に連れられ社長室まで行く事に。途中、すれ違った社員の人達は雪兎を見ると皆頭を下げていた。おそらくリヴァイヴⅡの件だろうなと思い、僕は少し嬉しくなった。

 

「ここだ」

 

父の案内で社長室に入ると、そこにはあの人・父の正妻であるロゼンダ=デュノア夫人の姿があり、僕は思わず固まってしまう。それを見てロゼンダ夫人は何故か悲しそうな顔をしていた。

 

「お初にお目にかかります。アルベールの妻のロゼンダです」

 

「こちらこそ、お初にお目にかかります。天野雪兎です」

 

そんな僕と違い雪兎はロゼンダ夫人と挨拶を交わし、父に薦められるがまま社員室のソファーに腰掛けた。

 

「シャルロットもそこに座りなさい」

 

「は、はい」

 

僕も父に言われるがまま雪兎の隣に腰掛ける。

 

「まずは雪兎君、よくフランスに、デュノア社に来てくれた」

 

「いえ、俺も何れこちらに伺うつもりでしたので」

 

「それとシャルロットの件では迷惑を掛けた」

 

父はそう言うと雪兎に頭を下げた。すると、雪兎は少し慌てたように頭を下げ返した。

 

「それは俺の台詞ですよ。まさかシャル、シャルロットの転入にあんな裏があるとは俺も思っていませんでしたし」

 

「娘の呼び方ならいつも通りで構わんよ。それと、例の件だが君の口から説明してやってほしい・・・・私が言っても説得力は無いだろうからね」

 

「では、失礼して」

 

「ど、どういうこと?」

 

二人の話についていけず、僕がそう訊ねると、雪兎がその理由を説明してくれた。

 

「シャル、実はな・・・・シャルがIS学園に転入させられたのはシャルを守る為だったんだ」

 

「えっ!?」

 

その時の僕は多分、「信じられない!」という顔をしていたのだろう。でも、雪兎がそんな嘘を言うとは思えず動揺していた。

 

「まあ、信じられないのも無理は無いか・・・・」

 

「そのように振る舞っていたのだ無理も無い」

 

しかし、その反応は雪兎も父も予想していたようだ。

 

「シャルが社長の愛人・妾の娘だったってのはシャルの方がよくわかってるよな?」

 

「う、うん・・・・」

 

「そこでちょっと考えて欲しい・・・・ロゼンダ夫人には少し申し訳ない言い方になるが、愛人だったシャルの母親との間にシャルが生まれたのに対してロゼンダ夫人との間に子供がいないのは何故か?」

 

「えっ?」

 

それは考えてもいなかった。確かに愛人だった僕のお母さんとの間に僕が生まれているのに、正妻であるロゼンダ夫人との間に子供がいないのは不自然だ。その疑問の答えはロゼンダ夫人自身が答えてくれた。

 

「ロゼンダ夫人」

 

「ええ、私はね・・・・不妊症なの」

 

不妊症・・・・これは正確には病気ではなく症候群に該当し、一般的には「妊娠を望み、一年以上性生活を行っているにも関わらず妊娠しない」場合、不妊症と判断される。この原因は人によって様々であり、明確な治療法が存在する訳ではない。

 

「そのせいで彼女は子供を作れなかった。シャルロットに辛く当たってしまったのはそのせいでもあったんだ」

 

父のその言葉を聞き、僕は以前に「この泥棒猫っ!」と強く当たられた事を思い出した。

 

「ごめんなさいね・・・・本当はあんな事言うつもりじゃなかったのに」

 

多分、さっき僕がロゼンダ夫人を見て固まってしまったのを見て彼女もそれを思い出してしまったのだろうと察した。でも、これが僕をIS学園に送り込んだのとどう関係してくるのだろう?

 

「この話がどうして関係するのかって顔をしてるな?実はシャルが引き取られてすぐの頃にデュノア社の派閥はおおよそ二つに分かれてたんだ。一つはシャルを後継者にしようとしてた一派。そして、もう一つがシャルが妾の娘って事で後継者と認めず排除しようとしていた一派だ」

 

「ーーっ!?」

 

そこまで聞いて僕にも事の全貌が理解出来た。僕はその一派に暗殺されそうになっており、そんな僕を自分達だけでは守れないと思った父が無理矢理理由をつけてIS学園に送り込んだのだろう。つまり、一夏や雪兎のデータ取りと言うのは僕をIS学園に行かせる為の方便だったのだ。

 

「その顔は理解したっぽいな?」

 

「うん・・・・」

 

「良かった、シャル。お前は父親にちゃんと愛されてたんだよ」

 

「う、うん・・・・」

 

その雪兎の一言で僕の中にあった何かが崩れたような気がした。

 

「雪兎、ちょっと、胸借りてもいい?」

 

「ちょっとと言わずいくらでも」

 

そこで我慢の限界がきて僕は雪兎の胸で声を上げて泣いてしまった。社長室は防諜の為に防音仕様だったのが幸いしてそれを聞いていたのは胸を貸してくれた雪兎と父にロゼンダ夫人、それから同席していた爺やだけだった。その後泣き止んだ時に父達からとても暖かい視線を向けられて僕は恥ずかしくなって今までにないくらい顔を真っ赤にしてしまったらしい(雪兎談)。

 

side out




という訳で原作11巻にあったデュノア社の事情をシャルロットに暴露しました。
これにはきっとジェイムズ爺やもホロリと涙した事だろう。
ちなみにそのシャルロットを排除しようとした一派は雪兎のデュノア社への嫌がらせを食らった上に不祥事が社長にバレて逆に会社から排除されました。雪兎とアルベールが片付いたと言っていたのはコレの事です。


次回予告

シャルロットとアルベールの仲を改善した雪兎。お墓参りも終え、セシリアの誕生会までまだ時間があるのでシャルロットと二人でフランス観光という事になったのだが・・・・

次回

お墓参りとフランス観光 兎、双子と再会する

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