IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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またしても雪兎がやらかす。
打鉄弐式、大幅に改造されます。

※簪は雪兎のヒロインじゃなく友達です。


5話 打鉄弐式とクラス対抗戦 兎、自重しない

寮の自室。男子同士ということで同室になっている二人は夕食後、互いに放課後何をしていたか話していた。

 

「特訓はいつもの調子か・・・・」

 

「ああ、何であの二人だけになると途端に駄目になるんだ?あいつら」

 

雪兎というストッパーがいないと箒とセシリアは原作通りに自分の考え方を押し付けるような教え方になるため、特訓があまり進まないらしい。

 

「それでお前はどこに行ってたんだ?」

 

「ん?前に専用機凍結された娘の話したろ?あの娘んとこ」

 

「ぶー!?」

 

それを聞き一夏は口にしていた緑茶を吹き出す。

 

「汚いなぁー、ちゃんと拭いとけよ?」

 

「おう・・・・じゃなくて!何でその娘のとこ行ってんだよ!?」

 

一夏も専用機凍結の間接的原因であるため気にはしていたのだが、このフットワークの軽い友人は早速接触してきたらしい。

 

「いやー、本音に頼まれて」

 

「本音?」

 

「布仏本音、クラスメイトの名前くらい覚えとけよ・・・・あののほほんとしてる娘だよ」

 

「ああ!!のほほんさんか!でも何で?」

 

原作通りのほほんさんで記憶していたようだ。

 

「その娘と幼馴染なんだとよ。それで未完成の専用機を一人で組もうとしてるから様子を見てくれないかって」

 

「そうだったのか・・・・」

 

「んで友達になった」

 

「どこをどうしたらそうなるんだよ!?友達になるの早くね!?」

 

急展開過ぎて一夏も突っ込むことしかできない。一夏が話を聞いた限りでも重そうな背景を抱えていそうな少女とどうしたらすぐに友達になれるのだろうか。

 

「しばらくその娘、簪っていうんだが。簪の専用機仕上げようと思うから特訓は箒とセシリアに一任するわ。あっ、箒には打鉄・改預けてるから訓練機の心配は要らんぞ」

 

「ちょっ!?あの二人だけだと特訓にならないってさっき言ったじゃんか!」

 

箒は感覚的、セシリアは細かい理論的なことしか言わないので間を取ってくれる雪兎がいないのは一夏にとって

死活問題なのだ。

 

「焦ってるな?鈴と揉めでもしたか?」

 

「うぐっ」

 

「そんでクラス対抗戦での勝ち負けに何か賭けた?」

 

「ぐはっ」

 

「はぁー、この唐変木は・・・・」

 

原作だと試合前にあるやり取りだが雪兎がカマをかけてみたら見事にフライングしてやらかしていた。

 

「で、何があった?」

 

「実は・・・・」

 

ここで例の「毎日酢豚を」の件で怒らせ賭けの話になったらしい。

 

(俺が同室になった影響か?まあいい、こっちは誤差の範囲だから大筋に影響はないだろう)

 

どうせ無人ISの乱入で賭けはお流れになるのだし問題ないと雪兎は判断する。

 

「結論から言うとお前が悪い。大体予想つかないか?「毎日」ってのは「ずっと」って意味でもあんだぞ?」

 

「あ、やっぱり?」

 

「それを「おごってくれる」と勘違いするとか・・・・鈴でなくてもキレるわ」

 

それこそ「どこをどうしたらそうなるんだよ!?」である。

 

「とりあえず、勘違いしてたことは試合の後にでも謝っとけ。ただし!それで付き合う付き合わないまで決めるなよ?そこで好きでもない、この場合はlikeじゃなくてloveの方な、娘と付き合ってみろ。すぐにすれ違い起きて破局すんぞ」

 

「お、おう・・・・なんか実感込もってね?」

 

「一般論だ一般論。とりあえず後悔するような選択はすんなよ?」

 

「わかった」

 

これで少しは唐変木さが治ればいいのだが、生憎雪兎もそこまでは期待していない。そこは伊達に(箒や鈴より長く)幼馴染をやってはいない。

 

「あと、特訓メニューは二人に送っとくからそれやっとけ」

 

「サンキューな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、クラス対抗戦の相手がいきなり鈴の2組と判明し、箒とセシリアがまたあーだこーだ言っていたが、昨夜は特訓メニューや簪の打鉄弐式の組み上げプランを練っていて寝不足気味の雪兎に一喝されて静かになった。

 

「天野君って、やっぱり頼りになるね」

 

「そーだよねー。それにISの操縦も上手いし」

 

「なんてクラス代表辞退したんだろ?」

 

二人を止められなかった一夏の株がほんの少し落ちたのはある意味仕方ないのかもしれない。

 

「あまあま、かんちゃんはどうだった?」

 

そんな雪兎が少し恐かったのか、または簪が今も自分を拒否していないか?などを考えていたのだろうか?本音が恐る恐る雪兎に声をかける。

 

「・・・・本音か、何とか友達にはなったよ。弐式に関してももう一人で全部やろうなんては考えてないと思うぞ。しばらく手伝ってやる約束もしたしな」

 

「ほ、ほんと!?」

 

たった一日なのに成果を出してきた雪兎に本音は驚く。

 

「なんなら今日一緒に会いに行くか?多分、簪も気にしてんじゃねぇか?」

 

「い、いく!」

 

尻尾があればブンブンと振っている姿が幻視できる程本音は嬉しそうだ。

 

「何の話だ?」

 

雪兎と本音という珍しい組み合わせに箒は何事かと訊ねる。セシリアも興味があるのか箒と共に雪兎達のところへやってくる。

 

「ちょっとな、二人の共通の友人の話さ」

 

「いつの間にそんな方が?」

 

「昨日。今はちょっと事情があって紹介できないが、また向こうの事情が片付いたら紹介するよ」

 

この時、その話を聞いていたクラスの雪兎ファンクラブ(非公認、一夏のもある)の面々はいつの間にか抜け駆けしていた本音とその友人(簪)に激しく嫉妬したとかしないとか・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、約束通り本音を連れて雪兎は簪のいる整備室を訪れた。

 

「よっ、簪」

 

「いらっしゃい、雪兎。それに本音も」

 

「かんちゃん・・・・」

 

今まで拒絶されてきたこともあって以前のように声をかけてきてくれた簪に本音は涙ぐんでいた。

 

「ごめんね、本音。今まで心配かけて」

 

昨日雪兎に諭されていかに本音が自分を気にかけてくれていたかを思い返し簪は謝った。

 

「かんちゃーん!!」

 

そこからは普段の本音からは想像もできないくらい号泣して抱きついた簪の制服を濡らしていた。

この時、生徒会長と虚の姉二人も密かに物陰で涙ぐんでいたのを雪兎は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがどう、あまあま」

 

数分後、ようやく泣き止んだ本音は雪兎に頭を下げる。

 

「礼を言うのはまだ早いだろ?打鉄弐式も何とかするんだから」

 

しかし、雪兎の本命は打鉄弐式の完成。ここで引き下がる訳がなかった。

 

「最終調整とかは対抗戦には間に合わないから対抗戦には訓練機で出てもらうことになっちまうが、手は尽くさせてもらうぜ」

 

そう言って雪兎が取り出したのは少し大きなノートPC型の端末。しかも簪達の見たこともないモデルのものだった。

 

「それは?」

 

「こいつは俺のISが収集したデータから新たな武装やパッケージを設計してくれる便利ツール【EVOLsystem】さ」

 

「え?」

 

ここにきて雪兎はまたしてもとんでもないものを持ち出してきた。

 

「打鉄弐式のデータを入力すればそれを最適化してくれるだろうからそれに合わせて機体をチューンすればかなり進むと思うんだが」

 

「いいの?そんなの使わせてもらって」

 

「気にすんなって、友達だろ?」

 

そう言って簪から許可を取ると雪兎は打鉄弐式のデータを端末に入力していく。

 

「打鉄は防御に重点を置いてたが、弐式の方は機動系か・・・・デザインは白式に似てるってか白式が弐式のデータを流用したのか・・・・ならこっちのデータも追加して・・・・ん?ってことはあのプランも使えるな・・・・武装は荷電粒子砲にマルチロックオンシステムによる高性能誘導ミサイルに高周波ブレードの薙刀か・・・・マルチロックオンはあの機体のデータを参照して・・・・パーツはまだストレージに残ってたよな?足りなきゃ束さんに頼むか・・・・ふっふっふっふっ、久しぶりに腕が鳴るじゃねぇか!」

 

データを入力しながらイキイキとしだした雪兎に少し引く簪と本音だったが、これが天野雪兎の素なのだろう。本当に楽しそうに作業をする姿に頼もしさを感じた。

その時、二人はまだ気付いていなかった。雪兎という劇物を投入したことで打鉄弐式がとんでもないことになっていることに。コンセプトと武装の種類は同じだが、倉持技研が当初設計したものとは全く別の機体になっているということに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス対抗戦当日。打鉄弐式の開発は雪兎の暴走によって随分と進んだが、結局クラス対抗戦には間に合わなかった。

 

「調子はどうだ?」

 

開発に一区切りをつけた試合に出る白式のメンテを前日に行っており、その具合を訊ねる。

 

「ああ、バッチリだ。流石は雪兎」

 

やはり開発者の弟子の名は伊達ではない。

普段はオートメンテナンスに任せてはいるが、今回の対抗戦に合わせ珍しく雪兎が自分から買って出たのだ。そこには原作通りなら試合中に乱入してくる無人ISのことを知っている雪兎の知らせれない罪悪感と親友が無事でいてほしいと願う気持ちが含まれていた。

 

(あとはいざって時に備えておくか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たわね、一夏」

 

「鈴、負けねぇぞ」

 

対峙する二人は。

 

『それでは両者、試合を開始してください』

 

そのアナウンスと共にそれぞれの得物を構え激突する。白式の雪片弐型と甲龍の双天牙月のぶつかり合いは甲龍に軍配が上がり弾き飛ばされるもセシリアに教わった三次元跳躍旋回(クロス・グリッド・ターン)ですぐさま立て直し次に備える。すると、甲龍の肩にある非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)の装甲がスライドする。

 

『【衝撃砲】?』

 

『空間に圧力をかけて砲身を生成し、余剰分の衝撃を見えない弾丸として発射する。簡単に言えば広範囲空気砲かな?』

 

雪兎から事前に聞かされていた甲龍の第3世代兵器のことを思い出し、咄嗟に回避行動を取る一夏。

 

「へぇー、【龍咆】を初見で避けるなんてやるじゃない。と言ってもどうせ雪兎の入れ知恵でしょ?」

 

「まあな、ほんとにあいつには頭が上がらないぜ」

 

全方位射角という恐ろしい兵器ではあるが、発射の一瞬に大気のブレが生じるため、それを感知できれば理論上回避は可能だ。雪兎は鈴対策としてハイパーセンサーがそれを感知したら即座に反応できるよう特訓メニューを組んでいたのだ。

 

(付け焼き刃ばっかなのは俺が未熟だから。なのにあいつはいつも俺に勝てる可能性をくれる・・・・これで負けたら男が廃るし、あいつに並べねぇ!)

 

親友と並び立つという目標のためにも一夏は負けられなかった。だから、箒やセシリアから可能な限り技術を学んだ。それが一夏を大きく成長させていた。

 

(くぅ、一夏のくせに!ほんとあの白兎(雪兎)は敵に回すと厄介よね!)

 

次々と龍咆をかわす一夏に鈴は苛立ちを募らせ次第に砲撃の精密さを欠いていく。

 

(チャンスは一度きり・・・・だが、その一撃で決める!)

 

そして、鈴の砲撃に隙を見つけた一夏は瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に距離を詰めようとするが。

 

ズドオオオオンーーという轟音と共にアリーナの遮断シールドを貫いてアリーナ中央に何かが降り立った。

 

(なんだ、あいつは・・・・)

 

それは全身装甲(フル・スキン)のISらしき人型だった。




無人ISが乱入しました。さあ、この事態に雪兎はどう動くのか?
原作通りだと一夏が仕留め損ない不意討ちを食らうが本作では一体どうなる?

次回予告

乱入してきた謎の全身装甲(フル・スキン)IS。遮断シールドのせいでアリーナに取り残された一夏と鈴。また観客席に閉じ込められた生徒達。一夏と鈴は生徒達を避難させる時間を稼ぐべく謎のISに挑むが・・・・その時、雪兎が取った行動とは?

次回

「決戦!謎の乱入IS 兎、乱入す!?」

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