IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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アムドライバー編最後の戦いです。
今回は福音以来の激戦回になります。それくらいフルゼアムジャケットはヤバいです。
まあ、それよりも今回も兎が色々やらかしますが・・・・


101話 究極の神VS創生の破壊神! 兎、神に挑む!?

咄嗟に雪華を纏った雪兎は【CF:コールドフレイム】と【NW:ネオウィザード】を展開し、グラスパーの防御フィールドを使いガン=ザルディの放ったエネルギー砲を弾く。そうしたのは背後のイヴァンやウィルコット議長らを守る為だ。

 

「ちっ、議長達もいるってのにお構い無しかよ」

 

『神の統治する世界には不要だ』

 

「いかれてやがる」

 

このままではせっかく彼らを生かした意味が無いと、雪兎は【NW:ネオウィザード】から【NJ:ネオイェーガー】に装甲切換し、拡張領域からゼアムのデータをまとめたメモリを取り出す。

 

「ゼアムのデータはここだ。欲しけれりゃついてこい!」

 

『いいだろう』

 

そう言ってムーロンベースを飛び出し上空へ向かうと、ガン=ザルディもそれを追っていく。そして、十分にムーロンベースから距離を取ると両者はそれぞれの武器を手に激突する。

 

「ガン=ザルディ!何故そこまで神になることに固執する!」

 

『人間が愚かだからだ!例え今平和を取り戻したとしてもまた何れ人間は争いを繰り返す!それが判らぬか!』

 

「それはあんたのやり方だって同じだろう!!ゼアムに不老不死になる力なんて無い!だったらあんたが死ねば残されたゼアムを廻って再び争いが生まれる!」

 

『その程度の事で再び争うのであれば人間など滅んでも仕方あるまい』

 

絶え間無く激しい空中戦を繰り広げる二人。それはアムドライバー達はおろかIS学園の面々でも簡単には介入する事が出来ないレベルの攻防だった。

 

「ふざけるなっ!」

 

両手のショーテルに熱と冷気を纏わせ斬りかかる雪兎をガン=ザルディは両手をブレードに変化させて受け止めるが、雪兎はすぐさまガン=ザルディの腹部に蹴りを入れ吹き飛ばす。

 

「人間はっ!」

 

それを雪兎は追い抜き蹴り上げ。

 

「お前の!玩具じゃねぇ!!」

 

再び追い抜き両手を合わせて上から下に叩き込み、落下するガン=ザルディに容赦無くネオバスターライフルを放つ。しかし、すぐに落下点からガン=ザルディが飛び出し上空の雪兎と激突する。

 

「判ってはいたが・・・・化け物だな、ゼアムジャケットってのは」

 

『化け物では無い。神の力だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのガン=ザルディと互角だなんて・・・・」

 

その戦いを観ていたジェナス達はそれ以上の言葉を口に出来なかった。

 

「でも、雪兎があの装備で押し切れないなんて・・・・」

 

「雪兎・・・・え?」

 

その時、心配そうに雪兎を見上げるシャルロットとガン=ザルディの目が合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほぉ・・・・』

 

何度目かももう判らない激突の後にガン=ザルディがふと下を見詰めた。雪兎を相手にそのような隙を見せるのは致命的な行動ではあったが、その見詰める先に居たのは・・・・"シャルロット"だった。

 

「まさかっ!?」

 

雪兎が気付いた時には既にガン=ザルディは行動を起こしていた。転移と変わらぬスピードでシャルロット達の前へと現れ迷わずシャルロットの首を掴む。

 

「うぐっ・・・・」

 

「シャルッ!!」

 

『止まりたまえ』

 

雪兎も慌てて駆けつけたが、ガン=ザルディはシャルロットを盾に雪兎を制止する。

 

『彼女は君にとって大切な存在のようだね?』

 

「シャルを離せ」

 

『ならば取引といこうか。君の持つゼアムのピースを渡したまえ。そうすれば彼女を解放しよう』

 

そして、ガン=ザルディは雪兎にシャルロットと引き換えにゼアムのピースを渡せと要求する。

 

「人質なんて卑怯だぞ!ガン=ザルディ!!」

 

これにはガン=ザルディに憧れていたジェナスも激昂する。だが、シャルロットを人質にされているためジェナス達も何も出来ない。

 

『何とでも言いたまえ、ジェナス君。私はもう決めたのだ。私は何があってもゼアムを完成させ、神に成るのだと!』

 

「だ・・・め、ゆき・・と・・・・渡しちゃ、だめ」

 

「わかった。その代わり、シャルに傷一つつけてみろ・・・・その時は俺は自分を律する自信はねぇぞ?」

 

シャルロットはガン=ザルディにメモリを渡しては駄目だと言うが、雪兎はゼアムのメモリをガン=ザルディに放った。

 

『確かに・・・・では、彼女を解放しよう』

 

メモリを受け取ったガン=ザルディはシャルロットを掴んでいた手を離しシャルロットを解放する。

 

「げほっ、げほっ・・・・」

 

「シャル!無事か!?」

 

「う、うん・・・・僕は大丈夫、でも・・・・」

 

とうとうガン=ザルディの手にゼアムのピースが揃ってしまった。

 

『ふ、ふはははは!!ピースは全て揃った!これで私は神に成れる!』

 

解放されたシャルロットを抱き止める雪兎。そんな彼らを嘲笑うかのようにガン=ザルディは再び上空へと昇り、ゼアムジャケットのヘルメットのインカムの部分に備えていたスロットにメモリを差し込みゼアムのデータを吸い出す。すると、手足は鋭くなり、背中から翼のようなものが生え、両肩にバグシーンの目のようなパーツが現れ、ガン=ザルディのゼアムジャケットは禍々しい姿へと変貌していく。

 

「あれがゼアムの、神の力なのか・・・・」

 

「まるで悪魔じゃねぇか」

 

そして、フルゼアムジャケットとなったそれを纏ったガン=ザルディは早速その力の一端であるエネルギードレインを発動し、周辺のアムエネルギーを吸収し始める。それによってムーロンベースを警備していた連邦アムドライバーやJAのアムジャケットだけでなくムーロンベース等のアムエネルギーを利用していた施設全てがアムエネルギーを失い沈黙していく。

 

「お、おい。皆どうしちまったんだ!?」

 

そう、ゼアムが神の力と呼ばれるのは今やこのアムエネルギーに依存した世界の全エネルギーを掌握出来るこの能力によるところが大きい。しかし、アムエネルギーを利用していないISを使う雪兎達とジェナス達ピュアアムドライバーの面々には何の効果も無かった。

 

「何で俺達だけ・・・・」

 

『それはオイラ達がジェナス達のネオアムジャケットに仕込んでおいたエネルギーコンバーターのおかげッス!』

 

「マジか!?でも何でそんなもん搭載してたんだ?」

 

『ゼアムのピースを解析してた時に雪兎がこの事に気付いて万が一に備えて、って仕込んでたんスよ』

 

「こんな事もあろうかと、ってやつだ。メカニックならば誰もが一度はやってみたいシチュエーションだな」

 

雪兎はドヤ顔でそう言う。

 

「つまり、雪兎達はゼアムが悪用される事を想定していたと?」

 

「当たり前だろ?ピースがもし敵に奪われていたら、それこそ前にイヴァンが言ってたガン=ザルディがアムテクノロジーを、ゼアムを悪用する可能性も想定していた」

 

つまり、雪兎は最初からガン=ザルディを信用していなかったのだ。

 

『おかしい・・・・全世界のアムエネルギーを吸収したはずなのに、吸収したエネルギー量が少な過ぎる』

 

更に、全世界のアムエネルギーを集約出来るはずのフルゼアムジャケットのエネルギードレインだが、実際に吸収出来たエネルギー量の少なさにガン=ザルディが疑念を抱く。

 

「馬鹿か?俺が知り得た事に関して対策の一つや二つ立てて無いとでも?」

 

その疑念に雪兎はイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべる。

 

『き、貴様っ!何をした!?』

 

「なに、簡単な事さ・・・・このムーロンベース一帯にアムエネルギーを遮断するフィールド発生装置を設置した。ゼアムとて使うエネルギーはアムエネルギーだからな」

 

ピースを集め終えた後、ロシェット達を弄るのと並行して雪兎達は手分けしてその装置を設置して回っていたのだ。

 

「そうか!だからフィールド内にしかゼアムの影響がでなかったのか!」

 

Exactly(その通り)

 

『おのれ・・・・だが!それで勝ったつもりか!』

 

「そういうあんたこそ、この人数を何とか出来ると?」

 

雪兎達IS学園の面々とジェナス達ピュアアムドライバーの総勢29名がいる状況。人数こそ有利ではあるがガン=ザルディの言うように勝ったつもりになるのは少し早い。

 

「それに・・・・ここまでやっといてフルゼアムに対抗出来る力を俺が用意していないとでも?」

 

『何?』

 

「見せてやるよ・・・・これが俺の最新の切り札(ジョーカー)だ!」

 

雪兎は【CF:コールドフレイム】だけでなく【NJ:ネオイェーガー】まで一度解除し、新たなる力を解き放つ。

 

「来い!【EXCEED(エクシード):No.06・GENESIC(ジェネシック)】!!」

 

起源や発端等の意味を持つ英語のGENESISの形容詞の変型とも言われるGENESIC。その名を冠した勇者王にして破壊神とも呼ばれるロボットを模した雪兎が束の協力を得て作成したアドヴァンスドを超えるEXCEED(極限)という(パック)

 

『させぬ!』

 

それに本能的な恐怖を覚えたガン=ザルディは腕をキャノンに変えて極太のビームを放ちまとめて消し去ろうとしたが・・・・

 

『Protection』

 

その電子音と共に既にGENESICの展開を終えた雪兎に左手一つで張られた障壁に遮られた。そして姿を現したのは黒き装甲と金の装飾、所々に翡翠のエネルギーマテリアルを付けた破壊と創造の力たる【EXCEED(エクシード):No.06・GENESIC(ジェネシック)】となった雪華を纏う雪兎。

 

「変身や合体シーンでの攻撃とは無粋な・・・・こっちは待ってやったってのに」

 

『む、無傷だと!?』

 

「これはお返しだ」

 

驚くガン=ザルディを余所に雪兎は右手を貫手の形にし、それをドリルのように高速回転させながら腕を大きく振りかぶりガン=ザルディへと撃ち放つ。

 

「貫けっ!!」

 

凄まじい回転とエネルギーを纏ったその攻撃はフルゼアムジャケットの左肩を貫くが、フルゼアムに変貌した際に拡張されたパーツの部分だったために中の肉体が傷を負う事はなかった。だが、これにより左肩のエネルギードレインを司るパーツは破壊されてしまう。

 

『くっ、この程度っ!?』

 

「こいつはさっきシャルを人質に取った分だ」

 

しかし、雪兎のターンはまだ終わってはいなかった。気付けばガン=ザルディの目の前に射出したはずの右手を再び高速回転させ振りかぶり、今度は貫手ではなく拳を顔面に叩き込む。その拳は高速回転だけでなく、全身の力を余さず伝える何処ぞの覇王様の拳の異色のコラボレーションとなっており、その相乗効果で生まれた一撃はガン=ザルディを音速の壁を突き抜ける勢いで吹き飛ばし、先日雪兎が滅焔の明星(ルシフェリオン・イレイザー)で山頂から中腹まで消し飛ばした山の隣の山の丁度中腹に激突し山全体と比較して1/3程の巨大なクレーターを作り上げた。

 

「・・・・何、あれ?」

 

これにはジェナス達は驚愕していた。

 

『か、神が・・・・神の力を得たはずの、私が・・・・負けるはずが・・・・』

 

「覚えておけ、最後に勝利するのは・・・・勇気ある者だぁああああ!!」

 

フルゼアムを得て神に至る力を得たと思っていたガン=ザルディもその圧倒的な力に声が震えていた。それでもシャルロット(大切な人)に手を出された雪兎がこの程度でガン=ザルディを許すはずもなく、トドメに拡張領域から巨大なプラスドライバーのようなパーツを右腕に装着し、ガン=ザルディが埋まっている山のクレーターが反対側に貫通するような一撃を放ちフルゼアムジャケットを完全破壊した。

 

「・・・・雪兎、シャルロットに手出されてブチギレてるよな?」

 

「そうだな、人質に取ったのがシャルロットでなければもう少しマシな決着だったろうに・・・・」

 

「シャルロットさん、愛されてますわね」

 

「はぅ・・・・」

 

「何処の勇者王よ、あいつ・・・・」

 

「最後の台詞はあの名シーンの再現・・・・流石は雪兎」

 

「かんちゃん、あのシリーズも好きだったもんね」

 

「元の世界に帰れたら本国に忠告しておくべきだな・・・・アレと敵対すれば国が焦土となりかねん」

 

「うん、あんなのと敵対しようと思ったら衛星兵器クラスがいるよね」

 

「体育祭の時にアレがなくてよかった・・・・」

 

「お嬢様・・・・」

 

「あ、あれはまさか覇王流!?」

 

「アキラ、貴女って本当に格闘技になると博識よね」

 

「でも、覇王流って魔法少女もののアニメに出るやつじゃなかったっけ?」

 

「あれは魔砲少女・・・・それにしてもやはり師匠達は凄い」

 

一方でIS学園の面々は雪兎と束がやらかす事に慣れてしまったのかこの調子である。

 

「束、あれ、生きているのか?」

 

「生きてるんじゃないかな?ゆーくん、一応手加減してたみたいだし」

 

「あれで手加減なんですね・・・・」

 

「だってアレ、衛星・小惑星級のデブリ破砕が本来の使用用途だもん」

 

「あ~、【S:ストライカー】の発展仕様なんだ、アレ」

 

その後、救助されたガン=ザルディはゼアムの防護フィールドのおかげで命にこそ別状はなかったものの、その心はバキバキに砕かれミキサーにかけられたレベルで燃え尽きた症候群と化していたらしい。




いや~、ゼアム強敵でしたね。
処刑BGMは某勇者王の曲をイメージして下さい。

次辺りでアムドライバー編は終了となります。少々駆け抜けた感がありますが、原作に合わせるとかなり長くなるのでこの辺りでズバッと切りました。
やっと聖剣事変にいける・・・・


次回予告

ガン=ザルディを破り、戦いの幕を閉じた雪兎達はようやく元の世界に帰る事に。そして、ジェナス達とも別れの時が・・・・

次回

「See You Again 兎、元の世界に帰る」

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