IS―兎協奏曲―   作:ミストラル0

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とうとう100話目です。そしてこの章も20話目・・・・それともうすぐ一周年か、長いようで短かったな。

記念番外編は何を書くか・・・・

98話に何故かダラート組のはずのミュウがいる描写がありましたので修正しました。

引き続き兎協奏曲をよろしくお願いします。


100話 断罪と究極の力 兎、論破する

制圧後雪兎が各陣営に要求したのはそれぞれのトップであるウィルコット議長とジノベゼを集める事だった。ウィルコット議長は直ぐにその要求を呑んだが、ジノベゼはそれを拒否した。しかし、雪兎はキャシーにロシェット達を捕らえている事を通達し、ミュネーゼでのあれこれを使ってジノベゼを連れて来いと脅迫。意外にもネズミが苦手なシーンが震え上がる脅しに屈したキャシーに連れられジノベゼも最終的にはムーロンにやってきた。

 

「君があのパワードスーツ、ISと言ったかな?アレの操縦者なんだね?」

 

話し合いの会場に選ばれたのは連邦のムーロンベースの会議室の一室。「連邦の本拠地に入るなど!」とジノベゼがごねたが、雪兎が「護衛はお好きなように・・・・まあ、誰が来ようが、連邦が仕掛けてこようが、まだ争うつもりなら叩きのめすだけだがな?」と宣言した事で黙った。

 

「ええ、ウィルコット議長。まずはあのような手段で強引にこのような場を設けた事をお詫び申し上げます」

 

「いや、君は誰一人傷付けようとせず双方を無力化した。それにあの状況だ。ただ話し合い等と言っても双方受け入れなかっただろう」

 

雪兎の謝罪にウィルコット議長はそう告げる。ジノベゼもあの場でああしなければ話し合いの席には着かなかったことに関しては同意のようだ。

 

「・・・・そんな事をしてまで我々をこの場に集めた理由は何だ?もし下らない内容であればただでは済まさんぞ!」

 

「そう慌てないでいただきたい。それにお二人に話があるのは俺ではなく彼です」

 

ジノベゼを宥め雪兎はその人物を会議室に招き入れる。

 

「・・・・」

 

「お、お前は!?」

 

その人物の登場にウィルコット議長は言葉を失い、ジノベゼは狼狽する。

 

「イヴァン=ニルギース。アムテクノロジーの研究者だったカペリ=ニルギースの弟と言えばお分かりいただけますかな?」

 

会議室に招き入れられたのはイヴァンだった。雪兎の紹介にウィルコット議長は納得した顔を、ジノベゼは顔を青くしている。

 

「ウィルコット議長、お初にお目にかかる。そして、久しぶりだな、ジャン=ピエール=ジノベゼ」

 

「カペリ君の弟か。生きているのは知ってはいたが・・・・そうか、ピュアアムドライバーや彼らと共にいたのか」

 

「兄をご存知で?」

 

「勿論だとも・・・・私の至らなさ故に失った命だ」

 

意外な事にウィルコット議長はイヴァンの兄・カペリを知っていた。その命がアムテクノロジーを独占しようとしていた連邦評議会の一部の議員のせいで失われた事もだ。しかし、ここで空気を読まない男が一人。

 

「聞いたか!ついにウィルコット議長が非を認めたぞ!やはり私は正しーー」

 

「少し黙ってろ、三流悪党」

 

ジノベゼの空気を読めない勝利宣言をドスの効いた声で遮る雪兎。

 

「さ、三流悪党だと!?」

 

「そうだろが・・・・ジャスティス・アーミーだから知らんが、やってるのは自分達に従わない連中を武力で無理矢理支配してるだけだろうに。従わないなら排除するとかどんな恐怖政治だよ?そもそもお前らに各都市を武力制圧していい権限なんぞどこにも無いぞ?その点、市民の顔色を伺って都市や市民に危害を加えなかったランディ=シムカの方が何倍もマシだわ」

 

「な、なぁ・・・・」

 

ISを兵器扱いしようとした為やむを得ず社会的に排除する形となったシムカだが、雪兎は「市民に手出ししていない」という点でジノベゼよりマシと認めていた。

 

「議会があんのは市民の為だろうに・・・・ジノベゼ、確かにウィルコット議長には非がある。だがな、あんたはやり方を間違えた。イヴァンの言う通りにアムドライバーの真実を証拠付きで開示する事だけしていればあんたは議長にも成れただろう。武力に頼るべきじゃなかった」

 

「わ、私は・・・・私は間違ってなど・・・・」

 

「もし、先の大戦であんた達が勝っていたとしても恐怖政治なんかしてりゃあ何れJAに反発する組織が誕生するか、あんたのやり方についていけない連中にクーデター起こされて殺されるかだと思うがな?」

 

そう言って雪兎はジノベゼに同行していたキャシーを見る。キャシーも雪兎が何を言いたいのか理解し顔を青くする。

 

「特にそこの女狐とか・・・・実際に連邦からJAに鞍替えしてるんだ。また状況が悪くなれば寝返るぞ、その女」

 

原作を知るからこそ雪兎がしてきた指摘は正しく、その場にいた誰もがそれを否定出来なかった。そんな中、最初に口を開いたのはイヴァンだった。

 

「・・・・まったく、結局私の言いたかった事は全て言われてしまったな?」

 

「すまん、あのド三流があんまりにも状況理解してねぇもんで、つい・・・・」

 

「いや、私が言うよりも説得力があっただろう。ジノベゼを見てみろ。燃え尽きてしまっている」

 

「あっ・・・・」

 

半端に頭が回る分雪兎の言っている事が現実に起こりうると判ってしまったジノベゼはイヴァンの言う通り二次元であれば真っ白になっていると思われる程に燃え尽きてしまっていた。

 

「・・・・それで、君達の要望は私達に罪を認め、政治という舞台を降りろという事かな?」

 

「ええ、それが今回の件での一番穏便な解決策かと・・・・勿論、今後も色々と荒れる事でしょうが、このまま争い続けるよりは良いかと」

 

「それは私もかしら?」

 

「当然だ。言っておくが、俺はジノベゼ以上にお前が信用ならん」

 

ウィルコット議長はいち早く雪兎達の狙いに気付き、キャシーもある程度は予想していた事を雪兎に確認する。

 

「初対面だというのに嫌われたものね」

 

「あんたの評判はジェナスやシーン達から聞かされてるからな」

 

その言葉に「そう・・・・」と納得したキャシーはふと思い出したかのように雪兎に訊ねる。

 

「そういえばロシェット達は無事なのかしら?」

 

「一応な。帰りにでも引き取っていってくれ」

 

「あら?何も要求しないの?」

 

「したらあんたはアイツらを見捨てるだろ?」

 

「・・・・降参だわ。貴方には情報戦や交渉でも勝ち目は無さそうね」

 

「これで長かった戦いも終わる」

 

これで全てが解決したと雪兎以外の全員が思ったその時。

 

『否、まだ終わりではない』

 

招かれざる者が姿を会議室の外、地上数十メートルの空中(・・)に現す。

 

「やっぱりこのタイミングで仕掛けてくるか・・・・ガン=ザルディ(・・・・・・・)

 

それはおそらく原作通りに彼の持つハーフゼアムで作られたゼアムジャケットを纏ったガン=ザルディだった。

 

『残りのピースを渡してもらおうか?』

 

「断る。見ての通りこの戦いは既に終結した。もうゼアムは必要無い」

 

『いや、必要だ。二度とこのような争いが起きないよう管理する神となる力が!』

 

雪兎とガン=ザルディのやりとりにゼアムの事を知らぬ議長らは首を傾げる。だが、ジノベゼですらガン=ザルディが狂気に駆られているのは理解出来た。人間が神に至ろう等狂気以外の何物でも無い。

 

「新世界の神にでもなるってか?名前を書いたら殺せるノートでも手に入れてから出直してこい」

 

『新世界の神か・・・・惹かれるフレーズではあるが、そのノートを手にしたところで何故か失敗するイメージしか浮かばんな』

 

「実際失敗してるからな、そいつ。要するに止めとけって話だ」

 

『そんな言葉で今更私が止まるとでも?』

 

そう言いながらガン=ザルディはその手にアムエネルギーを収束させ始める。

 

「思ってねぇよ!来い!雪華っ!!」

 

そして本当の最後の戦いの幕が開く。




ということで原作のラスボス・ザルディ戦突入です。
とりあえずウィルコット議長、ジノベゼ、キャシーの三名も生存しました。


次回予告

雪兎達の持つ半分のゼアムを求め、ついにガン=ザルディが牙を剥く!それを予想していた雪兎は残るゼアムのデータディスクを手にガン=ザルディとの戦う事に。そんな雪兎が対策を講じていないはずがなく、雪兎の新たなる切り札(ジョーカー)が顕現する!

次回

「究極の神VS創生の破壊神! 兎、神に挑む!?」

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