あと、普段の一夏と雪兎もチラリと・・・・
クラス代表決定戦はセシリアの二敗と雪兎の棄権により一夏が代表となることで決着した。この際、一夏はかなりごねたのだが、一応、原作通りに鈴とぶつけるために雪兎とセシリアが結託し無理矢理クラス代表の座を押し付けた。
「お前ら、いつの間に仲良くなったんだよ・・・・」
「一夏さんの方が伸び代があると雪兎さんと意見が一致しただけですわ。それに敗者であるわたくしに代表の座は相応しくありませんもの」
先の試合で二人のことを見直したセシリアはそれ以降友好的になり積極的に二人と接するようになった。雪兎やクラスメイトからすればセシリアが一夏にホの字なのは火を見るより明らかだったのだが、一夏は全く気付いていない。
「それはそうと、クラス対抗戦に向けて特訓しねぇとなあ」
「そうだな。この前の試合はオルコット対策での付け焼き刃。みっちり仕込んでやらねば」
「そういうことでしたらわたくしも協力させていただきますわ。クラス代表に負けられてはわたくしも舐められてしまいますもの」
ここに雪兎・箒・セシリアの三人による一夏コーチ陣が結成された。原作と違い箒とセシリアが対立していないのは雪兎が原因で、この二人を対立させても迷惑を被るのは一夏であり、特訓の時間も減るからといがみ合う二人にぶちギレかけた雪兎が30分にも及ぶ説教をしたこともあって箒とセシリアの二人はできるだけ雪兎の前では対立しないという協定を結んでいる。決してお仕置きと称して特訓中にバンカーを叩き込まれたからではない・・・・はずである。
「今日中に
「確かに一夏の取れる戦術を考えれば有用だな」
「零落白夜の一撃必倒の攻撃を生かすには良い考えだと思いますわ」
本当に原作よりも優秀なコーチ陣に囲まれ一夏の特訓の日々は続く。途中で代表就任パーティーや新聞部の取材もあったがその辺は原作とあまり変わらなかったとだけ言っておこう。
「そいうや中国から転入生が来たらしいよ。しかも代表候補生なんだって」
そんなある日、クラスでそんな噂が流れた。
(もうそんな時期か、確かその代表候補生って・・・・)
原作を知る雪兎はその転入生の正体を思い返し少し憂鬱になる。
「織斑君、頑張ってねー」
クラス対抗戦に出る一夏に檄を飛ばすクラスメイト達。それもそのはず。
「フリーパスのためにもね!」
そう、一位のクラスには学食デザートの半年フリーパスが配られるのだ。それに女子が食いつかない訳がない。
「今のところ専用機を持ってるクラス代表って1組と4組だけだから、余裕だよ」
しかも、その4組の生徒の専用機は未完成。実質専用機を持っているのは我らが1組だけ。クラスメイトはそう思っていた。
「ーーその情報、古いよ」
そこに待ったをかける声が響く。
「2組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
そう自信満々に言うのは。
「鈴・・・・?お前、鈴か?」
「聞き慣れた声だと思えばやっぱりお前か、凰鈴音」
「久しぶりね、一夏に雪兎」
そう、二人の箒とは別の幼馴染・凰鈴音だった。
「何格好付けてるんだ?すげえ似合わないぞ」
「キャラに合ってないな。そういうのはせめてもう少し身長が欲しいところだ」
「んなっ・・・・!?なんてこと言うのよ、アンタ達は!特に雪兎!また身長のこと言ったわね!!」
二人の言葉にやっと普段通りの言動に戻る鈴だったが・・・・
「鈴、後ろ」
「へ?」
雪兎の指摘で後ろを振り返るとそこには出席簿を片手に立つ千冬の姿があった。
「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」
「ち、千冬さん・・・・」
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」
雪兎の指摘も虚しく出席簿アタックの餌食となる鈴。「また後で来るから逃げるんじゃないわよ!」と捨て台詞を残し二人目の幼馴染との再会はぐだぐだなまま終わりを告げた。また、その後の授業で鈴の存在が気になって仕方なかった箒とセシリアは仲良く出席簿アタックの餌食となったのだった。
((これも全部一夏(さん)のせいだ(ですわ)!!))
授業に集中できてない貴女達が悪い。
「お前のせいだ」
「あなたのせいですわ」
「何でだよ・・・・」
午前の授業も終わり昼休み。授業が終わって早々二人は一夏に詰め寄る。午前中の授業で真耶からは5度も注意を受け、千冬から3度も出席簿アタックを食らったのにこの二人は全く懲りていなかった。一夏が不憫でしょうがない。
「言いたいことも分からんではないが先に食堂へ行かないか?詳しい話はそんときにしてやる」
「むぅ、お前がそう言うなら仕方ない」
「雪兎さんに免じて許して差し上げますわ」
件のOHNASHIがあったせいか雪兎に対して強く出られない二人は仕方なしにと食堂へと移動を開始する。
「雪兎、お前が友達でほんとによかったよ」
「気にするな。それよりも俺達も食堂へ急ぐぞ」
他にもクラスメイトが何名かついてくるがいつものことだ。食堂に移動した一行は券売機で思い思いのメニューを選ぶ。一夏は日替わりランチ、箒はきつねうどん、セシリアは洋食ランチ、そして雪兎は・・・・
「カツカレーうどん定食?」
なんとも変わったメニューを注文していた。
「カレーうどんに丼ご飯と揚げたてのカツ・・・・」
そこにミニサラダという「どんな構成だ!カレーうどん食ってから丼ご飯にカツと残ったカレーかけて食えと!?」とどこぞのメダロッターが突っ込んだ程のメニューである。
「まさかこの食堂にこの伝説のメニューがあるとは思わなかったぜ」
作る方も作る方だが、頼む方も頼む方である。
「待ってたわよ。一夏、それと雪兎!」
そこに仁王立ちで待ち構えていた鈴がいた。
「そこ邪魔、待ってたのはわかるがそこは他の人の邪魔になる」
「あっ、すいません」
「それと、何でラーメン?待ってる間に伸びるだろうが」
「ごもっともです・・・・じゃなくて!何で早く来ないのよ!」
「お前の都合など知らんし、約束してた訳でもないだろうが」
「うぐぐぐぐ・・・・」
雪兎に一方的に言い負かされ悔しそうにする鈴。
「お前らは相変わらずだなぁ」
一夏には少し前までよく見ていた懐かしの光景だ。
「さてと、鈴弄りはこの辺にしといて、あそこのテーブルが空いたし移動しようぜ」
丁度空いたテーブルへ移動し一行は席に着く。
「で、一夏、雪兎、そろそろどういう関係なのか説明してくれないか?」
「そうですわ!一夏さん、まさかこの方と付き合っていらっしゃいますの!?」
他のクラスメイトも興味津々のようで聞き耳をたてている。
「べ、べべ、別に付き合ってる訳じゃ・・・・」
「そうだぞ。何でそんな話になるんだ。ただの幼馴染だよ」
鈴、憐れである。
「幼馴染・・・・?」
そこで怪訝そうな顔をするのは二人の幼馴染であった箒だ。
「あー、えっとだな。箒が引っ越していったのが小四の終わりだっただろ?鈴が転校してきたのは小五の頭だよ」
「でもって中二の終わりに国に帰ったもんで会うのは一年ちょっと振りという訳だ」
所謂「入れ違い」というやつである。
「箒をファースト幼馴染とすれば、鈴はセカンド幼馴染ってことだ」
その後、互いに自己紹介をするが女子三人の間に火花が散っていたのは気のせいではないだろう。こうして後に一夏ラバーズと呼ばれるものの中の三人がここに集結したのだった。
「ねえねえ、あまあま。ちょっといいかな?」
それを余所にカツカレーうどん定食を食す雪兎にのほほんさんこと布仏本音が声をかけてきた。
「どうした、布仏」
「本音でいいよー、三年にお姉ちゃんもいるから紛らわしいし」
「わかった。で、何の用だ?」
これまでクラス代表に推薦してきたくらいしか関わっていなかった本音が個人的に声をかけてくるとは思ってもみなかった雪兎だったが、とりあえず話を聞くことにした。一夏達は一夏達で
「あまあまってISのこと詳しいよね?」
「まあ、ISに乗れるってわかる前からエンジニアになろうと色々勉強してたしな」
「あの専用機もあまあまが考えたんだよね?」
セシリア戦の後にクラスメイトに色々聞かれた際に答えたことを覚えていたらしい。
「そんなあまあまにお願いがあるんだよ」
「お願い?」
それは雪兎にとって意外なものであった。
放課後、雪兎は一夏の特訓を箒とセシリアに任せ(若干不安なものの)、ISの整備室を訪れていた。
(更識簪、ねぇ・・・・)
本音の頼みとは先も話題に上がった専用機を持たない日本の代表候補生にして4組のクラス代表に選ばれた更識簪に関することだった。彼女と幼馴染で従者という関係にある本音は未だに完成していない簪の専用機【打鉄弐式】について手を貸して欲しいと雪兎に頼んできたのだ。
『あまあまがおりむーの特訓で忙しいのはわかるんだけど手を貸して欲しいんだよ』
流石にクラス対抗戦には間に合わないとは思うが手伝って欲しいと真剣に頼まれ、雪兎はその頼みを聞き入れた。
(でも、簪って最初に出てくんの七巻の全学年専用機持ちタッグマッチの時だったよな?フライングじゃね?)
そう、簪は一夏の専用機【白式】の開発により倉持技研によって開発を凍結された【打鉄弐式】を一人で完成させようとしており、姉である楯無の依頼でタッグを組むべく一夏が接触する原作七巻より登場する娘だ。
(まあ、原作崩壊なんて今更か・・・・俺と姉さんがいる時点で原作崩壊もいいところだしな)
突然だが雪兎には年の離れた雪菜という姉がいる。雪菜は主に原作六巻などでお馴染みのキャノンボールファスト等のレース系競技で活躍する選手で二つ名は「
(打鉄弐式にも興味が無いと言ったら嘘になるしな)
このメカオタクからすれば未知のメカに触れられるというだけで手伝う理由としては十分なのだが。
(えーっと更識簪はどこかなっと)
とりあえず声をかけてみようと簪の姿を探すと整備室の隅で一人黙々と作業をする簪を見つけた。
簪side
「更識、簪さんで間違いない?」
「誰?」
突然後ろから話しかけられ私は警戒しつつも声のする方を向く。
「俺は1組の天野雪兎、訳あってIS学園に来た男子の一人だ」
話しかけてきたのはIS学園に二人だけいる男子の片割れだった。「1組」と聞き、少し顔をしかめるも
「あー、やっぱり一夏のやつのこと怒ってる?」
「・・・・悪いのは彼じゃない。悪いのは倉持技研」
「だよな。君の専用機引き受けておきながら一夏がIS使えるとわかった途端にそれを勝手に凍結しちまって一夏の専用機に掛かりきりになっちまうんだもんな」
その発言に私は少し驚いた。天野雪兎のことは織斑一夏のことと共に何度か噂は聞いていたが、まさか自身の友人のことより私のことを気遣う発言をしたからだ。
「まあ、その白式も中途半端にしやがるクソ共がこの国一番っていうんだから情けない」
しかも国の最高峰の研究機関をボロクソに言っているのだ。流石の私も「そこまで言うか」と倉持技研をほんの少しだけ擁護したい気分になった。
「技術者ってのは最後まで責任持って仕上げてこそなんだよ。それも出来んような半端者は国が許そうと俺が許さん」
そんな私の気持ちを読んだかのように彼は続けてそう言う。
「で、その打鉄弐式、完成できそうなのか?」
おそらく1組にいる
「貴方には関係ないこと!」
「悪い、聞き方が悪かったな」
ついキツイ言い方をしてしまったが、彼は特に気にした様子はない。
「君は
「それが何か?」
「どうしてとは聞かない。だけど、君一人じゃ危なっかしい。一技術者としても少しばかし見過ごせないな。あっ、そこの配線逆だぞ」
何故か彼はそんなことを言ってきた。
「本音に言われてやめさせにきたの?なら帰って!」
彼も他の人達と同じでお姉ちゃんと私を比べるんだと私は先程よりも強く拒絶するが、彼は全く引かなかった。それどころかとんでもないことを言い出した。
「それは出来ん相談だ。本音に頼まれたのは事実だが、理由については聞いてないし、さっきも言ったが一技術者としてこれは見過ごせないんだ。それに少しお詫びってのもある」
「お詫び?」
「倉持技研から未完成の白式を回収して完成させたのはうちの師匠でな。そんとき俺と師匠で倉持技研の連中に結構キツイこと言ってしまってな。君の打鉄弐式が凍結解除にならなかったのそれが理由じゃないかと・・・・」
「え?」
思わず素で返してしまった程だ。だが、驚くのはまだ早かった。
「あと、君の姉さんの楯無先輩だっけ?彼女のISも一人で組んでねぇぞ?あんな複雑なIS一人で組めんのなんて俺の師匠の篠ノ之束くらいだってぇの」
篠ノ之束。世界で知らぬ者はいないとされるISの開発者。その弟子だと彼は言ったのだ。そしてお姉ちゃんのIS【ミステリアス・レディ】がお姉ちゃん一人の手で作られたものではないと。
「篠ノ之博士の、弟子?」
「ああ、俺の専用機もあの人のお手製だぞ?まあ、基礎設計は俺がやったけどな」
「お姉ちゃん一人で、作ってない?」
「多分、三年の布仏虚先輩とかの手を借りたんじゃね?あの人も本音と同じで楯無先輩の従者かなんかだろ?」
それを聞いて私は何故か全身の力が抜けたような気がした。いや、実際に抜けたのだろう。今までお姉ちゃんが一人でやってきたと思っていたことがそうではないと言われて気が抜けてしまったのだ。
「大丈夫か?簪・・・・いきなり名前で呼んじゃ失礼か」
「ううん、大丈夫。お姉ちゃんと被るし」
「なら簪って呼ばせてもらうわ。代わりに俺のことは雪兎でいい」
「うん、雪兎」
力が抜けへたりこんでしまった私の手を取り、雪兎は少し嬉しそうな顔をしていた。
「でさ、簪。俺と友達になってくれねぇか?」
「どうして?」
「いや、友達を手伝うって大義名分があれば俺も
「ぷっ」
この時、私は久しぶりに笑った。そして私はこの変わった人・天野雪兎と友達になった。
なんか簪ちゃんがヒロインでよくね?状態に・・・・どうしてこうなった?
雪兎「ちょっとOHANASHIしようか、作者」
ひぃっ
次回予告
簪と友達になり打鉄弐式の完成を目指す雪兎。だが、雪兎が原作通りなことをするはずもなくまたしても自重しない行動に出る。
そして、クラス対抗戦に挑む一夏は鈴に勝つことができるのか!?
次回
「打鉄弐式とクラス対抗戦 兎、自重しない」