夢のため約束のため白球を追う   作:yamayama071308

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パスワード忘れたりしてました……申し訳ないです。


4球目 篠岡圭吾の過去

 

物心ついた頃から野球がとにかく好きで練習をたくさんした。その努力と姿勢のおかげか小学校5年生ながらレギュラーを取った日から指で数えられるほどしか三振をしなかった。その三振も温情の判定とかエンドランのボール球など。

中学1年生の時には軟式野球の強い私立の中学入学してからもっと上手くなりたいと思った。強豪校とあって中々の練習だったが篠岡にはこの練習がすぐに結果に結びついた。

 

中学の初めての春の大会は1年生で異例とも言えるレギュラーしかも3番バッター。その起用に応え、打率は4割代で勝ち上がり対戦した強豪校のエースからはホームランを放つ。

 

 

その大会は篠岡がチームの主役だった。自分の活躍はチームに刺激を与え続け快進撃を生んだ。

 

 

 

 

 

 

準決勝は普通の公立高校だった。先発のマウンドには背番号「11」の2年生ピッチャー。細身で身長もそんなに高くないピッチャーで、エースの3年生ピッチャーではない。

 

情報によるとこの左ピッチャーと3年生ピッチャーが2人で全ての試合で3失点以内抑えてきたと言うがこのチームはここまで組み合わせがよかったとかのマグレだろう。左だからピッチャーをやってる弱小の公立高校にありがちな話だ。

実際に対戦するまでは1.2番バッターは凡退こそしたが、はたから見たら特に球が特別速いとか凄い変化球とかがあった訳ではなかった。

 

自分に打順が回ってくる。

 

打席に向かった。

 

(なーんだ、普通の公立高校がここまで勝ち上がったんだからどうせならあのエースの球打ちたいな……まっツーアウトランナーなし、大きいの狙ってみるか……)

 

左打席で足場を固めいつものタイミングでバットでベースの両端を叩く。

 

 

バットをピッチャーの方向に向けてからゆっくりと自分の構えに入った。

 

 

ピッチャーがゆっくり振りかぶり足を上げるのを見て自分も足を上げタイミングを取る。

 

 

ピッチャーの腕が鋭く振られた。

 

 

スパーン!!

 

 

「ストライーク!」

 

 

 

 

審判のストライクコールが響く。

 

 

 

1.2番の2人にそれまでに投げてたストレートよりは少しだけ速さが違った。

 

 

1.2番バッターを見て油断したというのもありこの速さを想定してなかったから、身体が反応しなかった。

 

 

(ちょっと初見じゃ打てないな。俺には力を入れてきているけどこれが初球で良かった。秘密兵器みたいにこの球を隠してたってことは俺にはバンバン使ってくる。次はそのタイミングで……)

 

 

次のボールはさっきより早めにタイミングを取った。

 

しかし思惑とは外れスライダーを投げてきた。ストライク。カウント0-2。

 

 

3球目はアウトロー一杯に最初に投げてた遅めのストレート。タイミングが少し合わなかったがファールにした。カウント変わらず0-2。

 

 

篠岡はすぐに打席には立たず靴紐を直すフリをして少し間を置いた。

 

 

 

(いけねーいけねー、冷静になれって!速い球投げたからって速い球ばかり投げてくるってもんじゃないな。速い球を意識させて遅い球で勝負しようって計算されてるかもな。けど速いストレート、遅いストレート、スライダー。全部対応出来ないぐらいものすごいボールってわけじゃない……)

 

「すみません、もう大丈夫です」

 

と審判に告げて打席に入った。

 

 

 

(次は速いストレートにタイミングを合わせつつ遅い球さタメて打とう。ご丁寧に俺の打順まで隠してた速いストレート打った方が相手もダメージも大きいだろうしな)

 

 

 

 

ピッチャーが振りかぶっり、足でタメを作り腕が鋭く振られた。リリースされた瞬間に自分の勝ちを確信した。

 

 

 

 

 

(速いストレート!タイミングもバッチリ!けど低めだから引っ掛けないようにして……!)

 

 

 

芯で捉えたと思ったその時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バットを嘲笑うようにスルスルっとボールが逃げていった。

 

 

 

 

 

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4打席4三振

 

 

人生で初めて1日4つも三振をしてしまった。しかも同じ投手に。

 

後2回からはエースピッチャーとポジションを入れ替えたが、自分の打席の度にあの左ピッチャーがマウンドに上がった。

 

 

1打席目の三振した高速スライダーを意識しすぎて2打席目はストレートに手が出なかった。

 

 

3.4打席は得点圏にランナーを置いた場面だった。しかし、得点圏でギアを入れたのか最初に見た速いストレートよりも速いストレートに対応出来ずあえなく三振。

 

 

ここまで勝ち上がってきた自分の打席が得点圏に回ってきて自分が打つという野球。その野球が出来なかった。その焦りからか最終回に2つのエラーが絡み3失点で負けたのだ。

 

 

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