コズミックプリキュア   作:k-suke

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第5話 「容疑者 遠藤博士!? (前編)」

 

 

 

 

甲子市 童夢小学校 休み時間

 

 

 

 

男子生徒「なあなあ。見たかよ、こないだのニュース」

 

男子生徒「見た見た。コズミックプリキュアだろ」

 

男子生徒「突然現れて悪者をあっという間にやっつけちまったもんな。かっこいいよなぁ」

 

男子生徒「ん? 豪、お前何にやけてんだよ」

 

 

豪「あ、いや別に」

 

クラスメイト達がコズミックプリキュアのことを褒め称えるのを聞いて、豪は実に気分が良かった。

 

 

豪(くぅ〜色々教えてやりたいなぁ)

 

秘密にしなければならないとわかっていてもムズムズする口を抑えるのに豪は苦労していた。

 

 

 

 

一方

 

 

 

 

女子生徒「あのプリキュアって人達、美人な上強かったね」

 

女子生徒「憧れちゃうわよね」

 

ラン「う、うん。そうだよね」

 

 

ラン(褒めてもらえるのは嬉しいけど、秘密守るのが大変だわ。でもばれちゃったら大騒ぎになっちゃって、生活が大変だし…)

 

ランの方もランの方で色々と周りに話を合わせるのに苦労していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲子市内 交番

 

 

 

ここは市内のとある交番であり、ここからは遠藤平和科学研究所が一望できた。

 

そこに一台のパトカーが到着すると、当番の警察官が敬礼とともに出迎えた。

 

 

警官「あっ、河内警部。ご苦労様です」

 

河内「うむ、ご苦労。どうだ様子は?」

 

 

警官「様子と言いますと…?」

 

河内「あの研究所のことだ。何か最近変わったことはないか?」

 

河内警部は遠藤平和科学研究所を見上げながらそう尋ねた。

 

 

警官「いえ、特段変わったことは…。まぁ強いて言うならお手伝いが入ったぐらいですかね」

 

河内「お手伝い?」

 

警官「ええ、ショートカットの女の子とポニーテールの女の子です。二人ともメガネをかけたちょっと可愛い子です。 でもあそこが何か…」

 

 

河内警部は厳しい目で研究所を睨みながらその疑問に答えた。

 

 

河内「覚えてるだろう?  5年前に起きた連続銀行襲撃事件を。白昼堂々次々に銀行が襲われて合計30億円近い金が盗まれた。そしてその際に警官が一人殉職した。俺はな、あそこのジジイがその事件に関与していると睨んでるんだ」

 

警官「え? 一体何の根拠があってですか?」

 

 

河内「俺の勘だ。ただ実際あの事件の直後だろう、あの研究所ができたのもな」

 

警官「はぁ、そう言われれば…」

 

河内「いつか、尻尾をつかんでやろうと思ってるんだ。邪魔したな」

 

そう言って河内警部はパトカーを研究所の方へと走らせていった。

 

 

警官「…河内警部、まだあの事件を引きずってるのか。無理もないな、殉職したのがあの人の尊敬してた先輩なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

 

 

近くにパトカーを止めた河内警部は、忍び込むように研究所の敷地内へと入っていった。

 

 

木陰に身を隠し、茂みに隠れつつ近づいていき、近くの窓を覗こうと顔を上げると驚きの声を発した。

 

河内「どぅわぁあ!! な! な!」

 

 

 

ちょうど顔を上げたところに、たまたま茂みの反対側にいた厚底のメガネをかけたリーフの顔があったためである。

 

 

リーフ「あ、いってらっしゃいませ。何かご用でしょうか」

 

河内「ご用って… ああ君か、ここに入ったお手伝いってのは」

 

 

その言葉にリーフは明るく頷いた。

 

リーフ「はい、リーフと言います。あなたはどなたでしょうか」

 

河内「リーフか…俺は警視庁の河内というものだ」

 

 

リーフ「ケーシチョー…何をするところですか?」

 

河内「何って…警察を知らんのか? 人のものを盗んだりする悪いやつ、いわゆる泥棒や強盗を捕まえたりするのが俺の仕事だ」

 

その言葉にリーフは満面の笑みを浮かべた。

 

リーフ「わぁ、そうなんですか。あなたも正しいことのために頑張っている素晴らしい人なんですね」

 

 

そのセリフに悪い気のしなかった河内警部は少し照れながら尋ねた。

 

河内「まぁなぁに、それほどでもないさ。しかし、お嬢ちゃんみたいな可愛い女の子がこんなところで何をしてるのかな?」

 

 

リーフ「はい、お嬢ちゃんみたいな可愛い女の子はこんなところで勉強してるところです」

 

河内「あん? 勉強? こんなところで?」

 

その言葉に怪訝そうな顔をした。

 

 

 

するとリーフは近くをひらひらと飛んでいたチョウチョを指差して尋ねた。

 

リーフ「はい、これがチューリップですよね?」

 

河内「は? チューリップ?」

 

 

続けてリーフは跪くと、足元のスミレを同じように指差して尋ねた。

 

リーフ「これが、雀ですよね」

 

河内「はぁ?」

 

河内警部が戸惑っていると、リーフの言動に気づいたか、窓越しにリーフと同じようなメガネをかけたダイーダが話しかけてきた。

 

 

 

ダイーダ「リーフ、まだそんなこと言って。早く物の名前ぐらい覚えなさい」

 

リーフ「あれ、そうじゃなかったっけ?」

 

 

ダイーダ「違うわよ。その飛んでるのがトンボ。下に生えてる花がヒマワリよ。ちゃんと覚えときなさい」

 

 

河内警部は目の前でとんちんかんな会話をしている二人にしばらく開いた口が塞がらなかったが、気を取り直してダイーダにそう尋ねた。

 

 

河内「あ〜、オホン。君もここのお手伝いかね?」

 

 

ダイーダ「はい、ダイーダと言います。リーフこの人は?」

 

リーフ「あ、コーチさんっていうケーシチョーだって」

 

ダイーダ「ふーん。で、何しに来たのこの人」

 

 

 

 

河内「あぁ、ちょっと色々聞きたいことがあってね。 二人ともここのジジイが最近何をしてるか知ってるかな?」

 

 

リーフ「ジジイ? ジジイってあの分厚い青いズボンのことだっけ?」

 

ダイーダ「全く、地面が揺れる自然現象の事よ」

 

河内「あーもう! 遠藤博士のことだ!!」

 

先ほどから漫才のような会話を繰り返している二人に少しイライラした河内警部はそう怒鳴った。

 

 

ダイーダ「どういうって…最近じゃ私達にこのメガネってのをかけろって言ったよね」

 

リーフ「うん。研究所の一員らしく見えるし、カムフラージュにもなるって言ってた」

 

厚底の眼鏡をいじりながら答えたそう二人だったが、その言葉に河内警部は敏感に反応した。

 

河内「カムフラージュだと? おい、それはどういう意味だ!!」

 

 

 

 

 

 

ラン「リーフさん、ダイーダさん。そんなデカの質問に答える必要なんてないわよ!!」

 

河内警部が強い口調で尋ねた時、ちょうどランが豪とともに帰ってきて、毛嫌いするようにそう叫んだ。

 

リーフ「あっ、ランちゃんおかえり…でいいんだよね?」

 

ダイーダ「そうよ。豪、いらっしゃい」

 

 

 

河内「ったく、最近の子供は。大人に対しての口の聞き方をどう習っとる。河内警部と言えんのか」

 

自分をデカと呼んだランに対して、不満そうな口調で河内警部はつぶやいた。

 

 

 

ラン「ふん、何よ! 勝手に人の家の庭に忍び込んで! それじゃ泥棒と一緒じゃない!!」

 

 

そのセリフにリーフは首を傾げながら聞いた。

 

リーフ「ねぇ、泥棒って悪い人だよね。この人はそれを捕まえる人だって言ってたけど… この人本当は悪い人なの?」

 

ラン「そうよ。わるーい人!!」

 

 

そのランの言葉にダイーダも目つきと口調が変わり、窓から飛び出した。

 

ダイーダ「ちょっとリーフ、ダメじゃないそんな人と仲良く話してちゃ。ったく、ぼんやりしてるんだから」

 

 

河内「ちょっ、待て待て待て。人聞きの悪いことを言うな、俺はただちょっと調べ物を…」

 

 

雲行きが怪しくなってきたことに、河内警部は戸惑いながら言い訳を始めた。

 

 

 

その時、研究所の玄関が勢いよく開き、遠藤博士がチューブのようなものを両手に、歓喜の声とともに飛び出してきた。

 

 

遠藤「ついにやったぞ!! 見ろ見ろ、わしの新発明じゃ!!」

 

河内「ん? 出たな遠藤博士!」

 

 

遠藤「げっ!! お主は!! おっとっとっ」

 

予想外の人物がいた事に驚いた遠藤博士は躓いてしまい、持っていたチューブを放り投げてしまった。

 

 

豪「おっと」

 

そのうちの一本は豪の手の中に飛んでいき

 

 

河内「ん? なんだこりゃ、何か犯罪の匂いがするな」

 

もう一本はあろう事か、河内警部の手の中に飛んで行った。

 

河内警部はチューブの匂いを嗅ぎながらそうつぶやいた。

 

 

遠藤「こら返せ!! それは大事な試作品じゃ」

 

河内「試作品? 貴様、さてはこれを使ってまた銀行強盗を!!」

 

 

遠藤「バカモン!! そんな事は考えとらん!! ほら返せ!!  それは取り扱いを間違えると危険なものじゃ!!」

 

河内「なら、なおさら渡せるか!!」

 

 

 

追いかけっこをしている二人を眺めながら、リーフはなんとなく尋ねた。

 

 

リーフ「ねぇ、遠藤博士が何か悪い事したの?」

 

豪「じいちゃんがそんな事するわけないじゃないか」

 

ラン「そうよ、あのデカが変なのよ。言いがかりばっかりつけてきて」

 

 

憤慨している豪とランに対して、ダイーダは冷静な意見を述べてきた。

 

ダイーダ「でも、それにも何か理由があってのことじゃないかしら。あのコーチって人、ただ言いがかりをつけるような人間には思えないわ」

 

 

その意見に豪とランは迷わず反論した。

 

豪「でも、絶対じいちゃんは疑われなきゃならないことはやってないよ!!」

 

ラン「そうよダイーダさん。ちょっとドジだし変わってるけど私はおじいちゃんを信じてるわ!!」

 

 

そんな二人にダイーダも微笑みながら答えた。

 

ダイーダ「まぁ、わかってるけどね。でも遠藤博士もそうだけど、あのコーチって人もかなり純度の高いプラスエネルギーの持ち主だから、疑う気になれないだけ」

 

 

ラン「プラスエネルギー? マイナスエネルギーじゃなくて?」

 

 

リーフ「そう。純粋に平和や正義を願う心が生み出すエネルギーのこと。私達もここの研究所が出すそれに惹かれてきたの」

 

豪「へぇ、そうなんだ」

 

 

 

 

ダイーダ「でもあの二人、お互い悪人じゃないのに、どうして仲良くできないのかしら?」

 

 

豪「さぁ?」

 

ラン「それができれば、世の中はもっと平和なんでしょうけどね…」

 

ダイーダの素朴な疑問に、豪とランはため息まじりにつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

遠藤「こりゃ、いい加減にせんか!!」

 

河内「黙れ!! これは危険物として押収する!!」

 

そう叫んでチューブを持った手を勢いよく振り回した結果、力余ってチューブを握りつぶしてしまい、たまたまその先にあった木にチューブを持った手を叩きつけてしまった。

 

 

河内「ん? な、なんだ!? 手が取れなくなった!?」

 

そう、叩きつけた手が木にぴったりと張り付いてしまったのだ。

 

 

その様子を見ながら、遠藤博士は満足そうに頷いた。

 

遠藤「ふむ、完璧にひっついているようだな」

 

 

河内「おい!! これは一体なんなんだ!?」

 

遠藤「人の話を聞こうとせんからじゃ。それはわしが発明した新型の瞬間強力接着剤じゃ。既存のどんな接着剤よりもはるかに強力でな。一度つければ象が引っ張りあっても剥がせんぞ」

 

 

河内「なに? くそ、この!!」

 

河内警部は必死にあがいて手を剥がそうとしたが、遠藤博士の言葉通りビクともしなかった。

 

 

遠藤「まぁ、安心せい。さっき言ったが、それは試作品じゃ。接着力は弱めにしてあるからそのうち取れるじゃろう」

 

 

その言葉に河内警部は不安そうに尋ねた。

 

河内「おい、それはどのぐらいだ?」

 

遠藤「そうじゃのぉ…大体6時間ぐらいかの」

 

 

河内「6時間!? それまでこうしていろというのか!?」

 

 

ラン「ヘン、いい気味よ。天罰だわ」

 

大慌てしている河内警部を見て、ランはアカンベーをしながらそう言った。

 

 

遠藤「フフフ。さて、じゃまあ完成祝いに饅頭でも食うか」

 

豪・ラン「「わーい!!」」

 

 

河内「こらーっ!! 俺を放っていくのか!!」

 

そう叫ぶ河内警部を無視して、全員研究所の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

お茶を入れて饅頭を皆で頬張っている中(リーフとダイーダは食べれないが)、豪がふと尋ねた。

 

 

豪「ねぇ、一度聞いときたかったんだけどさ、パーフェクトってどんなやつなの?」

 

ラン「そういえばそうね。まだちゃんと聞いたことなかったわ」

 

 

その言葉に、リーフとダイーダはいつもと違う神妙な面持ちで語った。

 

 

リーフ「次元皇帝パーフェクト…、突然変異で生まれたマイナスエネルギーの塊みたいな奴よ」

 

ダイーダ「初めは私達もなんとか共存できないかって話し合いをしてたんだけど、てんでダメ。世界をマイナスエネルギーだけの暗黒の世にしないと気が済まないらしいの。 そりゃ私達だって、プラスエネルギーには満ちていてほしいけど、マイナスエネルギーが完全になくなっていいなんて思ってないわ」

 

 

豪「どうして? その方がいいんじゃないの?」

 

遠藤「いや、ダイーダの言うとおりじゃろう。マイナスエネルギーは確かに生命にとって決してよくないものじゃ。じゃが、毒が使いようによって薬になるように、マイナスエネルギーが完全になくなることは決していいことではない」

 

ラン「そうかしら?」

 

遠藤博士の言葉に、ランはいまいち納得しきれていないようであり、それを見たダイーダが話し始めた。

 

リーフ「そうよ。例えば遠藤博士が何か発明をする時、必ずなんでも成功するわけじゃないでしょ。失敗することもある。でもそれが却っていい方向に働いたり、次に向かって頑張ろうって思える力にもなる。そういうことよ」

 

 

ラン「なるほど、よくわかったわ」

 

遠藤「ほぅリーフ。よくわかっておるではないか」

 

リーフの言葉に気分をよくした遠藤博士だったが

 

ラン「でも失敗ばかりしていいってわけじゃありませんからね。リーフさんやダイーダさんの食費はかからないとはいえ家計が大変なんだから。 こないだいろいろ注文した研究資材だって、失敗の繰り返しですぐなくなっちゃったじゃない」

 

遠藤「ちぇっ、厳しいのう」

 

 

ランの厳しい一言に拗ねてしまった。

 

 

 

豪「ははは…。ねぇでもだとしたら、姉ちゃん達がプラスエネルギーに惹かれてここに来たみたいに、パーフェクトはマイナスエネルギーを出す悪い奴のところに行ってるってこと?」

 

 

リーフ「可能性はあるわね」

 

ダイーダ「ゴーロやファル… パーフェクトが産み出した手下だけど、あいつらが私達みたいにアンドロイドの体を持ってたところを見ると、まず間違いないでしょうね」

 

 

遠藤「そんな奴がいるとすれば世界にただ一人。Dr.フライだけじゃ!!」

 

 

リーフ・ダイーダ「「Dr.フライ?」」

 

 

 

 

 

 

 

海底 Dr.フライの秘密研究所

 

 

パーフェクト「Dr.フライ、次の策はあるのか?」

 

Dr.フライ「もちろんじゃ。この世の中は欠陥だらけじゃからのう。わしの頭脳を持ってすれば策など簡単に思いつく」

 

自信満々なDr.フライだったが、それを見るファルやゴーロの目は冷ややかだった。

 

 

ゴーロ「けっ、えっらそうに何様のつもりだ」

 

ファル「まぁそう言うな。パーフェクト様もおっしゃっていたが、我らはこの世界のことをよく知らん。そう言う意味であいつは都合のいい存在ということだ」

 

 

 

パーフェクト「ほう、して策とは?」

 

Dr.フライ「わしの価値を認めようともせなんだ愚かな人類を日干しにしてくれるのじゃ。根こそぎな」

 

 

そのセリフにパーフェクトはどこか不満げな声を漏らした。

 

パーフェクト「Dr.フライ、皆殺しはやめろ。奴隷として使える労働力がなくなると後々面倒だ」

 

Dr.フライ「安心せい、うじゃうじゃと無駄に増えとる使えぬ人間が死ぬだけじゃ。労働力に使える最低限の人数は残るじゃろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

 

リーフ「Dr.フライか…人間の中にもそんな奴がいるんだね」

 

ダイーダ「誰もかれもがいい人間ばっかりじゃない、か… わかってはいるけどちょっと複雑ね」

 

遠藤博士からDr.フライのことを聞き、リーフとダイーダは複雑な表情とともに、珍しく沈んでしまっていた。

 

ラン「でもおじいちゃん、その話本当なの? そんなひどい人がいるなんて信じられないわ」

 

 

遠藤「信じたくない気持ちはわかる。じゃがな、誰もそのことを知らんだけで、現実にDr.フライという男はおる。じゃがな、その野望を挫くために私等のような者もおるんじゃ」

 

 

そんな重い空気を切り裂くように、居間のマイナスエネルギー検知器が警報を発した。

 

 

遠藤「むう、言ったそばから。一体なんじゃ!?」

 

 

リーフ「待ってください、外で何か話し声がする」

 

ダイーダ「ええ、緊急事態って言ってるわ」

 

豪「えっ、何? 河内警部の声しか聞こえないよ」

 

豪は耳を澄ましてみたが河内警部の怒鳴り声以外、声らしきものは何も聞こえなかった。

 

 

遠藤「この二人の耳は特別製じゃからな。どこから聞こえる?」

 

リーフ「外の…あのパカートだっけ? あの中から」

 

リーフはそう言いながら外を指差した。

 

 

ラン「パトカーね。で、何て言ってるの?」

 

ダイーダ「緊急事態発生…中央流通センターが襲撃…各員は直ちに現地へと…だって」

 

それを聞いて遠藤博士の顔色が変わった。

 

 

遠藤「中央流通センター? いかん!! あそこは最大級の流通センターじゃ。物資の流通が滞れば、日本中が大パニックになる!! リーフ、ダイーダ、直ちに出動…っと、今三冠号を発進させるのはまずいな」

 

豪「あっ、そっか庭に河内警部がいるんだ…」

 

ラン「んもう、どこまでも迷惑な人ね」

 

 

庭で動けなくなっている河内警部のことを思い出し、皆頭を抱えた。

 

 

ダイーダ「大丈夫です。三冠号がなくても現場に至急向かえます」

 

リーフ「うん、行こう豪くん」

 

 

豪「えっ? 行くってまさか走って?」

 

 

 

 

 

河内「くそう!! 携帯はパトカーの中に置いてきたし、誰か俺を助けようというやつはおらんのか!!」

 

 

どんなにあがいても木に張り付いたままビクともしない手を前に、河内警部がそう叫んでいた。

 

そして、そんな横をリーフ達三人が駆け抜けていった。

 

河内「おいこら、お前ら! 俺を無視するな、剥がすのを手伝え!!」

 

 

そんな河内警部の叫びを無視して、三人はパトカーへと駆け寄った。

 

 

そのままリーフとダイーダがパトカーの扉に手を当てると、電子ロックが解除され、パトカーのエンジンがかかった。

 

これはダイーダとリーフの持つ電子機器へのハイパーリンク機能である。

 

本来は、災害時に特殊な電子ロックがかかってしまった扉を強制的に解錠したり、動かなくなったプログラムを強制起動させたりするのに使うものである。

 

 

ダイーダ「よし、これで動くわ」

 

リーフ「行こう! さぁ乗って!!」

 

豪「えっ!? ちょっと待っ!!」

 

戸惑う豪を無理やりパトカーに押し込むと、ダイーダはパトカーを発進させた。

 

 

 

ダイーダ「飛ばすわよ!!」

 

リーフ「えーっと、確かこれをつけると早く走れるんだよね」

 

ダイーダの声に応えるように、リーフはパトカーのサイレンのスイッチを入れた。

 

 

河内「こらーっ!! パトカー泥棒!!」

 

河内警部の叫びをよそに、三人を乗せたパトカーはサイレン音とともに猛スピードで走り去っていった。

 

 

その車内では、リーフとダイーダを豪が引きつった顔で注意していた。

 

豪「二人ともまずいよ。免許もなしに、しかも勝手にパトカー動かしちゃ」

 

 

その言葉に二人はキョトンとした表情を浮かべていた。

 

ダイーダ「そうなの?」

 

リーフ「悪いことに使うんじゃないのにいけないことなの?」

 

 

 

 

 

ラン「知〜らない…」

 

遠藤「あいつらには、一般常識の他に道徳や倫理も教えにゃ…」

 

遠藤博士とランもまた、その光景を引きつった顔で見送った。

 

 

 

第5話  終

 


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