Dr.フライ「さてと… まずは手始めに、このデビルの塔から暗黒エネルギーを吸収してこの地球を暗黒の世界に変えてやるとするか」
パーフェクトを謀略で葬り去り、意趣返しを行うとともに自身の力を増大させたDr.フライは満足そうに笑みを浮かべた。
が
直後に足元で大爆発が起こり、大きく吹き飛ばされた。
Dr.フライ「ゲホゲホ。なんじゃ一体?」
爆煙に咳き込みながら立ち上がると、そこにはデスサイズを構えたデッドがいた。
Dr.フライ「き、貴様。いきなり何の真似じゃ!?」
デッドを睨みつけたDr.フライだったが、デッドはデスサイズを構えると冷たく宣告した。
デッド「破壊する。ターゲット、Dr.フライ」
Dr.フライ「なぁっ!?」
その宣告に驚愕したDr.フライだったが、避ける暇もなくデッドのデスサイズが振るわれ、真っ二つに切り裂かれた。
Dr.フライ「ギィエエエエ!!!」
思わず悲鳴をあげたDr.フライだったが、特に痛みを感じなかったことでハッと気がついた。
Dr.フライ「そ、そうじゃ。わしは不老不死なんじゃ。この程度で…」
意識を集中させると、真っ二つにされたDr.フライの体は逆回しのように再生していった。
しかし、息つく間もなくデッドの猛烈なラッシュが浴びせられ、Dr.フライはメタメタにされた。
なまじダメージこそないものの、それがかえってデッドの攻撃が止まない理由になってしまった。
Dr.フライ「い、一体… ゲブ!! ど、どういう… ゴベ!! つもりじゃ… ガバァッ!!! 説明… ブゴォ!! せんか… ブギャア!!!」
Dr.フライ自身の身体能力は老人のそれでしかない。
デッドのパワーで殴られまくったため、全身が複雑骨折を起こし、文字通りぐにゃぐにゃのひどい状態になってしまった。
遠くなる意識を必死に奮い立たせ、大きく殴り飛ばされながらも尋ねたDr.フライに対して、デッドは淡々と言い放った。
デッド「回答する。コズミックプリキュア、およびそれを破壊したガラクタ人形が破壊された今、次に破壊すべきは貴様である」
Dr.フライ「な!? 貴様、狂ったか!?」
デッド「否定する。私は正常だ。第一、第二目標が消滅した今、私の本来の役割である犯罪者の鎮圧を行っているだけである」
Dr.フライ「ば、バカを言うな!! 落ち着け、貴様にはわしの片腕としてこの暗黒世界で働いてもらうつもりで…」
地面を這いずりながら必死に見苦しいことを並べ立てたDr.フライだったが、当のデッドにはそんなものに興味はなかった。
デッド「破壊する。ターゲット、Dr.フライ。 貴様は永遠に死なないのならばかえって都合がいい。 貴様を永遠に破壊し続けることで私の存在意義となる」
その宣告とともに、右手のマシンガンが火を吹き、Dr.フライを蜂の巣にした。
Dr.フライ「ギャアアアア!!!」
普通なら一瞬で肉塊に変わるところであるが、悲しいかなDr.フライは再生してしまい、さらなる攻撃を受けることになった。
Dr.フライ「よ、よせ!! 手荒な真似はもう…」
必死に逃げようとしたもののデッドに頭をつかまれてしまい、そのまま持ち上げられた。
Dr.フライ「エァアアアアア!!!」
そして耳障りのする音とともに、デッドはDr.フライの頭を粉々に握りつぶしてしまった。
頭部が四散するも、その飛び散ったものから黒い靄のようなものが溢れ出て、再びDr.フライは蘇ってしまった。
Dr.フライ「ひぎ… ヒギィ…」
恐怖で顔を引きつらせながらDr.フライはなんとかして逃れる方法がないかを必死に考えていた。
這いつくばるようにして少しでも遠くに離れんとしたところを、上から踏み潰されてしまい、再び「殺される」ことを自覚した時、救いの音が聞こえてきた。
三冠号が飛び立っていく光景が、彼らの目に映ったのである。
デッド「!! コズミックプリキュア…」
Dr.フライ「ま、待て!! 見てみろ。連中は、コズミックプリキュアは死んでいないぞ。まず先にあいつらを破壊しろー!!!」
必死にそう叫んだDr.フライだったが、すでにデッドにとって「それ」は眼中になく、邪魔なゴミのように蹴飛ばすとすぐさま三冠号を追って飛び立った。
Dr.フライ「ごわぁああああ!!」
デッドのパワーで蹴り飛ばされたDr.フライは富士の斜面を転がるように落下していき、麓に着いた時にようやく止まったものの、全身はボロボロになっていた。
Dr.フライ「ゆ、ゆるさんぞ…あのガラクタが!! この次元皇帝をここまでコケにしおって…」
怒りに満ちたその言葉とともに、Dr.フライの全身から黒い靄のようなものが溢れ出て、それが次々と人の形のようになっていった。
Dr.フライ「行け、我がしもべキングマイナーどもよ。コズミックプリキュアを、キュア・デッドを破壊するのじゃ!!」
十数分前
リーフ「う〜、もっとたくさんの人を連れて行きたいけど…」
ダイーダ「これ以上は三冠号の救助ブロックに乗せられないわ。もうすぐ連中も気づくでしょうし…」
警備が手薄になったこともあり、奴隷として働かされていた人々を可能な限り救助したものの、まだまだ大量の人々が捕らえられているのがわかっているため、二人は心を痛めていた。
河内「気持ちはわかるが、今こうやって助けられる人々がいるんだ。自分達に自信を持つんだ!!」
リーフ「警部さん…」
ダイーダ「ありがとうございます。さっ、警部も早く」
その檄に勇気づけられたダイーダは、一緒に来るように促したが、河内警部は黙って首を横に振った。
河内「いや、俺はここに残る」
リーフ「えっ? なんでですか?」
ダイーダ「リーフの言う通りです。危険すぎます」
驚いた二人に、河内警部は決意の表情で告げた。
河内「俺は警察官だ。そんな俺が優先して逃げれば人々に不安を与えることになる。そんなことになれば、作戦がパァだ」
ダイーダ「だったら、私達も!!」
河内「馬鹿野郎!! お前達にはお前達にしかできないことがあるはずだ!! 残された人達に希望を与えるためにも俺は残る。そしてお前達はやるべきことをやるんだ!!」
その言葉に、ダイーダとリーフは苦悶の表情で頷くと断腸の思いで三冠号に乗り込み発進させた。
人々を乗せて飛び立った三冠号を敬礼とともに見送りながら、河内警部は呟いた。
河内「ふっ、かっこつけすぎたかもしれんな。しかし、俺にはこの程度のことしかできん以上、全力ですべきことをするだけだ」
そうして、決意の表情とともに富士山麓へと来た道を引き返して行った。
現在
救助した人々を乗せた三冠号は、一路甲子市内を目指していた。
リーフ「ダイーダちゃん、ところでこの人達どこに連れて行ったらいいのかな?」
ダイーダ「どこって… うーんそれはやっぱり… !! レーダーに反応!?」
リーフ「えっ!? でもこのサイズの飛行機なんて… !!!!」
人間大のサイズの飛行物体が接近していることに、一瞬首をかしげたリーフだったが、即座にその対象に思い当たった。
そしてそれを裏付けるかのように、全チャンネル通信で三冠号に通信が入ってきた。
デッド『要求する。コズミックプリキュア、私と勝負をしろ。さもなくばその飛行機を撃墜する』
そのいつもと違った脅迫めいた要求に、リーフは戸惑った。
リーフ「どうしたんだろ? いつもとなんか違うよ?」
ダイーダ「そうね。でも今三冠号を撃墜されるわけにはいかないわ」
ダイーダもデッドの言動に戸惑いながらも、現実的な判断を下し、外部スピーカーでデッドに呼びかけた。
ダイーダ「わかったわ、勝負してあげる。その代わり三冠号には手出ししないで。多くの人が乗ってるのよ」
それを聞いたデッドは、二つ返事で了承した。
デッド『了解した。約束する。私と勝負しろ』
その通信を聞いたリーフとダイーダは、三冠号を自動操縦に切り替え遠藤平和科学研究所に向かうようにセットした。
リーフ「これでよし…と」
ダイーダ「よし、行くわよ」
二人は頷き合うと、三冠号のハッチを開け、トンボを切って飛び降りた。
リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」
その瞬間、二人の体は光に包まれ、とある街中に着地した時には姿が大きく変わっていた。
ショートカットだったリーフは、ボリュームのある濃いピンクの髪に変化し、着用している服も、ごく普通の服からフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものになっていた。
ダイーダのポニーテールは、一本から五本にまで増え、背中にかかるかかからないかだったそれも、腰まで伸びて金色になっていた。
そしてリーフ同様のデザインの純白を基調にしたフリルのついたドレスを着用していた。
そして目の前に降り立ってきたデッドを見つめると二人は名乗りをあげた。
リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」
ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」
リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」
変身した二人の姿を認めたデッドは、嬉々としたようにデスサイズを振りかざして宣言した。
デッド「破壊する。最優先ターゲット、コズミックプリキュア」
デスサイズを構えたデッドが、飛びかかろうとしたまさにその瞬間、三人の四方八方からキングマイナーが襲いかかってきた。
それを見たデッドはイラついたように顔を歪め、目の前のコズミックプリキュアに背を向けて、キングマイナーたちに向かってデスサイズを振るった。
デッド「警告する!! 勝負の邪魔をするな!!」
右手のマシンガンを放ち、デッドは襲い来るキングマイナーを片っ端から掃討していった。
リリーフ「チェンジハンド・タイプブルー!! エレキ光線連続発射!!」
ダイダー「チェンジハンド・タイプグリーン!! 超高温プラズマ火炎、超低温冷凍ガス、同時発射!!」
この二人もまた、そんなデッドの背中から飛び出し、マルチハンドを換装してキングマイナーたちを蹴散らしていった。
リリーフとダイダー、そしてデッドは背中合わせになりながら声を掛け合った。
リリーフ「デッド、無理しちゃダメだよ。あなたに何かあったらランちゃんが、豪くんが悲しむから」
ダイダー「あなたはこの世界の人が作った、この世界の希望の一つでもあるの。だから絶対に死んじゃダメ」
デッド「了承した。さらに要求する。貴様達も破壊されるな。貴様達を破壊するのは私だ」
短い会話を交わすと、デッドとコズミックプリキュアはそれぞれ別々の方向にいるキングマイナーに向かって戦い始めた。
リリーフ「くっ。こいつら、マイナーよりマイナスエネルギーが多いよ。 それに倒しても、その事が新しいこいつらを生み出すエネルギーになってる」
ダイダー「踏ん張りなさい!! 身体能力はマイナーと大して変わらないわ。それに河内警部の言った通り私達はここで負けるわけにいかない!!」
確かに、ダイダーの言う通りキングマイナーの能力はマイナーと変わらないが、倒した端から次々と湧いて出てくるため、数に限りのあるマイナーと戦うより、苦戦していた。
リリーフ「ええい、こうなったら… ライナージェーット!!」
これではきりがないと判断したリリーフは、ライナージェットを召喚した。
リリーフ「ライナージェット、カノンモードスタンバイ!!」
ダイダー「ターゲットロック!! プラスエネルギーチャージ!!」
飛来したライナージェットをカノンモードで保持すると、そのまま大ジャンプして距離を取り、地上に群がっているキングマイナーの大群に照準をセットし、自分達のプラスエネルギーをチャージしていった。
リリーフ・ダイダー「「プリキュア・ウォークオフ・ブラスター!! ファイヤー!!!!」」
その掛け声とともにライナージェットから光の奔流とでもいうかのような眩しくそして温かいエネルギー波が発射され、地上を埋め尽くしていたキングマイナーの大群は跡形もなく浄化された。
一方、二人とは離れた場所で戦っていたデッドだったが、こちらは地力の差かさほど苦戦らしい苦戦はしておらず、ほぼ一方的にキングマイナーを叩きのめしていた。
が
デッド「!!! 活動時間限界、強制スリープまであと30秒。が…」
そうしている間にも、次から次へとキングマイナーは湧いて出てきており、とてもではないが退避することは不可能であった。
そして、ついにタイムアップとなりデッドは動きが止まってしまった。
それを狙って、キングマイナーは一斉にデッドに飛びかかり組みついた。
スリープ状態に陥る寸前、デッドにDr.フライからの最後通牒とでもいうかのような言葉が、キングマイナーを通して伝えられた。
Dr.フライ『パーフェクトが消滅した今、貴様の存在価値などない。わしに従うならば生かしておいてもいいと思ったが、逆らうならば消えてもらう』
デッド「何!?」
その言葉と同時にデッドに組みついたキングマイナーは黒く輝き始めた。
Dr.フライ『とはいえ、生半可なことでは貴様は破壊できそうもないからな。他の次元世界へ永久追放じゃ』
Dr.フライの高笑いとともに、デッドの体は彼女を取り囲んだキングマイナー共々薄くなり始めた。
Dr.フライ『そいつらが貴様を別の次元へと誘う案内人じゃ。次元のさすらい人として永遠にさまよい続けるがよい。わしに逆らった報いじゃ!!!』
デッド「!!!!」
リリーフ「デッド!!!」
ダイーダ「くっ、今行くわ!!」
突如響いてきたDr.フライの声に、ライナージェットで慌てて駆け付けたこの二人だったが、間に合わなかった。
デッド「宣告する。コズミックプリキュア、私はいずれ必ず戻って来る。プリキュアを破壊することが、私の宿命だからな」
その宣告を最後に、デッドの姿は消えていった。
リリーフ「あ…あ…」
ダイダー「Dr.フライ!!!」
目の前でデッドを失いリリーフは何も言えず、ダイダーは激昂したが、そんなことは御構い無しというように、再びキングマイナーの大群が襲いかかってきた。
リリーフ「うそ!? また!?」
ダイダー「し、仕方ない。一旦引くわよ!!」
先ほどからの戦いでかなり消耗している。
それに今戦う理由は感情論以外もうない。
そのため、ダイダーは現実的な判断を優先させて、ライナージェットをサーフィンのように操り、攻撃を受けつつもなんとか戦線を離脱した。
遠藤平和科学研究所
攻撃を受けて墜落寸前になりながらも、かろうじてライナージェットで帰還したリーフとダイーダを研究所の一同は出迎えた。
遠藤「おお帰ったか。しかしお主ら三冠号を自動操縦でここに誘導せんでもいいじゃろ!! 救出された人がここの秘密をしゃべりでもしたら…」
なにか言いかけた遠藤博士だったが、皆の声に遮られてしまった。
京香「リーフさん、ダイーダさん、大丈夫だった?」
節子「心配したのよ、三人だけで行くっていうから。 ってあれ? 警部さんは?」
節子の問いかけに、ダイーダは真剣な面持ちで答えた。
ダイーダ「河内警部は、現場に残りました… 捕まった人達の支えになるって…」
リーフ「それと、ランちゃん豪くんごめんね。デッドを四季ゆうさんを助けられなかった…」
沈んだ表情でボソボソと呟いたリーフに、ランと豪もショックを受けつつも何も言えなかった。
豪「そうか…」
ラン「…ありがとう。私のわがまま最後まで聞いてもらって…」
そんな中、研究所の中で大爆発が起き、皆が慌てて飛び込むと居間に備え付けてあったマイナスエネルギー検知器が、バラバラになってしまっていた。
遠藤「こ、これは!? このマイナスエネルギー量は尋常ではないぞ!!」
ラン「見て、テレビ!!」
つけっぱなしだったテレビを見ると、そこにはDr.フライがアップで映っていた。
Dr.フライ『愚かな人類諸君。 わしは黄泉の国から舞い戻った大天才にして、真の次元皇帝となるDr.フライじゃ。 間もなくこの世界は暗黒に満ちた世界となる。 そして諸君らには暗黒と絶望の未来をプレゼントしよう』
遠藤「なんじゃとぉ!?」
Dr.フライ『この大天才が自称次元皇帝だったパーフェクトの力を得て、真の次元皇帝となった今、もはやそれ以外の未来が訪れることはない。 せいぜい最後の時間を楽しむが良い』
高笑いをするDr.フライを見てリーフとダイーダは最悪の事態を悟った。
リーフ「まさか… パーフェクトの力を吸収したってこと? それじゃあもうゴーロにファル、パーフェクトは…」
ダイーダ「そうだとするとまずいわ。あいつ元々がメイジャーに限りなく近い存在だから、理性的な行動をとり続けることにも限界があるはずよ。そうなったら…」
遠藤「諦めるのはまだ早い!! わしの今作っとる最終兵器が完成すればまだ可能性はある。すまんがみんな協力してくれい」
遠藤博士の言葉に、皆の決意は固まった。
豪「もちろん!!」
ラン「手伝うわよ、このまま終わってたまるもんですか!!」
京香「お手伝いします。一つでも多くの命を救うために」
節子「私だって!!」
リーフ「すごい、みんなが一つになっていく…」
ダイーダ「負けてられないわね。私たちも」
第51話 終