コズミックプリキュア   作:k-suke

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第50話 「爆誕!! 次元皇帝 (前編)」

 

 

 

 

 

 

突然発生した大爆発に、マイナー達は何事かとぞろぞろと集まってきており、異変を察知したゴーロとファルも飛んできた。

 

 

 

 

 

そこに広がる光景に驚きつつも、地面に転がっているものを見た二人は静かに肩を震わせ始め、やがて高笑いを始めた。

 

 

ゴーロ「ガーハッハッハッ!!! ざまあみろプリキュアども!! 仕掛けておいた地雷に引っかかったな。木っ端微塵になりやがった」

 

ゴーロは顔の半分がズタズタになっているダイダーの顔を踏みにじりながら実に気分がよさそうだった。

 

 

 

ファル「ふっ。これだけバラバラになれば本体であるあいつらもただでは済むまい。これで邪魔者はこの世界から消えた。あとはパーフェクト様がこの世界を暗黒に染めるのを待つだけだ」

 

ファルもまた、リリーフの首をサッカーボールのように蹴り飛ばすともはや憂はないとばかりに暗黒の未来を夢想していた。

 

 

 

 

〜♪〜♫〜♪〜〜♪〜♫〜♪〜♫〜♫〜♪〜♪〜♪〜

 

 

ファル「!! この音は!!」

 

そんな空気の中、突如として聞こえてきた冷たくも美しいメロディーにファルは苦々しい顔をした。

 

ゴーロ「くそっ!! どこにいやがるあの女!!」

 

憎々しげに辺りを見回していると何かが猛スピードで懐に飛び込んできてゴーロは蹴り飛ばされた。

 

 

ゴーロ「ぐはっ!! てっめぇ…」

 

 

殺意に満ち満ちた目で自分を蹴り飛ばした存在 四季ゆうを睨みつけていたゴーロだが、当のゆうもまたどこか怒りに満ちたような目で二人を睨みつけていた。

 

 

 

ゆう「…コズミックプリキュアは私の叔母であり標的だった。奴らとの戦いだけが私の存在価値だった」

 

 

ファル「だからなんだ!! 何が言いたい!?」

 

 

ゆう「そのコズミックプリキュアを破壊した以上、貴様達に代わりに勝負してもらう」

 

 

ゴーロ「何ぃ!?」

 

 

突然の宣告に一瞬戸惑ったゴーロだが、すぐに好都合とばかりにニヤリと笑った。

 

 

ゴーロ「まぁいい、ちょうど貴様も用済みになったところだ。こいつらみたいに粉々にしてやるぜ!!」

 

ファル「バカなやつだ。素直にパーフェクト様に従っていればよかったものを」

 

 

そんな二人を鼻で笑うようにゆうは告げた。

 

ゆう「嘲笑する。貴様らがプリキュアを倒したわけではない。それでハッタリのつもりか」

 

 

ゴーロ「黙れ!! もう遠慮はしねぇぞ!! やれマイナー!!」

 

 

イラついたようなゴーロの命令に、マイナー達は一斉にゆうに向かって飛びかかっていった。

 

 

 

 

 

しかし、まさに瞬殺というようにマイナーはゆうに叩きのめされていた。

 

 

 

ファル「なあっ!?」

 

どうやって倒したのかすらわからないほどに、あっけなく全滅してしまったマイナーを見て、驚愕しているファルに対してゆうは淡々と告げた。

 

 

ゆう「質問する。こんなものが何かの役に立つとでも思ったのか?」

 

 

 

ゴーロ「ぐぅっ… えぇい雑魚どもが!! こうなりゃ俺の手でテメェをぶち壊してやる!!」

 

ファル「ああ。貴様にはさんざん煮え湯を飲まされてきたからな!! 礼をさせてもらう」

 

 

小馬鹿にしたようなゆうの言葉に、ゴーロとファル完全に戦闘態勢に入っていた。

 

それを見て、ゆうは左手を親指・人差し指・中指の三本を立てて前に突き出した。

 

ゆう「チェインジ!!」

 

 

そして突き出した左手の指を立てたまま、手の甲を内向きにして顔の前へと横向きに持って行き、人差し指と中指の間から赤い右目を光らせた。

 

ゆう「スイッチ・オン!!」

 

 

次の瞬間、黒い電流のようなものが火花をあげてゆうの全身を走り、一瞬ののちにその姿は変わっていた。

 

 

彼女の着ていた黒いスーツは、フリルのない落ち着いたデザインのロングスカートの黒一色のドレスに変わっており、同じく黒一色の肘まである手袋とブーツを着用していた。

 

 

デッド「バトルスタイルコードネーム、キュア・デッド。破壊する。ターゲット、ファル、ゴーロ」

 

 

 

ゴーロ「しゃらくせえ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方

 

 

河内「くらえ!!」

 

河内警部はアンチマイナーガンを使って、警備の手薄になったところにいるマイナーを倒して潜入していた。

 

 

河内「よし、あの爆発でうまく連中の気は引けたみたいだな。じゃあ先に進むとするか」

 

 

ダイーダ「ええ」

 

リーフ「うん」

 

 

河内「にしても、ただのガラクタがこうまで役に立つとはな」

 

リーフ「うん。私も驚いちゃったよ」

 

 

ダイーダ「あまり気を抜かないほうがいいわ、時間稼ぎには変わりないもの。早く捕まってる人達を助けないと…」

 

 

河内「そうだったな。急がないと」

 

 

 

 

実は、彼女達がカバンに詰めていた秘密兵器というのは、遠藤博士の失敗作のロボットにリーフやダイーダの顔をつけたものとガラクタ同然の機械部品である。

 

本来は警護に当たっているであろうメイジャーにでもやられたふりをして、その部品をぶちまけることで、自分達がバラバラになったと見せかけてその隙に侵入していく予定だったのだ。

 

一度やられたように見せかければ、時間が稼ぎやすいと判断した上での作戦である。

 

いきなり地雷があったことは予想外だったが、かなりの時間が稼げそうであり、ひとまずはよしといったところであった。

 

 

 

リーフ「ぼんやりとしかわからなかったけど、捕まった人達はあっちの方だったよ。急ごう」

 

 

先ほど妨害電波に邪魔されながらも、イエローハンドでなんとか確認した場所を示したリーフに従って、一同は静かに走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バトルスタイルに変化すると、デッドはゴーロとファルに対して淡々と事実を述べたつもりだった。

 

デッド「確認する。私はコズミックプリキュアより強いということはわかっているな」

 

 

しかし、それは二人の神経を逆なでし、さらにイラつかせるだけだった。

 

ゴーロ「ごちゃごちゃうるせぇ!! 覚悟しやがれ!!」

 

ファル「行くぞ!!」

 

 

これまでの怒りを込めて突進していったゴーロとファルだったが、デッドはそれをジャンプして飛び越えるように軽くかわした。

 

そしてすれ違いざまに空中で逆さまになりながら、二人を大きく蹴り飛ばした。

 

 

 

ゴーロ「があっ!!」

 

ファル「く、くそ…」

 

 

地面を這いつくばりながらも二人の目からは憎悪は消えず、雄叫びと共に立ち上がると殴りかかった。

 

 

しかし、デッドはそんなゴーロのパンチを右手で軽く受け止めると、腕を変な方向にねじ曲げた。

 

 

ゴーロ「ぐああああ!!!」

 

 

悲鳴をあげたゴーロだったが、それがどうしたと言わんばかりにデッドはゴーロのねじ曲げた腕をつかんで振り回し、ファルに叩きつけた。

 

 

ファル「うおおおお!!!」

 

 

その勢いでゴーロとファルは転がっていき、ついでにゴーロの腕はちぎれてしまった。

 

 

 

ファル「く、くそっ…」

 

ゴーロ「腕…俺の腕…」

 

 

既にかなりのダメージを負ってしまい、転がって行った先で顔を上げると、そこには既にデッドが迫っていた。

 

 

とっさに立ち上がろうとしたファルだったが、デッドに蹴り倒され馬乗りになられた挙句、何発となく右の拳を全身に叩き込まれた。

 

 

ファル「ゴガアアアア!!!」

 

 

デッドのパワーは、ダイーダのレッドハンドを上回る。

 

 

そのパンチを全身に浴びたファルは、内部メカニックが完全に故障してしまい、まともに身動きが取れなくなってしまった。

 

 

ゴーロ「このやろう!!」

 

ファルを助けようと、ゴーロは残された腕でヤケクソ気味に殴りかかったが、デッドはそんなゴーロを一瞥だにせず、下のファルを殴るついでと言わんばかりに無造作に腕をふるって弾き飛ばした。

 

 

 

そしてデッドは殴り飽きたかのように、ファルの上から降りた。

 

 

ようやく攻撃が止み、ズタボロになってしまったボディでなんとか起き上がろうとしたファルだったが、そこにデッドのサッカーボールキックが炸裂し、ゴーロのところに大きく蹴り飛ばされた。

 

 

ファル「ガッハアアア…」

 

 

 

 

 

デッド「…失望する。この程度か」

 

 

武器も武装も一切使ってないというのに自分に一太刀も浴びせられないゴーロとファルに対して、もはや興味はないとばかりにそう呟くと、デッドは踵を返して立ち去り始めた。

 

 

 

 

 

ゴーロ「ふざ…けんな…」

 

ファル「貴…様…」

 

 

完全に見下されている。

 

 

その怒りから必死に立ち上がった二人だったが、すでに全身はズタボロで、いたるところがショートし火花が飛び散っていた。

 

そのため傍目に見てもやっとというのがバレバレだった。

 

 

しかし、それでも最後の意地とばかりにデッドに対して文字通り体を引きずるようにして向かっていった。

 

 

ゴーロ・ファル「「ズゥオオオオ!!!!」」

 

 

 

 

 

するとデッドは歩みを止めて振り返ると、うるさいと言わんばかりに左太腿のミサイルを発射した。

 

 

ゴーロ・ファル「「ドゥアアアアア!!!!」」

 

 

ボロボロのボディでは回避も防御もろくにできず、二人はまともにミサイルの直撃を喰らい、大爆発とともに木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

 

そして、飛び散った機械の残骸から黒く光る二つの光の玉がフラフラと舞い上がっていった。

 

 

これが二人の本体である、マイナスエネルギーの塊というべき闇の精霊である。

 

 

ファル『ひぃひぃ…』

 

ゴーロ『お、覚えてやがれ… 絶対に貴様をぶっ壊して…』

 

 

捨台詞とともに逃げ出そうとした二人だったが、デッドはそれを見逃さず手にしたデスサイズを一振りすると、黒い波動のような斬撃を飛ばして黒い光の玉を切り裂いた。

 

 

ゴーロ『ば… バカな…』

 

ファル『俺たちを… 見殺しになさるのですか… パーフェクト様ー!!!』

 

 

 

その断末魔の悲鳴とともに、黒い光の玉はガラスが割れるように粉々になり消滅した。

 

 

 

デッド「…破壊完了。 ミッションコンプリート」

 

 

その光景をデッドはまるで感慨のない冷めきった様子で見つめ、淡々と状況を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴーロとファルを破壊したデッドだったが、そのまま何をするでもなくその近くをふらふらと歩いていた。

 

 

デッド「質問する。私は…なんだ…?」

 

誰も聞くものがない中、一人デッドは問い掛けを続けていた。

 

デッド「私は次に何をすればいい? コズミックプリキュアは死んだ。奴らを倒した二人は破壊した。ならば、次のターゲットは…」

 

 

デッドは何か答えになるものを求めて、過去のログを引っ張り出していた。

 

 

 

豪(ふざけんなよ!! 今姉ちゃん達がいなくなったらどうなんのかもわかんないのかよ!!)

 

デッド「あの時私は答えた。その先はプログラムされていないと… ならば次にとるべきは…」

 

 

 

 

 

豪(いや、それよりさ。河内警部が言ってたじゃん。ゆう姉ちゃんは犯罪者鎮圧用ロボットだって。ってことはさ…)

 

ラン(あっ!! リーフさんやダイーダさんと一緒に!!)

 

豪(そう、パーフェクト達と戦ってくれるかもしれないんだ!!)

 

 

デッド「豪とランはそう言っていた… 私は犯罪者鎮圧用…」

 

 

 

ラン(あなた、本当は私達の味方でコズミックプリキュアと一緒に戦う正義の戦士なのよね。そうよね?)

 

 

デッド「否定する。私は標的であるコズミックプリキュアとともに戦うことはない。なぜなら…」

 

 

 

遠藤(四季ゆう。お主は一体何なんじゃ?)

 

 

デッド「回答する。私は死神である。ならば…」

 

 

ようやく次に何をすべきかを理解したかのように、デッドは富士山頂に向けて飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

富士山頂

 

 

Dr.フライ「ほう。あのポンコツどもめバラバラになりおったか。いい気味じゃ、いつも散々にこのわしをバカにしおって!!」

 

 

ゴーロとファルのボディの信号が消えたことを手持ちの端末で確認したDr.フライはザマアミロというような笑みを浮かべていた。

 

 

 

その時、周囲に黒い靄のようなものがうっすらと立ち込めるとドスの効いた低い声が響いた。

 

パーフェクト「Dr.フライ。貴様どういうつもりだ?」

 

 

Dr.フライ「ん? どういうつもりとはどういうことじゃ?」

 

 

すっとぼけたようなDr.フライの言葉に、パーフェクトは怒りに満ちた声を上げた。

 

パーフェクト「ふざけるな!! なぜあの二人を見殺しにした!? あのアンドロイドを静止させることはできたはずだ!!」

 

 

Dr.フライ「いやぁ、そう言われてものう。あやつはわしの言うことをろくに聞かんからのう。それにまさかあいつらがああもあっさりやられるとはなぁ」

 

 

 

パーフェクト「貴様!!」

 

なめきったようなフライの態度に、とうとうパーフェクトの怒りが爆発し、黒い波動のようなものが発せられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

Dr.フライ「ん? どうした? 何かするんじゃなかったのか?」

 

パーフェクト「くっ…」

 

ニヤニヤとした笑みを浮かべるDr.フライに、パーフェクトはどこか悔しそうな声を上げていた。

 

 

Dr.フライ「そもそも、なぜ貴様が自分であの二人を助けてやらなんだ? いつもいつもプリキュアにやられそうな時は助けていたではないか? え?」

 

 

Dr.フライの言うことは悔しいが当たっていた。

 

パーフェクトはここしばらく、力を出すことがひどく困難になっていた。

 

初めはプラスエネルギーの多いこの世界に長く居続けた弊害かと思っていたが、最近になっての力の落ちようは尋常ではなかった。

 

 

特に暗黒世界と繋がろうとしている今、ここまでパワーが落ちているのはどう考えてもおかしかった。

 

 

 

Dr.フライ「力がろくに出ないのであろう? それはそうじゃ、四季ゆうのエネルギーでもあるマイナスエネルギーは、貴様の体から取り出したものじゃからな。奴が戦えば戦うほど、貴様の力は無くなっていくということじゃ」

 

 

パーフェクト「!!! 貴様、そのつもりであのアンドロイドを!!」

 

Dr.フライ「ほざけ!! 人を捨て駒にしようとしたのはどっちじゃ!!」

 

 

激昂したパーフェクトは、黒い波動のようなものを出して攻撃を加えたが、Dr.フライはそれを吸収してしまった。

 

 

パーフェクト「な、何!?」

 

Dr.フライ「忘れたか? わしの体はマイナスエネルギーで動いておる。マイナスエネルギーの波動はわしにとっての養分でしかないわ!!」

 

 

そう叫んだDr.フライは手のひらを突き出すと、今度はパーフェクトから強制的にマイナスエネルギーを吸収し始めた。

 

 

 

パーフェクト「こ、これは!? グァァアア!!!!」

 

 

パーフェクトはマイナスエネルギーの塊のような存在である。

 

全身を構成するマイナスエネルギーを吸収されていったため、苦悶の悲鳴とともに少しずつ全身が薄くなっていった。

 

 

 

Dr.フライ「ヒャッヒャッヒャッ!!! パーフェクト、貴様は所詮部下がいなければ何もできん存在。だからあいつらを必死に守っていたのであろう? じゃがわしは違うぞ。大天才のわしは何者も必要とせん強さを持っておるのじゃ!!!」

 

 

その笑いとともに、いっそうパーフェクトの全身の黒い靄は薄くなっていき、ついには消滅し始めた。

 

 

Dr.フライ「パーフェクト!! 貴様の力、すべてありがたくいただくぞ。そして貴様の代わりにわしがあらゆる次元の皇帝として永遠に君臨してくれる。すべてはわしを利用しようとした報いじゃ!!!」

 

 

パーフェクト「お、おのれー!!!!」

 

 

その怒りに満ちた断末魔の声とともに、パーフェクトの姿はDr.フライに吸い込まれるように完全にかき消えていった。

 

 

 

Dr.フライ「ヒャッヒャッヒャッ!!! ざまあ見るがいいわ!!!」

 

 

 

もはや邪魔者などいないというように、Dr.フライは高らかに笑った。

 

 

 

Dr.フライ「さてと… まずは手始めに、このデビルの塔から暗黒エネルギーを吸収してこの地球を暗黒の世界に変えてやるとするか」

 

 

 

 

第50話 終


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