コズミックプリキュア   作:k-suke

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第4話 「国会爆発 5秒前 (後編)」

国会議事堂

 

 

 

 

議員「次元皇帝パーフェクトだかなんだか知らんが、日本の支配権を渡す事などできん!!」

 

毅然としてそう答えた議員がいたが

 

 

「ぐだぐだウルセェ!! 話をしに来たんじゃない。命令しに来たんだよ!!」

 

細身の男はそう叫ぶと、懐から時計のようなものを取り出し演壇に叩きつけた。

 

 

「あと五分でこの建物ごと爆発する。いい返事を期待している」

 

 

議員「バ、バカな事を。お前たちも吹っ飛ぶぞ」

 

そう忠告した議員を、大男は鼻で笑った。

 

 

「あいにく、オレ達は頑丈な体でね。 自分達の心配をしな、ガッハッハッ」

 

 

 

 

この様子は中継されており、当然日本中がパニックになっていた。

 

 

 

レポーター「日本の皆さん。この状況をご覧になっておられるでしょうか。これはドラマではありません。突如として起きた国会議事堂を占拠した次元皇帝パーフェクトの使いと名乗る男達。いったい日本はどうなってしまうのでしょうか。レポーターの甲斐 節子がお届けします」

 

 

 

 

そして警察もすでに出動し、機動隊員が国会議事堂を取り囲んでいた。

 

 

河内「ええい、やむを得ん。こうなれば強硬手段だ。大至急突入し、賊を取り押さえ、人質を救出し時限爆弾を解体するんだ!!」

 

 

機動隊員の指揮をとっていた河内警部だったが、部下に止められた。

 

機動隊員「無茶です!! 今突入するのは危険すぎます」

 

 

河内「馬鹿野郎!! 日本がどうなるかの瀬戸際で、危険だなどと言っておれるか!!」

 

そう怒鳴り突入しようとしたが、

 

機動隊員「ダメです!! 内部の状況もよくわからないのに、下手に突入したら人質となっている議員が即座に殺されかねません」

 

 

その言葉に河内警部は歯ぎしりをした。

 

河内「でぇい、万事休すか」

 

 

 

 

その頃、国会議事堂付近の上空には、ステルスモードの三冠号が飛来していた。

 

 

豪「あの建物が国会議事堂だよ。 でもあの怪物が見張ってるからこれ以上近づくとまずいよ」

 

豪の言う通り、カラス型の巨大な怪物が国会議事堂の上空を我が物顔で旋回していた。

 

 

ダイーダ「よし。あいつの死角になるようなタイミングでここから飛び降りて、一気に内部に突入するわよ」

 

リーフ「オッケー、ダイーダちゃん。豪くんしっかりつかまっててね」

 

 

 

豪「へっ?」

 

疑問に思う間もなく、リーフとダイーダはヘルメットを脱ぎ捨てると、豪を抱きかかえて三冠号から飛び降りた。

 

 

かなり低空を飛行していたとはいえ、それでも地上まではゆうに数百メートルはある。

 

それをパラシュートもなしに飛び降りられたのだから、豪としてはたまらなかった。

 

 

 

豪「ギョ〜え〜!!!」

 

 

その絶叫がこだまする中、リーフとダイーダは無事に国会議事堂の屋根に降り立ち、内部に突入した。

 

 

 

 

議会場の中では、議員達が必死に交渉を行っていた。

 

 

議員「もし、要求を飲むと言ったら、その爆弾は止めてもらえるのか?」

 

一人の議員が不安そうにそう尋ねると

 

 

「ああ、止めてやるよ」

 

「すまん、止め方を聞いてなかった」

 

「あらら、じゃあしょうがねぇやな」

 

 

議員「き、貴様らはじめから…」

 

 

 

一方、一応無事に議事堂内に潜入していたリーフとダイーダの超高性能集音器のついた耳にも、その会話は聞き取れた。

 

 

ダイーダ「あいつら…」

 

リーフ「行こう、ダイーダちゃん」

 

頷きあうと、二人は風のようなスピードで議会場へと走って行った。

 

 

豪「ひぃひぃ、もう見えなくなった。あんなのに追いつけるもんか。オリンピックに出たらぶっちぎりで世界新だよ、もう」

 

 

 

 

 

 

議会場

 

 

「さて、もうすぐ爆発だが、返答はどうした?」

 

「早くしないとドッカーンだぜ。どのみち爆発するけどな」

 

 

二人の男が歯噛みしたり、震えたりしている議員を見下したようにそんなことを言っていると、ドアが勢いよく開き二人の少女が飛び込んできた。

 

 

リーフ「あなた達、随分となめた真似をおやりになってくださいましたわね!!」

 

ダイーダ「てめぇら、許さんぜよ!!」

 

 

いったいどこで聞いたんだとツッコミたくなるようなセリフを口にして、議会場の周囲を取り囲んでいた黒タイツ達を蹴散らし、リーフとダイーダが演壇にいる二人の男へと飛びかかった。

 

 

リーフ「ヤアァアア!!」

 

そのまま、リーフの廻し蹴りが細身の男の頭に直撃し、男は転がっていった。

 

 

 

ダイーダ「ダーッ!!」

 

ダイーダもパンチを繰り出し、大柄の男を殴りつけた。

 

 

しかし、この男はダイーダの強烈なパンチに体勢こそ崩すもののダメージはほとんど受けていないようだった。

 

 

「ヘッヘッヘッ、久しぶりだなぁダイーダ。あいさつとしては随分だなぁ、え?」

 

その言葉に一瞬ダイーダは戸惑うも、あることに思い当たった。

 

 

ダイーダ「あんた…まさか、ゴーロ!! その姿はいったい!?」

 

 

ゴーロ「驚くこたぁねぇだろ。テメェと同じだ!!」

 

そう叫ぶと、ゴーロはその巨体を利用した体当たりをお返しとばかりに行ってきた。

 

 

ダイーダ「ぐっ!!」

 

そして体勢の崩れたダイーダの首を掴み、両手で持ち上げると同時にギリギリと絞め上げた。

 

ゴーロはダイーダを上回る怪力を発揮しており、必死に足掻くもダイーダはその手を振りほどくことができなかった。

 

ダイーダ「く、くそ…」

 

 

 

 

リーフ「ダイーダちゃん!!」

 

ダイーダのピンチに駆け寄ろうとしたリーフだったが、ゾロゾロとアリのように寄ってくる黒タイツに行く手を阻まれてしまった。

 

 

「行かせねぇぜリーフ。今までの礼はさせてもらう」

 

 

リーフ「私を知ってる… まさかと思ったけど、あいつがゴーロなら…あなたはファルね!!」

 

 

ファル「ご名答。かかれマイナー!!」

 

ファルがそう言うと、黒タイツは数の暴力で一斉にリーフに襲いかかった。

 

 

 

 

豪「ひぃひぃ、やっとついた。ああっ!!」

 

 

息を切らせながらも、なんとか追いついてきた豪は議会場でリーフとダイーダが苦戦しているのを目の当たりにするも、今自分がやるべきことを理解していた。

 

豪「何してるの! 姉ちゃん達が戦ってる間に早く逃げて!!」

 

豪は閉じ込められていた議員達に駆け寄ると、急いで脱出するように促した。

 

 

議員「な、なんだ? 子供?」

 

議員「なんでこんなところに?」

 

 

ヘルメットのため顔こそわからないものの、明らかに子供である豪を見た議員達は戸惑っていた。

 

 

豪「何ぼーっとしてんの!? 早く今のうちに!!」

 

そんな議員達に再度脱出を促したところ

 

 

議員「だ、ダメだ。時限爆弾がある。このままでは脱出する前に爆発する!!」

 

議員達の何人かは、なんとか演壇から時限爆弾を取り外そうと悪戦苦闘していたが、がっちりと固定されてしまっておりビクともしなかった。

 

 

豪「えっ!? わっもう時間が!! 姉ちゃーん!!」

 

 

 

ダイーダ「くっ、ご、豪」

 

 

ゴーロに締め上げられていたダイーダはその豪の叫びに奮起した。

 

ダイーダ「チェ、チェンジハンド・タイプレッド!!」

 

その掛け声とともに両腕を一回り大きなゴツゴツした赤い腕に換装すると、凄まじい怪力でゴーロの腕を振りほどいた。

 

 

ゴーロ「何?」

 

ダイーダ「ウォォォリャアアアア!!」

 

突然のパワーアップにゴーロが戸惑っている隙をついて、ダイーダは渾身の力で大きくゴーロを殴り飛ばした。

 

 

ダイーダ「爆弾が… ええい、ここから取れないんだったら!!」

 

そしてそのまま演壇に駆け寄ると、演壇ごと時限爆弾をひっぺがした。

 

 

議員「なんて力だ…」

 

 

 

 

 

リーフ「よっ、はっ、とっ」

 

ゾロゾロと襲い来るマイナーの攻撃をさばきつつ、単身戦っていたリーフだったが、これではらちがあかないと判断した。

 

リーフ「えぇい、チェンジハンド・タイプブルー!!」

 

その掛け声とともに、両腕を稲妻模様の走った青い腕に換装すると、腕を掲げて叫んだ。

 

 

リーフ「エレキ光線、連続発射!!」

 

 

するとリーフの腕から、電撃光線が周辺に向けて乱射され、取り囲んでいたマイナー達は感電して黒焦げになって消滅した。

 

 

リーフ「この子達…この生き物にマイナスエネルギーをとりつかせたの!?」

 

見ると、マイナー達が消滅した後には小さなアリが何匹も転がっていた。

 

 

ファル「まあな、しかしクソの役にも立ちゃしねぇ」

 

そう吐き捨て一人逃げ出そうとしたファルにリーフの怒りは爆発した。

 

 

リーフ「あなたという人は…自分達の都合で命を弄んで…許さない!!」

 

そう叫ぶや否や、リーフは腕をファルに向けてかざし、電撃光線を浴びせた。

 

 

ファル「グアアアーッ!!」

 

それをまともに浴びたファルは苦悶の悲鳴とともに、ダウンしてしまった。

 

 

 

ゴーロ「ダイーダー!!」

 

一方殴り飛ばされたゴーロは、怒りのままにダイーダに飛びかかったが、レッドハンドのパワーに軽く受け止められ、片手で持ち上げられてしまった。

 

 

豪「ダイーダ姉ちゃん。早く爆弾を!!」

 

ダイーダ「わかってる。リーフ!!」

 

リーフ「オッケー!!」

 

 

豪の叫びに応えるかのように、ダイーダは持ち上げていたゴーロをそのままレッドハンドの強烈な力で真上に投げ飛ばした。

 

ダイーダ「飛んでけー!!」

 

その勢いは議事堂の天井を突き破り、ゴーロは上空へと投げ出されてしまった。

 

 

リーフ「こんの〜!!」

 

そしてリーフは倒れたまま動けなくなっていたファルの両足を掴み、ジャイアントスイングの要領で振り回し、今空いた天井の穴から同じく上空へ投げ飛ばした。

 

 

ダイーダ「持って行きなさい。忘れ物よ!!」

 

そして、その投げ飛ばされた二人を狙ってダイーダは爆弾付きの演壇を投げつけた。

 

 

豪「みんな伏せて!!」

 

そう豪が叫ぶと同時に、時限爆弾はタイムリミットとなりゴーロやとファルを上空で巻き込み大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

河内「な、なんだ? 何が起こった!?」

 

突如として上空で起きた大爆発に、国会議事堂を取り囲んでいた警察は驚いていた。

 

 

ゴーロ「がはっ…」

 

ファル「くっそ…」

 

その爆発に巻き込まれ、地面に叩きつけられたゴーロとファルだったが、先の言葉通りかなり頑丈であるらしく、大ダメージこそ負っていたが、まだまだ大丈夫そうであった。

 

 

河内「む!? あの二人は例の賊か!! とりおさえろ!!」

 

 

二人の姿を認めた河内警部は、即座にそう指示を下し、議事堂を取り囲んでいた機動隊員は一斉に飛びかかった。

 

 

 

ファル「くそっ、ここは引くしかない」

 

悔しそうにそう呟き指を鳴らすと、上空を旋回していた巨大な怪物カラスが急降下してきた。

 

 

その巨体には、さしもの機動隊員も恐れおののき、足が止まった。

 

 

その隙にゴーロとファルは姿を消した。

 

 

 

 

そして十数メートル上空をホバリングしていた巨大な怪物カラスは、くちばしを振りかざし、機動隊員に襲いかかった。

 

機動隊員「う、うわ〜っ!!」

 

機動隊員達もこの状況では、悲鳴とともにパニックとなってしまっていた。

 

 

 

しかし、次の瞬間怪物カラスは何かの体当たりを受けて大きく吹き飛び地面に叩きつけられていた。

 

機動隊員「な、なんだあの飛行機は?」

 

 

その体当たりを加えた何かとは、特殊ジェット機 三冠号であった。

 

議事堂から出てきたリーフ達が遠隔操作で急降下させ、体当たりを仕掛けさせたのである。

 

 

リーフ「ふぅ。三冠号が間に合ってよかった」

 

ダイーダ「あの二人は取り逃がしたのは残念だけど、とりあえず被害はなさそうね」

 

 

ダメージを受けた怪物カラスだったが、その瞳は未だ禍々しい光を携えており、今戦うべき相手が誰かわかっているかのように、リーフとダイーダを睨みつけていた。

 

 

 

ダイーダ「やる気満々みたいね。リーフ、行くわよ」

 

リーフ「うん!!」

 

 

闘争心をむき出しにしている怪物カラスに対して、二人は力強く頷き合い

 

 

リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」

 

 

その掛け声とともに、ジャンプしてトンボを切った。

 

 

その瞬間、二人の体は光に包まれ、着地した時には姿が大きく変わっていた。

 

 

ショートカットだったリーフは、ボリュームのある濃いピンクの髪に変化し、着用している服も、ごく普通の服からフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものになっていた。

 

 

ダイーダのポニーテールは、一本から五本にまで増え、背中にかかるかかからないかだったそれも、腰まで伸びて金色になっていた。

 

そしてリーフ同様のデザインの純白を基調にしたフリルのついたドレスを着用していた。

 

 

 

そして怪物をキッと睨むと二人は名乗りをあげた。

 

 

リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

 

リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」

 

 

 

 

河内「な、なんだあいつらは…」

 

 

目の前の状況についていけない河内警部だったが、同じようにその光景を見つめる豪は対照的に大興奮だった。

 

 

豪「待ってました!! コズミックプリキュア!!」

 

 

 

 

そんなコズミックプリキュアに対して、怪物カラスは大きく羽ばたき強風を巻き起こして吹き飛ばそうとした。

 

その暴風に周辺の瓦礫は吹き飛ばされ、木も根元から倒れたりしていたが、コズミックプリキュアの二人にとってそんな強風はそよ風に等しいものであった。

 

 

ダイダー「ふん、こんなもので」

 

そう余裕そうに言うと、ダイダーは光のスティックのようなものを取り出した。

 

 

ダイダー「受けなさい。プリキュア・シャイニングスイング!!」

 

そう叫びながら、ダイダーはスティックを野球のスイングのように一振りした。

 

 

すると光の斬撃が飛んでいき、怪物の羽根を片方切り落とした。

 

と、同時に周辺の暴風は止まった。

 

 

 

 

悲鳴をあげて、羽を切り落とされた痛みに苦しんでいる怪物を見てリリーフは申し訳なさそうに振りかぶり、右手の中に虹色の光の玉が輝かせ始めた。

 

 

リリーフ「ごめんなさい!! プリキュア・レインボール!!」

 

 

その叫びとともに、リリーフは虹色の玉を音速に達しているのではと思えるような速度で投げつけ、怪物の頭部に直撃させた。

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「ゲームセット!!」」

 

 

 

すると怪物の全身から黒い靄のようなものが溢れ出し、怪物カラスは甲高い鳴き声とともに大爆発した。

 

そして、その爆心地には、羽根の折れたカラスが一羽、傷だらけになりながらもなんとか飛び立とうともがいていた。

 

 

 

リリーフ「ごめんなさいね、ゾウさん。連れて帰って手当てしてあげるわ。とりあえず応急処置を…」

 

 

ダイダー「だから違うってば。これはゾウじゃなくてコウモリよ」

 

 

そんなとんちんかんなことを言い合いながら、二人はカラスの手当てをあっという間に終わらせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

豪「ふぅ〜、めでたしめでたし」

 

 

豪が安堵の声を漏らしていると、ダイダーが豪を抱え上げて、微笑みかけた。

 

 

ダイダー「さっ、帰りましょう。 さっきはありがとう、助かったわ」

 

豪「へへっ…」

 

 

リリーフ「ふふふっ… 三冠号!!」

 

 

そして、リリーフとダイダーは豪とカラスを抱えて三冠号へと飛び移った。

 

 

 

 

 

帰路につく最中、ステルスモードを起動したため、突如として見えなくなった三冠号に驚きながら、河内警部はつぶやいた。

 

 

河内「あいつらは…一体…」

 

 

 

第4話 終

 

 


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