コズミックプリキュア   作:k-suke

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第45話 「鬼は内、福は外 (後編)」

 

 

 

 

ダイーダ「イタタ… なんなのよ急に?」

 

突然墜落してしまい、普通の人間ならば間違いなく全身打撲で死んでいたところであるが、さすがというべきか多少ダメージを負った程度で済んでいた。

 

 

 

リーフ「ダイーダちゃん、大丈夫?」

 

ダイーダ「ええ、なんとかね。それよりあのメイジャーをなんとかしないと…」

 

駆けつけたリーフに無事を報告し、早くメイジャーのところに行かなければと立ち上がったダイーダに、リーフもまた頷いた。

 

 

リーフ「うん。あいつがウィルスを撒き散らしてるなら急がないと被害が広がる一方だよ。ワクチンも作らないといけないし…」

 

 

 

 

〜♪〜♫〜♪〜〜♪〜♫〜♪〜♫〜♫〜♪〜♪〜♪〜

 

 

するとその時、どこからかハープのメロディーが流れてきた。

 

 

リーフ「これって、豪くんが言ってた…」

 

リーフがそのことに気づくや否や、近くのビルから透けるような白い肌にプラチナブロンドの髪をなびかせた黒いスーツの少女が飛び降りてきた。

 

 

ダイーダ「四季ゆう… さっきのはあなたね」

 

 

ゆう「肯定する。リーフ、ダイーダ、変身して私と勝負しろ」

 

 

文字通り機械のような口調で告げるゆうに対して、リーフは必死の思いで叫んだ。

 

 

リーフ「待って!! 今私達はあなたと戦ってる場合じゃないの!! 早くしないとDr.フライのウィルスで多くの人が死んじゃうの!!」

 

 

だが、リーフの必死の嘆願もゆうには馬の耳に念仏であった。

 

 

ゆう「回答する。この先にワクチンを持って行きたければ私との勝負がお前達の最優先事項となる」

 

 

ダイーダ「くっ、ランの言った通りのわからずやね。仕方がないわ、リーフ行くわよ!!」

 

 

ゆうの回答に、ダイーダは舌打ちをしそうな顔でリーフに同意を求めた。

 

リーフ「…仕方ない、オッケー!!」

 

 

リーフもまたやむをえないというように頷くと、ダイーダ共々トンボを切った。

 

 

リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」

 

 

 

 

その瞬間、二人の体は光に包まれ、着地した時には姿が大きく変わっていた。

 

 

ショートカットだったリーフは、ボリュームのある濃いピンクの髪に変化し、着用している服も、ごく普通の服からフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものになっていた。

 

 

 

ダイーダのポニーテールは、一本から五本にまで増え、背中にかかるかかからないかだったそれも、腰まで伸びて金色になっていた。

 

 

そしてリーフ同様のデザインの純白を基調にしたフリルのついたドレスを着用していた。

 

 

 

そしてゆうをキッと睨むと二人は名乗りをあげた。

 

 

リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

 

リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」

 

 

 

コズミックプリキュアの変身を見届けたゆうは、それに返すように左手を親指・人差し指・中指の三本を立てて前に突き出した。

 

ゆう「チェインジ!!」

 

 

そう叫ぶと、突き出した左手の指を立てたまま、手の甲を内向きにして顔の前へと横向きに持って行き、人差し指と中指の間から赤い右目を光らせた。

 

ゆう「スイッチ・オン!!」

 

 

次の瞬間、黒い電流のようなものが火花をあげてゆうの全身を走り、着地と同時にその姿は変わっていた。

 

 

彼女の着ていた黒いスーツは、フリルのない落ち着いたデザインのロングスカートの黒一色のドレスに変わっており、同じく黒一色の肘まである手袋とブーツを着用していた。

 

バトルスタイルへのチェンジが完了すると、デッドは左手に黒い靄のようなものをまとわせてデスサイズへと変化させて構えると冷たい声で宣言した。

 

 

デッド「破壊する。ターゲット、コズミックプリキュア」

 

 

 

 

少しの間にらみ合っていた三人のプリキュアだったが、示し合わせたようにお互いに突っ込んでいった。

 

 

リリーフ「ハアアア!!」

 

ダイダー「ヤアアア!!」

 

 

突っ込んでいった勢いそのままにパンチを繰り出したリリーフとダイダーだったが、デッドは手にしたデスサイズの柄の部分でそれを難なく受け止めた。

 

 

リリーフ「えっ!?」

 

リリーフが小さく戸惑いの声を上げたかと思うと、デッドは手にしたデスサイズを一振りしてリリーフとダイダーを押し飛ばした。

 

 

そして押し飛ばされた二人を狙って、デッドは右手の指先のマシンガンを発射してきた。

 

 

 

 

ダイダー「ぐぅっ!! プ、プリキュア・シャイニングスイング!!」

 

投げ飛ばされて姿勢が崩れたところを狙って放たれた弾丸を、体をよじることでなんとか直撃だけは避けたダイダーは、光のスティックのようなものを取り出して一振りし光の斬撃を放った。

 

 

しかし、そんな苦し紛れの攻撃をデッドは余裕を持って避け、デスサイズを振りかざして飛びかかっていった。

 

 

リリーフ「わっわっわっ!!」

 

ダイダー「くっ、早すぎる!!」

 

着地と同時に振るわれてきたデスサイズを必死に避けるも、次々に右に左にと猛スピードで振るわれてきたため、避けるだけで手一杯になってしまいまるで反撃ができなかった。

 

 

しかし、ある一撃を放った時に後ろのビルの壁を誤って切り裂いてしまい、ほんのわずかだが振りの速度が鈍った。

 

 

リリーフ・ダイダー「「!!」」

 

 

その一瞬を見逃さず、二人は左右に分かれてデッドを両脇から掴み大きく投げ飛ばした。

 

リリーフ・ダイダー「「ヤァアアアア!!!」」

 

 

 

だがデッドは空中で一回転してあっさり姿勢を立て直すと、左膝を折り曲げた。

 

リリーフ「!! あれは!!」

 

 

そして二人がそれに気づくと同時に、デッドは太ももからミサイルを地上に向けて発射してきた。

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「キャアアア!!」」

 

 

即座に攻撃を返されたリリーフとダイダーは回避も防御もできないままミサイルの直撃を受け、大爆発とともに吹っ飛ばされた。

 

 

 

リリーフ「い、イタタ… ん?」

 

ダイダー「これは…」

 

 

体を押さえながら立ち上がった二人は、切り裂かれたビルの中にあるものを見つけて目を丸くした。

 

 

デッド「解説する。それはお前たちが必要としているものだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

コズミックプリキュアがキュア・デッドと戦っている頃、牛・虎合体メイジャーの肩に乗ったDr.フライがさも得意そうに笑っていた。

 

 

Dr.フライ「どうじゃ愚かな人間ども。このわしの開発した特製ウィルスの威力は身にしみたであろう。恐れ入ったならわしに忠誠を誓え。誓ったものからワクチンを分けてやる」

 

 

すると、その言葉とともに牛・虎合体メイジャーの片方の角の中から何かの液体が詰まった人間ほどのサイズのガラスケースをせり出させた。

 

 

Dr.フライ「これがそのワクチンだ。言っておくが下手なことをすればこいつを爆破してやるぞ。そうすれば感染した人間は死ぬだけだ」

 

 

その宣言に人々の間には動揺が走っていた。

 

 

「ど、どうするよ」

 

「で、でも…」

 

さすがに抵抗があるのか皆尻込みしていた中、感染した子供を抱えた一人の母親が叫んだ。

 

 

「忠誠を誓います。ですからワクチンを!! この子を助けてください!!」

 

 

それを皮切りに、人々が次々とDr.フライに対して降伏し始めた。

 

 

「お、俺もだ!! ワクチンをくれ」

 

「頼む死にたくない!!」

 

 

 

無論中には断固として反対を叫ぶ人もいたし、降伏し始めた人々もDr.フライがどういう人間かはわかっていた。

 

しかし、追い詰められた今やむをえないというところだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

市内のそんな光景はテレビ中継されており、遠藤博士も一部始終を見ていた。

 

 

 

遠藤「いかん、こりゃえらいこっちゃ!! 京香先生、豪とランを頼みますぞ!!」

 

 

ウィルスに感染し、高熱に苦しんでいる豪とランを京香先生に任せ、遠藤博士は三冠号の整備を途中で打ち切って発進準備を始めた。

 

 

京香「どうされるんですか!?」

 

遠藤「あのワクチンの入ったカプセルをなんとかせにゃ、フライの奴隷にされちまう。あのカプセルを固めてちょっとやそっとでは壊せん様にしてやるんじゃ。 リーフもダイーダも足止めをくらっとる今、わしがやらねばならん」

 

 

京香「お一人で大丈夫ですか!?」

 

遠藤「なーに、平気じゃ」

 

 

そうして遠藤博士は特殊なコーティング剤の詰まった投下弾を三冠号に搭載して出撃していった。

 

 

 

 

 

三冠号を見送った京香先生は、豪とランの当面の看病を終えると河内警部の看病をしに別室へと向かった。

 

 

京香「警部さんもしっかりしてくださいね。もう直ぐワクチンが… あら?」

 

ドアを開けると横になっていたはずの河内警部の姿が見当たらなかった。

 

 

京香「一体どこに… まさか!?」

 

 

 

 

 

 

 

甲子市内

 

 

人々が周辺に群がりひれ伏すようにワクチンを求めてくる様を、牛・虎合体メイジャーの肩から見下ろしながらDr.フライは限りない満足感を味わっていた。

 

Dr.フライ「ヒャッヒャッヒャッ、実に気分がいい。ほれ、もっとわしを崇めよ。この偉大なる大天才、Dr.フライ様をな!!」

 

 

ファル「けっ、相変わらずくだらん男だ。ん?」

 

Dr.フライの矮小さに嫌気がさしていたファルだが、上空から何かが接近してくるのに気がついた。

 

 

 

 

ファル「あれは連中のジェット機。あの女しくじったな。 やれ、メイジャー!!」

 

 

飛来してきたものが三冠号であることに気がついたファルは、舌打ちをすると牛・虎合体メイジャーに攻撃を指示した。

 

 

牛・虎合体メイジャーは雄叫びを一つあげると目からビームを発射して三冠号に攻撃を仕掛けた。

 

 

 

遠藤「むおおーっ!! 何のこれしき。フライ、これ以上は貴様の好きにはさせんぞ!!」

 

 

 

必死に操縦桿を握りしめギリギリでビームを避けながら、遠藤博士は牛・虎合体メイジャーの頭部のカプセルに照準をセットした。

 

 

遠藤「見とれフライ。特殊コーティング弾を喰らえ!!」

 

その叫びとともに投下レバーを力強く引いた遠藤博士だったが、レバーが動かなかった。

 

 

遠藤「ん? 何じゃ? どうなっとる?」

 

必死にレバーを引こうとするもビクともせず、そのうちハッと遠藤博士は気がついた。

 

 

遠藤「し、しまった!! 整備途中で慌てて引っ張り出したから投下装置のロックを外し忘れた!!」

 

 

 

そんなことをしている間にも、牛・虎合体メイジャーはビームを連射してきており、操縦に不慣れなことも合わさって、遠藤博士は回避するだけでもやっとになってしまった。

 

 

 

 

 

遠藤「ええい、ロックを外すには操縦を自動操縦に切り替えて発射口まで行かねばならん。しかしそうすると攻撃をかわしきれんし… かといってこのままではロックが外せんし… くそう、体が二つ欲しい!!」

 

 

どうにもならない現状に頭を抱えていると、後部座席からやっとの思いで話しているというような声が聞こえてきた。

 

 

河内「その仕事、俺がやってやる」

 

遠藤「河内!? お主いつ乗り込んだ!?」

 

 

驚く遠藤博士をよそに、高熱で真っ赤な顔をした河内警部は息を切らしながら続けた。

 

河内「こんな時こそ警察官の出番だ。投下ハッチのロックを解除してくればいいんだな」

 

遠藤「馬鹿を言え!! 病人にそんな危険な真似がさせられるか!! お前はここで操縦桿を握っとれ!!」

 

 

河内「馬鹿はお前だ。この俺が、しかもこんな体調でジェット機が操縦できると思うか?」

 

 

遠藤「くぅう、勝手にせい!! 落っこちても知らんぞ!!」

 

その言葉に遠藤博士は押し黙るしかなく、突き放すように言うと操縦桿を握りなおした。

 

 

 

 

河内「…遠藤博士」

 

遠藤「何じゃ!?」

 

 

河内「これまでのことは謝る。地球をあのパーフェクトの一味から守ってくれ、頼むぞ」

 

そう言い残すと河内警部はふらつきながら操縦席を出て行った。

 

 

遠藤「河内…」

 

 

それを見送った遠藤博士は一人つぶやいた。

 

遠藤「死ぬなよ。お前さんとはもう一度笑って酒を飲みたいんじゃ」

 

 

 

 

 

目の前がぼやける中、河内警部は三冠号の中を壁伝いに必死に歩き投下弾の搭載されている箇所にたどり着いた。

 

河内「遠藤博士、これが俺からの本当の誕生日プレゼントだ!!」

 

 

そして、最後の力を振り絞るようにロックのボタンを解除した。

 

 

それと同時に投下弾は発射されたが、それに巻き込まれる形で河内警部も三冠号から振り落とされてしまった。

 

 

河内「ウワァーッ!!!」

 

 

 

遠藤「あのバカモンが!!」

 

吹き飛ばされた河内警部を見た遠藤博士は慌てて三冠号から捕獲ネットを射出し、どうにかキャッチすることに成功した。

 

 

遠藤「ふぅっ、世話を焼かせおって」

 

 

 

 

一方、発射された投下弾は牛・虎合体メイジャーの頭上で破裂し、コーティング液を頭からかぶせることでカプセルを固めることに成功していた。

 

 

Dr.フライ「ぶわっ!! 何が起きた!? ええい、わしに逆らったな!!」

 

 

思わぬ反撃を受け、カッとなったDr.フライはカプセルについていた爆破装置のスイッチを入れた。

 

 

ファル「なっ、何やってやがる!?」

 

 

驚くファルをよそに、カプセルは牛・虎合体メイジャーの頭上で爆発を起こしたものの、カプセルそのものは無傷のまま地面に転がっていった。

 

結果、頭上で爆発の起きた牛・虎合体メイジャーだけがダメージを負う格好になってしまった。

 

 

 

そして牛・虎合体メイジャーの周辺に群がっていた人々は、その転がっていったカプセルの方に我先にと向かっていった。

 

 

 

Dr.フライ「なっ!? 愚民どもめ、どこに行くか!? わしに忠誠を誓ったはずであろうが!?」

 

醜く叫んだDr.フライに、ファルが呆れたような声を漏らした。

 

 

ファル「馬鹿か、連中が従ってたのはあのワクチンがあるからだ。そんなこともわかってなかったのか」

 

 

Dr.フライ「チッ、まあいい。まだまだ切り札はこっちにあるのじゃからして…」

 

 

舌打ちをしたDr.フライだったが、次の瞬間どこからか電撃光線が飛んできた。

 

 

 

 

 

Dr.フライ「ギョエエエ!! 何!?」

 

ファル「くっ、これは… リーフの電撃光線…」

 

 

感電してしまったDr.フライだったが、ファルの方は状況が理解できていたようだった。

 

 

 

ダイダー「チェンジハンド・タイプレッド!!  ダァアアア!!」

 

 

そして次の瞬間、レッドハンドに換装したダイダーが雄叫びと共に飛びかかり牛・虎合体メイジャーの金棒を持っていた腕をへし折った。

 

 

ダイダー「オォォリャアァァァァア!!!」

 

ダイダーは、さらなるダメージを受けて苦悶している牛・虎合体メイジャーの足を掴むとレッドハンドの怪力で思いっきり振り回して叩きつけた。

 

 

Dr.フライ「グオオオッ!! く、くそ。足が固まってしまって逃げられん!!」

 

ファル「チィッ!! さっき液体のせいか!!」

 

 

先ほどのコーティング液をまともに浴びていたDr.フライとファルは足が牛・虎合体メイジャーの体ごと固まってしまっており、身動きが取れなくなっていた。

 

 

リリーフ「Dr.フライ! あなたは絶対に許さない!!」

 

ダイダー「この場で終わりにしてあげるわ!!」

 

 

 

流石のこの二人ももはや堪忍袋の緒が切れたか、怒りの目つきで睨みつけていた。

 

そしてリリーフは、虹色の玉を手に輝かせ始めた。

 

 

リリーフ「ダイーダちゃん!!」

 

そしてそのまま、その虹色の玉をダイダーに向けて亜音速で投げつけた。

 

 

ダイダー「任せなさい!! ダァリャア!!」

 

するとダイダーは、リリーフの投げてきた玉を、取り出した光のスティックを一振りして打ち返した。

 

 

打ち返された虹色の玉はひとまわり大きくなり、牛・虎合体メイジャーに直撃すると全体を包み込んだ。

 

 

リリーフ・ダイダー「「プリキュア・レインボー・ツインバスター!!」」

 

 

そう二人が叫ぶと、牛・虎合体メイジャーを包み込んだ光は目も眩まんばかりに激しく輝き始めた。

 

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「ゲームセット!!」」

 

 

 

その叫びとともに、牛・虎合体メイジャーは大爆発を起こした。

 

そしてその爆心地には動物園からでもさらってきたらしい虎と牛がボロボロになって横たわっていた。

 

 

ダイダー「あいつらとことんしぶといわね。爆発で吹っ飛びながら逃げて行ったわ」

 

カメラアイで捉えたDr.フライとファルの姿にダイダーは舌打ちまじりにそう愚痴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、遠藤博士はカプセルを覆っていたコーティング液を溶剤で溶かしていたのだが

 

 

 

遠藤「くそ、想像以上にコーティング剤が強力じゃった。早くせんといかんのに…」

 

 

なかなかワクチンを取り出せない状況に、周辺の人もだんだん殺気立ってきていた。

 

 

 

 

リリーフ「みなさん落ち着いてください。ワクチンはここにあります」

 

ダイダー「お医者さんはいますか? 急いでみなさんに注射してください」

 

 

そこにリリーフとダイダーが同じようなカプセルに入ったワクチンを持ってきてそう呼びかけていた。

 

 

その言葉にみな歓喜の声を上げてかけ寄り、近くの病院からは医師が派遣され、各々の病院にはワクチンが配布されていった。

 

 

 

 

 

 

遠藤「おい、あのカプセルは一体…」

 

 

リリーフ「デッドが持ってきていたんです。Dr.フライの秘密基地から」

 

ダイダー「あのメイジャーの持っていたカプセルの中はおそらく全く別のものです。少なくともワクチンじゃないと思いますが…」

 

 

その言葉に遠藤博士は納得したように頷いた。

 

遠藤「なるほどな、フライの考えそうなことじゃ」

 

 

だが、そこで遠藤博士は、しかしと続けた。

 

遠藤「しかしどうしてデッドはワクチンを… それにお前さんたちはあのキュア・デッドと戦っていたんじゃないのか?」

 

 

 

リリーフ「戦っている間に、デッドの制限時間が来て強制中断になりました。戦っているとログが蓄積する時間も早まるみたいですね。おそらくどこかで機能停止してるとは思いますが…」

 

 

ダイダー「それと、彼女がワクチンを持ってきた理由ですが、まぁらしいといえばらしいですね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海底 Dr.フライ秘密研究所

 

 

 

Dr.フライ「なぜワクチンを勝手に持ち出した!? あれがまだこちらの手にあれば愚民どもを従わせる材料になったというのに!!」

 

無断でワクチンを持ち出したことをDr.フライは怒鳴り散らしていたが、肝心のゆうはまるで気にしていないように回答した。

 

ゆう「回答する。プリキュアが感染者のことを考えることで私との戦闘をおざなりにしかねないと判断したからだ。連中とは全力を出し合った勝負の果てに破壊してこそ意味がある」

 

 

 

ファル「ふざけるのも大概にしろ!! 貴様は誰の味方だ!?」

 

ゆう「反論する。私は自分の目的を遂行しているだけだ。その目的に貴様達が勝手に競合しているだけだ」

 

 

ファル「この、でかい口をたたくな!!」

 

 

目の前のゆうに対してイラついたように飛びかかったファルだったが、あっさりあしらわれた挙句、アッパーパンチを食らって天井にめり込んでしまった。

 

 

ゆう「警告する。私の破壊対象はコズミックプリキュアだ。だが、私に対して敵対するというならば最優先でそちらを破壊する。少ないメモリーに記録しておけ」

 

 

そう言い捨てると、もはやここに用はないとばかりにゆうは壁をぶち破って出て行った。

 

Dr.フライ「ぬあああっ!! 隔壁をぶち破りおって!! 早く浸水を止めんと!!」

 

ゆうのぶち破った壁から水が入ってきたことにDr.フライは慌てて修理をするために飛び出して行った。

 

 

 

 

 

ファル「くそがっ!! 面倒極まりないやつだ!!」

 

 

なんとか天井から降り立ち、そう吐き捨てたファルだったが黒い靄のようなものが立ち込めるとドスの効いた低い声が響いた。

 

パーフェクト「落ち着けファル」

 

ファル「はっ、パーフェクト様」

 

 

かしこまって敬礼をしたファルにパーフェクトは続けた。

 

 

パーフェクト「あやつは放っておいてもコズミックプリキュアと戦うのならば、それを利用してやればいいだけだ。もしくは捨てておけ」

 

ファル「は、はぁ。 しかしあやつ、我らにとっても害が大きいかと」

 

 

パーフェクト「構わん。利用価値のあるうちは利用してやれ。 あいつのようにな」

 

 

その言葉にファルはニヤリと笑った。

 

ファル「はっ、了解いたしました」

 

 

するとパーフェクトは満足したように消えていった。

 

 

ファル「さすがはパーフェクト様は器が大きい。最近お姿をお見せになられなかったが、きちんと考えてくださっている」

 

 

 

 

その会話の一部始終をDr.フライは物陰からこっそりと聞いていた。

 

Dr.フライ「ふん、そんなことだと思っておったわ。しかし最近パーフェクトのやつが姿を見せんところを見ると、わしの作戦は順調のようじゃな」

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

テレビのニュースで、Dr.フライのウィルスに感染した人は皆回復し、死者が一人も出なかったことに対する喜びとコズミックプリキュアに対する感謝の言葉で市内が溢れていることを報道していた。

 

 

そしてこの研究所でもいつもとは一味違った笑いが響いていた。

 

遠藤「やれやれ、これで一件落着。めでたしめでたしじゃな」

 

河内「ふっ。この研究所の科学力に、コズミックプリキュアの力、そしてこの敏腕刑事の力が合わさればまさに鬼に金棒。怖いものなどない。ハーッハッハッハッ!!」

 

 

 

河内警部の高笑いを聞いて、豪とランは顔をしかめていた。

 

 

ラン「全く調子いいんだから」

 

豪「今までのことを水に流そうって言われても、いきなりなぁ」

 

 

 

そんな二人の方をダイーダは微笑みながら優しく叩いた。

 

 

ダイーダ「ダメよ。こうやって絆を結んでいけるってことはいいことなんだから。河内警部、改めてこれからも宜しくお願いします」

 

河内「うむ。さすがに警察が全面的にバックアップするのは難しいだろうが、俺は全力でサポートする。こちらこそ宜しく頼むぞ」

 

 

力強く頷き合ったダイーダと河内警部を見て遠藤博士や京香先生もウンウンと頷いていた。

 

 

 

 

が、河内警部は遠藤博士に向き合って真剣な顔で言い置いた。

 

 

河内「で、だ。遠藤博士、あんたが正しい人間だということは認めよう。ただし、だからと言って義務がなくなるわけではないですからな。そのことはよ〜く覚えておいてくださいよ」

 

遠藤「な、なんのことじゃな」

 

 

目に見えて動揺しだした遠藤博士に、河内警部は呆れたような顔で続けた。

 

河内「おとぼけも大概にした方が良いですぞ、遠藤博士。期日も近いわけですし、計算はきちんとな」

 

 

 

そう言い残して河内警部が帰った後、リーフは遠藤博士に当然の疑問をぶつけた。

 

 

リーフ「今の話どういうことですか? 一体何の義務と計算があるんです」

 

 

遠藤「な、何でもない。知らんでいい、知らんでいいことじゃ!!」

 

 

 

第45話 終

 


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