コズミックプリキュア   作:k-suke

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第41話 「こんにちは、プリキュアおばさん (後編)」

 

 

 

 

ゆう「遂行する。私の使命はコズミックプリキュアの破壊。ただ、それだけ」

 

 

 

 

 

 

その全く感情のこもらない言葉とともに、ゆうはいきなりリーフ達に殴りかかった。

 

 

リーフ・ダイーダ「「!!!!」」

 

 

 

 

文字通り目にも留まらぬスピードで繰り出されたパンチをリーフ達はかろうじて避けたが、そのパンチは二人の後ろにあった外灯を一発でへし折ってしまった。

 

 

豪「げげっ!!」

 

驚愕する豪をよそに、ゆうは続けてリーフに後ろ回し蹴りを振り返りざまに放ち、大きく蹴り飛ばしていた。

 

リーフ「キャアアア!!」

 

 

ダイーダ「リーフ!!」

 

 

吹き飛んだリーフに気を取られたダイーダだったが、次の瞬間には目前にゆうが迫っていた。

 

 

ゆう「警告する。よそ見をするな」

 

 

警告とともに繰り出された拳を必死に受け止めたダイーダだが、ゆうのパワーにそのまま後ろに押し戻されていた。

 

 

ダイーダ「チェ、チェンジハンド・タイプレッド!!」

 

その掛け声とともに両腕を一回り大きなゴツゴツした赤い腕に換装すると、そのパワーで逆に押し返そうとした。

 

 

 

 

ダイーダ「な、なんですって!?」

 

 

ダイーダのレッドハンドは片手でも大型トラックを持ち上げるほどの怪力があり、巨大なメイジャーを軽々と振り回すことも簡単にできる。

 

 

しかし、今目の前の少女はレッドハンドに換装したダイーダと互角の押し合いをしていた。

 

 

ダイーダ「なんて…パワーよ…」

 

 

まるで感情が読み取れない目の前の少女を、ダイーダは歯を食いしばりながら押し返そうとしていたが、自分が押し戻されないようにするだけで手一杯であった。

 

 

 

リーフ「ダイーダちゃん!! チェンジハンド・タイプブルー!! エレキ光線発射!!」

 

 

なんとか立ち上がったリーフは、ダイーダのピンチを目の当たりにし、即座に稲妻模様の走った青い腕 ブルーハンドに換装すると、電撃光線を発射した。

 

 

 

 

 

 

とっさに離れたダイーダはなんともなかったが、一瞬行動が遅れたゆうは電撃の直撃を浴びて全身がショートしてしまった。

 

 

 

 

リーフ「ダイーダちゃん!!」

 

ダイーダ「ええ、一気に行くわよ!!」

 

 

 

 

 

リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」

 

ゆうの動きが一時的に止まったことを確認すると、二人はジャンプしてトンボを切った。

その瞬間、二人の体は光に包まれ、着地した時には姿が大きく変わっていた。

 

 

ショートカットだったリーフは、ボリュームのある濃いピンクの髪に変化し、着用している服も、ごく普通の服からフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものになっていた。

 

 

 

ダイーダのポニーテールは、一本から五本にまで増え、背中にかかるかかからないかだったそれも、腰まで伸びて金色になっていた。

 

 

そしてリーフ同様のデザインの純白を基調にしたフリルのついたドレスを着用していた。

 

 

 

そして怪物をキッと睨むと二人は名乗りをあげた。

 

 

リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

 

リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」

 

 

 

変身完了したコズミックプリキュアだが、そんな二人を見てランは自分でも思いがけないことを口走った。

 

 

ラン「ちょっ、ちょっと待って。その人は悪い人じゃないのよ。…いや、人でもないんだけど。 と、とにかく私のお父さんの作ったロボットなの。だから…」

 

 

リリーフ「ランちゃん!? でもこのマイナスエネルギーは…」

 

ダイダー「落ち着いて、まずはあいつを浄化しましょう。そうすればきっと…」

 

 

豪「いや分かるけどさ。そこんとこもうちょっと穏便に…」

 

 

そんなことを話している間に、ゆうは回復しリリーフとダイダーを感情のない目でじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

ゆう「確認する。バトルモードへの移行を行ったと判断する。対抗のため、兵装の安全装置を解除する」

 

 

 

 

 

豪「えっ?」

 

 

全く抑揚のない声でつぶやかれた物騒なことに戸惑いの声をあげた豪をよそに、ゆうは左手を親指・人差し指・中指の三本を立てて前に突き出した。

 

ゆう「チェインジ!!」

 

 

そう叫ぶと、突き出した左手の指を立てたまま、手の甲を内向きにして顔の前へと横向きに持って行き、人差し指と中指の間から赤い右目を光らせた。

 

ゆう「スイッチ・オン!!」

 

 

次の瞬間、黒い電流のようなものが火花をあげてゆうの全身を走り、一瞬ののちにその姿は変わっていた。

 

 

彼女の着ていた黒いスーツは、フリルのない落ち着いたデザインのロングスカートの黒一色のドレスに変わっており、同じく黒一色の肘まである手袋とブーツを着用していた。

 

 

その黒さは抜けるような色の白い肌やプラチナブロンドのロングヘアと相まってより一層黒く、そしてどこか美しく光を放っていた。

 

 

 

 

豪「へ、変身した… ゆう姉ちゃんもプリキュア…」

 

 

突如として変身したゆうに驚いていた一同をよそに、彼女は左手に黒い靄のようなものをまとわせると、それをいわゆるデスサイズへと変化させた。

 

 

ラン「で、でも、何よあれ… まるっきり死神…」

 

 

 

そのランの怯えたような言葉に彼女はどこか嬉しそうに呟いた。

 

「なるほど… 死神か。肯定する。バトルスタイルコードネーム、キュア・デッド」

 

 

リリーフ「キュア…」

 

ダイダー「デッド…」

 

 

凍りついたリリーフとダイダーに対して、デッドは左手のデスサイズを向けて冷たく宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

デッド「破壊する。ターゲット、コズミックプリキュア」

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を淡々と言い終わるや否や、キュア・デッドはデスサイズを振りかざし、リリーフとダイダーに突っ込んできた。

 

 

 

リリーフ「くっ!!」

 

ダイダー「速い!!」

 

 

リリーフとダイダーはとっさに目の前の豪とランを抱えて左右に分かれて跳躍したため、振るわれたデスサイズをギリギリでかわしたが、その代わりに後ろの大木を割り箸のように真っ二つにしてしまった。

 

 

 

驚愕のあまり言葉も出なかった一同に、デッドは振り返りざま右手の指を向けてきた。

 

 

リリーフ「!! 危ない!!」

 

ダイダー「逃げなさい!!」

 

 

 

直感的に危険を感じたリリーフとダイダーは、抱えていた豪とランを乱暴に突き飛ばしたが、それで正解であった。

 

 

二人に向けたデッドの右手の指先からは弾丸がマシンガンのように発射されてきたからである。

 

 

リリーフ「ガァアア!!」

 

ダイダー「グゥウウッ!!」

 

 

普通の人間なら1秒とかからず血だるまの蜂の巣になったであろう銃弾に、なんとか耐えられたのは、リリーフとダイダーのボディの性能故ではあるが、ダメージを負ったことに変わりなかった。

 

 

うめき声とともにうずくまってしまったリリーフの懐に即座に飛び込んだデッドは、手にしたデスサイズの柄の部分をリリーフの腹部に叩きつけた。

 

 

ダイダー「リーフ!!」

 

後ろから飛びかかったダイダーだったが、デッドが首ひとつ動かさないまま放った後ろ蹴りにあっさり蹴り飛ばされてしまった。

 

ダイダー「がはっ!!」

 

 

 

そしてデスサイズの柄の部分を押し当てていたリリーフを、そのままダイダーに向けて投げ飛ばした。

 

 

リリーフ「うわーっ!!」

 

 

正面から激突し、動きが止まってしまったリリーフとダイダーはなんとか体勢を立て直しデッドの方を見やると、片膝を立てている姿が目に入った。

 

 

リリーフ「あれ? なんか変…」

 

立てている左膝が何か不自然な形で折れていることに気がついた瞬間、左太ももに内蔵されていたであろうそれが白煙を上げて発射されていた。

 

 

ダイダー「ミ、ミサイル!?」

 

 

気づいた時にはすでに遅く、足元にはミサイルが着弾し、凄まじい爆発音と爆煙とともに、リリーフとダイダーは吹っ飛んだ。

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「キャアアア!!」」

 

 

 

 

 

 

爆発に吹き飛ばされる中、ダイダーは足が何かにつかまれるのを感じた。

 

ダイダー「ッ!! 何!?」

 

 

見ると、ダイダーの足を掴んでいたのは「左手だけ」であり、うっすらと晴れた爆煙の向こうには、その左手とワイヤーでつながったデッドがいた。

 

 

ダイダー「こいつ、左手を飛ばせるの!?」

 

いかにもロボットというような武装に驚愕していると、その左手はデッドの方に戻っていき、当然つかまれていたダイダーも引き寄せられた。

 

 

そして引き寄せられた先でデッドの右のカウンターパンチをくらい大きく吹き飛ばされ、地面に倒れ伏してしまった。

 

 

ダイダー「ガアッ!!」

 

 

そんなダイダーに追撃を加えんと右手のマシンガンを向けたデッドに、リリーフはそうはさせじと飛びかかろうとした。

 

 

しかし

 

 

リリーフ「えっ? うわっ!!」

 

 

先ほどのミサイル攻撃に紛れて投げたのであろうデスサイズが、ブーメランのように戻ってきたため、それをかわさざるをえなくなり救助が一瞬遅れた。

 

 

結果、デッドの右手のマシンガンが火を吹きダイダーに直撃した。

 

 

 

 

ダイダー「ウガァアアア!!!」

 

 

銃撃に苦しむダイダーをなんとか助けんと、リリーフは手の中に虹色の玉を輝かせ始めた。

 

 

リリーフ「くらえ!! プリキュア・レインボール!!」

 

 

亜音速で投げつけられた虹色の玉を、デッドはかわすこともできずまともにくらい大きくのけぞった。

 

 

 

それを見たダイダーは転がりながらなんとか体勢を立て直し立ち上がると、両腕を噴射口のようなもののついた緑色の腕に換装した。

 

ダイダー「チェンジハンド・タイプグリーン!! 超低温冷凍ガス発射!!」

 

 

差し出した左手から真っ白い超低温の冷凍ガスがデッドに向けて噴射された。

 

デッドは左手で保持したしたデスサイズをバトンのように振り回して防御していたが、全ては跳ね返しきれず体が凍りつき始め動きがにぶり出した。

 

 

それを確認したリリーフは即座にライナージェットを召喚した。

 

リリーフ「よーし、ライナージェーット!!」

 

 

 

 

リリーフ「ライナージェット、カノンモードスタンバイ!!」

 

ダイダー「ターゲットロック!! プラスエネルギーチャージ!!」

 

 

飛来したライナージェットをカノンモードで保持すると、キュア・デッドに照準をセットし、自分達のプラスエネルギーをチャージしていった。

 

 

 

だがそうしている間にもデッドの氷は溶け出しており、動きが回復し始めていた。

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「プリキュア・ウォークオフ・ブラスター!! ファイヤー!!!!」」

 

 

 

その掛け声とともにライナージェットから光の奔流とでもいうかのような眩しくそして温かいエネルギー波が発射されたのと、デッドがデスサイズを大きく横薙ぎに一振りし、黒い波動のようなものを発射したのはほぼ同時だった。

 

 

 

両者の攻撃そのものはお互いなんの影響もなくすれ違ったのだが、当然デッドの放った波動はリリーフとダイダーをライナージェットごと吹き飛ばし、デッドはライナージェットの放った光の中に飲み込まれていった。

 

 

 

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「うわあああああ!!!!」」

 

デッド「!!!!!」

 

 

 

これまでのダメージの蓄積と相まって、仰向けに倒れ変身解除してしまったリーフとダイーダの横では、小破したライナージェットがバチバチと火花をあげていた。

 

 

リーフ「やった… のかな…?」

 

ダイーダ「たぶん…」

 

 

 

何とか首だけ動かしてデッドの方を見たリーフとダイーダだったが、その瞬間凍りついた。

 

 

 

間違いなくライナージェットの攻撃は直撃した。

 

にもかかわらず、デッドは変身解除されることなくデスサイズを構えて立っていたのである。

 

 

 

もっとも、合体メイジャーをも一撃で浄化する攻撃を受けて完全に無傷だったわけではないようであったが。

 

リーフ「耐え…切った…!?」

 

ダイーダ「嘘…でしょ…」

 

 

 

デッド「賞賛する。さすがは私の叔母だ。この程度でなければ戦い甲斐がない。 が…」

 

身につけたドレスのようなコスチュームをボロボロにしながらも、驚愕していたリーフとダイーダに対して、デッドはデスサイズを大きく振りかざした。

 

 

デッド「宣告する。これでデッドエンドだ」

 

 

その光景を見て、ランと豪は思わず飛び込んだ。

 

 

ラン「もうやめて!!」

 

豪「戦う理由なんてないじゃんかよ!!」

 

 

そんな二人を見て、デッドは淡々と警告した。

 

 

 

デッド「警告する。ラン、豪。そこから離れろ」

 

 

ラン「どかないわ!! あなたはこんなことをするために作られたんじゃないでしょう!!」

 

デッド「否定する。私の行動目的はプリキュアの破壊だ」

 

 

豪「ふざけんなよ!! 今姉ちゃん達がいなくなったらどうなんのかもわかんないのかよ!!」

 

冷たくプリキュアの破壊を宣告したデッドに噛み付いた豪だったが、その返事は輪をかけて冷たいものだった。

 

 

デッド「肯定する。私の目的であるプリキュアの破壊、それによる結果の想定はプログラムされていない」

 

 

 

リーフ「豪くん、ランちゃん… 下がって…」

 

なんとか立ち上がったリーフは愕然としている豪とランに下がるよう告げ、ふらつきながらも前に出た。

 

 

ラン「で、でも…」

 

ダイーダ「あいつの目的は私達でしょう。なら、ランや豪にも手は出さない。そうでしょう?」

 

 

デッド「肯定する」

 

 

リーフ「ほら、そう言ってる。二人とも逃げて…」

 

ふらつきながら豪とランの前に出たリーフとダイーダに対して、デッドは大きくデスサイズを振り上げた。

 

 

 

豪・ラン「「!!!」」

 

 

 

 

豪とランが息を飲んだその瞬間突如としてデッドの動きが止まった。

 

 

ダイーダ「えっ?」

 

 

 

デッド「中断する。勝負は預ける」

 

そう言い残すと、デッドは大ジャンプして近くのビルの屋上に飛び移るとそのまま、ジャンプを繰り返してどこへともなく去っていった。

 

 

ラン「逃げた… んじゃないよね…」

 

豪「…どうなってんの?」

 

 

 

突然戦闘を中断し立ち去っていったキュア・デッドに一同は狐につままれたような気持ちであった。

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

遠藤「何!? 央介の作りおったロボットがフライに奪われて、しかも改造された!?」

 

豪「うん。しかもキュア・デッドって言ってコズミックプリキュアを倒すのが目的だって」

 

 

あの後、なんとか研究所に引き上げた一同は遠藤博士に今日の出来事の一部始終を話していた。

 

 

当然、それを聞いた遠藤博士や京香先生は絶句していた。

 

 

京香「Dr.フライ。このあいだの空飛ぶ火の車に続いてそんなものまで奪うなんて…」

 

 

遠藤「うーむ許せん!! よりによって平和利用と犯罪者鎮圧用のロボットを開くに利用するとは!!」

 

 

みなが憤る中、ランは一人浮かない顔をしていた。

 

 

ラン「でも…あの子 四季ゆうさん… 悪い人に思えない… あのパーフェクトのところにいる奴らやDr.フライみたいな嫌らしさが感じられないというか…」

 

 

豪「ラン… まぁそりゃ… 俺だって… 最後に逃げた理由も気になるしさ」

 

 

 

ゆうのとった言動を思い返してみても、彼女を悪人と判断するような行動が豪やランには思い浮かばなかった。

 

確かにコズミックプリキュアと戦ったが、それだけであり、豪やランには危害を加えようとしなかった。

 

ファルやゴーロ、ひいてはDr.フライ本人のような嫌悪感がまるで感じられなかったのである。

 

 

遠藤「う〜む。一度央介のやつにいろいろ聞いてみるか。お主らがそこまで言うなら、何かあるのかもしれんな」

 

 

 

 

第41話 終

 

 


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