コズミックプリキュア   作:k-suke

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第39話 「親子ゲンカにご用心 (後編)」

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

 

央介「何度も言いますが、ランは私が引き取ります!! いいですね!!」

 

遠藤「ええかげんにせんか!! 勝手ばかり言いおって!! ランの事を考えたことがあるのか!?」

 

 

遠藤博士の言葉に、央介は何かを閃いたような顔をした。

 

 

央介「じゃあランに決めさせましょう。ラン、お前はお父さんと来るよな」

 

 

にっこりとランの方に振り返りそう言った央介だが、当のランは戸惑っていた。

 

 

ラン「い、いきなり言われても…」

 

先ほどから突然の話ばかりで混乱していたランを見て、リーフが一歩前に出て告げた。

 

 

リーフ「ぶーっ!! ランちゃんも困ってますよ。少し時間をあげてください」

 

 

央介「う、うむ。わかった少し時間をおこう。もうすぐ母さん達も到着するだろうからな」

 

 

リーフの言葉に少し興奮も治まった央介だったが、続けて言葉に再び興奮した。

 

 

リーフ「でも、ランちゃんのお父さんってずいぶん勝手な人なんですね」

 

央介「何ですって!? 君はいきなり失礼だろ!!」

 

 

京香「ちょっとリーフさん」

 

京香先生が止めるのも聞かず、リーフは話し続けた。

 

 

リーフ「だって、そうじゃないですか。自分は遠藤博士のところから離れてるのに、ランちゃんはいけないんですか? それにランちゃんを引き取ろうっていうのも自分の都合みたいですよ」

 

ラン「リーフさん…?」

 

 

皆が静かになった中、リーフの話は続いた。

 

 

リーフ「私が進路を決めた時には、みんなが大反対しました。先生も友達も誰も賛成してくれませんでした。でも、両親だけは違ったんです」

 

央介「賛成してくれたということかね?」

 

央介の問いかけに、リーフはゆっくりと首を横に振った。

 

リーフ「いいえ、そうじゃないです。反対しなかったんです。私の好きにやれって」

 

 

 

 

 

 

 

ダイーダ「私の両親は周囲が反対する中、賛成も反対もしませんでした。ただ一つ、『私の好きにすればいい。ただし責任を持て』とだけ言いました」

 

豪母「何それ? ただの放任じゃないですか」

 

ダイーダの話を一笑に付した豪の母だが、ダイーダは構わず続けた。

 

 

ダイーダ「ですが、少なくとも私の意思を尊重し、何かあっても私の居場所であってくれると言ってくれました。でもあなたはどうですか? 豪のためと言いながら、一番気にしているのは自分の体面じゃないですか?」

 

 

その言葉にある種の図星をつかれた豪の母は押し黙ってしまい、ダイーダの言葉に全く反論できなかった。

 

 

ダイーダ「豪には自分の意思があります。もちろん、今の豪にやらなければならないことや学ばなければならないことはまだまだ多くあるでしょう。でも、あなたが親だからといって、その学ぶべき全てのことやその学び方を決める権利はないはずです」

 

 

その言葉にぐうの音も出なくなった豪の母親を見て、豪の父親が笑いながら家から出てきた。

 

豪父「ハハッ。一本取られたな。しかし君は今時に珍しいしっかりした子だな。お義父さんも人を見る目はあるということかな」

 

豪「父さん…」

 

 

豪父「豪、ダイーダさんに上がってもらいなさい。それと、学校の勉強もきちんとすること。いいな?」

 

豪「うん!!」

 

 

父親の言葉に、豪は力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

リーフ「私はそんな両親のことを心から尊敬して感謝しています。あなたもランちゃんにとってそんな親であってほしいです」

 

央介「う〜む…」

 

その言葉に、央介はうなり声とともに考え込んでしまった。

 

 

 

 

 

ラン「リーフさん…」

 

遠藤「やれやれ、こっちも耳が痛いのう」

 

 

遠藤博士が苦笑していると、今に備え付けてあったマイナスエネルギー検知器が突如としてけたたましい音を発し始めた。

 

 

央介「な、なんですか、このガラクタは!? 突然鳴り出して」

 

 

遠藤「ええい。こんな時に何事じゃ!?」

 

慌ててテレビをつけると、ニュース速報が流れていた。

 

京香「東京湾沖を航海中の船ダイヤモンド号が巨大な怪物に襲撃… これは!?」

 

 

 

そのニュースを見て央介はテレビにつかみかかった。

 

央介「な、何? ダイヤモンド号!? 珠子が乗ってる船です!!」

 

 

央介の叫びにランは真っ青になった。

 

ラン「えっ!? お母さんが!?」

 

京香「そんな!?」

 

 

遠藤「リーフ!! 大至急… って、えぇい!!」

 

央介の手前、あまり大げさなことはできず遠藤博士はリーフに耳打ちした。

 

 

遠藤(裏口からライナージェットを担いで出撃しろ。ダイーダには緊急通信で連絡して途中で拾っていけ)

 

リーフ(了解)

 

 

リーフは頷くと地下の格納庫へと向かって行き、ライナージェットを背負って央介に見つからないよう裏口から出て行った。

 

 

リーフ「急がないと… ライナージェット発進!! ダイーダちゃん応答して!!」

 

 

研究所から少し離れたところでライナージェットにサーフィンのように乗ると、ダイーダに緊急通信を入れた。

 

 

 

 

 

その頃、ダイーダもまた速田家でニュース速報を見て事態を把握していた。

 

 

豪「怪物ってまさか」

 

ダイーダ「ええ、きっとパーフェクトだわ。 ん?」

 

 

速田家にも緊張が走る中、ダイーダにリーフからの緊急通信が入った。

 

 

ダイーダ「ええ、こっちもニュースで見たわ。なんですって!? ランのお母さんがあの船に乗ってる!? わかったわ、すぐ合流する」

 

豪「って、姉ちゃん今の話本当?」

 

ダイーダ「ええ、こうしちゃいられないわ」

 

 

 

豪母「…あなた誰と話してたの? それにランちゃんがどうしたの?」

 

突然独り言を言いだしたダイーダに首をかしげていた豪の母だが、その疑問に答える間もなく、ダイーダは飛び出していった。

 

ダイーダ「すいません。私行きます!!」

 

 

豪母「ちょっと、質問に答えなさいよ!!」

 

飛び出していったダイーダを追いかけようとした豪の母だが、ダイーダは一瞬で視界から消えていた。

 

 

豪母「足の速い子ね…」

 

豪「ま、まあね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾沖

 

 

日本に向けて航行中だったダイヤモンド号は、蛸の足のような触手を生やした巨大なカニといったキメラ怪物に襲われていた。

 

 

船全体がその蛸の足のような触手に絡め取られてしまっており、乗客たちはパニックの中避難しようとするも、その足に阻まれてしまい救命ボートにたどり着くこともできなかった。

 

 

おまけにその怪物は巨大なハサミを何度も船体に振り下ろしてきており、船全体がきしみ始めていた。

 

 

乗客「まずいぞ!! このままじゃ沈没も時間の問題だ!!」

 

乗客「誰か助けてー!!」

 

 

 

珠子「まずい、このままじゃ… せめてあれだけでも…」

 

この船に乗り合わせていたランの母、珠子は何かを守るように揺れる船内を壁伝いに必死に歩いていた。

 

 

すると、蛸・カニ合体メイジャーが船体を抑えている中、ゴーロがぞろぞろとマイナーを率いて船内に乗り込んできた。

 

 

ゴーロ「この船に乗っているはずだ。とっとと探してこい!!」

 

ゴーロがそう命ずると、マイナー達は混乱している乗客に目もくれず、何かを探し始めた。

 

 

乗客「なんだあいつら? 誰かを探しているのか?」

 

 

その間にも、蛸・カニ合体メイジャーは船体をギリギリと締め付けており、側面にはヒビが入り出していた。

 

 

船長「くっ、海上自衛隊はまだか? もうもたんぞこれは」

 

船長以下乗員全員が焦る中、空に何か光るものが現れた。

 

 

乗員「ん? 何だ? 今何か光ったぞ!!」

 

それはたちまちのうちに船に接近し、近くを飛び回ったかと思うと、船体を絡め取っていたタコの足を片っ端から切断していった。

 

 

乗員「おい、あれは!?」

 

乗員「コズミックプリキュア、来てくれたんだ!!」

 

 

 

 

ダイーダ「よし、これで救助船が来るまでの時間は稼げそうね」

 

リーフ「でも浸水が始まってるし、もう沈むのも時間の問題だよ。せめてあのメイジャーを倒さないと」

 

 

ライナージェットで蛸・カニ合体メイジャーの周辺を飛び回り、翼にコーティングした空気の刃で蛸の足を切断したリーフとダイーダだったが、時間的猶予がほとんどないことも理解していた。

 

 

ダイーダ「ええ、速攻で決めるわよ!!」

 

リーフ「うん!!」

 

 

リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」

 

 

 

その掛け声とともに、二人はジャンプしてトンボを切りライナージェットから船の甲板へと飛び降りた。

 

 

そしてジャンプとともに光に包まれた二人は、着地した時には姿が大きく変わっていた。

 

ショートカットだったリーフは、ボリュームのある濃いピンクの髪に変化し、着用している服も、ごく普通の服からフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものになっていた。

 

ダイーダのポニーテールは、一本から五本にまで増え、背中にかかるかかからないかだったそれも、腰まで伸びて金色になっていた。

 

 

そしてリーフ同様のデザインの純白を基調にしたフリルのついたドレスを着用していた。

 

 

 

そして怪物をキッと睨むと二人は名乗りをあげた。

 

 

リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

 

リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」

 

 

 

 

コズミックプリキュアが到着したのを確認したゴーロは、マイナー達に作業を急がせていた。

 

ゴーロ「来やがったか。連中がメイジャーの相手をしている間に終わらせるんだ。急げ!!」

 

 

蛸・カニ合体メイジャーは変身完了した二人を見ると、蛸の足を切り飛ばされたお返しとばかりに、巨大なハサミを振り下ろしてきた。

 

 

ダイダー「甘い、チェンジハンド・タイプレッド!!」

 

その掛け声とともにダイダーの両腕は一回り大きなゴツゴツした赤い腕に換装された。

 

そしてそのレッドハンドの怪力に、振り下ろされたハサミはあっさり受け止められ、逆にたたき折られた。

 

 

 

悲鳴とともにのけぞった蛸・カニ合体メイジャーに続けてリリーフの飛び蹴りが炸裂した。

 

リリーフ「ヤアアアア!!」

 

 

その一撃で蛸・カニ合体メイジャーは大きく吹き飛んだ。

 

 

リリーフ「よし止めだよ!!」

 

蛸・カニ合体メイジャー船から完全に引き剥がすことに成功したことを確認すると、リリーフはダイダーに向き合うと大きく振りかぶり、手の中に虹色の玉を輝かせ始めた。

 

 

 

リリーフ「ダイーダちゃん!!」

 

そしてそのまま、その虹色の玉をダイダーに向けて亜音速で投げつけた。

 

 

ダイダー「任せなさい!! ダァリャア!!」

 

するとダイダーは、リリーフの投げてきた玉を、取り出した光のスティックを一振りして蛸・カニ合体メイジャーに向けて打ち返した。

 

 

打ち返された虹色の玉はひとまわり大きくなり、蛸・カニ合体メイジャーに直撃すると全体を包み込んだ。

 

 

リリーフ・ダイダー「「プリキュア・レインボー・ツインバスター!!」」

 

 

そう二人が叫ぶと、蛸・カニ合体メイジャーを包み込んだ光は目も眩まんばかりに激しく輝き始め、ついには大爆発を起こした。

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「ゲームセット!!」」

 

 

 

その後、リリーフとダイダーは遅ればせながら救助に来た海上自衛隊の船に乗員乗客の避難を行ったのち、ライナージェットで帰還した。

 

 

乗員「いやぁ、さすが噂通り。おかげで助かりましたね」

 

船長「うむ。船を失い、積荷も一部失ってしまったが、お客様がご無事で本当に良かった。彼女達には感謝しなければな」

 

 

乗客たちも、中には荷物を失ってしまったことに憤るものもいるにはいたが、大半は命拾いしたことを喜び、コズミックプリキュアに感謝していた。

 

 

珠子「まぁ命あっての物種だし、ある程度の諦めもつくけれども… やっぱりここまで来て悔しいわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警視庁

 

 

 

河内「は? 来日は延期… でありますか?」

 

上司「そうだ、今しがた先方から連絡が入った。件の船がパーフェクトの一味に襲われたため、来日は無期限延期ということだそうだ」

 

ため息混じりに河内警部の上司は話を続けた。

 

上司「全く、仮にも連中と戦おうというものが襲われたことで引き返すとは。専門家が聞いてあきれる」

 

 

河内「はぁ… しかしそのことで一つ聞きたいことがあるのですが」

 

上司「なんだね?」

 

河内「パーフェクトの襲撃を受けたダイヤモンド号ですが、乗員乗客は全員コズミックプリキュアに救助され、海上自衛隊に保護されました。ですが、乗船名簿を確認しても四季ゆうといった少女の名が確認できなかったのですが…」

 

上司「そんな馬鹿な。あの船に乗っているのは間違いなかったはず。偽名でも使っていたのではないかね?」

 

河内「いえ、それが乗員や乗客に確認しても、誰一人そんな少女は見たことがないし知らないと」

 

 

河内警部の報告を聞いて、上司は首をかしげていた。

 

 

上司「どういうことだ? 先方に事情を問い合わせてみる。君はもう一度だけ確認を取ってくれたまえ」

 

河内「はっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

ラン「お母さん!! 無事でよかった。ニュースを聞いたときはびっくりしたよ」

 

珠子「ごめんなさいね。心配かけちゃって」

 

あの後、海上自衛隊に保護された乗員乗客は、簡易的な手続きの後解散ということになった。

 

その足で珠子はここに来たのである。

 

 

京香(リーフさん、ダイーダさん。お疲れ様)

 

リーフ(いえ、大したことは。でもみんなを助けられてよかった)

 

ダイーダ(でも、あいつら一体なんであの船を襲ったのかしら?)

 

 

 

 

央介「いやぁ、しかし無事でよかった。ほっとしたよ」

 

心の底から安堵し胸をなでおろしていた央介だったが、その様子を見て遠藤博士が苦言を呈した。

 

 

遠藤「馬鹿もんが!! 自分の奥さんを一人で放っておいてなんじゃその言い草は!? 珠子さん、愚息が迷惑をかけて申し訳ない。お腹の子は大丈夫ですかな?」

 

 

その言葉に珠子はキョトンとしていた。

 

珠子「はぁ? 私は妊娠などしていませんが…」

 

 

 

ラン「えっ? だって新しい家族が増えるってお父さんが…」

 

戸惑うランの言葉に、珠子は事情を察したように頷いていた。

 

珠子「確かにね。ランの妹と言えなくもないけど…」

 

 

 

 

 

 

 

海底 Dr.フライ秘密研究所

 

 

 

 

Dr.フライ「目当てのものは手に入ったか?」

 

ゴーロ「ああ、プリキュアのやつらもメイジャーに気を取られたおかげでやりやすかったぜ。船ごと沈めておいたから、荷物の一つや二つなくなっててもわかるまい。しかし、あの積荷で本当に連中を倒せるのか?」

 

 

その言葉に、Dr.フライは自信たっぷりに答えた。

 

Dr.フライ「もちろんじゃ。極秘に開発していたようじゃが、わしのハッキング能力をなめるでないわ。あれはプリキュアを破壊することさえ容易にできる最凶の秘密兵器じゃ」

 

 

ダイヤモンド号から強奪してきた一つのコンテナを前に、Dr.フライは勝利を確信した高笑いをしていた。

 

 

 

 

第39話 終

 

 


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