コズミックプリキュア   作:k-suke

31 / 53
第30話 「友情の新必殺武器 (後編)」

 

 

 

アメリカ ニューヨーク

 

 

 

 

先ほど口答えしていた人々が、改造中の超高層ビルの屋上にて円を描くようにしてマイナーの爪に脅されており、その中心のひときわ高い位置にダイーダが磔にされていた。

 

 

「一体どうしようってんだ!?」

 

「殺すならさっさと殺せ!!」

 

 

ゴーロ「喚け! てめぇらのその恨みに満ちた負の感情が、マイナスエネルギーを呼び集めるいい供物になる」

 

 

 

ダイーダ「なるほどね。わざわざ人を奴隷にしたのは、そう言った感情を溢れかえらせるためってことね」

 

 

ファル「わかっていれば話は早い。そして貴様はこの世界をマイナスエネルギーで染め上げるための呼び水だ。 プラスエネルギーの塊である貴様は逆に言えばマイナスエネルギーを最も吸収しやすい存在だからな」

 

磔にされたダイーダを殴りつけながら、ファルはそう言い捨てた。

 

 

 

Dr.フライ「どうじゃプリキュア。今まで守ってきた人間の思いが世界を暗黒に染め上げ、しかもお前自身がそれを誘発するのじゃ。特別警備隊員としてこれ以上ない屈辱じゃろ!! ヒャッヒャッヒャッ!!」

 

 

 

 

節子「誰か、助けてくれる人はいないの?」

 

Dr.フライの耳を塞ぎたくなるような下劣な笑い声の響く中、マイナーに捕らえられながら、節子は天を仰ぎ必死に祈っていた。

 

 

 

 

 

その頃

 

 

 

 

 

アメリカ上空、高度3万メートルにて三冠号が到着していた。

 

 

豪「ようしじいちゃん。小型衛星を積んだロケットを発射するよ」

 

 

遠藤「うむ、軌道上へのコントロールはこっちでやる。いつでもいいぞ」

 

豪「OK。発射!!」

 

 

 

その声とともに三冠号のボタンを押すと、小型衛星を搭載したロケットは衛星軌道上へとコントロールされていった。

 

 

遠藤「ようし軌道に乗った。ソーラーパネル展開」

 

 

司令室からの遠藤博士の遠隔操作で、小型衛星はソーラーパネルを展開し始め太陽光線を吸収し始めた。

 

 

ラン「ぶっつけ本番になっちゃったけど、どうかうまくいきますように…」

 

ランは手を組み、目をつぶって必死に祈っていた。

 

 

するとランの肩に手を置き、京香先生が優しく告げた。

 

京香「信じましょう。あなたのおじいさんを」

 

 

 

そしてやがて小型衛星にエネルギーの充填が終わり、発射態勢に入った。

 

 

遠藤「エネルギー充填完了。最大出力でマイナーどもを焼き尽くせ!!」

 

 

遠藤博士が手元の発射ボタンを押すと、小型衛星からアメリカ全土にわたってマイナスエネルギーの浄化光線が発射された。

 

 

 

 

豪「うわーっ!! すっげえ!!」

 

 

三冠号からのその光景は、まさしく光のシャワーといったものであり、鬱々とした空気を一気に消し飛ばす美しさと暖かさに満ち溢れていた。

 

豪は不謹慎と思いつつも、その幻想的な光景の美しさに魅入られていた。

 

 

 

 

そして、その光の降り注いだ地上ではアメリカ全土を我が物顔で蹂躙していたマイナー達が苦しみ始めていた。

 

 

やがてマイナー達から黒い靄のようなものが滲み出し、小さなアリへと戻っていった。

 

虐げられていた人々はその光景に驚きながらも、皆が歓喜の声をあげ、中には憎しみを込めてそのアリを踏み潰している人もいた。

 

 

 

 

その光景を三冠号の望遠モニターで確認していた遠藤博士は、ラン達と手を取り合って大はしゃぎしていた。

 

 

遠藤「やったやった!! 大成功じゃ!! フライの鼻を明かしてやったぞ!!」

 

京香「おめでとうございます!!」

 

ラン「やったわねおじいちゃん!!」

 

 

 

 

一方、地上の状況を確認したリーフは三冠号の後部ハッチを開いていた。

 

リーフ「よーし、ダイーダちゃん。今助けに行くからね!!」

 

 

そうして高度3万メートル上空からリーフは単身ニューヨークに向かって飛び降りた。

 

降下を始めて十数秒後、リーフは力の限り叫んだ。

 

 

 

 

 

リーフ「来なさい!!  ライナージェーット!!!」

 

 

 

 

 

その叫びとともに、三冠号から猛烈なスピードで何かが発進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカ ニューヨーク

 

 

 

 

 

突如として降り注いだ光にマイナー達が消滅してしまったことによる動揺はここでは群を抜いていた。

 

 

Dr.フライ「な、何!? こ、これはどういうことじゃ!?」

 

ファル「ぐうっ、なんだこの光?」

 

ゴーロ「気分が悪くなってくるぜ…」

 

 

 

マイナー達がアリに変わってしまったことに加え、Dr.フライ以下ファルとゴーロも胸を押さえて苦しみ始めた。

 

 

「よし今だ!! みんな逃げろ!!」

 

 

チャンスと判断し、捕らえられていた人々は皆一目散に逃げ出した。

 

 

屋上の人々の中にはダイーダを助けようとする人もいたが、それはダイーダ自身が断った。

 

ダイーダ「私は大丈夫です。それより早く逃げてください」

 

 

「し、しかし…」

 

さすがに磔状態の少女を一人放って逃げるというのは抵抗があったか、かなり躊躇していた。

 

 

ダイーダ「ためらわないでください。早くしないとあいつらが回復します」

 

 

その言葉に振り返ると、苦しんでいたファルとゴーロがなんとか立ち上がろうとしていたところだった。

 

 

「くっ、すまん!!」

 

 

止むを得ず、苦渋の決断というように皆はダイーダを置いて逃げることを優先した。

 

 

 

ファル「特別警備隊員というのも大変だな。あんな連中でも自分より優先して守らなきゃならねぇとは」

 

 

完全に復調したファルが、一人取り残されたダイーダに対してそう言うも、ダイーダの目は死んでいなかった。

 

ダイーダ「そうでもないわよ。あの人達の心にはきちんとプラスエネルギーが宿っている。私のことを置いて逃げることを後悔していた。その思いは必ず前に進んでいく力になる!」

 

 

ゴーロ「ほざけ!! 貴様はもうこの場で一人だけだ。助かるかもしれねぇチャンスをみすみすフイにした大バカ野郎になるんだよ!!」

 

 

そう怒鳴り散らしたゴーロに、ダイーダは不敵に笑った。

 

 

ダイーダ「そうでもないわよ。助けを断ったのは、きちんと助かるあてがあるからよ」

 

 

ゴーロ「黙れ!! その減らず口が二度と聞けないようにぶっ壊してやる!!」

 

そのダイーダの言葉に何かが切れたゴーロは、ダイーダのボディを打ち砕かんと大きく拳を振りかぶった。

 

 

 

 

しかし次の瞬間、何かが空に光ったかと思うと風を切り裂いて飛んでくる音が聞こえた。

 

 

そしてそれに気づいた時には、ゴーロの目の前を視認することもできないような速度で何かが通過していき、その衝撃波でゴーロは吹き飛ばされた。

 

 

ゴーロ「な、何だぁ?」

 

 

突然のことにゴーロは何が起きたのかまるで理解できていなかった。

 

今の今まで目の前で磔になっていたダイーダの姿も、磔台ごと消えていた。

 

 

ファルやDr.フライもあたりをきょろきょろと見回していたが、そこに上空からダイーダが磔になっていた磔台「だけ」が落ちてきた。

 

 

Dr.フライ「何? プリキュアはどこに行った!?」

 

 

ファル「ん? あそこだ!!」

 

 

ファルが指差した先には、小型のジェット機のようなものにサーフボードに乗るように飛行しているリーフとダイーダがいた。

 

 

 

 

 

 

リーフ「ダイーダちゃん大丈夫? 遅くなってごめんね」

 

心配そうに問いかけるリーフに、ダイーダは手首をぐるぐると回しながら返した。

 

ダイーダ「なぁに、これぐらいどうってことないわ。それよりこのジェット機は…」

 

 

 

リーフ「うん、ダイーダちゃんが作ってたやつだよ。博士から全部聞いたよ、ごめんね変な意地張っちゃったせいで。 私いざという時にダイーダちゃんをすぐに助けに行けないのが悔しくて。 だから機動力のあるものが欲しかったんだ」

 

ダイーダ「いいのよ。私だって意地を張ったのは同じだもの。いざという時に、あなたを苦しめてるやつをすぐに倒せるような力が欲しかったから…」

 

 

その答えに二人は微笑みあった。

 

リーフ「ふふっ。私達、似た者同士だよね」

 

ダイーダ「ふっ、そうね。それよりこのジェット機のデータを送ってくれる?」

 

 

リーフ「わかった。これが新兵器、ライナージェットだよ」

 

リーフは秘密通信機能を使ってこの新兵器ライナージェットの全スペックデータを転送した。

 

 

ダイーダ「…なるほどね。なかなかのものじゃない」

 

そのスペックを確認し、ダイーダは満足そうにリーフを褒め称えた。

 

 

 

 

 

ファル「おのれ、プリキュア!! いけ合体メイジャー!!」

 

 

苦々しく顔をしかめたファルの命令に従い、タカ・クマ合体メイジャーがどこからともなく飛来し、ライナージェットに乗った二人を撃墜しようと高速で飛び回りながら火の玉を吐き出してきた。

 

 

 

リーフ「なんのこれしき!!」

 

しかしリーフはライナージェットをサーフィンのように操り、ひらりひらりと攻撃をかわした。

 

 

まるで攻撃が当たる様子のない状態に、タカ・クマ合体メイジャーはイライラしたように雄叫びをあげると、翼を大きく広げ高速で突っ込んできた。

 

 

爪を鋭く尖らせ、高速で飛び回るライナージェットを捉えようとしたタカ・クマ合体メイジャーだったが、ライナージェットのスピード・機動力はそれをはるかに上回っていた。

 

 

ファル「!! なんだあのスピードは!?」

 

 

縦横無尽かつ猛スピードで飛び回るライナージェットに翻弄されたタカ・クマ合体メイジャーは、ついにそれを見失ってしまった。

 

 

そして次の瞬間、翼を何かに刈り取られてしまった。

 

 

リーフ「どうよ! このライナージェットは高速で飛び回ることで翼に空気の刃をコーティングできる仕組みなんだから」

 

 

翼を失い、地面に落下し叩きつけられたタカ・クマ合体メイジャーを見てリーフとダイーダは力強く頷きあった。

 

 

リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」

 

 

その掛け声とともに、二人はジャンプしてトンボを切りライナージェットから飛び降りた。

 

 

その瞬間、二人の体は光に包まれ、着地した時には姿が大きく変わっていた。

 

 

ショートカットだったリーフは、ボリュームのある濃いピンクの髪に変化し、着用している服も、ごく普通の服からフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものになっていた。

 

 

 

ダイーダのポニーテールは、一本から五本にまで増え、背中にかかるかかからないかだったそれも、腰まで伸びて金色になっていた。

 

 

そしてリーフ同様のデザインの純白を基調にしたフリルのついたドレスを着用していた。

 

 

 

そして怪物をキッと睨むと二人は名乗りをあげた。

 

 

リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

 

リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」

 

 

 

 

ゴーロ「クソがぁ!!!」

 

ファル「行くぞ!!」

 

 

リリーフとダイダーに突っ込んでいった二人だが、半ばヤケクソ気味だったためかあっさりといなされてしまった。

 

 

ダイダー「ゴーロ!! ずいぶんやりたい放題やってくれたわね!!」

 

 

散々なぶられたお返しとばかりに、ダイダーはゴーロのボディに何発もパンチを叩き込んだ。

 

 

ゴーロ「ごふ!! ゲフ!!」

 

その攻撃の前に、ゴーロは呻き声を出して動きが止まってしまった。

 

 

そんなゴーロをヘッドロックで抑え込むと、ダイダーはリリーフの方を見やった。

 

 

リリーフもまたファルを同じように抑えつけており、ダイダーを見やってきた。

 

 

一瞬のアイコンタクトを交わすと、リリーフとダイダーはそのままの体勢で走り寄り、抱えたゴーロとファルの頭をその勢いで正面衝突させた。

 

 

ファル・ゴーロ「「!!!!!」」

 

声にならないほどの衝撃にゴーロとファルはそのまま倒れ込んでしまった。

 

 

豪「すっげえ、息ぴったり!! やっぱこうでなくっちゃ」

 

上空の三冠号で地上のコズミックプリキュアの戦いぶりを見ていた豪は感心するようにウンウンと頷いた。

 

 

 

リリーフ「どんなもんよ!!」

 

ダイダー「自慢じゃないけど、二人一緒なら絶対に負けないわ!!」

 

完全にダウンしているゴーロとファルを見下ろして、リリーフとダイダーは自信満々にそう言った。

 

 

そこに雄叫びと共に、先ほど地面に落下したタカ・クマ合体メイジャーが爪を振りかざして襲いかかってきた。

 

 

リリーフ・ダイダー「「やあっ!!」」

 

 

しかしこの二人はとっさに目の前で倒れ伏しているゴーロとファルを投げつけてタカ・クマ合体メイジャーを怯ませ、距離をとった。

 

 

リリーフ「チェンジハンド・タイプブルー!!  エレキ光線発射!!」

 

ダイダー「チェンジハンド・タイプグリーン!! 超高熱プラズマ火炎発射!!」

 

 

リリーフは両腕を稲妻模様の走った青い腕に換装し電撃光線を、ダイダーもまた両腕を噴射口のようなもののついた緑色の腕に換装し火炎を噴射し、タカ・クマ合体メイジャーに浴びせた。

 

 

 

さすがにこの同時攻撃にはまいったか、タカ・クマ合体メイジャーは弱々しい雄叫びをあげて膝をついてしまった。

 

 

リリーフ「よし、止めだよ!!」

 

ダイダー「ええ!!」

 

 

 

 

 

一方、一人こそこそと逃げ出そうとしていたDr.フライだったが、捕らえられていた人々に見つかり、袋叩きにあっていた。

 

 

「このやろう!! 散々威張り腐りやがって!!」

 

「よくもやってくれたな!!」

 

Dr.フライ「無礼者どもが!! わしを誰だと思っておるか!!」

 

小さく身をかがめ必死に身を守りながら、性懲りも無くそんなセリフを吐く姿はいかにも小物くさくみっともないものであった。

 

 

「知るか!! このままぶち殺してやろうぜ!!」

 

 

殴る蹴るの暴行に加えスコップやツルハシまで抱えたものが出始め、もはや完全に暴徒と化し始めていた。

 

 

Dr.フライ「うるさいわ!! 無礼者どもが!!」

 

そう喚き散らすと、Dr.フライの体から黒い波動のようなものが発生し、取り囲んでいた人達は吹き飛ばされた。

 

「な、なんだ今の?」

 

「なんか変なもんが…?」

 

 

Dr.フライ「ん? なんじゃこれは?」

 

取り囲んでいた人はもちろん、Dr.フライ本人もきょとんとする中、ゴーロとファルがふらつきながら来て、近くの人間を盾にした。

 

 

ゴーロ「プリキュア!! 下手なことをしてみろ!! こいつらの命はないぞ!!」

 

ファル「変身解除して投降してもらおうか」

 

 

ふらつきながらもニヤリと笑いながらそう告げたゴーロとファルだったが、リリーフとダイダーは引かなかった。

 

 

ダイダー「ふっ。来なさい、ライナージェット!!」

 

 

その自信にあふれたダイダーの呼びかけに応えるように、ライナージェットが降下してきた。

 

そしてゆっくりと降下してきたライナージェットを、リリーフとダイダーが両翼を肩に担いだ。

 

 

するとライナージェットの左右からトリガーのついた小さなグリップが飛び出すと同時に、機首が開き何かの発射口のようなものが現れた。

 

 

リリーフ「ライナージェット、カノンモードスタンバイ!!」

 

ダイダー「ターゲットロック!! プラスエネルギーチャージ!!」

 

 

ライナージェットの砲身が自分達の方に向けられ、しかもエネルギーが充填されていくのを見たDr.フライ達は慌てた。

 

 

Dr.フライ「待て!! こちらには人質がいるのが見えんのか!?」

 

ゴーロ「てめぇら、この人間どもを巻き添えにできるのか!?」

 

 

そんな言葉にまるで耳を貸すこともなく、リリーフとダイダーは照準をセットしたままだった。

 

 

ファル「くっ!! 合体メイジャー、連中を吹き飛ばせ!!」

 

 

そのファルの言葉に、タカ・クマ合体メイジャーの口から熱線とでも呼ぶような強力な火炎砲が放たれてきた。

 

 

 

しかしそれより一瞬早く、ライナージェットのエネルギー充填は完了した。

 

リリーフ・ダイダー「「プリキュア・ウォークオフ・ブラスター!!」」

 

 

その掛け声とともにリリーフとダイダーは発射トリガーを引いた。

 

 

リリーフ・ダイダー「「 ファイヤー!!!!」」

 

 

 

 

ライナージェットから放たれた光の奔流とでもいうかのような、眩しくそして温かいエネルギー波は、合体メイジャーの火炎砲をあっさりかき消し、合体メイジャーはもちろんその射線上にいたDr.フライにゴーロとファル、さらには人質までをも飲み込んでいった。

 

Dr.フライ・ゴーロ・ファル「「「グオオオオーッ!!!」」」

 

人質「「「「うわあーっ!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

そしてその光がかき消えた時には、合体メイジャーは気絶したクマとタカに戻っており、Dr.フライ達は大ダメージを受けて仰向けになって倒れていた。

 

 

ゴーロ「なんで、人間どもは無事なんだ…」

 

ファル「どうして俺たちだけにダメージが…」

 

 

その言葉通り、人質にされていたはずの人は完全に無傷であり、狐につままれたような顔をしていた。

 

人質「へっ? 今の何なんだ?」

 

人質「ちょっと眩しかっただけで… 何とも…」

 

 

 

 

 

リリーフ「これはプラスエネルギーだけを圧縮・増幅させて発射できるの。だからマイナスエネルギーで塊みたいなあなた達みたいな連中にしかダメージにならないよ!!」

 

リリーフがそう言い放った直後、ライナージェットを反対側で支えていたダイダーが力尽きたように膝をついた。

 

 

ダイダー「よかったわね。私の受けたダメージのせいで威力が半減したみたいで。本当ならこの一撃で維持するだけでもやっとになってたでしょうね…」

 

 

やはりダイダーの受けていたダメージはかなりのものであったらしく、限界のようであった。

 

 

 

Dr.フライ「な… なぜわしにまで…?」

 

 

同じようにダメージを受けて倒れてしまったDr.フライがそう呟いた瞬間、Dr.フライにゴーロやファルの体を黒い靄のようなものが包み込んだ。

 

 

そしてドスの効いた低い声がどこからか響き渡った。

 

 

 

『コズミックプリキュアよ』

 

 

リリーフ「この声は!?」

 

ダイダー「パーフェクト!?」

 

 

パーフェクト『いかにも、我は次元皇帝パーフェクト。 今日のところは貴様らに華をもたせてやる。 しかし覚えておけ、この世界はやがて暗黒の世となることをな。 人間どもよ、お前達の未来は決まっているのだ』

 

 

 

そして高笑いとともにその声が消えて行った時には、Dr.フライ達の姿もまた煙のように消えていた。

 

 

 

 

 

 

一連の事態がとりあえず解決し、リリーフとダイダーはアメリカ国民からの拍手の嵐の中にいた。

 

 

大統領「アメリカ合衆国代表として感謝いたします。本当にありがとうございました」

 

 

リリーフ「いえ、私達は大したことはしていません」

 

ダイダー「それよりも1日も早く、復興できるように頑張ってください」

 

 

大統領「はい! もちろんですとも!!」

 

 

 

その会話に、アメリカ全土から津波のような感謝の言葉が轟々と二人に寄せられた。

 

 

そしてアメリカを覆い尽くすそんな感謝と歓喜の声の中、リーフとダイーダは三冠号で帰還していった。

 

 

節子「コズミックプリキュア。彼女達の大活躍でこの私はもちろん、アメリカもそして世界も救われました。まさに現代のジャンヌダルク。素晴らしいスーパーヒロインです!!」

 

大興奮の中そうレポートをした甲斐 節子だったが、真剣な面持ちで続けた。

 

節子「しかしまだ油断はできません。あの次元皇帝パーフェクトとはいったい何者なのでしょうか? これは一時の勝利に過ぎず、我々はまだ完全に救われたわけではないのかもしれません…」

 

 

 

 

 

 

豪「やれやれ。一時はどうなるかと思ったけど、一件落着だね。姉ちゃん達も仲直りできてよかったよ」

 

 

豪はホッとしたようにそう言ったが、リーフ達の顔は晴れなかった。

 

 

豪「? どうしたの?」

 

 

ダイーダ「あいつら、マイナスエネルギーを呼び集めるために多くの人を奴隷にしていたけど、じゃああの建物は何のために必要だったのかしら?」

 

リーフ「それにこんな大規模な作戦に出たのに、あっさり引いていった。それが気になるんだよね…」

 

 

 

 

第30話 終

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。