甲子市 市街地
火は燃え広がる一方であり、消防も駆けつけて作業に当たっていたが、なかなか鎮火する気配がなかった。
消防隊員「くそっ!! なかなか鎮火しないから、救助に入ることもできん!! 中の人達がまずいぞ!!」
隊員達が焦る中、三冠号が飛来した。
消防隊員「なんだあれは? 救援か?」
豪「うわぁ、ひでぇ……」
三冠号のコックピットでは、豪が地上の状況を見てそう感想を漏らしていた。
するとコックピットのモニターに遠藤博士の顔が映った。
遠藤「右端のスイッチを押せ。わしの開発した特殊万能消火弾が投下される」
ダイーダ「右端…これか!!」
すると三冠号から消火弾が投下され、たちまちのうちに地上の火事は鎮火していった。
消防隊員「おぉ、すごい!!」
リーフ「よ〜し、火は消えた。中の人達を助けないと」
遠藤「うむ、いいか二人とも。お前達の使っているアンドロイドのボディにはレスキューに必要な様々な装備が内蔵されておる。中でも瞬間換装可能なマルチハンドはお前らの力の基本となるべきものじゃ」
豪「マルチハンド…」
遠藤「うむ、三冠号はこちらで自動操縦に切り替える。リーフ、お前の腕をイエローハンドに換装しろ」
リーフ「りょ〜かい。チェンジハンド・タイプイエロー!!」
その掛け声とともに、リーフの両腕が小さなロケットが装備された黄色の腕に変わった。
遠藤「そのイエローハンドにセットされた偵察ロケット、センサーアイには、X線やサーモグラファー等が内蔵されていて、半径10km四方の情報を詳細に手に入れることができる。それで、倒壊したビルの内部状況や要救助者の位置を割り出すんじゃ」
リーフ「はい!!」
その返事とともに、リーフはコックピットハッチを開け、右腕を空にかざし、センサーアイを発射した。
するとリーフの電子頭脳にセンサーアイから次々と情報が送られてきた。
リーフ「…ふんふん。こうなってああなって…こことこことここに…。よし、全部わかりました〜!!」
遠藤「よし、そのデータをダイーダにも転送するんじゃ。二人とも、要救助者の救助じゃ」
リーフ「行くよ、ダイーダちゃん」
ダイーダ「ふっ、任されて!!」
その威勢のいい返事とともにリーフとダイーダは、上空の三冠号から飛び降り、倒壊したビルの上に降り立った。
ダイーダ「よし、ここの瓦礫を撤去するのが最短ルートね。じゃあ私も使ってみますか。チェンジハンド・タイプレッド!!」
その掛け声とともにダイーダの両腕は一回り大きなゴツゴツした赤い腕に換装した。
ダイーダ「ヌゥオオオオ!!」
すると、ダイーダは自分の何倍もの重さのありそうな瓦礫を片手で軽々と持ち上げ、投げ飛ばしていった。
ラン「すごい力…」
その様子を三冠号のカメラを通して見ていたランは、驚きながらそう呟いた。
遠藤「フッフッフッ。あのレッドハンドは大型トラックをも片手で持ち上げるほどのパワーが秘められておるのじゃ。主に被災地における瓦礫などの撤去を迅速に行うためのものじゃ」
瓦礫の撤去を行い、通路を確保したダイーダはリーフと一緒にそのまま倒壊したビルの中へと入っていった。
ダイーダ「えーっと、さっきの情報によるとこっちの方に…」
「ううっ、痛て〜よ〜」
「助けてくれ〜」
中を進んでいると、多くの怪我をした人達が痛みに呻き声をあげていた。
ダイーダ「大丈夫ですか? しっかりしてください!!」
リーフ「もう大丈夫ですよ!」
そんな人達を励ますと、ダイーダとリーフは目にも止まらぬスピードと正確さで、次々と応急処置を施していった。
ダイーダ「あっちから外に出られます。私は奥に向かいますので、すいませんが自力で歩ける人は自力でお願いします」
リーフ「足に大きな怪我した人は私が運びます。ダイーダちゃん奥の方はお願い」
怪我人「おぉ、ありがとう」
怪我人「助かった、天使みたいな人達だ」
そうしてリーフは怪我人を連れて出口に、ダイーダは奥へと向かっていった。
奥へ向かっていったダイーダは、そこで未だくすぶっている火と、歪んでしまった鉄の防火扉に足を挟まれて動けない人を見つけた。
「熱いよ〜、助けて〜」
ダイーダ「待っててください、まずは火を消さないと。チェンジハンド・タイプグリーン!!」
すると今度はダイーダの両腕が、何かの噴射口のようなもののついた緑色の腕に換装された。
そのまま左腕を前に差し出すと、真っ白いガスが吹き出し、たちまちのうちに火が消えた。
ダイーダ「なるほど、この緑の腕は左手からは超低温の冷凍ガスが出て… 待っててください、すぐに足が動くようにします」
そう言って足を挟まれてる人のところに行くも、下手に扉をこじ開けてしまうと、連鎖的に瓦礫が崩れダイーダもろともに埋まってしまいかねなかった。
ダイーダ「これは、この部分だけを焼き切るしかない… 少し熱いけど我慢してください」
そして今度は右腕を差し出すと、バーナーのような炎が噴射し、鉄の扉をバターのように焼き切った。
ダイーダ「右手からは超高熱のプラズマジェット火炎… こりゃ便利だわ。 っと、この人で最後ね」
そうして救助した人に応急処置を施した上でおぶり、ダイーダもまた出口へと向かっていった。
一方、外では到着していた救急車にリーフが怪我人を引き渡していた。
リーフ「あ、お願いします。こちらの人は腕の骨折。あちらの人は頭に裂傷。それでそっちの人が…」
手際よく怪我人の状況を説明していくリーフに救急隊員は戸惑いながらも、感心していた。
救急隊員「すごいなあの子」
救急隊員「おまけにこの人達の応急処置。こっちが教わりたいぐらいに完璧だぞ」
そんな時、一台の救急車の中で騒動が起こっていた。
救急隊員「おい、まずいぞ。機械のバッテリーがあがってる。これじゃあ…」
その声は車内にだけ響いたものだったが、リーフの超高性能集音器のついた耳はそれを聞き逃さなかった。
リーフ「バッテリーが… ようし、チェンジハンド・タイプブルー!!」
その掛け声とともに、リーフの両腕は稲妻模様の走った青い腕に換装された。
そのまま先ほどの救急車に駆け寄ると、その両腕で救急車にタッチした。
するとリーフの青い腕から電流が流れ、たちまちのうちにバッテリーが回復した。
救急隊員「ん、なんだ? 急にバッテリーが…まあいい、いけるぞ!!」
豪「じいちゃん今のは?」
上空の三冠号から今のリーフの行動を見ていた豪は、遠藤博士に尋ねた。
遠藤「ブルーハンドは電流を発生させ、モーターを動かしたり電気をつけることができるのじゃ。つまり、災害時に何らかの障害で発電所や発電機がストップしても、リーフがいればたちどころに電源を回復することができるのじゃ」
豪「すっげぇ!! 完璧じゃん!!」
ダイーダ「リーフ、この人で最後よ。そっちは?」
リーフ「あっ、ダイーダちゃん。うん、こっちもオッケー!!」
そうこうしているうちに、ダイーダが最後の怪我人を連れて出てきた。
救急隊員「いやぁ、助かりました。おかげでこの惨事なのに、犠牲者がほとんど出ないで済みました。しかし、君達は…」
すると突如地震が起き、巨大なモグラのような怪物が出現した。
救急隊員「か、怪物!?」
突如出現したその怪物に、皆はパニックになっていた。
豪「な、何なんだあいつ!?」
それは上空の三冠号にいた豪も例外ではなかった。
リーフ「このマイナスエネルギーは…」
ダイーダ「あいつの手先ね…、それでこの事態を引き起こしたのも…」
そんな会話をしていると、巨大モグラの怪物は人々に襲いかかろうとしていた。
リーフ「させない!! エレキ光線発射!!」
そう叫び、リーフが先ほどのブルーハンドを怪物に向けてかざすと、稲妻のごとく電撃が放たれ、それを浴びた怪物は電撃ショックとともに苦悶の悲鳴をあげた。
ダイーダ「ハァアアア!!」
ひるんだ怪物に飛びかかったダイーダは、そのまま飛び蹴りを食らわせ、怪物を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされた怪物はかなりのダメージを受けたようだったが、そのまま立ち上がり、リーフとダイーダに爪を振りかざし襲いかかってきた。
リーフ・ダイーダ「「くっ!!」」
なんとかその振り下ろされた爪を受け止めるも、動きの止まったところを狙ってもう片方の爪が横薙ぎに襲いかかってきた。
リーフ・ダイーダ「「キャアアア!!」」
モグラ怪物の攻撃を受けて吹き飛ばされた二人を見て、遠藤博士は慌てて指示を出した。
遠藤「いかん!! お前達のボディはそもそもがレスキュー用じゃ。一般的な人間より身体能力ははるかに高いが、そんな巨大な怪物と戦うことは想定しとらん!! 逃げるんじゃ!!」
その指示は二人に通じたが、彼女達は立ち上がりながら首を振った。
リーフ「逃げるなんてできないよ」
ダイーダ「そういうこと。あいつらを倒すことが私達の使命だもんね」
ダイーダ「あいつは、この世界の生き物にマイナスエネルギーの塊が取り付いているみたいね… と、するなら…」
リーフ「うん、それを浄化すればいい!! ならやることは一つ!!」
そうして二人は顔を見合わせて力強く頷きあった。
そして
リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」
その掛け声とともに、二人はジャンプしてトンボを切った。
その瞬間、二人の体は光に包まれ、着地した時には姿が大きく変わっていた。
ショートカットだったリーフは、ボリュームのある濃いピンクの髪に変化し、着用している服も、ごく普通の服からフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものになっていた。
ダイーダのポニーテールは、一本から五本にまで増え、背中にかかるかかからないかだったそれも、腰まで伸びて金色になっていた。
そしてリーフ同様のデザインの純白を基調にしたフリルのついたドレスを着用していた。
そして怪物をキッと睨むと二人は名乗りをあげた。
「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」
「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」
リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」
その光景に、遠藤博士は完全に混乱していた。
遠藤「な、何じゃ!? 変身したじゃと? わしはこんな設計はしとらんぞ!」
ラン「もしかして… あの二人が、光の精霊がアンドロイドに乗り移ったからじゃないの!?」
リリーフ「ダイーダちゃん、先に行くよ!!」
ダイダー「オッケー、任せた!!」
そう言って一歩前に出たリリーフは、野球のピッチャーがボールを投げるように振りかぶった。
するとリリーフの手の中に、虹色の光の玉が輝き始めた。
リリーフ「受けなさい!! プリキュア・レインボール!!」
その叫びとともに、リリーフは虹色の玉をものすごい勢いで怪物に向かって投げつけた。
その音速に達するかというような速度で投げつけられた光の玉を怪物は回避することもできず、玉はまともに土手っ腹を貫通した。
するとその貫通した穴から、黒い靄のようなものが溢れ出し始め、怪物は苦しみ始めた。
それを見たダイダーは、光のスティックのようなものを取り出した。
ダイダー「これで決めてやるわ。プリキュア・シャイニングスイング!!」
そう叫びながら、ダイダーはスティックを野球のスイングのように一振りした。
すると光の斬撃が飛んでいき、怪物を真っ二つに切り裂いた。
その切り裂かれたところから、さらに大量の黒い靄のようなものが溢れ出し、ついに怪物は力尽きたように倒れた。
リリーフ・ダイダー「「ゲームセット!!」」
そして二人がそう叫ぶと同時に大爆発が発生し、その後には一匹のモグラが目を回して気絶していた。
遠藤「何? それはモグラか?」
遠藤博士の通信に、リリーフ達は答えた。
リリーフ「はい。おそらく何者かが、この生き物にマイナスエネルギーを大量に注ぎ込んだことで変異したと思われます」
ダイダー「この生き物も大変な目にあったわね。でももう大丈夫よ。マイナスエネルギーの浄化は完了したから」
遠藤「はぁ〜。 わしの想像をはるかに超えとるなぁ」
その光景を物陰から悔しそうに見ている存在があった。
それは、あのDr.フライの秘密研究所にあったあの二体の男のアンドロイドだった。
その後、モグラを手当てした上で放してやり、変身を解除したリーフとダイーダは豪と一緒に三冠号で帰路に着いた。
豪「すごかったな! コズミックプリキュア、スッゲェかっこよかった!!」
上機嫌でそう告げた豪に、リーフとダイーダは厳しい表情で告げた。
リーフ「そう喜んでばっかりはいられないんだよね〜」
豪「え?」
ダイーダ「そうそう。次元皇帝パーフェクトとの戦いがこれから始まるんだから…」
第2話 終