コズミックプリキュア   作:k-suke

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第28話  「壊滅! コズミックプリキュア (後編)」

 

 

 

 

アメリカ 西海岸上空

 

 

 

豪「ここがアメリカの西の端。まだパーフェクト達もここまでは来てないみたいだけど…」

 

三冠号のモニターを操作しつつ豪がそう言うと、どこか棘のある会話が始まった。

 

 

リーフ「もっと早く到着できたら、ここまで占領されずに済んだかもしれないね」

 

ダイーダ「あれだけの数相手にどうやって戦うつもりなのかしら? 今の力じゃ到底無理よ。それぐらいわからないものかしら?」

 

 

 

豪「もうーっ!! いい加減にしてよ!! それよりこれからどうするかだよ!!」

 

そんな会話にイライラしたように豪が叫ぶと、遠藤博士から通信が入った。

 

 

遠藤『聞こえるか? お前ら、今どの辺りにおる?』

 

豪「じいちゃん? 今ちょうどアメリカ西海岸についたところだよ。まだこの辺は大丈夫みたいだけど…」

 

 

遠藤『本当か? ならちょうどいい、至急ロサンゼルスに向かってくれ。 今襲われ始めたとの情報が入った』

 

 

豪「わかった、すぐ行くよ。姉ちゃんたちもいい?」

 

ダイーダ「私はいいけどね。 どっかののろまはどうだか…」

 

リーフ「早く動こうなんて発想がないくせによく言うよ。力押ししか頭にないよりはいいと思うけどな」

 

 

豪「…とにかくいいんだね。早くロサンゼルスに行こう」

 

小学生である自分でもやらないような低レベルの喧嘩にうんざりしながらも、とりあえず豪は三冠号をロサンゼルスに向かわせた。

 

 

 

 

 

ロサンゼルス

 

 

このロサンゼルスの空港は、アメリカ脱出を図ろうとする人でごった返していた。 おまけに皆が我先にと搭乗しようとするので、混乱をきたしてしまい却って手続きが遅れる悪循環となっていた。

 

「どけ!! 俺達が先だ!!」

 

「金なら出すぞ!! 早くしてくれ!!」

 

「お願いします、乗せてください!! 赤ん坊がいるんです」

 

 

そんなパニック状態の中、突如として空が陰ったかと思うと、離陸間近だった旅客機が大爆発し木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

 

あまりの光景に言葉を失い、先ほどまでのパニックが沈静化してしまったが、直後悲鳴とともに一層のパニックが巻き起こった。

 

 

旅客機を爆破した張本人である、巨大なタカを思わせる怪物が我が物顔で舞い降り、同時に大量のマイナーがその背中から飛び降りてきたのだ。

 

 

人々は恐怖とともに逃げ惑ったが、元々すし詰め状態で混乱していたところに加えての大パニックである。

 

とてもではないがまともに避難などできるはずもなく、他人を押しのけて逃げようとするも、人々は次々とマイナーの打ち出した粘着ネットに捕らえられていった。

 

 

 

ファル「ふっ、無様なものだ。普段愛だの絆だの騒いでいても一皮むけばこんなものか」

 

そんなエゴに満ちた人をタカ型怪物の目に取り付けてあるカメラ越しに見て、ファルは見下したように吐き捨てた。

 

 

 

すると、上空から暖かな光とともに何かが舞い降りてきた。

 

 

ファル「むっ、この光は!!」

 

 

そしてその光は着地とともに、二人の少女の姿に変わり、人々を捕らえていたマイナー達と戦い始めた。

 

 

 

「あれって!?」

 

「コズミックプリキュアって子達だ!! 来てくれたんだ!!」

 

「助かったぞ!!」

 

 

 

リリーフ「マイナー!! これ以上は()が許さないよ!!」

 

ダイダー「()がいる限り、人を連れ去るなんてさせないわ!!」

 

 

人々の歓喜の声に包まれながら、リリーフとダイダーはマイナーと戦い人々を解放していた。

 

 

 

 

 

リリーフ「チェンジハンド・タイプブルー!!  エレキ光線連続発射!!」

 

リリーフは両腕を稲妻模様の走った青い腕に換装し、電撃光線を四方八方に発射しマイナーを黒焦げにしていた。

 

ダイダー「チェンジハンド・タイプグリーン!! 超高温プラズマ火炎、超低温冷凍ガス、同時発射!!」

 

ダイダーもまた、両腕を噴射口のようなもののついた緑色の腕に換装し、火炎と冷凍ガスを周囲に噴射し、右方から襲い来るマイナーを消し炭に、左方からのを凍結させていた。

 

 

 

そうやって戦っていた二人だったが、時間が経つにつれて少しずつそれを見守る人々からどよめきの声が上がり始めた。

 

 

「何だ? あの二人、確かに強いけど…?」

 

「なんかてんでバラバラに戦ってるみたい…?」

 

 

 

遠藤『ええい!! あの二人は此の期に及んで!!』

 

三冠号から中継される映像を見て、遠藤博士が司令室から頭を掻き毟ってそう愚痴っていた。

 

 

豪「えっ? どうしたのじいちゃん? 二人ともちゃんと戦ってるよ。いつもより強いかも…」

 

確かに豪の言う通り普段よりもはるかに手早く、そして確実にマイナーを倒し人々の救助をしていた。

 

しかし、その危うさに遠藤博士は気がついていた。

 

 

遠藤『いつもと違って連携がまるで取れておらん!! お互いを完全に無視しておるんじゃ!! このままでは…』

 

 

 

ラン『ん? ちょっと!! あの怪物はどこいったの!?』

 

ランが怪物の姿が見えなくなっていることに気がついた途端、タカ型メイジャーが雄叫びと共に口から火炎弾を発射し三冠号の後方に直撃させた。

 

 

豪「わぁあああ!!」

 

突然の攻撃に三冠号はバランスを崩してしまい、失速を始めた。

 

 

 

 

 

リリーフ「豪くん!!」

 

それを見たリリーフは慌てて三冠号に飛び移ると、追撃の火炎弾を浴びせようとしていたタカ型怪物に対して右手をかざした。

 

リリーフ「やらせないよ!! エレキ光線発射!!」

 

 

その電撃でタカ型メイジャーはダメージを負い三冠号への攻撃はそれた。

 

 

しかし完全に地上の状況を無視して攻撃したため、タカ型メイジャーの放った流れ弾が地上にいたダイダーの周辺に着弾した。

 

 

ダイダー「キャアアアア!!」

 

 

その火炎弾の巻き起こした爆発にまともに巻き込まれたダイダーは悲鳴とともに吹っ飛んでしまった。

 

 

ダイダー「イタタ… あのドジ、おかげでひどい目にあったわ」

 

 

そんなことを愚痴りながら立ち上がろうとすると、背後の建物を突き破り突如として巨大なクマの怪物が出現した。

 

ダイダー「なっ!?」

 

驚く暇もなく、ダイダーが立ち上がる前にクマ型メイジャーは爪を振りかざして襲いかかってきた。

 

 

ダイダー「ぐ、ぐうっ!!」

 

 

その攻撃をとっさに受け止めたダイダーだったが、いつもの怪物より一回り巨大なそのクマ型メイジャーと押し相撲の格好になってしまい身動きが取れなくなってしまった。

 

 

 

一方、上空のリリーフも三冠号の翼につかまりながら戦っていたが、縦横無尽に高速で飛び回るタカ型メイジャーを捉えきれず苦戦していた。

 

 

リリーフ「くっ、速すぎる!! 三冠号じゃ小回りがきかないから追いつけない!!」

 

 

二人のプリキュアが完全にメイジャーにかかりっきりになってしまったため、

マイナー達は再び人々を捕まえ始めていた。

 

 

 

リリーフ「ああっ!! させるもんか!!」

 

地上の様子を見て飛び降りようとしたリリーフだったが、タカ型メイジャーがそれを防がんと向かってきた。

 

 

リリーフ「もうどいてよ!!  豪くんお願い!!」

 

豪にそう呼びかけると、豪もヤケクソとでも言うように三冠号の操縦桿を倒した。

 

 

豪「えぇい!! どうにでもなれ!!」

 

 

それによりタカ型メイジャーに三冠号が体当たりする形となり、タカ型メイジャーは悲鳴とともに墜落していった。

 

 

 

それを確認するやリリーフは慌てて飛び降りたものの、時すでに遅く人々の大半は捕らえられてしまっていた。

 

 

リリーフ「その人達を放しなさい!!」

 

なんとか数体のマイナーを叩きのめしたものの、多勢に無勢。

 

 

多くの人達はマイナーに取り囲まれ、人質にされてしまった。

 

リリーフ「くっ!! もっと早く動けたら…」

 

 

迂闊に動くこともできず悔しそうに歯噛みしていると、豪が三冠号から叫んだ。

 

 

 

豪「姉ちゃん!! ダイーダ姉ちゃんが苦戦してるよ!! 早く行って!!」

 

 

その言葉に振り向くと、先ほど墜落していったタカ型メイジャーが、クマ型メイジャーと戦っていたダイダーに攻撃を仕掛けていた。

 

 

 

 

クマ型メイジャーとなんとか互角の勝負をしていたダイダーだったが、予想外の攻撃の前にその均衡が破られてしまった。

 

 

ダイダー「うあっ!! くそ、こいつら…」

 

 

タカ型メイジャーの火炎弾を地面に転がりながらなんとか避けると、両腕を噴射口のようなもののついた緑色の腕に換装した。

 

ダイダー「チェンジハンド・タイプグリーン!! 超低温冷凍ガス発射!!」

 

 

左腕をかざして発射した超低温冷凍ガスでタカ型メイジャーの動きを鈍らせたダイダーだったが、一息つく暇もなくクマ型メイジャーが横から襲いかかってきた。

 

ダイダー「アアアアアッ!!」

 

横薙ぎに振り払われた巨大な爪をまともに食らったダイダーは悲鳴とともに大きく吹き飛ばされてしまった。

 

 

ダイダー「く、くそ… もっと力があれば」

 

 

そんなことを愚痴りながらなんとか立ち上がろうとした時、ダイダーは信じられない光景を見た。

 

 

 

 

なんと、クマ型メイジャーがタカ型メイジャーを背中に背負ったかと思うと、どす黒い稲妻が二体の全身を包み、それが収まった時には二体は合体し、しかもふた回りほど巨大化してしまっていた。

 

 

豪「な、なんだよあれ…」

 

 

もともとメイジャーは既存の生物を怪物にしたような醜悪かつ凶暴そうな姿をしていたが、今目の前にいる合体メイジャーは怪獣と呼んだ方がふさわしい姿をしていた。

 

そのタカ・クマ合体メイジャーが唸りのような雄叫びをあげると、周辺の空気はビリビリと震え、地面さえも揺れたようだった。

 

ダイダー「あいつ、さっきまでのダメージもなくなってる」

 

 

舌打ちをしそうにそう呟いた瞬間、ダイダー目掛けて熱線とでも呼ぶような強力な火炎砲がタカ・クマ合体メイジャーの口から放たれてきた。

 

 

ダイダー「!!!!」

 

とっさに横に飛んだことでかろうじて直撃だけは免れたものの、その火炎砲の威力は常軌を逸しており、一撃でダイダーの後方にあった管制塔を跡形もなく吹き飛ばしてしまった。

 

 

 

リリーフ「うわぁあああ!!」

 

そしてその余波を受けたリリーフも爆風に吹き飛ばされ尻餅をついてしまい、ダイダーに至ってはかなり深刻なダメージを負ってしまった。

 

 

ダイダー「なんて…威力よ…」

 

先ほどまでの戦いのダメージもあって、立ち上がることもまともにできなくなったダイダーにタカ・クマ合体メイジャーは追い討ちのようにどす黒い稲妻を放った。

 

 

ダイダー「ガアアアアア!!!!」

 

 

その直撃を受けたダイダーは悲鳴とともに気絶してしまった。

 

 

 

リリーフ「ダイーダちゃん!!」

 

 

慌てて立ち上がったリリーフだったが一歩遅く、気絶したダイダーはタカ・クマ合体メイジャーの爪に捕らえられてしまった。

 

 

リリーフ「この!!」

 

リリーフは飛びかかるも、タカ・クマ合体メイジャーはそれよりも早く大きく翼を広げて猛スピードでダイダーを連れて飛び去ってしまった。

 

 

 

 

 

ラン『ダイーダさん!?』

 

京香『そんな!?』

 

 

研究所の司令室でも目の前の光景に、ラン達が悲痛な叫びをあげていた。

 

 

 

 

リリーフ「くそ!! 豪くん三冠号で追いかけるよ!!」

 

 

そう呼びかけたリリーフだったが、そこに遠藤博士から通信が入った。

 

 

遠藤『ダメじゃ、一度退却しろ!!』

 

その言葉にリリーフはもちろん、豪や司令室のラン達も耳を疑った。

 

 

リリーフ「た、退却!?」

 

ラン『おじいちゃん!?』

 

豪「じいちゃん何言ってんだよ!! ダイーダ姉ちゃんが!!」

 

 

 

遠藤『わかっておる。 しかしここを含めてアメリカ全土の人間が人質になっていることを忘れるな。 下手に暴れれば被害が増える一方じゃ』

 

 

 

一瞬非情なようにも聞こえたが、唇を噛み締め両手を血が出るほど強く握りしめている様子を見て、遠藤博士が断腸の思いでそう告げたことは、誰の目にも明らかであった。

 

 

リリーフ「ダイーダちゃん… ごめん!!」

 

 

今にも泣き出しそうな顔でそう謝ると、リリーフは三冠号に飛び乗り退却していった。

 

 

 

 

 

「プリキュアが… 負けた…」

 

「俺たちゃどうなるんだ…」

 

退却していった三冠号を見て、残された人々は絶望の表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

その光景はマイナーに取り付けてある小型カメラを通じてDr.フライ、ファルやゴーロ達の知るところとなっていた。

 

 

ゴーロ「けっ、ざまあみやがれ!! 痛快だぜ!!」

 

ファル「ああ、あのリーフの顔は実に愉快だった」

 

 

Dr.フライ「ひゃっひゃっひゃっ!! プリキュアが逃げ出しおった!! これで邪魔者は居ない。人質も用意できた。 早速この世界を暗黒に染め上げてやるとするか!!」

 

 

 

 

 

第28話 終

 

 

 

 


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