コズミックプリキュア   作:k-suke

21 / 53
第20話 「三人の科学者 (後編)」

 

 

 

 

 

遠藤・宝六両博士は、マイナーに脅されるように連れられてビルの一室に案内された。

 

 

遠藤「お前らの欲しがっとるデータはこのUSBの中にある。鶯子ちゃんはどこにおる!」

 

宝六「そうだ! 孫の無事を確認させろ!!」

 

 

「まずは、データを確認してからじゃ」

 

 

そのしわがれた声に振り向くと、そこにはDr.フライがいた。

 

宝六「お前は!!」

 

Dr.フライ「久しぶりじゃのう宝六。相も変わらず人に媚を売るような研究ばかりしおって」

 

 

 

遠藤「フライ!! 貴様…」

 

Dr.フライ「ん? お前は遠藤! これはいい、邪魔者どもが揃うとはな」

 

遠藤「黙れ!! 私利私欲のことしか頭にない極悪人が!!」

 

そう叫んでDr.フライに飛びかかろうとした遠藤博士だったが、鋭い爪を振りかざすマイナーに阻まれてしまった。

 

 

Dr.フライ「ジタバタするな。こちらの要求したデータを確認させてもらおうか」

 

マイナーに護衛をさせ、余裕たっぷりにそう告げたDr.フライに歯噛みしながら、遠藤博士はメモリをマイナーに渡した。

 

遠藤「データはその中に入っている。ただし何重にも暗号化してあるからな。お前程度の頭で解読できるならやってみろ」

 

 

その遠藤博士の挑発的な態度に、Dr.フライは憤慨した。

 

 

Dr.フライ「なめるでないわ!! このわしに向かってその態度。ようし見ておれ!!」

 

 

Dr.フライはマイナーに命じて、部屋にあったパソコンにメモリを刺させた。

 

 

Dr.フライ「ゴーロ、暗号解読ソフトを起動させろ。見ておれ、世界一の頭脳の持ち主であるわしの開発したソフトにかかればこんなものは…」

 

 

 

そんな光景を見ながら遠藤博士は襟元のマイクに囁いた。

 

遠藤(なんとかしばらくは時間が稼げそうじゃ。二人とも頼んだぞ)

 

 

 

 

マンホールから廃ビルの地下にうまく潜入出来たリーフとダイーダも、このやり取りを聞いていた。

 

ダイーダ「よし、とりあえずは作戦成功ね。鶯子ちゃんのところに早く行かないと…」

 

リーフ「大丈夫。センサーアイで調べた時に、人の体温の反応は一箇所しかなかったから場所は特定できてるよ。急ごうダイーダちゃん」

 

 

しかし、ビル内の階段に向かうとマイナーが見張っていた。

 

ダイーダ「まずいわね。下手に暴れるわけにいかないから、見つからないようにしないと…」

 

リーフ「それなら、あそこから」

 

リーフは天井付近にある通気口を指差しながらそう言った。

 

 

二人はそっとその蓋を外すと、見つからないようにその中を這うように進んでいった。

 

 

 

 

Dr.フライ「えぇい、くそ!! 面倒なことをしおって!! まだ解読は終わらんのか!!」

 

解読の進まない暗号化されたデータを前にイライラしていたDr.フライに宝六博士は懇願するように叫んだ。

 

 

宝六「データはもう渡した。孫を連れてきてくれ!! そもそも大気元素浄化装置をいったいどうしようというのだ!?」

 

 

その問いに、Dr.フライは厭らしく嗤った。

 

Dr.フライ「聞きたいか? 装置を逆利用してやるのじゃ。大気中に汚染物質を撒き散らし世界を地獄のようにしてやる。世界のための装置が世界を滅ぼす、考えただけでも気分が良いわ」

 

 

その言葉に、遠藤博士は激昂した。

 

遠藤「なんじゃと!? フライ、貴様それでも人間か!! 科学とは世界のために使われるもの。 そして科学者はその手助けをするものじゃぞ!!」

 

 

Dr.フライ「ふん、その青臭い考えはまるで成長しておらんな。この大天才のわしのことを認めようとしなかった世界じゃ。滅び去ることこそがもっともふさわしいわ」

 

 

宝六「お前というやつは! なぜ学会から追放されたのかいまだに理解しておらんのか!? 天才が聞いてあきれる!!」

 

 

Dr.フライ「黙れ!! 才能など欠片もないくせに、世渡りと子供騙しの才能だけで名の売れた男が!!」

 

 

そんな口論がヒートアップしている間にも、データの解読は進んでいき、ついに解読が完全に終了した。

 

 

Dr.フライ「くだらん話は後だ。これで世界は滅んだも同然。どれどれ…」

 

その知らせを見たDr.フライは満足げに嗤い、解読されたデータを調べ始めた。

 

 

 

その光景を見た遠藤博士は、焦りながら囁いた。

 

 

遠藤(リーフ、ダイーダ!! 超やばい状況じゃ!! まだ鶯子ちゃんは救出できんのか!?)

 

しかしどこからも返事はなく、さらに焦りながら叫んだ。

 

遠藤「おい、どうした!? 聞こえんのか!? そんなはずはなかろう、状況を報告しろ!!」

 

 

そこまで叫んで、遠藤博士はハッと気がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

遠藤「あっ、そうか。これはマイクじゃからこっちの声は送れても向こうの声が聞けんのじゃ」

 

 

 

そしてちょうどそのタイミングでデータを調べ終えたDr.フライは怒りの形相で遠藤博士を睨みつけた。

 

Dr.フライ「おのれ遠藤!! 小細工をしおって!!」

 

 

 

 

 

遠藤「くっそー! やけくそじゃあ!!」

 

破れかぶれというように、突っ込んでいった遠藤博士だったが、Dr.フライの体は何の手応えもなくそのまま後ろの壁に激突してしまった。

 

 

遠藤「イテテ… くそぅホログラムか」

 

 

悔しそうに遠藤博士がつぶやいたところに、Dr.フライの声が響いた。

 

 

Dr.フライ『愚か者めが、このわしがわざわざこんな仕事をすると思うてか。本物のデータを渡せ!!』

 

 

宝六「わかった。本物のデータはここにある。だから孫を返してくれ!!」

 

 

Dr.フライの再三の要求に、作戦の失敗を悟った宝六博士は観念したというように本物のデータを取り出した。

 

 

それを見たDr.フライは満足そうにゴーロに指示を出した。

 

Dr.フライ『よしよし、素直にそうしていればよかったのじゃ。 さあゴーロそのデータを表示しろ』

 

 

 

 

 

 

ゴーロ「悪いがこのデータは永遠に調べられなくなった。ここでこいつらもろともに吹っ飛ぶからなぁ!!」

 

 

遠藤「何!?」

 

宝六「待て、約束が違うぞ!!」

 

ゴーロの言葉に驚いた遠藤・宝六両博士だったが、一番驚いたのはDr.フライだった。

 

Dr.フライ『いきなり何を言い出す!? データがなくなったら意味がないじゃろうが!!』

 

 

 

ゴーロ「うるせぇ!!!! どいつもこいつもイライラさせやがって!! もうテメェの都合なんか知るか!! よくも俺に「こんな仕事」をさせやがったな!!!」

 

 

我慢の限界と言わんばかりにそう叫ぶと、ゴーロは室内にあった機械を操作し始めた。

 

ゴーロ「これで終わりだ! 全員くたばりやがれ!!」

 

遠藤・宝六「「!!!」」

 

 

全員が覚悟を決めた次の瞬間、天井がぶち抜かれ、ゴーロはその下敷きになってしまった。

 

 

ダイーダ「ギリギリだったわね」

 

リーフ「でもなんとか間に合ったよ。宝六さん、鶯子ちゃんは無事ですよ」

 

鶯子「おじいちゃん!!」

 

そして、両腕をレッドハンドに換装したダイーダと鶯子ちゃんを抱えたリーフがその後に降りてきたのだった。

 

 

宝六「鶯子!! ありがとう、君たちのおかげだ!!」

 

遠藤「おお、ナイスタイミングじゃ!! よし、脱出じゃ!!」

 

人質は救出できた今、もはや用はない。

 

そう判断した一同は出口に向かって走り出した。

 

 

 

そんな彼らの前にマイナーが立ちふさがったが、

 

 

ダイーダ「邪魔よ!!」

 

リーフ「どきなさい!!」

 

 

この二人にとってはそんなものは足止めにもならず、あっさり叩きのめされた。

 

 

 

 

遠藤「ふうふう、これで一安心じゃな」

 

廃ビルから脱出し、一息ついていた一同だったが、突如として地震が起きた。

 

遠藤「おおっ、なんじゃ? 地震か?」

 

 

 

ダイーダ「違います、このマイナスエネルギーは…」

 

 

すると地響きとともに、今現在まで一同がいた廃ビルが巨大な怪物に姿を変えた。

 

 

遠藤「なんと!! あんなビルまで怪物にできるのか!?」

 

 

リーフ「いえ。何か変だなとは思っていたんですが、あのビルはおそらくロボットに改造されていました」

 

ダイーダ「その上でマイナスエネルギーを取り付けたってことね、私達みたいにさ」

 

 

 

そうして状況を解説している中、ビル怪物の屋上にゴーロが凄まじい形相で仁王立ちしていた。

 

 

ゴーロ「こうなったら、てめぇらだけでも叩き潰してやる!!」

 

 

そうゴーロが言い放つと、ビル怪物は巨大な拳を振り下ろしてきた。

 

 

リーフ「!! 危ない!!」

 

とっさにリーフ達は博士達を抱えてジャンプしその攻撃を回避したが、怪物の拳の叩きつけられたところは巨大なクレーターが出来上がっていた。

 

 

リーフ「早く逃げてください!!」

 

ダイーダ「あいつらは私達がなんとかします!!」

 

その言葉を聞いた遠藤博士は二人にこの場を任せることにした。

 

 

遠藤「よしわかった。ここは任せたぞ!! さあ、逃げるんじゃ!!」

 

 

博士達が安全な場所に避難したことを確認したリーフとダイーダは頷き合った。

 

 

リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」

 

 

その掛け声とともに二人の体は光に包まれ、着地した時には変身完了し、赤と白のドレスに身を包み、髪型も大きくボリュームが変わっていた。

 

 

 

リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

 

リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」

 

 

 

 

 

 

 

変身完了したコズミックプリキュアに対して、ビル怪物は雄叫びをあげてズシンズシンと地響きをさせながら向かってきた。

 

 

 

ダイダー「チェンジハンド・タイプグリーン!! 超低温冷凍ガス噴射!!」

 

 

しかしダイダーは冷静に両腕を噴射口のようなもののついた緑色の腕に換装し、左手をビル怪物の足元に向け、冷凍ガスを噴射した。

 

 

その冷凍ガスの威力は強烈で、一瞬でビル怪物の足を凍りつかせてしまった。

 

 

移動中に足の自由を奪われたビル怪物はバランスを崩してしまい、前のめりに倒れ始めた。

 

 

 

 

 

リリーフ「ヤァアアア!!」

 

それを狙ってリリーフは正面からアッパーを打ち込んだ。

 

 

カウンター気味にそれを受けたビル怪物は、ダメージを受けてそのまま尻餅をついてしまった。

 

そして前後に大きく揺れたため、ビル怪物の頭に立っていたゴーロもまたバランスを崩して、地面に叩きつけられてしまった。

 

ゴーロ「ごはあっ!!」

 

 

 

 

ダイダー「よし、今よ!!」

 

リリーフ「オッケー!!」

 

 

チャンスと判断した二人は少し距離をとって向かい合った。

 

 

リリーフ「よし、行っくよ〜!!」

 

リリーフは大きく振りかぶり虹色の玉を手に輝かせ始めた。

 

 

 

リリーフ「ダイーダちゃん!!」

 

 

そしてそのまま、その虹色の玉をダイダーに向けて亜音速で投げつけた。

 

 

ダイダー「任せなさい!! ダァリャア!!」

 

 

するとダイダーは、リリーフの投げてきた玉を、取り出した光のスティックを一振りしてビル怪物に向けて打ち返した。

 

打ち返された虹色の玉はひとまわり大きくなり、ビル怪物に直撃すると全体を包み込んだ。

 

リリーフ・ダイダー「「プリキュア・レインボー・ツインバスター!!」」

 

 

そう二人が叫ぶと、ビル怪物を包み込んだ光は目も眩まんばかりに激しく輝き始めた。

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「ゲームセット!!」」

 

 

そのかけ声とともに、二人の必殺技の直撃を受けたビル怪物は、大爆発を起こした。

 

 

そしてその爆発が収まった後には、一寸先がまともに見えないほどの埃がもうもうと立ち上り、見渡す限りの瓦礫の山ができていた。

 

それを目くらましにして、ゴーロはほうぼうの体で逃げ帰った。

 

 

 

 

 

 

宝六「いやあ、ありがとう。何から何まで本当に助かったよ」

 

鶯子「お姉ちゃん達、助けてくれてありがとう」

 

 

心から感謝を述べる二人に、リーフ達もまた微笑みながら返した。

 

 

リーフ「ふふっ、無事でよかったね」

 

ダイーダ「本当、通信を聞いてた時はどうなるかと思ったわ」

 

 

 

宝六「ははは。遠藤、今回は本当にありがとう。何か私が力になれることがあったらなんでも言ってくれ」

 

遠藤「そうか、じゃあ一つ頼みがある。こやつらがプリキュアだということを内緒にしておいてくれんか。特にあの警部さんにはな」

 

 

宝六「わかった。他ならぬ君の頼みだ。約束しよう」

 

 

 

 

 

 

そうして遠藤博士はリーフ達とともに帰路についた。

 

リーフ「いいお友達ですね」

 

ダイーダ「ええ、ああいう絆は大切にしたいですね」

 

遠藤「うむ、友人を失うのは悲しいことじゃ。フライとも、こうなる前に一度話すことができればよかったのじゃがな…」

 

 

 

 

一方、遠藤博士を見送った宝六博士もまた、遠藤博士との友情を噛み締めていた。

 

 

鶯子「おじいちゃん、すごい人達だったね」

 

宝六「ああ、わしの自慢の友達だ。しかし…」

 

宝六博士はふと疑問を口にした。

 

 

 

宝六「あの二人がアンドロイドだというのは本当のようだが、よくテレビで出ているあの飛行機といい、あれだけのもの作るには相当な金がかかったはずだが… 遠藤のやつ、一体どうやってその資金を? まさかとは思いたいが…」

 

 

 

 

第20話 終

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。