コズミックプリキュア   作:k-suke

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第16話 「リーフとシーフ (後編)」

 

 

 

村沢博物館

 

 

 

リーフはニグやサブとともに清掃員の制服を着て、村沢博物館の中にいた。

 

リーフ「これから、このビルのお掃除ですか?」

 

ニグ「まぁ、そんなとこだ。おいサブ、鍵は開いたか?」

 

鍵をいじっていたサブにそう問いかけたが、

 

 

サブ「ダメだ兄貴、電子ロックになってるよ。あのイベントの前までは普通の鍵だったのに」

 

予定外のことにサブは泣き言を言っていた。

 

ニグ「情けない声出すなっての、なんとか開けるんだよ!!」

 

 

 

リーフ「え〜っと、このドアを開ければいいんですね」

 

未だに状況がよく理解できないまま、リーフはドアに手を当て、ハイパーリンク機能を使っていとも簡単にドアのロックを解除した。

 

リーフ「さぁ、開きましたよ」

 

 

 

その光景に、ニグとサブはますますリーフに対する疑念を深め、ひそひそと話し合った。

 

ニグ(こいつ一体なんなんだ?)

 

サブ(魔法少女ってやつだったりして)

 

 

 

そのまま三人は屋上に向かい、窓拭き用のゴンドラを使ってダイヤの展示されている部屋の前の窓まで降りていった。

 

 

ニグ「よし、後はここで夜を待って…と」

 

サブ「もうすぐっすね」

 

自分達の未来に胸躍らせながら、ダンやの展示場への扉を見つめていたニグとサブに、リーフが不思議そうに尋ねた。

 

リーフ「お仕事しないんですか? ほら、この窓汚れてますよ」

 

 

そんなリーフにうるさそうに顔をしかめながらニグは言い放った。

 

ニグ「んなもんどうでもいいんだよ。博物館が閉まるまでここにいるのが仕事なんだよ」

 

 

リーフ「閉まってからお掃除するんですか?」

 

 

サブ「ばーか、違うよ。博物館が閉館したらセンサーが働く前に忍び込んでダイヤをいただくのさ」

 

 

その言葉に、リーフは目をパチパチとさせながら聞いた。

 

 

リーフ「あのう、もしかするとそれはドロボウというやつじゃないんですか?」

 

ニグ「そうだよ。今更何言ってやがる」

 

 

その言葉にリーフの顔つきが変わった。

 

リーフ「ダメです! あなた達みたいないい人がそんなことをしちゃいけません!!」

 

 

サブ「いい人か… いいか、そんな人はいやしねぇのさ」

 

ニグ「俺達だって昔は真面目に働きゃ必ずいいことがあるって思ってたさ。でも、結局世の中でいい目見てるのはずる賢くて要領のいいやつなのさ。だったら俺達だってそんな風に生きなきゃ損じゃないかよ」

 

二人は以前の猿芝居とは打って変わった実感のこもった言葉で、思いの丈を訴えるように告げた。

 

 

 

しかし、その言葉にリーフは真剣な顔で真っ向から反論した。

 

リーフ「違います!! そんなことはありません!! ちょっとそこに座りなさい!!」

 

 

その勢いに、ニグとサブは気圧されてしまい思わずゴンドラ内に正座してしまった。

 

 

リーフ「いいですか? 努力すれば必ず報われるとは言いません。ですが、世の中にはなんの見返りも求めず、みんなのために自分のできることを精一杯頑張って戦っている人だっているんです。あなた達はその人達に面と向かって向き合えますか? 自分のしていることに、堂々と胸を張れますか?」

 

 

ニグとサブはその言葉を聞いて考え込んでしまった。

 

サブ「なんですかね、すっげぇ説得力ありますね」

 

ニグ「言われなくてもわかってんだよ、そんなことは…」

 

 

そんな二人を見てリーフは土下座して言い放った。

 

リーフ「お願いします。自分でいけないと思っていることだけはしないでください」

 

 

ニグ・サブ「「………」」

 

そんなリーフにニグとサブは何も言えなくなってしまった。

 

 

しかし、次の瞬間そんな静寂を破るかのように、爆発音が響き博物館を大きな振動が襲った。

 

 

 

ニグ「な、なんだ? 一体?」

 

リーフ「!! これは!!」

 

 

 

 

 

 

十数分前

 

 

博物館の入り口で豪とランが河内警部を相手に押し問答をしていた。

 

豪「なんで入れてくれないんだよ!! 俺達リーフ姉ちゃんを探しにきただけだってのに!!」

 

河内「うまいこと言いおって。あのジジイに何をしてくるように頼まれた、え?」

 

 

まったく遠藤博士を信用していない河内警部は、豪の言葉すら信じようとしなかった。

 

 

ラン「一体どういう理由でそんな言いがかりをつけるのよ!! 一度しっかり説明してほしいわ!!」

 

そんな河内警部にランは日頃から思っていた不満を口にした。

 

 

河内警部「ふん、全ては俺の長年の勘だ。あのジジイは何か後ろ暗いことがあると告げている。そして、誰かがここのダイヤを狙っとるともな」

 

 

自信満々にそう言い放った河内警部だったが、それを聞いたランと豪は呆れ顔だった。

 

 

豪「なんだよそれ。ただの当てずっぽうじゃん」

 

ラン「まったくだわ、非常識もいいところよ。掲示板にでも書き込んでやろうかしら、勝手な思い込みで無実の人を陥れようとしている無能な警部がいるって。実名入りで」

 

 

河内「ガキにはわからんことだ。名警部の経験を馬鹿にするといつか痛い目に…」

 

 

そう言おうとした次の瞬間、展示場の中で爆発音が響き、その振動で博物館が揺れた。

 

 

 

 

ラン「え? な、何よこれ?」

 

豪「まさか!!」

 

 

河内「くそっ、何が起きた。ええい、まずは館内の人間の安全を確認して、避難させろ!!」

 

その揺れによろめきながらも、展示場に駆け込みながら河内警部は部下にそう下知した。

 

 

そして豪とラン、それに続いて駆け込んで行った。

 

 

 

 

 

 

展示場

 

 

 

 

展示場に飛び込んだ河内警部はその光景に思わず絶句した。

 

 

展示場の壁はブチ抜かれて大きな穴が空いており、もうもうとした埃が立ち込め炎が燃え広がる中、多数のマイナーを引き連れたゴーロがいたからである。

 

 

 

河内「なっ、貴様は以前国会に乱入した賊!! ここに何の用だ!!」

 

ゴーロ「けっ、知れたこと。世界最大のダイヤをいただきに来たのよ」

 

 

河内「なんだと!? ふざけるな、この俺の目の黒い内はそんなことはさせんぞ!!」

 

 

河内警部は一切の物おじもせずにそう言い放つと、ゴーロを取り押さえんと飛びかかっていった。

 

 

ゴーロ「馬鹿が、ただの人間のくせに!!」

 

しかし、やはりというべきかなんというべきか、生身の人間の力でゴーロに敵うはずもなく、ゴーロの繰り出した重い一撃を受けて、河内警部は大きく吹き飛ばされ倒れ伏してしまった。

 

 

ラン「ああっ!!」

 

豪「河内警部!!」

 

 

 

 

一方、ニグとサブもこの状況にこれ幸いとばかりに展示場へ向かおうとしていたが、火の勢いの前に躊躇していた。

 

 

サブ「アニキ、火が強すぎるよ。これじゃダイヤのところに行けないよ」

 

そう泣き言をいったサブをニグは一喝した。

 

ニグ「馬鹿野郎!! このチャンスを逃したら、俺たちゃ一生負け組だぞ。そうなりゃあのおんぼろアパートで野垂れ死だ。それでもいいのかよ」

 

 

その言葉にサブは即座に返した。

 

サブ「やだ!! それだけは絶対ヤダ!!」

 

 

 

ニグ「なら行くぞ!!」

 

サブ「はい、こんな火がなんだ!!」

 

 

覚悟を決めると、二人もまた火の燃え広がる展示場へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

ゴーロ「へっ、行きがけの駄賃だ。てめぇらを殺してやるか」

 

ニヤリと笑い、指を鳴らしながらそう告げたゴーロだったが、そこに凛とした声が響いた。

 

 

リーフ「待ちなさい!! そんなことはさせないよ!!」

 

 

ラン「リーフさん!!」

 

豪「よかった、無事だったんだ」

 

リーフの姿を見た豪とランは、さまざまな形で安堵していた。

 

 

ゴーロ「けっ毎度毎度邪魔ばかりしやがって」

 

リーフ「それはこっちのセリフよ」

 

吐き捨てたゴーロに対して、リーフもまたそう告げると単身立ち向かっていった。

 

 

 

リーフ「ヤァアアア!!」

 

そんなリーフに対して四方八方からマイナーが襲いかかったが、いくら数がいようとも所詮は雑兵。

 

リーフの前に手も足も出ず、大半のマイナーは一撃で倒されていた。

 

 

 

 

 

 

展示場になんとか潜り込んだニグとサブだったが、リーフがマイナーと戦っているのを物陰から見て、事態が飲み込めないでいた。

 

 

サブ「なんか変なことになってますね」

 

ニグ「ああ、でもあの子めちゃくちゃ強いな」

 

 

そんなことを呟いていると、ゴーロの下劣な声が響いた。

 

 

ゴーロ「リーフ、おとなしくしてもらおうか。こいつらがどうなってもいいのか?」

 

 

ゴーロはランと豪を捕まえており、いやらしく笑いながらそう告げた。

 

 

豪「リーフ姉ちゃん…」

 

ラン「ごめんなさい…」

 

 

 

リーフ「うっ…、くっ…」

 

 

豪とランが人質に取られてしまった以上どうすることもできず、リーフは歯噛みをしながら構えを解いた。

 

その瞬間、リーフは残っていたマイナーに後ろから羽交い締めにされてしまった。

 

 

ゴーロ「今まで世話になった礼はしてやる。たっぷり味わえ!!」

 

その下劣な叫びとともに、リーフは羽交い締めにされたまま、マイナー達に何発も腹や顔を殴られた。

 

その凄惨な光景にランは思わず目を覆い、豪は自分の無力さに悔し涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

サブ「あいつら女の子になんてことを…!」

 

ニグ「きったねえことしやがる!!」

 

 

目の前の光景に憤っていると、ふと先ほどのリーフの言葉が思い起こされた。

 

 

リーフ(あなた達は自分のしていることに、堂々と胸を張れますか?)

 

 

 

ニグ「ええい、くそったれ!!」

 

サブ「チキショー! どうにでもなれ!!」

 

半ばヤケクソとでも言うように二人はゴーロへと背後から突進していった。

 

 

 

ゴーロ「うおっ!?」

 

全く予想していなかった方向からの体当たりを受けて、さしものゴーロも体勢を崩してしまった。

 

 

その一瞬の隙にニグとサブは、人質となっていた豪とランの腕を思いっきり引っ張った。

 

 

サブ「葉っぱちゃん。今だよ!!」

 

ニグ「遠慮すんな! 思いっきりやれ!!」

 

 

その声にリーフは勇気付けられるとともに、自分を羽交い締めにしていたマイナーを振りほどき、蹴り飛ばした。

 

 

リーフ「ありがとう! 助かったよ!!」

 

 

サブ「いいってことよ。ほら逃げるぞ!!」

 

ニグ「あんたもしっかりしろ! 立てるか?」

 

河内「お、おお… ありがとう…」

 

 

リーフのお礼の声に、サブは照れながらも豪達を避難させ、ニグは倒れていた河内警部に肩を貸していた。

 

 

 

 

 

ゴーロ「こんのー! 人間ごときが!!」

 

コケにされたと感じたゴーロは、怒りのままにニグ達に襲いかかろうとしたが

 

 

リーフ「させるもんか!!」

 

そんなゴーロに向かってリーフがマイナーを投げつけたため、ニグ達を取り逃がしてしまった。

 

 

 

ゴーロ「くそったれが! ええいまあいい、ダイヤは貰って行くぞ!!」

 

悔しそうに顔を歪めながらも、本来の目的である真紅のダイヤを手に壁の穴から飛び降りていった。

 

 

リーフ「待ちなさい、ドロボー!!」

 

そんなゴーロを逃すまいと、リーフもまた後を追って飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

サブ「はあはあ。なんとか無事に逃げられたっすね」

 

ニグ「ああ、なんとかな」

 

 

どうにか無事に博物館から脱出できた面々は息を整えていた。

 

 

河内「いやあ、ありがとう助かったよ。君達は清掃の人達かね?」

 

サブ「え、ええ。まあ…」

 

 

豪「おかげで助かったよ」

 

ラン「ありがとうございます」

 

ニグ「あ、あんまり褒めるんじゃねぇよ」

 

 

口々にお礼を言われ、多少罰が悪そうにニグとサブは頬を掻いていた。

 

 

 

するとそこに地響きとともに、背中にレーザー砲を背負った巨大な亀のような怪物が出現した。

 

 

ニグ「なんだ、なんだ!?」

 

サブ「今度は化け物かよ!!」

 

 

 

ゴーロ「へっへっへっ、このダイヤを取り付ければ世界最強のレーザー砲が完成する…と」

 

 

その亀型怪物に飛び乗ったゴーロは、背中のレーザー砲の先端に真紅のダイヤを取り付けた。

 

リーフ「こらーっ!! ダイヤを返しなさい!!」

 

同じように亀の背中に飛び乗ったリーフだったが

 

 

ゴーロ「うるせぇ!!」

 

リーフ「キャアアア!!」

 

ゴーロの一撃で叩き落とされてしまった。

 

 

ゴーロ「へっ、ざまあみろ。さぁて確かめてやるか、地上最強のレーザー砲の威力をな。 やれ、メイジャー!!」

 

 

ゴーロがそう命令すると、巨大亀は雄叫びを一つ上げると背中のレーザー砲にエネルギーを集中させ始めた。

 

 

リーフ「えっ? 何? このエネルギー量は…」

 

 

リーフが驚いた次の瞬間、巨大亀の背中のレーザーは発射され、近くのビルを一撃で射抜き、倒壊させてしまった。

 

 

豪「げげっ!!」

 

ラン「うそ…」

 

 

 

ニグ「じょ、冗談じゃねぇぞ!!」

 

サブ「あんなんをまた撃たれたら…」

 

河内「くっ、もっと遠くに逃げるんだ!! 皆さんも早く避難してください!!」

 

 

そのレーザーの威力に驚きつつも、逃げる以外に術のないと判断した河内警部はそう指示し、周辺の避難誘導にも当たった。

 

その隙にこれ幸いとばかりに、豪とランも離れていき遠藤平和科学研究所に電話を入れた。

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

マイナスエネルギー検知器がけたたましく鳴り響く中、遠藤博士とダイーダは状況の把握に勤めていた。

 

 

遠藤「村沢博物館で火災か…、それだけにしてはこの検知器の反応度合いは異常じゃ」

 

 

ダイーダ「おそらく、その火災を引き起こしたのが連中なんですよ。豪とランも行ってるし、至急向かいます。リーフ行くわよ……って、ああそうか」

 

 

いつもの調子でリーフに呼びかけてしまったダイーダは舌打ちをしそうな顔をしていた。

 

 

そんな時、遠藤博士の携帯が鳴った。

 

遠藤「おお豪、大丈夫だったか… 何!! 地上最強のレーザー砲!? わかったすぐダイーダとそちらに向かう!!」

 

 

豪からの連絡を聞いた遠藤博士は直ちにダイーダに指示した。

 

 

遠藤「ダイーダ、わしはガレージに行って車の用意をしてくるから、お主は至急用意してほしい物がある。対レーザー砲の特性シールドを作る材料じゃ」

 

ダイーダ「はい、何がいるんですか?」

 

遠藤「うむ、まずは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーフ「くっ、これじゃ被害がどんどん広がっていく!!」

 

 

なんとかして亀怪物の侵攻を止めようと孤軍奮闘していたリーフだったが、大苦戦をしていた。

 

乱射されるレーザーは発射される直前に射線を読んでかわすしかなく、なんとか近づけても亀怪物のパワーに跳ね飛ばされる。

 

そんなことの繰り返しであった。

 

 

 

リーフ「えぇい、チェンジハンド・タイプブルー!! エレキ光線発射!!」

 

両腕を稲妻模様の走った青い腕に換装し、エレキ光線を発射したが、亀怪物は思ったよりもタフであり、動きを封じることができなかった。

 

 

ゴーロ「へっ、何度も同じ手が通用するか! やれ!!」

 

 

亀怪物の背中に乗ったゴーロがそう命令すると、亀怪物は口からヘドロのような黒い塊を吐き出した。

 

その塊は地面にぶつかると大爆発を起こし、その爆発に巻き込まれたリーフはたまらず吹き飛んだ。

 

 

リーフ「ウワアアアア!!」

 

 

ダメージを受けてなかなか立ち上がれないリーフを見て、ゴーロはニヤリと笑った。

 

 

ゴーロ「へっ止めだ。積年の恨み思い知れ!!」

 

すると亀怪物はリーフにレーザー砲の照準を定めると、今までより大量のエネルギーをチャージし始めた。

 

 

リーフ「くっ…」

 

覚悟を決めたリーフに向かってレーザー砲が発射された瞬間、そんなリーフをかばうように何かが飛び込んできた。

 

 

すると、発射されたレーザーは反射され逆に自身の砲身を破壊し、大爆発を起こした。

 

 

当然、亀怪物はその爆発で甲羅の一部が割れてしまい、そばにいたゴーロも一緒に吹き飛んでしまった。

 

 

 

 

そんな中、自身をかばってくれた存在を見て、リーフは嬉しそうな顔をした。

 

リーフ「ダイーダちゃん!!」

 

ダイーダ「リーフ、大丈夫そうね?」

 

 

 

 

 

 

 

豪「じいちゃん、今の何? レーザーを簡単に跳ね返すなんて」

 

ビルを一撃で倒壊させたレーザーをあっさり跳ね返したダイーダの盾を見て、豪は目を丸くして、到着した遠藤博士に尋ねた。

 

 

遠藤「なーに、そんな大層なもんじゃない。風呂場の鏡に耐熱フィルムを貼っただけじゃ」

 

ラン「そ、そんなのでレーザーって防げるの?」

 

ことも無げにあまりにもくだらない種明かしをした遠藤博士に、ランもまた驚きの声を上げた。

 

 

遠藤「まあ、一発ぐらいならあれで十分じゃ。そもそもレーザー砲などというものが未だにまともに世界の軍や自衛隊に配備されん理由の一つは、エネルギーの効率等に加えてこの程度のことで無効化できるからじゃ」

 

 

 

地面に叩きつけられたゴーロだったが、たまたま近くに転がってきた真紅のダイヤが目に入り、それを奪い返そうとした。

 

 

ゴーロ「くそったれ、せめてそいつだけでも…」

 

 

リーフ「させるもんか、エレキ光線発射!!」

 

 

しかし、そんなゴーロに向かってリーフはエレキ光線を発射した。

 

 

ゴーロ「グオオオッ!!」

 

 

爆発のダメージに加えて、高圧電流を浴びたゴーロは完全にグロッキーになってしまい、身動き一つ取れなかった。

 

 

リーフ「このダイヤは返してもらうよ。ゴーロ、今日こそ終わりだよ!!」

 

 

ダイヤを拾い上げそう告げたリーフだったが、次の瞬間黒い靄のようなものが立ち込めゴーロの姿を覆い隠してしまった。

 

 

ダイーダ「えっ? 何?」

 

その靄は二人のセンサーでも中を透視することができず、やむなく靄の中に飛び込むも、そこにはゴーロの姿はなかった。

 

 

リーフ「消えた!? 一体どこに?」

 

 

姿を消したゴーロに戸惑っていると、突如爆発音が響いた。

 

 

その音に驚き振り返ると、傷付いた亀怪物が苦しみもだえながら、ビルや自動車を破壊して回っていた。

 

 

ダイーダ「いけない!! あっちが先決ね」

 

リーフ「うん!! 行くよダイーダちゃん!!」

 

 

二人は力強く頷きあい、トンボを切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」

 

 

その掛け声とともに二人の体は光に包まれ、着地した時には変身完了し、赤と白のドレスに身を包み、髪型も大きくボリュームが変わっていた。

 

 

 

リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

 

リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」

 

 

 

 

 

 

 

ダイダー「まずいわね、受けた怪我の痛みもあって錯乱してるわ」

 

無差別に暴れまくっている亀怪物を見て、ダイダーはそう分析した。

 

 

リリーフ「早くマイナスエネルギーを浄化してあげないと… ダイーダちゃん、お願い!!」

 

 

ダイダー「オッケー、いつでもいいわよ!」

 

 

 

ダイダーの返事にリリーフは大きく振りかぶり、虹色の玉を手に輝かせ始めた。

 

 

 

リリーフ「よ〜し、お願いね!!」

 

そしてそのまま、その虹色の玉をダイダーに向けて亜音速で投げつけた。

 

 

ダイダー「任せなさい!! ダァリャア!!」

 

 

ダイダーはそれに威勢良く答えると、リリーフの投げてきた玉を、取り出した光のスティックで打ち返した。

 

打ち返された虹色の玉はひとまわり大きくなり、亀怪物に直撃すると全体を包み込んだ。

 

リリーフ・ダイダー「「プリキュア・レインボー・ツインバスター!!」」

 

 

そう二人が叫ぶと、亀怪物を包み込んだ光は目も眩まんばかりに激しく輝き始めた。

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「ゲームセット!!」」

 

 

そのかけ声とともに、亀怪物は一際大きな爆発を起こし、その後には甲羅の割れた亀が一匹転がっていた。

 

 

 

ダイダー「傷だらけだけど、命に別状はなさそうね」

 

リリーフ「よかった、すぐに手当てしてあげるからね。 おっと、このダイヤも返さないと…」

 

 

慌てて亀のところに駆け寄った二人は、大怪我をしているものの特段命に別状のない亀の様子を見て心底ホッとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

サブ「あーあ、結局無駄骨でしたね」

 

騒ぎは一段落し、無事に真紅のダイヤも戻ってきたものの、博物館の状況が展示会の続行を行うどころではなくなってしまっていた。

 

 

結局何一つ得られるもののなかったため、サブはそう愚痴ったが、どこか晴れ晴れとしたような感じだった。

 

 

 

ニグ「ばーか、俺がタダで転ぶと思うか? 見ろこれを」

 

そうやってニヤリと笑いながら開いた手の中には、小さな宝石が一つあった。

 

 

サブ「アニキ、これは?」

 

ニグ「あの会場から逃げる時、どさくさ紛れに一つ頂戴したのよ。あの騒ぎなら一個ぐらいなくなってもわかりゃしねぇと思ってな」

 

 

サブ「さっすがアニキだ! これでしばらくはラーメンに卵ぐらい入れれますね」

 

ニグ「おう、焼き豚だって乗せられるぜ」

 

 

そんな風にみみっちくも明るい未来を夢想していた二人に話しかけるものがいた。

 

 

河内「おう君達、探したぞ!!」

 

 

ニグ「げっ!!」

 

サブ「刑事さん…」

 

 

河内「いやあ、俺たちが助かったのも君達のおかげだ。君らは今時には珍しい立派な若者だ。本当にありがとう」

 

 

ニグの両手を握り、心から感謝を述べた河内警部だったが、ニグの顔は真っ青になった。

 

 

河内「ん? なんだ、瓦礫の欠片か何かか…」

 

 

ふと、手のひらに何か小石のようなものの感触を感じた河内警部は小首を傾げながら手を開いた。

 

 

サブ「やば…」

 

ニグ「に、逃げるぞ…」

 

 

恐る恐る距離を取り始めたニグとサブだったが、十分離れる前に河内警部が先に気がついた。

 

河内「あっ!! これは展示してあった宝石!! お前ら!!」

 

 

 

 

次の瞬間、脱兎のごとく駆け出したニグ達と河内警部の追いかけっこが始まった。

 

サブ「やっぱ、悪いことってできないもんなんですね」

 

ニグ「ちくしょー!! やっぱ真面目に働くか!!」

 

 

河内「こら待てー!! 火事場泥棒!!」

 

 

 

 

 

 

 

一方、遠藤博士の車で帰路についた一同はリーフの話を聞いて、驚きつつも呆れていた。

 

 

遠藤「なんとなんと。泥棒の片棒を担ぐところだったとわな。しかし何事もなくて何よりじゃ」

 

ダイーダ「まったく、あんたはボーッとしすぎなのよ。もうちょっと神経を使いなさい」

 

 

 

リーフ「ごめんなさーい。でも、わたし、この世界の人のことがもっと好きになったよ。もっといろんな人と触れ合ってみたいな」

 

 

リーフは謝りつつも、微笑みながらそう言った。

 

 

 

 

第16話 終

 


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