コズミックプリキュア   作:k-suke

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第12話 「大追跡! コズミックプリキュア (後編)」

 

 

 

 

海底 Dr.フライ秘密研究所

 

 

 

 

Dr.フライはモニターの調整を昨日から何度も繰り返していた。

 

Dr.フライ「わしの発信機に異常があるわけがないのじゃ。この史上最高の天才のこのわしの作ったものに…」

 

 

すると再びモニターの中に光る点が現れて動き始め、それを見たDr.フライは興奮気味に叫んだ。

 

 

Dr.フライ「や、やった! やはりわしは正しかった!! これで奴らの拠点がわかるわい」

 

 

 

 

 

 

その頃ランは、電車の中で肩身の狭い思いをしていた。

 

アルプス牧場までは電車で約1時間の距離であり、ヒットの持ち込み許可をもらい、三人で電車に乗った。

 

 

まではよかったのだが…

 

 

 

 

リーフ「ガタンゴトンガタンゴトン。わぁすごいすごい!! ねぇねぇ私達今デンシャに乗ってるんだよね!! 見てよランちゃん、こんなおっきな窓の景色が動いてるよ!!」

 

ダイーダ「うーん、三冠号とはまた違った趣があるわね。自分で操縦しなくていいっていうのと、地上を走る乗り物っていうのがいいのよね。ねぇラン、あの建物なんなの?」

 

 

 

リーフとダイーダが電車内にもかかわらず、大声ではしゃぎまくっていたためである。

 

しかもそれだけでなく、椅子に逆さに座って、しがみつくように窓の外を見ていた。

 

外見は中高生ぐらいであるこの二人が、小さな子供のような態度を取っているのは、はっきり言ってみっともないものであり、周りの乗客も明らかに迷惑そうな顔をして、ひそひそと何かを話していた。

 

 

そして、そんな二人に両肩をつかまれ、間に挟まれてガクガクとゆすられながら話しかけられるランは真っ赤な顔でうつむいていた。

 

ラン「お願い…二人とも話しかけないで…」

 

 

 

 

 

カメラマン「ねぇ、せっちゃん。本当にあのメガネの女の子達がコズミックプリキュアなの?」

 

 

節子「な、何言ってんのよ。世を忍ぶための演技に決まってるじゃない… そうよ、そうに違いないわ。うん」

 

そんな様子を隣の車両から見ていた節子達も引きつりながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルプス牧場

 

 

 

 

 

ラン「う〜ん、高原の空気が美味しい!! 来て良かった〜」

 

 

ようやく目的地にたどり着いたランは、電車内での事を忘れるかのように明るく叫んだ。

 

 

リーフ「空気が美味しい? 味覚成分なんて全く感じないけど…」

 

ダイーダ「空気中に酸素が多く含まれてるってことかしら? 研究所周辺より光合成を行う植物が多いから」

 

 

そんなランに対して、雰囲気をぶち壊すような事を二人は口にしていた。

 

 

ラン「気分壊すからあんまりそういう冷静な解説しないでよ。それより二人ともあっち行こう。乳搾り体験ができるって」

 

 

その言葉にリーフは目を輝かせた。

 

リーフ「牛さんに会えるんだ♪ 牛ってあの首が長くて黄色にぶちのある動物だよね、一度見てみたかったんだ」

 

ラン「…それはキリンっていうの」

 

 

ダイーダ「そうよ、牛っていうのはあのもこもこの毛で覆われた動物よ」

 

ラン「それは羊!! もう、現物見ればわかるから!!」

 

 

未だにものの名前がどこか正確に覚えられない二人に辟易しながらも、ランは乳搾り体験コーナーへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Dr.フライ秘密研究所

 

 

 

Dr.フライ「ふむ、さっきからほとんど動きがない。見つけたぞ、ここが奴らの拠点に違いない!!」

 

 

モニターの中の光点が動きを止めたのを見て、Dr.フライはそう判断した。

 

 

ゴーロ「ホントかよ? あてにできるのかそれは」

 

ファル「さぁな。 天才様のいう事だし間違いはなかろう」

 

しかし、ゴーロ達はDr.フライの判断にどこか懐疑的であり、小馬鹿にしたようにそう言った。

 

 

Dr.フライ「馬鹿な事を言うでない!! この史上最高の天才であるわしの判断に間違いがあるか!! ぶつくさ言っとる暇があれば調べてこい」

 

そんな二人にDr.フライは威張り散らすように怒鳴り散らした。

 

 

ファル「まぁいいか。調べに行くぐらいの価値はある」

 

ゴーロ「俺は行かねぇぜ。こいつの言う事が信用できるか」

 

 

ファルはうまくいけば儲け物ぐらいの感覚で了承したものの、信用していないゴーロはごめんだとばかりに拒絶した。

 

 

ファル「まぁ、何かあれば連絡は入れる。本当に連中の拠点なら、面倒そうだからな」

 

 

ファルはゴーロに対してそう言い残し、出撃していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

アルプス牧場

 

 

 

 

 

その頃ランは牛の乳搾りを楽しそうに体験していた。

 

ラン「思ってたよりも難しいな。でも面白い」

 

 

そんなランをリーフたちは首を傾げながら見ていた。

 

リーフ「ねぇ、これの何が面白いの? ただ水が出てくるだけだよね?」

 

ダイーダ「そうよね、そもそも牛から出てくるこの白い水って何?」

 

 

ラン「ああ、これが牛乳よ。本当は牛が自分の赤ちゃんに飲ませるんだけど、栄養があって美味しいから、人間の飲み物にもなってるの。スーパーとかでも売ってるわよ。うちじゃあんまり買わないけど」

 

 

いつものような素朴な質問を、真剣な顔でしてくる二人に対して、ランはもう慣れたというように解説を行った。

 

リーフ「へぇー。栄養のある飲み物なのか」

 

ダイーダ「博士が今作ってるやつの親戚みたいなものね。ちょっと興味があるわ」

 

 

それを聞いた二人は興味深そうに牛に近づいていった。

 

そしてそのまま、子牛がするように乳牛の乳を直に咥え込み牛乳を飲み始めた。

 

 

突然の行為にランは仰天し、慌てて二人を引きはがして逃げ出した。

 

 

 

ラン「いきなり何するのよ二人とも!! 恥ずかしいったらありゃしない!!」

 

 

リーフ「うん、カルシウム分も豊富だし、タンパク質に脂肪、必須アミノ酸まで含まれてるいい飲み物ね」

 

ダイーダ「カロリーもそこそこあるし、あとはビタミンCが少ないぐらいかしら。博士にも持って帰りましょう。いい研究材料にもなると思うわ」

 

 

二人を引っ張って走りながら説教したランだが、当のリーフ達は舌なめずりをしながら、呑気なことを言っていた。

 

 

 

 

カメラマン「ねぇ、せっちゃん。本っ当にあのメガネの女の子達がコズミックプリキュアだと思ってるの?」

 

節子「私の勘違いだったかしら…」

 

ずっと尾行し、一部始終を観察していた節子だったが、ここまでとんちんかんな事をするリーフとダイーダがプリキュアだとはさすがに思えなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

大慌てで走っていたランだったが、つい足元をおろそかにしてしまい、つまずいて転んでしまった。

 

 

ラン「いった〜い! ああせっかくの新しい服が〜!! もう〜っ! ついてな〜い!!」

 

転んでしまった拍子に服は泥だらけになり、ランの気分は最悪になってしまった。

 

 

ダイーダ「大丈夫? 怪我はなさそうね」

 

リーフ「あーあ、ブローチも取れちゃって… あれ?これは…」

 

 

ブローチを拾い上げたリーフは途端に険しい顔になった。

 

 

ラン「? どうしたの、リーフさん」

 

急に表情の変わったリーフに、何かあったのかとランは尋ねた。

 

 

リーフ「ねぇ、ランちゃん。これどこで手に入れたの?」

 

ラン「どこって… ヒットがどっかで拾ってきたのよ。昨日の夜咥えてきたの」

 

 

その言葉を聞くや否や、リーフはブローチを握りつぶした。

 

ラン「ああっ!! リーフさん何を!?」

 

 

ダイーダ「!! リーフそれってまさか!?」

 

リーフ「うん、発信機だよ」

 

 

 

すると次の瞬間、日が陰ったかと思うとUFOのようなものが飛来してきた。

 

 

節子「え? うそ? UFO? 撮って撮って!!」

 

カメラマン「よしきた!! 未知との遭遇だ!!」

 

 

もはや、リーフたちには興味がないというように興奮気味にUFOの撮影を始めたが、それから降りてきたものを見て、背筋が凍った。

 

 

 

 

 

ラン「あ、あれって?」

 

リーフ「マイナー…に、ファル!!」

 

ダイーダ「リーフ、行くわよ!! ラン、メガネお願い!!」

 

 

その姿を認めたダイーダはメガネをランに預け、リーフ共々走り出した。

 

 

 

 

武装させたマイナーを引き連れ降り立ったファルは、周辺を見回した。

 

 

ファル「ここが本当に奴らの基地か? 何もないようだが… よし、徹底的に破壊して炙り出せ!!」

 

 

その指示に従い、マイナーたちは手榴弾を手当たり次第に投げつけ、マシンガンの斉射を行い、破壊活動を始めた。

 

そしてUFOからは焼夷弾が投下され、辺りは火の海になり始めた。

 

 

当然、高原は大パニックになり、レジャーを楽しんでいた人達は悲鳴をあげて逃げ惑った。

 

 

 

しかしその時、そこに凛とした声が響き渡った。

 

 

リーフ「やめなさい!!」

 

ダイーダ「こんなのどかな高原を破壊するなんて、絶対に許さない!!」

 

 

 

そんな二人の姿を認めたファルは満足そうな笑みを浮かべた。

 

ファル「出やがったか。たまにはフライの作戦が図に当たることもあるものだな。基地の前に貴様らをバラバラにしてやる、かかれ!!」

 

 

その叫びに答えるかのように、マイナー達はリーフとダイーダにマシンガンを連射した。

 

 

ダイーダ「舐めるな!!」

 

リーフ「これぐらい!!」

 

 

その言葉通り、リーフとダイーダは銃弾の雨をかわしながら突っ込み、かわしきれそうもない弾は手で掴み取っていた。

 

 

そのままあっという間に懐に飛び込むと、片っぱしからマイナー達をなぎ倒していった。

 

 

 

 

節子「独占大スクープよ! しっかり撮ってんでしょうね!?」

 

カメラマン「ごめん、さっきカメラ壊れちゃった」

 

節子「馬鹿!! あんたはそれでもプロか!!」

 

 

さすがプロというような意識を持っている節子は、そう言ってカメラマンを怒鳴りつけた。

 

 

カメラマン「ご、ごめん。でもさ、あの二人は絶対さっきの子達と別人だよな」

 

節子「…まあね」

 

 

 

 

 

ダイーダ「まずい!! 火が燃え広がる一方…早く消さないと!!」

 

そう言って燃えている現場に向かおうとしたダイーダだったが、マイナー達に足止めされてしまっていた。

 

 

リーフ「くっ、三冠号!! …って、そうだった!!」

 

三冠号で消火しようとしたリーフだったが、現在通信ができないことを思い出し慌てていた。

 

 

ファル「焦っているようだな。まぁ無理もあるまい!! 行くぞプリキュア」

 

苦戦しているリーフ達を見て、今がチャンスとばかりにファルは飛びかかっていった。

 

 

 

ラン「何やってるのよ、おじいちゃん。早く出てよ!!」

 

一方ランは遠藤平和科学研究所に電話を入れていたが、なかなか出ない遠藤博士にイライラしていた。

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

 

 

 

その頃、ようやく水の再合成を終えた遠藤博士は試飲をしようとしていた。

 

 

遠藤「うーむ、思ったより濁ったな。どれどれ」

 

そう呟きながら、コップに合成水を汲んでみると強烈な腐卵臭が漂ってきた。

 

 

遠藤「うえっ!! えげつない匂い!! こりゃとても飲めんな… また失敗か…」

 

 

がっくりと肩を落とした遠藤博士だったが、ふとあることに気がついた。

 

 

 

遠藤「ん? 待てよ。この匂いは…まさか…」

 

 

 

ちょうどその瞬間、研究室の電話が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ファル「どうしたプリキュア? ずいぶん周りが気になっているようだな?」

 

戦いに集中できていないリーフ達を見て、挑発するようにファルがそう言った。

 

 

 

リーフ「くっまずいよ、早くしないと!!」

 

ダイーダ「えぇい、いい加減にどきなさい!! こんなところを襲って何が目的なのよ!?」

 

 

燃え広がっていく一方の牧場を見て、二人の焦りは頂点に達しつつあった。

 

 

ファル「白々しいことを。いくぞ!!」

 

 

ダイーダ「くっ、こうなったらおっつかないかもしれないけど… チェンジハンド・タイプグリーン!!」

 

 

そのかけ声と共に、ダイーダの両腕は噴射口のようなもののついた緑色の腕に換装された。

 

そのまま左手を飛びかかってくるファルに向けて差し出した。

 

 

ダイーダ「超低温冷凍ガス噴射!!」

 

 

ファル「ぶおっ!!」

 

 

真正面から冷凍ガスを浴びてしまったファルの体は一瞬で凍りついてしまい、動きが止まってしまった。

 

 

リーフ「ダァァアア!!」

 

それを確認するや否や、リーフは渾身の回し蹴りでファルを大きく蹴り飛ばした。

 

ファル「ぐおおおっ!!」

 

 

蹴り飛ばされたファルは勢いよく転がりながら近くの売店に突っ込み、そのまま倒壊した売店に潰されてしまった。

 

 

 

 

 

ダイーダ「くっ、やっぱり燃え広がり方が早すぎる。消火が追いつかない!!」

 

邪魔者がいなくなり、消火活動に専念できるようになったものの、すでにかなりの範囲が燃え上がっていた。

 

しかも、その間にも上空のUFOは次々と焼夷弾を投下しており、まさに危機的状況であった。

 

 

 

 

ラン「大変だわ、このままじゃ… あっ、来た!!」

 

その光景にランも焦る中、ようやく三冠号が到着した

 

 

リーフ「よし、三冠号。消火弾投下!!」

 

 

三冠号を確認したリーフは即座に指示を下し、万能消火弾を投下させていった。

 

その遠藤博士謹製の消火弾の威力は凄まじく、あっという間に鎮火していった。

 

 

 

 

その光景にUFOは負けじと再び焼夷弾を投下しようとしたが、

 

ダイーダ「これ以上やらせるもんか!! 行きなさい三冠号!!」

 

 

ダイーダの指示による三冠号の体当たりによって阻まれた。

 

 

 

 

 

リーフ「よし、チェンジハンド・タイプブルー!! エレキ光線発射!!」

 

チャンスと見たリーフは両腕を稲妻模様の走った青い腕に換装し、エレキ光線を発射した。

 

三冠号の体当たりで損傷していたUFOはその強烈な電撃に耐えきれず、空中で爆散した。

 

 

 

ファル「くっ、連中一体どこからあの飛行機を…こうなったら!!」

 

 

ようやく倒壊した売店から這い出してきたファルは、悔しそうに顔を歪めると、

黒いダイヤモンドのようなものを取り出し辺りを見回すと、一頭の逃げ遅れた牛が目に入った。

 

 

ファル「出ろ、メイジャー!!」

 

ニヤリと笑いながら、そのダイヤを牛に投げつけると、たちまちのうちに巨大な化牛が出現した。

 

 

リーフ「くっ、あいつまた!! もう絶対許さない!!」

 

生き物を自分達の都合よく利用するファルを、リーフは歯噛みをしながら睨みつけた。

 

 

ファル「黙れ!! この基地ごと貴様らを吹っ飛ばしてやる!!」

 

 

ダイーダ「基地ですって? どういう事よ!?」

 

ファルの言葉に、ダイーダは思わずそう叫んだ。

 

ファル「とぼけるな。ここが貴様らの基地だというのはわかっているんだ」

 

 

リーフ「…なるほど。発信機をつけたのはあなた達って事か」

 

ダイーダ「あの龍の騒動もそれが目的で… でも残念ね。ここは私達の基地なんかじゃないわ!!」

 

 

堂々とそう言い放ったダイーダにファルは驚くとともに悔しそうに顔を歪めた。

 

ファル「何!? くっそフライめ、毎度毎度適当な事を言いやがって!!」

 

 

 

 

リーフ「行くよ!!」

 

ダイーダ「OK!!」

 

二人は頷きあい、トンボを切った。

 

 

リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」

 

 

その掛け声とともに二人の体は光に包まれ、着地した時には変身完了し、赤と白のドレスに身を包み、髪型も大きくボリュームが変わっていた。

 

 

 

リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

 

リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」

 

 

 

ファル「くっそー!! こうなったらせめて貴様らだけでも始末してやる、やれ!!」

 

 

ヤケクソとでもいうようなファルの指示に、巨大化牛は鋭い角を振りかざしてコズミックプリキュアに突進してきた。

 

 

 

リリーフ「なんの!!」

 

ダイダー「これしき!!」

 

 

しかし二人はそれを真っ向から受け止めると、大きく振り回してファル目掛けて投げ飛ばした。

 

 

ファル「ぐはぁっ!!」

 

 

そして巨大化牛はそのまま地面に叩きつけられ、ファルもまた下敷きになって潰されてしまった。

 

 

 

ダイダー「よし! あいつらを一気にまとめて浄化するわよ!! リーフ!! レインボー・ツインバスターを!!」

 

隙ありと判断したダイダーは、光のスティックを取り出し、リリーフに呼びかけた。

 

 

リリーフ「うん、行っくよ〜!!」

 

リリーフも頷くと、大きく振りかぶり虹色の玉を手に輝かせ始めた。

 

 

 

リリーフ「ダイーダちゃん!!」

 

そしてそのまま、その虹色の玉をダイダーに向けて亜音速で投げつけた。

 

 

ダイダー「任せなさい!! ダァリャア!!」

 

 

するとダイダーは、リリーフの投げてきた玉を、スティックを一振りして巨大化牛に向けて打ち返した。

 

打ち返された虹色の玉はひとまわり大きくなり、巨大化牛に直撃すると全体を包み込んだ。

 

リリーフ・ダイダー「「プリキュア・レインボー・ツインバスター!!」」

 

 

そう二人が叫ぶと、巨大化牛を包み込んだ光は目も眩まんばかりに激しく輝き始めた。

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「ゲームセット!!」」

 

 

そのかけ声とともに、強烈な二人の合体必殺技の直撃を受けた巨大化牛は、叫び声とともにファルを巻き込んでいつにも増して大きな爆発を起こした。

 

 

 

そして爆発が収まった後には、傷だらけの牛が一頭横たわっていた。

 

 

 

「モゥ〜…」

 

リリーフ「ごめんなさいね。こんな怪我をさせちゃって…すぐに手当てしてあげるから」

 

弱々しく鳴く牛に対して、リリーフ達は心から詫び、目にも留まらぬスピードで手当てを始めた。

 

 

 

 

ダイダー「ファルが見当たらない…、爆発に紛れてなんとか逃げたか…。 まぁ手応えはあったからダメージでしばらくは身動き取れないでしょうけど、やっぱり悔しいわね」

 

ダイダーはファルを仕留め損なったことに悔しそうに顔を歪めた。

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

 

 

ラン「ただいま〜…」

 

いかにも疲れ果てたというように、ぐったりした声とともにランが研究所のドアを開けた。

 

 

当然のことながら、あの後牧場で遊べるわけもなく、楽しみにしていた露天温泉もパァ。買ったばかりの服は泥だらけ。散々な日曜日になってしまい疲れきっていたのである。

 

 

リーフ「どうしたのランちゃん? 随分疲れてるね」

 

ダイーダ「この牛乳っていうの飲む? 元気でるわよ」

 

両手いっぱいに牛乳を買い込んだリーフ達の呑気な言葉に、ランはイライラしていたが、もはや言い返す気力もなかった。

 

 

ラン「はぁ…全く…。あれ、なにこの匂い?」

 

 

ため息をつくと、研究所に充満している妙な匂いにランは気がついた。

 

 

するとそこに全身から湯気を出しながら、上気した顔で遠藤博士が出てきた。

 

 

遠藤「おお、帰ったか。おっそれは牛乳か、こりゃいいタイミングじゃ、少しもらうぞ」

 

 

ダイーダ「博士、なんですかこの匂い」

 

リーフ「有毒なガスのようですが…大丈夫なんですか?」

 

 

牛乳を一気飲みすると、遠藤博士は事情を説明し始めた。

 

遠藤「心配はいらん、これは例の合成水じゃ。飲料用としては刺激臭のせいで失敗じゃったが、温泉の成分と同じとわかったのじゃ。まさに人工温泉、わしも今まで入っとったとこじゃ。ラン、お前も疲れとるなら入るといい。疲れが吹っ飛ぶぞ」

 

 

 

その言葉に、ランは肩を震わせ始めた。

 

 

遠藤「ん? どうしたラン?」

 

 

ラン「うるさいうるさいうるさーい!!!  もーっ、最悪よ!!!!  私の休日返してよ!!!!」

 

 

最後の力を振り絞るかのようなランの絶叫が研究所に盛大に響いたのだった。

 

 

 

第12話 終

 

 


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