コズミックプリキュア   作:k-suke

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第11話 「大追跡! コズミックプリキュア (前編)」

 

 

 

 

速田家

 

 

 

ある夜、豪が夕食の前になんとなくテレビのニュースを見ていると、報道特集が始まった。

 

 

節子『先日、国会議事堂に乱入し日本の支配権を要求した、次元皇帝バーフェクトと名乗る一団は、その後も幾度となく各地でテロ行為を繰り返しています』

 

それを聞いた豪はうんうんと頷いた。

 

豪「そうそう。おかげでこっちは大変だったんだから」

 

 

節子『しかし、そんな彼らの蛮行を次々と打ち砕いた謎のスーパーヒロイン、コズミックプリキュア。そして彼女と共にいる謎のヘルメット少年とは? 彼女達はいったい何者なのでしょうか? 』

 

 

すると、テレビにはコズミックプリキュアの映像と共にヘルメットをかぶった豪が一瞬だけだが映し出された。

 

 

豪「わっ俺だ! 俺が映った!!」

 

興奮している豪に豪の母親が叱りつけた。

 

豪母「何バカなこと言ってるの! テレビばっかり見てないで食器並べてちょうだい」

 

 

豪「いや、今俺がテレビに映ったんだよ! ほんとだよ!」

 

豪母「いい加減にしなさい!! それより最近お父さんのところに入り浸ってるけど、勉強はちゃんとしてるの?」

 

ジロリと睨まれてしまい豪は何も言い返せず、しぶしぶ母親の手伝いを始めた。

 

 

豪「ちぇっ、しゃあない。後でランに電話で自慢してやろうっと」

 

 

しかしその夜、何度も携帯にかけたりメールを送ったりもしたものの、携帯は通じず、メールは宛先不明で返信されてきた。

 

 

豪「おっかしいなどうなってんだ。あいつ電源でも切ってんのかな?」

 

 

 

 

 

翌日、土曜日 遠藤平和科学研究所

 

 

 

豪は朝一番に遠藤平和科学研究所に向い、開口一番言い放った。

 

豪「おい、ラン!! 見たかよ昨夜のニュース。姉ちゃん達や俺が映ってたんだぜ」

 

興奮気味に自慢した豪だったが、ランは冷めた様子で掃除機をかけていた。

 

ラン「あらそう」

 

 

豪「なんだよ、妬いてんのか? 昨夜電話もメールも返さないでさ」

 

ラン「んもう! したくても何にもできないの!!」

 

 

そう怒鳴ってテレビのスイッチを入れるも、そこに映るものは砂嵐だけだった。

 

 

豪「なんだ、故障か? じいちゃんに直してもらえよ」

 

ラン「故障じゃないのよ。携帯も見てみなさい、圏外になってるから」

 

その言葉に携帯を取り出してみるも、確かに圏外だった。

 

 

豪「あれ? 一体なんで」

 

その疑問にランが不満丸出しといった感じでふくれっ面をしながら愚痴った。

 

ラン「おじいちゃんのせいよ。変なこと始めたからテレビも見れないし携帯も使えないの」

 

 

豪「えっ、じいちゃんの?」

 

 

 

 

 

地下の研究室では、遠藤博士が大規模な科学実験のようなことを行っていた。

 

豪「じいちゃん、一体今度は何やってんのさ?」

 

 

遠藤「うむ。水の分子を化学的に化合し直して、栄養を多量に含んだ新しい飲料を作っておる。成功すれば新しい非常食としてはもちろん、日々の生活もガラリと変わることになる、のじゃが…。 リーフ、一体どんな塩梅じゃ?」

 

 

得意げに語った遠藤博士だったが、リーフに不安げに尋ねた。

 

 

リーフ「ダメでーす。妨害電波が出っ放しでーす」

 

ダイーダ「いろいろ調べてみましたけど、これは根本的にどうしようもなさそうです」

 

そのリーフとダイーダの言葉に、遠藤博士はため息をついた。

 

遠藤「はぁそうか。まぁ仕方ない」

 

 

豪「ねぇ妨害電波って、テレビが見れなかったりしたのって、このせいなの?」

 

その会話からなんとなく事情を察した豪はそう尋ねた。

 

 

遠藤「まあな、水を電気的に分解して化合し直しとるのじゃが、その際に妙な電波が副産物として発生してな。水の再合成が終わるまで約40時間、明日の昼過ぎまでこの研究所周辺は、通信が不能な陸の孤島じゃ」

 

 

ダイーダ「まあ、この妨害電波もなにかの役に立つかもしれないわね。既存の妨害電波とは性質が全然違うから、普通の妨害電場遮断装置じゃ役に立たないわ」

 

リーフ「極秘の連絡をとったりするのには便利かもね」

 

 

リーフとダイーダはそうフォローしたが、ランは納得が行かなかった。

 

ラン「日常生活には不便極まりないでしょう! 今晩楽しみにしてたドラマがあったのに!! 一ヶ月も前から楽しみにしてたのよ!!」

 

 

遠藤「まあまあ、テレビくらいでそうカリカリするな」

 

なんとかランをなだめようとするも、ランはかなりご立腹だった。

 

 

ラン「するわよ! 大体うまくいくかどうかもわかんないもののために、一ヶ月の楽しみがパァじゃない!!」

 

豪「なんだよ、それぐらいウチで録画しといてやるよ。なんなら見に来りゃいいじゃんか」

 

豪が至極まっとうな提案をしたが、

 

ラン「わかってないわね、リアルタイムで見るから価値があるのよ。それに豪のところに行ったらおばさんが気を使うから、ドラマに集中できないの」

 

 

ランにはランの妙なこだわりがあるようだった。

 

遠藤「ああもうわかったわかった。別にこいつと睨めっこしとかにゃならん訳でもない。明日の日曜日ピクニックにでも行こう。それで機嫌を直せ」

 

 

仕方ないと言わんばかりのその提案にランは少し機嫌が直った。

 

ラン「いいわよ。ただし約束破ったらタダじゃ済まさないからね」

 

ランはこの家の家事一切を担っている。

 

怒らせると怖いことは遠藤博士も重々承知している。

 

 

遠藤「わ、わかった。約束じゃ、絶対に連れて行ってやる」

 

冷や汗を流しながら遠藤博士はそう約束した。

 

 

ラン「ふう、これで1日休めるわ。家事って大変なのよね」

 

疲れたように腕をぐるぐる回すランに、豪が素朴な疑問を口にした。

 

豪「でもさラン、そんなに大変なら姉ちゃん達に手伝ってもらえよ。少しはお前も楽できるだろ」

 

 

 

その言葉にランはため息をつきながら愚痴った。

 

ラン「それが簡単にできれば苦労しないのよ。パンを焼いてといえば右手の火炎放射器で消し炭にするし、掃除してといえば部屋の中に洗剤とバケツの水をぶちまけるし、洗濯手伝ってといえばタンスごとお風呂に叩き込むし…」

 

そのとめどなく出てくる愚痴と、わざとらしく明後日の方を向いているリーフとダイーダに豪は引きつるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

そんなほのぼの?とした空気を破るようにマイナスエネルギー検知器が反応し、けたたましい音を上げた。

 

 

遠藤「むっ何か事件が起きたな!!」

 

豪「あれは使えるの?」

 

リーフ「マイナスエネルギーは電波じゃないからね。ちゃんと検知できるんだよ」

 

 

 

そうして一階に駆けつけ、窓の外を見ると全員あっけにとられた。

 

 

豪「な、なんだあれ?」

 

市街地の上空に、全長100メートルはあろうかという巨大な龍が、我が物顔で飛翔していたのだ。

 

 

遠藤「間違いなく奴らじゃな。コズミックプリキュア出動じゃ!!」

 

リーフ・ダイーダ「「了解!!」」

 

 

そう力強く返事をすると、リーフとダイーダは豪とともに三冠号に乗り込んだ。

 

 

 

リーフ「あんな巨大なメイジャーを作るなんて… 一体何を企んでるのかな?」

 

ダイーダ「考えても仕方ないわ。とりあえず今は至急現地に向かうわよ」

 

発進準備を整えつつリーフはぽつりと疑問を口にし、そんなリーフを鼓舞しつつダイーダが三冠号の起動を完了させた。

 

 

豪「よし、準備できた。三冠号発進!!」

 

 

その豪の掛け声とともに研究所下の崖が開き、三冠号が発進した。

 

 

 

 

 

市街地

 

 

節子「テレビの前の皆さん。この光景をご覧になっておられますでしょうか。

平和な市街地に突如出現した巨大な龍。これも次元皇帝パーフェクトと名乗る者たちの仕業なのでしょうか? 龍は不気味にとぐろを巻きつつ市街地上空を旋回しております。一体何が目的なのでしょうか?」

 

 

突如出現した巨大な龍に市街地はパニックになっており、その状況にもかかわらず、甲斐節子はさすがプロ根性というべきか冷静にレポートを続けていた。

 

 

そんな折、市街地に三冠号が飛来した。

 

 

節子「あっ、あの飛行機は!? みなさん、最近噂のコズミックプリキュアです。彼女達が来てくれました!!」

 

 

 

そして三冠号の飛来を心待ちにしていた存在がもう一人いた。

 

近くのビルの屋上に狙撃銃を構えたファルが待機していたのだ。

 

 

ファル「やっと来やがったかプリキュア。さっさと仕事を済ませるか」

 

そう呟くと、三冠号に狙いを定め弾丸を打ち込んだ。

 

 

さすがに狙いは正確で、弾丸は三冠号の側面に命中し、なにかの装置のような物を取り付かせることに成功した。

 

 

それを確認すると、ファルは舌打ちまじりに愚痴った。

 

ファル「ちっ、せこい作戦だ。さて撤収するか」

 

 

ファルは狙撃銃をしまうと、近くにあった装置のスイッチを切った。

 

すると、上空にとぐろを巻いていた龍は、突如として地面に向かって一直線に進んでいき、そのまま吸い込まれるように姿を消した。

 

 

リーフ「えっ? 消えた!?」

 

ダイーダ「そんな!? あんな巨大な物が!? 着陸して調べるわよ」

 

 

三冠号にはVTOL機能も搭載されている万能機である。

 

龍が消えたと思われる付近に垂直着陸し、リーフ達は調査を開始した。

 

 

 

 

 

一方

 

節子「な、なんと!! あの巨大な物が突如として姿を消してしまいました。そしてコズミックプリキュアは現場に着陸した模様です。この甲斐節子これより彼女達に突撃インタビューを試みようと思います!!」

 

 

そうレポートした途端、カメラマンは仰天した。

 

カメラマン「ちょっと、せっちゃん。危ないって、あんまり近寄らない方がいいよ」

 

そう忠告したが、節子は止まらなかった。

 

 

節子「何言ってんの、あんたプロでしょうが。ほら行くわよ!!」

 

 

そう言い残し走って行った節子に、やむを得ないというような感じでカメラマンもついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

リーフ「チェンジハンド・タイプイエロー!!」

 

その掛け声とともに、リーフの両腕が小さなロケットが装備された黄色の腕に変わった。

 

 

リーフ「周辺を探ってみるね。センサーアイ、発射!!」

 

そう叫ぶと、リーフは右腕を空にかざし偵察用ロケット センサーアイを発射した。

 

 

 

一方ダイーダは、巨大な龍が吸い込まれていったと思われる地面を調査していた。

 

 

ダイーダ「おかしいわね。あれだけ巨大な物が吸い込まれていったのに、全く形跡が残っていない」

 

豪「そうだね、穴みたいな物も空いてないし… リーフ姉ちゃんそっちは?」

 

 

リーフ「こっちもダメ。全くセンサーに反応がないよ。突然消えちゃったみたい」

 

 

ダイーダ「どういうことかしら? 大体マイナスエネルギーの残照すら感じないのは不自然すぎるわ」

 

先ほどの龍は普段戦っているメイジャーよりもはるかに巨大な物だった。

 

にもかかわらず、その痕跡すら残っていないことに皆疑問を感じていた。

 

 

 

するとそこに、節子がマイクを片手に走ってきた。

 

 

 

節子「すみませーん。コズミックプリキュアの方達ですね。インタビューをお願いしまーす!!」

 

 

 

豪「うわ、まずい! マスコミだ」

 

ダイーダ「とりあえず何もないみたいだし、引き上げるわよ」

 

リーフ「うん。何も見つからないしね」

 

 

その声を聞いた三人は慌てて三冠号に飛び乗り浮上させた。

 

 

節子「あっ、ちょっと待ってー!!」

 

 

その懇願も虚しく、節子がたどり着いた時には三冠号は手の届かないところまで上昇し市街地を後にしていった。

 

 

節子「くぅ〜、絶対に正体を暴いてやるんだから」

 

 

 

 

 

三冠号で帰還途中、いつものように豪が研究所に通信を入れた。

 

豪「じいちゃん、もうすぐ帰るよ。着陸するから格納庫を開けて」

 

 

しかし、研究所からの返事はなく、モニターにも砂嵐が映るだけだった。

 

 

豪「あれ? なんで? 故障かな」

 

ガンガンとモニターを何度か叩いていると、ダイーダが言った。

 

 

ダイーダ「豪、通信は使えないわよ。水の再合成が終わるまで妨害電波が出てるから」

 

そう言われて豪は現状を思い出した。

 

豪「ああそうか。でもどうすんの? 帰ってきたって知らせなきゃ着陸できないよ」

 

 

リーフ「うーん。仕方ない、私が知らせてくるよ。近くで待機してて」

 

そう告げると、リーフは三冠号から飛び降りて研究所へと向かっていった。

 

 

豪「んもう。あの水本当になんかの役に立つの? 不便なことの方が多いんじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、海底のDr.フライ秘密研究所では…

 

 

 

 

Dr.フライ「よしよし。ファルのやつめ、わしの指示通り奴らの飛行機にうまく発信機を取り付けたな」

 

 

モニターの中を動く光る点を見て、Dr.フライは満足そうな笑みを浮かべた。

 

 

ゴーロ「これで本当にあの忌々しいプリキュアどもを倒せるのか?」

 

ゴーロが疑わしそうな口調でそう呟くと、Dr.フライは睨み返し怒鳴った。

 

 

Dr.フライ「当たり前じゃ。奴らは間抜けにもわしの投影した立体映像につられてのこのこ出てきおった。あの発信機は天才のわしが開発したものでどんな妨害電波や電波遮蔽装置もすり抜けて信号を送ってくる。つまり、この光が止まったところが奴らの拠点というわけじゃ!!」

 

 

しかし、そんなことを言っている間にモニターの光は消えてしまった。

 

それを見てDr.フライは慌てた。

 

Dr.フライ「何? バカな!? こんなことはありえん!! なぜ信号が途絶えた!?」

 

 

ゴーロ「けっ、こんなこったろうと思った。間抜けってのはどこのどいつだよ」

 

そんなDr.フライを見て、呆れたように吐き捨てるとゴーロは立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

遠藤「ふーむ。その話から察するに、あの龍はホログラムだったのじゃろう。地面に吸い込まれるように見せたのも時間稼ぎの演出じゃろうな」

 

 

リーフたちの報告を聞いて、遠藤博士はそう分析した。

 

 

ダイーダ「とすると、あれはただの囮で、その隙に奴らは何か他のことを企んでいる、ということですね」

 

リーフ「でも、イエローハンドで周辺を調べたけど、連中らしい姿は10キロ四方には見当たらなかったよ。 だいたい時間稼ぎったって、そんなら姿を消す必要もないと思うけど…」

 

 

遠藤「ふ〜む、今の段階では情報不足じゃな。とりあえずいつでも出動できるように心づもりをしていてくれ。三冠号のメンテナンスと清掃は自動マシーンにやらせておくことにしよう」

 

そう当面の結論を出した遠藤博士に、豪が愚痴った。

 

 

豪「それはいいけどさ。あの地下の実験なんとかなんないの? まともに連絡もできないから不便で仕方ないよ」

 

 

遠藤「ああ、しかしせいぜい明日の昼過ぎまでの…ん?」

 

そこまで言って、遠藤博士は気がついた。

 

 

遠藤「しまった! こりゃまずいぞ!!」

 

 

 

 

 

ラン「ピクニックは中止ですって!! 約束は破らないんじゃなかったの!!」

 

 

案の定、凄まじい勢いで食ってかかってきたランを必死でなだめつつ、遠藤博士は事情を説明した。

 

 

遠藤「仕方ないじゃろう。奴らがいつどこで何をするかわからん。研究所を留守にすれば奴らの行動を通信で知ることもできんし、三冠号も呼べんのじゃからして…」

 

しかし、ランも理性ではわかっていても感情が抑えられなかった。

 

ラン「わかるけどもやっぱり許せない!! あの機械壊しちゃうから!!」

 

 

豪「おいラン、落ち着けって。な」

 

そうやってランをなだめていると電話が鳴った。

 

 

遠藤「お、おう電話じゃ。ちょっと静かにな」

 

これ幸いとばかりに遠藤博士は電話に駆け寄った。

 

 

遠藤「はいこちら遠藤平和科学研究所じゃが… なんじゃ翔子か。うむ来とるよ。うっ、わかったわかった。すぐに帰らせるからそう怒鳴るな」

 

そうやって電話を切ると、遠藤博士はため息をついた。

 

 

遠藤「ふう、どうして我が家系の女はこうも気が強い… 豪、お母さんからじゃ。携帯まで切ってフラフラ遊んどらんと今すぐ帰って勉強しろとな」

 

 

豪「げっ!! んもう、携帯が通じないからこんなことにも迷惑がかかってるよ」

 

 

この一連のことを見てランがふと尋ねた。

 

 

ラン「ねぇ、携帯は無理でも固定電話は使えるってこと?」

 

遠藤「ん? そうじゃな。固定電話は電話線でつながってるからして」

 

 

 

それを聞いてランはニッパリと笑った。

 

ラン「な〜んだ、ならさっきの問題は解決ね。ハイキングに行けるわ♪ リーフさんとダイーダさんも一緒に行きましょう」

 

 

遠藤「おう、さすが我が孫。こうもあっさりいい解決法を思いつくとは。一体どうする気じゃ?」

 

そんなランに遠藤博士は嬉しそうに尋ねるも、ランはにや〜っと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

テレビ局

 

 

 

 

節子がコズミックプリキュアのニュース映像を穴があくほど繰り返し見ていた。

 

 

節子「どっかで見た気がするのよ、この二人。ニュースとかじゃなくて、もっと別の場所で… えーっとどこだったっけ?…」

 

 

頭をかきむしりながら必死に思い出そうとしていると、専属のカメラマンが話しかけてきた。

 

カメラマン「どこってそりゃ、こないだの海底基地の件の時じゃないの? 現場で直に見たじゃん、あの二人が戦うところをさ」

 

 

その言葉に、節子ははたと気がついた。

 

節子「…そうよ、思い出したわ。あの時よ!! なんか見たような気がしたのよ、あの二人!!」

 

 

そう叫びながら立ち上がると、カメラマンを引きずって行った。

 

カメラマン「ちょっとどこ行くの?」

 

節子「日本アカデミーよ。あの時の調査団の人に話を聞きに行くの」

 

 

カメラマン「今から? もうすぐ日が沈むよ」

 

節子「やかましい!! 報道関係者に昼も夜もあるもんか!!」

 

 

 

 

 

 

翌日 日曜日

 

 

 

ラン「うーん、いい天気。絶好のピクニック日和だわ」

 

リーフ「ピクニック… 簡単な旅のことだよね。一体どこに行くの?」

 

 

ラン「高原のアルプス牧場よ。乳搾り体験ができるし、露天温泉もあるっていうから前から行ってみたかったの。 この日のために買った新しい服もあるし、それに似合うブローチも見つけたし、せっかくの日曜日、今日は1日楽しもうっと♪」

 

 

楽しみで仕方がなかったというように、ランはそう言った。

 

ダイーダ「へぇー、牛かぁ。この辺じゃ普段見られない生き物ね。私も楽しみだわ」

 

ラン「そうでしょ、きっとヒットも喜ぶと思うの。いっつもこの辺ばっかりだもんねぇ〜」

 

バスケットの中でのんきそうに欠伸をしている飼い猫のヒットに、ランはそう微笑みかけた。

 

 

遠藤「ラン、豪から今日は来られないと電話があった。 なんでも昨夜散々絞られたあげく、今日は1日監視付きの勉強だそうじゃ。 しかしそれより…」

 

そう告げた遠藤博士はなんとなく寂しそうだった。

 

 

 

ラン「そっか。じゃあ「三人で」楽しんでくるわね」

 

 

明るくそう言ったランに遠藤博士は力なく尋ねた。

 

遠藤「本当にわし一人に留守番を押し付けて行く気か?」

 

 

 

ラン「だって誰かがいないと、連絡が取れないんでしょ。仕方ないじゃない」

 

実にわざとらしく、明るい声でランはそう言った。

 

 

リーフ「じゃあすみません、遠藤博士」

 

ダイーダ「行ってきます」

 

 

 

遠藤「うむ、何かあったらランの携帯に連絡する… 固定電話からならかけられるからな…」

 

誰も同情をしてくれないこの状況に、遠藤博士は悲しそうに三人を見送った。

 

 

 

 

そうやって駅に向かって行った三人だが、影からこっそり後をつける存在がいた。

 

 

カメラマン「せっちゃん。本当にあのメガネの女の子達がコズミックプリキュアなのかな?」

 

節子「馬鹿ね、よく見ればそっくりじゃない。人の顔が覚えられないならマスコミなんかやってんじゃないわよ」

 

 

昨夜、節子は日本アカデミーに赴き、調査団が散々馬鹿にしたという遠藤博士のことについて尋ねたのだ。

 

 

その後徹夜の調査で、ようやく遠藤博士の今の住所を突き止め、朝から見張っていたのである。

 

 

節子「コズミックプリキュアの正体を報道できれば、私は一躍時の人よ。そうなれば売れっ子になって、あっちこっちから仕事が舞い込んで…。 さあ、あの子達の後を追うわよ」

 

 

 

 

第11話 終


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