停滞している筈なのにこの頻度。しかし間隔から考えれば十分停滞……。
あれ、他の作品にも跳ね返ってきそうなので、ここら辺にしておきます。
楽天的でいたつもりは無かった。神様なんぞも信じちゃいなかった。
(やっぱりかよ……!)
それでも、運命というのは、どうも皮肉に回るらしいと自覚して、爆豪は唇を噛みしめた。
「動くな、あれは……敵だ!!!!」
何とも見慣れた、黒い靄の穴。
不気味な大柄の怪物。
だがそれ以上に。
大人のものと思われる片手を、顔面に貼り付けた己と同じ、赤目の男に、爆豪の中の何かが脈打つ気がした。
「オールマイト……平和の象徴……いないなんて……」
ブンと、苛立たしげに首を降る男の目が、一瞬こちらを向いた気がした。
しかしその確証を得るよりも前に、男の次の言葉で否応なしにその場の空気が張りつめる。
「子どもを殺せば来るのかなぁ……!!」
突然現れた、途方もない悪意に、生徒達は皆身構える。
それをどこか冷めた目つきで、爆豪勝己はただ状況を把握しようとしていた。
昼食の時間が終わり、午後一で始まるヒーロー基礎学、その教室に入ってきたのは、相澤先生こと、イレイザーヘッドだった。
「今回のヒーロー基礎学だが……俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見ることになった」
その言葉でいやでも数日前の騒ぎ……そこから派生する何かを案じての処置だろうということが分かった。
(きづいてるのか?)
あの日、爆豪は確かに、一学年の年間カリキュラムを黒霧に渡した。ただし、それは盗んだものを更にコピーしたものであった。
(……俺が盗んだのは原本だ。印鑑とかが直に押されたモンはあの一枚きりだったはず)
本来、完全に知られぬようにするのならばコピーされていたものを持ってくるべきだろう。それかコピーした後、原本は直ぐに戻すべきだったのだ。
マスコミや警報が知らせる異常の警戒に、ヒーロー科の教師が全て出払っていたあの時は、それをするだけの余裕は十分すぎるほどあったのだから。
だからこれに関しては、単なる爆豪の嫌がらせである。
勿論、自分を良いように利用しようとする敵達に対してのだ。
一人で思案に暮れる爆豪をよそに、相澤の話は進んでいく。訓練場までバスで移動、コスチュームの着用は自由。最もこれにはほとんどの生徒は着用を選ぶだろうが。
準備開始のかけ声と共に各々動き出す子供達の波に乗りつつ、爆豪は小さく息をついた。
時折、彼らに対して酷く申し訳なくなることがある。
勿論、ヒーローになること。己の持つその目標を変えるつもりは今の所はない。
それなのに、敵と思える者達に協力してしまっている自分に酷い嫌悪感を覚えてしまう。
バスの中で話を振られ、適当にかえすと、何故かクソを下水で煮込んだような性格と揶揄された。
語彙力の少なさを棚に上げる男を睨みつけていると、離れていた訓練施設……USJ……嘘と災害の事故ルームに到着する。
そこで待っていたスペースヒーロー十三号が最後の三番目の教師なのだろう。
そのまま彼の小言とも言える説明を聞く内に、事態は動いた。
しかも最悪な予想通りに。
一クラス分という少人数が学校の本舎から離れた施設に閉じ込められる時間に測ったかのような襲撃、しかも電気系の個性が居るのか、センサーでなるはずの警報が発動していない。
それらのことから、これは用意周到な計画だと、推薦組の一人である男子生徒が口を開いている。
それを聞きながらかなりの大所帯になっている敵……黒霧達の方へ爆豪は視線を向けていた。
己がカリキュラムを渡してからそんなに日は過ぎていない。
あの人数を考えればカリキュラムを手に入れてからあの軍団を集めたと言うよりも、彼らを集めた後、今回の襲撃に適切な時間を知るために爆豪にカリキュラムを盗ませたと言うところだろう。
「一芸だけじゃヒーローは務まらん」
その一言だけを残し、敵の中へ相澤先生が飛び込んだのが見えた。
背後では、避難を呼びかける十三号の声が聞こえる。
彼の指示に従って、遠ざかってそれで事態が済むのならば、それで良いかと思っていた……そんな簡単にいくわけがないと、分かっていたのに。
「させませんよ」
ぞわっと、何もなかったはずの空中に広がった黒い靄。
その目の前に十三号、そして生徒達がいた。
(追っ手がかかると思っちゃあいたが……よりによってこいつかよ)
思わず歯噛みをしながらも、迷わず爆豪はかけていた。
敵側と己との繋ぎ役になっていた彼のことは、初対面である他の奴らよりも多少詳しい。
個性、ワープホール。そして。
「はじめまして、我々は敵連合」
(あの男が選んだ、
BOOOOM!
己が爆破を繰り出すのとほぼ同時に、赤髪の男が腕を振り上げたのが見えた。
「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」
啖呵をきった男を前に、自然と口を閉ざしていた。
(下手に口開いて自爆なんざ目も当てられねぇ……!)
思わず自己保身に走った結果であるげ、事態はそんな思惑を意に介すことなく進行していく。
「ダメだ どきなさい 二人とも!」
背後にいたプロヒーローの声に気をとられた。その瞬間。
黒い靄が、視界を覆った。
BOOOOM!
特徴的な爆発音に、思わず己の傍近くに仕えていた男、黒霧を送った、子どもと、プロヒーロー一人がいるはずの地点に目を向ける。
「……ちっ」
予想は出来ていた事態。
しかし、決して面白いとは言えない事態に、苛立ちも露わに彼、死柄木弔は、首筋を掻きむしる。
(苛つくし、むかつくし……その上邪魔する! 本当に煩わしい……!!)
「あんなのが俺の番だなんて……!」
呟いた声は、誰の耳にも届いていない。
この作品、要素の名前だけを出しながら、今まで影も形もその要素が出てきませんでした。
ようやく多少は出せたかなと思います。
説明に関しては作中で追々していきたいと思っていますが、言葉足らずになる可能性もあります。
どうぞご了承下さい。