ドールブレイクゾーン 機械仕掛けの彼女   作:甘原彩瀬

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第8話 賽は相手の顔面に向かって投げられた

2055年』4月2日  10時6分 彩雲辰人

「次は誰がしますかね?」

瑠璃川先生が周りを見渡す。

「オレがやる」

遠藤が立ち上がる。

「俺が相手になる」

俺も手を上げ立ち上がる。

さっきの試合を見て、少し興奮して来たし、ド派手にやってやろう。

「分かりました。では、どちらが対岸に行きますか?」

「俺が行く俺なら対岸に行くのに5分かからない」

俺はそう言い少し身体を伸ばす。

「オレは構わないぜ」

「ありがとう、ああ、遠藤よ、少しハンデを上げようと思う。遠藤、お前の戦闘侍女人形を何体持っている」

俺の言葉を聞いた遠藤は少し機嫌が悪そうな顔になる。

「それを聞いてどうする。こちらの戦力を明かす訳にはいかないだろう」

遠藤が少し身構える、まぁ無理もないか。

「では、言い方を少し変えよう。俺の所持戦闘侍女人形の数は9体だ。別に9対Xをしてもいいなら、ハンデを付けないが」

遠藤は少し考えて口を開く。

「お願いする」

「いいぜ、ではこのサイコロを投げてくれ」

俺は胸ポケットからサイコロを2つ渡す。

「こいつを二回投げろ、出た目がお前の相手だ」

遠藤はサイコロを受け取り、賽の目を確認する。

「おい、このサイコロの目、一つは3までしかないし、もう片方は5までしかないぞ」

「大丈夫だ、問題はないそれは特殊なサイコロだ、別にイカサマとかではないから安心しろ」

遠藤はおもむろに手の中でサイコロを転がして投げる。

「2と3」

サイコロを拾ってまた投げる。

「4と3か。OK」

ほう、面白い組み合わせだ。

俺は、先生から信号弾を貰い、皆から少し離れる。

「―――-」

機械語を呟き、全身のナノマシンに指示を出し、強く地面を蹴った。

 

2055年 10時10分 遠藤拓哉

―――――――――

「あいつ、実は戦闘侍女人形じゃないよな」

突如、彩雲がジャンプしたと思うとはるか向こうに着地してまた、人間じゃないレベルのジャンプをする。

彩雲の影を眺めているとクラクションが鳴り響く。

「マスター、到着しました」

振り返ると重武装されて洋式霊柩車が止まっていた。

I・C社製強襲型輸送装甲車ヘリオン、それがオレの愛機の一つだ。

サイドハッチから中に入りヘリオンに声をかける。

「ヘリオン、準備はどうだ?」

「エンジンは良好。セッティングも大丈夫です。火器系統のチェックはまだですが」

「なるほど、火器系統まだなんだな」

弾薬棚から弾を抜き自分の席に着く。

目の前のパネルを叩き、レールガンの電源をつけ薬室に弾を込める、安全の為セフティーを掛けておく。

「シュバルツ・クーゲル起動。安全の為セフティーを掛けておく」

更に、パレルを叩き、火炎放射器と重機関銃の状態を確認する。

「ジャンヌ、起きろ。13ミリ機関砲をマニュアルにしたから、試射をして」

弾薬棚のとなりの棚から箱が落ち、形が崩れ小さな機械がたくさん出てくる。

『承知しました』

小さな機械が再び集まり少女の形をつくる。

「ジャンヌ、起動しました」

ジャンヌは、起動の報告を言いすぐさま銃座に登り、機関砲の試射をする。

「機関砲、異常ありません」

「了解した、後は、あちらの合図を待つだけか、ヘリオンなんか曲を掛けて」

ヘリオンはカーステレオのスイッチを入れ、適当に選曲した。

 

2055年10時10分 彩雲辰人

―――――――――――

 「お、見えた、以外に早くついたな」

崖の上に、人影を二つ見つけ、着地体勢をとる。

踵から付き、小鳥が木にとまるように地面に着地する。

「その様子だともう出撃できるのか?」

バイクに跨り、煙草をふかしている女性…スカイライナー卯月参式に話しかける。

「後はマスターの準備くらい、如月弐式はその辺りで遊んでるよ」

「そうか、後は俺だけか」

コートの内側から対暴走戦闘侍女人形兼信号銃香里4式を抜き、信号弾をマガジンに入れいつでも撃てるようコートの金具に引っかける。

ポケットから仮面を取り出し嵌める。

「ところで、この組み合わせって珍しいよな?」

仮面の電源を入れながらぽつりと呟く。

「そうだね。これが初めてかな?」

卯月は、小さくなった煙草の火を消し携帯型灰皿に入れる。

「これから先もこの組み合わせになるかも知れないからデーター収集をしといて」

仮面と義手を連動させる。

「分かったわ」

暗かった視界が明るくなり、視界情報が表示する。

「如月、卯月、出撃だ、マハに乗り込め」

卯月がバイクのエンジンを掛け、ローブを纏った少女がスラスター付近につかまり、俺は卯月の後ろに跨る。

コートについているフードをしっかり被り、対暴走戦闘侍女人形兼信号銃香里4式を抜き信号弾を天井に向かって撃った。

 


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