ドールブレイクゾーン 機械仕掛けの彼女   作:甘原彩瀬

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第4話ラ・モルトってフランス語で、死神って意味なんだぜ

2055年4月2日 午前9時15分 古風五十鈴

「メアリー、装備の確認をするぞ」

「分かりました」

何処からか、銀髪を靡かせながら、黒いゴシックドレスを纏う女性が姿を現す。

メアリーは、肩にぶら下げている、長方形のケースを開ける。

ケースから、大型スナイパーライフル「可変型分隊支援狙撃銃ラ・モルト」、スコープ、三脚を取り出し組み立てを始める。

それに対して俺は、リュックから、観測器を取り出し、電源を入れる。

「先生、試射してもいいですか?」

先生は、こくりと頷いた。

俺はスコープを覗く、スコープの真ん中に黒い十字とミルが刻まれている。

これは、俺が見てているエイムだ。

観測器の操作パネルにあるレバースイッチを倒すと、俺の十字からかなりズレタ所に青い十字が表示される。

これは、メアリーのエイムだ。

次に、スイッチを上から下に下すと、スコープ左端に表示された、autoの文字がMANUALに変わる。

すると、青い十字と黒い十字が重なる、これは、俺が見ている物にメアリーが銃口を向けていることを指す。

「すぅー」

俺は、15M離れたところにある、岩にエイムを向け、深呼吸をする。

「撃て」

俺は、メアリーに射撃命令を下す。

バドォォォン

腹にボディークローを食らったような音が響き、岩が砕ける。

「目標に命中、次弾装填、待て」

俺はスコープから顔を離す。

最期に、リュックから、鳥型のロボットを取り出す。

「マスター、ヤキトリも使うのですか?」

射撃体勢から通常体勢になったメアリーが首を傾げる。

「ああ、そうだ」

ヤキトリを肩に乗せたその時。

パァァン

遠くの方で、水色の煙が見えた。

「よし、どんな、可愛い子ちゃんか見に行くか」

俺とメアリーは、右手に、見える高台を目指し走り出した。

―――――――――

2055年4月2日 午前9時25分 黒塚 友哉

「たっく、なんで、こんなにもあるかなければいけないんだし」

俺は、くたくたになりながら、シェルフの元にたどり着いた。

「ドリンクデース」

俺は、くたくたになり、地面に寝そべっていると、頬に冷たい容器が当たった。

「ありがとう、シェルフ」

シェルフから水筒を受け取り、水分を摂取する。

スポーツドリンクを飲みながら、シェルフを見る。

俺と同じ、パイロットスーツを身に包み、緑髪のショートカットが特徴の戦闘侍女人形だ。

「シェルフ、猫は、何処だ?」

「そこの草むらに偽装させてマス」

「よし、出撃準備だ」

俺は、足元にある、シートを掴みとり引き上げると、草むらが崩れ、銀色の戦闘機が姿を現す。

コックピットに乗り込み、スロットルレバーを目の前の穴に入れる。

「シェルフ、メインエンジン接続」

後ろの席で、ガコッとエンジンとシェルフが接続された音が響く。

「エンジンスタート」

エンジンスタートボタンを押す。

しばらくすると、駆動音が鳴りだす。

「ハッチ閉鎖」

シェルフが、ハッチを閉める。

「各モジュール起動」

様々な機器に電気が灯りだす。

「コスモグラノ、分裂開始」

「了解、翼の開閉テストを開始」

俺は、窓を覗き、主翼がまるで、両手を広げるように展開しているか確認する。

「all green」

「各モジュールテスト終了、all green」

シェルフが異常を無いことを確認する。

「操縦をシェルフに渡す、you have control」

「Ī have control これより、垂直離陸を開始しマース。マスター、ah you ready?」

あ、信号弾を忘れていた。

俺は、手信号用の窓を開け、信号銃を出す。

「信号弾を撃つタイミングで離陸を開始して」

シェルフは、俺の肩にそっと手を置いた。

シェルフが、手を置くときは、「落ち着いて」の意味だ。

俺は、一旦、深く息を吐き、深く吸い込んだ。

「さて、行くか」

そして、俺は、トリガーを引いた。

それと同時に、発進高度まで上昇が始まる。

「マスター、これからどうしマス?」

シェルフが、進路を聞いてくる。

「まずは、中央にある森林に向かい、爆撃を仕掛ける、気化爆弾装填」

足元が微かに揺れる。それは気化爆弾が装填されている揺れだ。

「発進高度到達、カウント5秒前」

「全兵装オンライン。火器管制への接続を確認」

全ての兵装の安全装置を外し、ヘルメットのバイザーを下げる。

「4秒前」

目の前にHUDが表示され、各兵装の残弾や射程などの情報が映し出される。

「3秒前…2秒前」

キュィィィィ

メインスラスターからアフターバーナーが徐々に出始める。

「1秒・・・発進!」

ドンっと、凄まじい重力が前から後ろへと引っ張られた。

―――――――――

2055年4月2日 午前9時30分 古風 五十鈴

俺たち、二人は、高台を目指して進軍をしていた。

「メアリー、この坂を登り次第、狙撃ポイントを作るぞ」

坂を全速力で駆け上がりながらメアリーに指示を出す。

よし、後、少しで、坂を登り切る。

微かだが、川のせせらぎが聞こえてきた。

「メアリー、この先、川があるようだ、その辺りに狙撃ポイントを作らないか?」

俺は、メアリーの狙撃ポイントをどこに作るか、聞いてみた。

メアリーは、首を横に振る。

「河川敷は、開けている可能性があるので、やめた方がいいかと」

そうなのか、だったら、このまま進軍するしかないな。

坂を登り切り、背の高い草むらの中へ進軍しようとしたその時、

「マスター!」

急に、メアリーが後ろから抱き付俺を押し倒す。

「な、何を―――」

風切音とともに、一機に戦闘機が横切っていった。

「メアリー、狙撃準備だ」

急いで、観測器を設置し、土嚢に土を入れ、積み重ねその上から、偽装ネットを張る。

メアリーは、黒い傘を広げ地面に突き刺す、傘の膜が濃ゆい緑に変わり、周りの草と同じ色になる。

「よし、狙撃ポイントの設営完了」

メアリーは、急いで、ラ・モルトの銃口を出すための穴にライフルを構え、その隣に観測器を置き、戦闘機を捉える。

「さて、見せて貰おうか、お前の戦闘侍女人形の性能とやらを」

俺は、深呼吸をする。

「AP装填…撃てっ!!」

バドォォォン

銃口から煙を上げるなか、メアリーはボルトを引き、次弾を薬室に送る。

「ヒット、敵モジュール破壊を確認。

あれはっ、メアリー、コックピットは撃つな! 前席に黒塚が乗っている注意しろ・・・撃て」

再び、ライフルが火を噴く。

「ミスヒット‥・これ以上撃ったら、こちらの場所がバレってしまう、待機しろ」

「了解」

メアリーはラ・モーレから弾倉を抜き、安全装置をつける。

「マスター、これからどうします?」

「そうだな、や――

俺のすぐ後ろの土嚢に弾が突き刺さる音が雨のように鳴り響いた

――――――――――――――――

2055年4月2日 午前9時25分 黒塚 友哉

「レーダーが破壊されてしまったね」

「まさか、いきなりレーダーがやられるとはね」

コックピットの前部に、拳くらいの穴が開いていた。

俺は、目視で索敵を始めるーが共に、背筋に冷たい水を掛けられたような感覚が走った。

「シェルフ、急いで、ハイGターンをしろ、方向か任せる。ストールを起こせ」

シェルフは、スロットを全開にして旋回をする。

機首を中心に旋回をはじめる。

『ストール』

すると、先まで、尾翼があった場所に、オレンジの閃光が通過した。

ぐんっと、機首が下を向き、高度が下がり始める。

「よし、機首を上げるタイミングは、任せる」

「了解」

猫は、高度が900m以下になった途端、ハイGターンで、機首を持ちあげ、再び上昇する。

なるほど、スナイパーライフルによる狙撃か。となると、狙撃ポイントは、高台か。

「シェルフ、進路を東高台に、向けて」

機体の向きが高台を向いて途端、俺は、機銃を高台に向け連射をした。

「地対ミサイルを使う」

ミサイル発射トリガーを引き、ミサイルを二発、放つ。

亜音速まで、加速したミサイルは高台に着弾すると同時に、爆発を起こした。

「やったか」

俺は、これで、終わったかと、シートに深く体を預けようとした。

バシンッ、バシンッ

鉄に平手打ちをしたような音がコックピットまで響き渡る。

「主翼に被弾。ダメコン出来ません」

「な、何ィィ」

コックピットの窓から翼を見ると、根本に被弾したのか、酷く煙を出していた。

「あの様子だと、パージは無理か、操作をこちらへ」

「YOU have control」

「I have control」

俺は、そう言いながら、俺たちが乗っているトム猫を急降下させた。

 


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