ドールブレイクゾーン 機械仕掛けの彼女   作:甘原彩瀬

3 / 13
第3話誰がクラス委員長になったてどうでも良くね

2055年4月2日午前3時56分 彩雲辰人

朝の四時前に起きて服を着替え、部屋を出て皆を起こさないように忍び足でリビングを出て、トレーニングルームに入っていった。

「よし、今日も頑張るぞい」

五十年近くの死語をつぶやく。

部屋の電気は灯さずに、部屋の奥に設置されたリングに上がると、暗闇から模造刀とヘッドギアが飛んでくるのを、片手で受け止めた。

「おはようございます、しんちゃん」

暗闇から和風メイドドレスに身を包み、腰に左右に三本ずつ携えている少女が姿を現した。

「おはよう、皐月…ふぁ」

俺は、ヘッドギアを装着しながら、挨拶をする。

「あら、まだ、眠たいようですね」

皐月が、左足を後ろに引いた瞬間、俺の勘が警告アラートを伝える。

俺は、素早く、右腕を前にかまえる共に、金属と金属がぶつかり合う音と共に、両手に重い振動が伝わる。

皐月の剣技の一つ、『シマヘビ』、皐月の背中に、正面から見えない位置に隠している刀を左足で抜き、そのまま、蹴り上げるように相手を切り裂く技だ。

皐月は、足指に挟んでいる刀を、天井に向かって切り裂く。

俺は、横に飛び、素早く斬撃を躱し反撃をする。皐月のがら空きになったうなじを蹴る。

すると、皐月は、ぐらつき、刀を落とした。俺は、その刀を拾い、さらに追撃をする。

が、皐月は僅かに、体の向きを変えたり、屈んだり、身体を反らしたりして躱す。

ッチ、回復が早すぎる。

俺は、一旦、距離を置こうと下がろとした。

「脇腹が無防備ですよ」

皐月の両腕が消えたかと思うと、脇腹に痛みを感じた。

「はい、死んだ。今のは距離を置こうとして一瞬、止まったね、残念」

俺の体が持ち上がり6本の刀が両脇腹に食い込み拘束された、皐月は、強く食い込ませたり弱くしたりして、俺の体力を奪っていく。

「さて、辰人、そろそろ本気で行かせてもらうわ」

皐月は、低いトーンで言うと、拘束を解くと共に、俺の身体が、落下する。

「っふん」

皐月は、そんな俺の腹部に蹴りを入れる俺はそのまま飛ばされ、何回かバウンドして床に転がった

「ッかは」

蹴りが鳩尾に入ったらしく、上手く呼吸ができない。

「人間相手…ヤマカガシ…卑怯すぎ…るだろ」

皐月は、右手の刀を担ぎ、左腕をだらんと垂らす。

「おかげで,目が覚めてでしょう?」

「ったく、そうだな」

さてと、本気で、行くとしようかな?

 

2055年4月2日午前 5時30分 古風五十鈴

――――――――

俺の朝は、物凄く早い。

ドールブレイクゾーンに必要なのは、体力だ。

最低10K㎡にも及ぶフィールドを、走らなければいけないからだ。

俺は、寝ている皆を起こさないように、自室を出て、トレーニングルームに向かった。

「お、おはよう」

電気がついていないが朝日が差し込み、明るい部屋に入った瞬間、声をかけられる。

入口近くの壁で、片腕逆立ちをしながら腕立て伏せをしている彩雲の姿があった。

「おはよう」

俺は、鏡の前にあるルームランナーに乗り、走り出す。

部屋に、ルームランナーの駆動音と彩雲のカウントする声が響き渡る。

「95…97…98…99…100…ふぅ…終わった」

辰人は、前に倒れるように起き上がりルームランナーに乗る。

お?これは、親睦を深めるチャンスじゃないか?

15分くらいの沈黙が流れた。

「今日の時間割はなんだっけ?」

俺は、辰人に適当な話題を振ってみた。

「朝の自由時間なしEL国ドドドだ、」

「そうか、サンキュ」

お礼を言った瞬間、電子音が鳴り響く。

「お、時間か、じゃあな、五十鈴」

辰人そう言い残し、トレーニングルームを去っていった。

「もっと、話をしたかったのに」

しばらく、走った後、肋木を使って懸垂を始めた。

4月2日午前 7時10分 古風五十鈴

懸垂も終わり残りのトレーニングを澄まして、リビングでテレビをつける。

『山陰地方の今日の天気です。益田市…晴れ、浜田…晴れ、江津市…晴れ ―――』

今日の天気は、晴れか、花粉がやれんな

「よう、おはよう」

「一緒に飯を食いに行かないか?」

後ろから、遠藤と黒塚が声をかけてくる。

「おはよう、ご飯か、俺も一緒に行かせてもらってもいか?

せっかくだし、皆で行かないか?」

辰人が洗面所から顔を覗かせて挨拶をしてくる。

「お、いいぜ、とすると…岩本を起きるのを待つとするか」

俺は、再びテレビに視線を戻すと、新開発された戦闘侍女人形のニュースが流れていた。

『侍魂から新たにハイエンドモデルの織田信長の販売が発表されました。

森山さん、戦闘侍女人形とはなんなんでしょうか?私、初めて聞いた名前なのですが』

映像が女子アナから少し太ったおっさんに切り替わる。

『えー、戦闘侍女人形とは、簡単に説明しますとね。宇宙放射線の中から見つかった原子コスモグラノを動力としたアンドロイドで、人々の生活の支援などをしているのが、侍女人形と言います。それらを用いたスポーツ、ドールブレイクゾーンとドールゲームの二種類に出場するために作られたのが戦闘侍女人形と言います』

再び、女子アナに映像が切り替わる。

『分かりました、では、こちらのVTRをご覧ください』

すると、どこかの演習場が映し出される。

『えーあちらにあるのが、今回新しく発表された織田信長です。』

カメラに映し出された織田信長は、腰まで長い黒髪の細身、雪みたいな肌、顔は前髪で隠れていて見えない。

だが、それよりも気になる事があった。手足に拘束器具をさせられ足枷までされ、さらには首元に、ギロチンに見える拘束器具まで嵌められていた。

「なぁ、彩雲。なんで、アイツには、拘束器具がされている?しかも、ギロチンみたいなもんまであるし」

洗面所から出てきた彩雲は、面倒くさそうに答える。

「あれか? 開発途中の戦闘侍女人形は、あんな感じで拘束するよう決まりがあってな。

もし、AIのプログラムに欠陥がありそれが原因で、暴走してもすぐに鎮圧できるようになっているんだ。これは、俺たちにも関係してくるんだが戦闘侍女人形の弱点は、頭とエンジン部位、そして首だ。特に首は、AIからの命令を伝えるためのコードや各モジュールを冷却する人工血管なんかが通っている。

つまり、ギロチンで、首を落とすのが安全なんだ」

なるほどねぇ、俺は彩雲の説明を聞きながら、テレビに映し出されているスペックを見ながら、頭部の装甲厚を計算していた。

「お、おはよう」

後ろを振り返ると、眠たそうなに頭を前後にふる岩本の姿があった。

「よう、おはよう」

「やった、起きたか、飯食いに行かないか?」

「おっはー」

皆で、挨拶をし共に食堂へ向かったのであった。

2055年4月2日 午前 7時25分 岩本燐

――――――――

「彩雲は、なにするんだ?俺はC」

ショーケースに入ったレプリカを見ながら、彩雲は、何にするのか尋ねる。

「俺は、モーニングプレートBだ、古風は?」

彩雲は、二段目にある、プレートを指さしながら古風に聞く。

「俺も同じ奴だ、黒塚は?」

「僕は、Aだね。拓哉は、何にする?」

「俺は、Cだ」

それぞれ、食堂の前にあるレプリカの前でメニューを決める。

そして、俺たちは、食券を買って、おばちゃんに渡し、食堂中央にあるテーブルに陣取った。

「そういえば、さっきのニュースでよ、新開発された、侍女人形のスペックってマジなのか?」

「違うだろ、たとえ、報道されても、改ざんされた数値しか言わないだろう」

辰人は、スマホを操作しながら、答える。

「だけど、WDBのライブラリーを開けばあるはずだ」

辰人は、携帯を見えると、そこには、何千もの名前や数字が表示されていた。

「これは…ポケ○ン図鑑か?」

遠藤の頭には、どうやら、50年前から続いてい アニメやゲームに出てくるあの図鑑にしか見えないようだ、てか、そいう、言われるとポケ○ン図鑑しか見えない。

「はは、これは、戦闘侍女人形装甲スペック辞典だ、WDBに登録されている、すべての戦闘侍女人形のスペックが乗せられている。

けど、開発途中だったり、個人専用に作られた戦闘侍女人形だったり一部の情報は凍結されている」

辰人は、スマホのキーボードを叩くと、織田信長の情報をリサーチし始める。

「っち」

辰人は、検索結果を見て下打ちをした。

「該当する戦闘侍女人形はありませんだってよ」

俺たちの周りに、暗い空気が流れる。

『Ppppp』

突然、電子音が鳴り響き、俺たちの朝食が出来たことを知らせ、俺たちは、それぞれ、受け取りにいくのだが、もうこの時には、俺たちの頭の中には、織田信長に事は、もう忘れていた。

俺たちは、注文した料理を受け取り、再び席に座った。

俺のCプレートは、ハンバーグと目玉焼きと食パン後、レタスのサラダだ。

彩雲のBプレートは、色んな種類のサンドイッチが山積みにされていた。

す、すごい量のサンドイッチだな

Aプレートを頼んだ、黒塚はと言うと、それは、ライ麦パン ?丸いパンとバターとレタスとハンバーグだった。

たぶん、「ライ麦パンにはさんで食べろ」ってことかな?

俺たちは、その後、くだららない話をしながら朝食を食べるのであった。

2055年4月2日 午前9時15分 古風五十鈴

―――――――――

「今日は、このクラスの委員長を決めます」

401教室に、瑠璃川先生の声が響きわたる。

「我こそは、って言いたいかもしれませんが、この学校での、委員長決めは、少し変わったやり方をします。皆さん、自分の戦闘侍女人形を連れて、私について来てください」

俺たちは、教室を出て、しばらく廊下を進んだ先に、分厚い鉄板で出来た扉があった。

「メアリーこれは?」

俺は、小声で、メアリーに話かける。

「チタン製の鉄扉だと思います」

先生は、レバードアノブを引くともに、機械音と空気音が鳴り響く。

扉の中には、エスカレーターが設置されており、地下へと繋がっていた。

「なるほど、地下に演習場があるのか、先生、演習場から地上は地下何Mですか?」

「皆さん、エスカレーターに乗ってください、彩雲くん、地下10です」

辰人は、それを聞くと、ぶつぶつ何か言い始めた。

「…スカイライナーシステムが安定して電波を受信できるな」

スカイライナーシステム? 何だろうそれは?

「彩雲、スカイライナーシステムってなんだよ?」

俺は、彩雲に問いかけると。

「俺の彼女の置き土産の一つだ」

たった一言しか変えてこなかった。

その後、俺たちは、無言のまま、地下におりた。

「では、皆さん、こちらに」

再び先生に連れられ扉の前に立たせられる。

「皆さんの戦闘侍女人形は、私が預かります。

は、こちらの部屋で着替えてください」

メアリー達は、先生と一緒に廊下の奥へ進もうとした時、俺は、ありえないものを見た。

メアリーの後ろに、空気が屈折して、4、5人の人影を作っていた。

「セッチー、早く入ろう」

背中を叩かれ、後ろを振り返ると、黒塚が立っていた。

「ああ、早く着替えなければいけないしな」

部屋に入ると、何故か、全裸の岩本の姿があった。

「っちょ、なんで、お前全裸なん?」

岩本は、こちらを向くと、笑いながらこう言い放った。

「運動すると、汗かくだろう?パンツなどが、蒸れて気持ち悪いだ」

「そ、そうか」

俺は、荷物からスーツを取り出す。

「へー、セッチーはなんかロボットアニメのパイロットスーツみたいだね」

黒塚が、横で着替え始める。

「そうか? 俺は、スニーキングスーツに見えるんだが」

腰まで、スーツを穿きおえ、黒塚の方を見てみると。

「…お前は、今から戦闘機に乗るのか?」

緑のパイロットスーツに、灰色のヘルメットを身に着けた黒塚がいた。

「あながち、間違ってない、俺は、先に行くよ」

黒塚は、そのまま、もう着替え終わっている彩雲とともに、部屋の奥にある扉へ向かった。

おれは、一気に、スーツを上半身に通し、装備が入っている鞄を腰付け扉に向かった。

 

 

そこは、荒野が広がっていた。

かすかに、水のせせらぎが聞こえてくる。

「こいつは、すげぇ」

隣に、岩本と遠藤がやってくる。

「ここで戦うのか」

彩雲と黒塚もやってくる。

「皆さん、集まりましてね」

先生が人数確認しながらやってくる。

「今日は、ここで戦ってもらいます。ルールは、1対1、相手を大破させた人が勝ちです。

そして、一番強い人が委員長になります」

なるほど、つまり互いを潰し合い残った人が委員長になるのか。

「では、はじめにやる人は、誰ですか?」

「「俺がやる」」

俺と黒塚が二人同時に手を上げる。お、ハモった。

「なるほど、黒塚くん、信号拳銃をここから北に行き、谷を降りて、真っすぐ行くと、ここと同じような場所があるから、そこで、準備完了したら、撃ってくれ」

黒塚は、ホルスターを受け取り、腰に吊るす。

「では、準備してきます」

そう言い残し、黒塚は、俺たちと離れていった。

さて、戦闘準備をしなくちゃな。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。