ドールブレイクゾーン 機械仕掛けの彼女   作:甘原彩瀬

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初めまして、甘原綾瀬です。
小説は、初めで、誤文字脱字があったら教えてください。


一年生 一学期編
第1話女の子に担がされて、そのまま寝ると正直言って、お腹が痛い


2055年4月5日午前 10時15分

 俺、岩本燐は戦闘侍女人形(せんとうじじょにんぎょう)の死体の山の間を彷徨い続けていた。

空は赤く染まり、機械の破片や空薬夾(からやっきょう)やオイルなどが散乱する地面をただ歩いていた。

俺の背中には、細長い凍りでできた槍が背中に刺さっていた。

幸い、致命傷ではなかったが、傷は出血してなかったが、凍傷になりつつある。

本来なら安静にするのがいいのだが、しかし俺は、それでも歩みを止めなかった。

周りにはうめき声や銃声や爆発音が聴こえる。そんな中、ひときわ大きく遠くの方で、大きな爆発音と共に煙が上がるのが見えた。

「あの爆発は味方か?敵か?」

状況判断のため、腰にぶら下げている端末を開くが最悪な事に画面が割れていてうまく見えない。

舌打ちをしながら後ろを振り返る。

「散火、今の爆発は、どっちかわかるか?」

白く長い髪の少女は、首を横に振る。

脳裏に、仲間達が全滅した姿が浮かぶが、頭を振ってかき消す。

「とりあえず、ランディングゾーン(拠点E)まで歩こう」

「了解」

再び足を前に出すが、体が大きく揺れて倒れる。

つま先に力を入れるが、思うように入らない。

「散火、体力が限界のようだ、背負えるか?」

散火は、俺の首根っこを掴み肩で担ぐと歩き始めた。

「ご主人様は、今は休んでいてください、私がランディングゾーン(拠点E)まで運びますからね…」

散火の人工髪から甘くて少し焦げたような匂いが鼻をくすぐり安心感をだしてくれる。

少し休もう、すこしこれまでの経緯を思い出そう。

――――――――――

2055年3月20日 午前10時20分 彩雲辰人

 

 太陽が徐々に暖かくなってきて、店の窓からカウンターを照らす。

俺、はカウンターの椅子に座り行儀悪くカウンターに足を乗せて居眠りをしていた。

誰も来ないし、今日はこのまま昼まで寝よう。

徐々に、夢の中に入っていくような気持ちがいい感覚が訪れる中。

「いいのですか?このまま寝ていて」

ふと、耳元で、大人びた声が聞こえると同時に眉間と鼻との間に何か置かれた。

しかし、今の俺には気にする事もなく、顔を傾け何かを落とすと。

「あっづ。てめー、人の顔面に、白湯を乗せるなよ」

胸元の熱い感触で一気に覚醒した目で胸元を見ると白湯が掛かっていて濡れていた。

「あらら、まだ1分もたっていませんよ」

落下中コーヒーカップとカップ皿を燐とした姿で掴み取で、この女は俺の眉間に指を指す。

こいつの名はスカイランナー皐月惨式、俺の戦闘侍女人形だ。

性格はいいのだが、たまにこういったいたずらをしてくる。

「いいじゃないですか、暇だから」

確かに、店には、お客さん来る気配がない。

「今日は、まったりの日か」

身体を伸ばしながら立ち上がり、店の奥にある商品の整理に向かう。

「ここ最近、いろいろ忙しかったから、たまにはこうゆうのも悪くないですね」

ったく、暇でしょうがない、せめて、商品の陳列確認と掃除だけでもやろう。

皐月も、商品にかかっている埃を落とす。

 店内を見回す、かなり古めかしい和の作りとなっており、今時、珍しすぎる白熱電球が店内を照らす。

店の外には小さな川が流れており、こんな風に静かな時には、川のせせらぎが聞こえてくる。

「あ…」

皐月が外を見ると何かを見つけたようだ、少し気になったが商品の整頓で手を止められなかった。

「皐月、油売っているんだったら、下着の整理を手伝ってくれよ」

「下着整理をすればいいんだね、分かったよ」

皐月が小走りに来る。

「これの整理頼むね」

俺は、畳みかけた戦闘侍女人形用の下着を皐月に渡すと同時に、店の扉のベルがなった。

見たことのない少年が姿を現した。歳は、俺と同じ15歳に見えるが?

「あのすいません、こちらに、魔鬼型散火って置いておりますか?」

俺の耳に聞き覚えのある単語が入ってくるが、その単語は、俺にとって少し嫌な予感がする単語だった。

少し警戒しながら答える。

「はい、ありますよ、こちらにどうぞ」

警戒しながら戦闘侍女人形コーナーに案内する。

「これですね」

ガラス棚の中で立っている少女を指さす。

白いく腰まである髪に、左右が整えられた顔。豊かな胸の前に、鞘に入った短刀と大型銃が握られた手が交差している。

「これが…散火…実在したんだ」

と、少年が小声でいった。

ここで一つ、俺がどうして警戒するって?

それは、ここで売っている戦闘侍女人形の名は宣伝してないからだ。

例外があるが、あまり宣伝はしないようにしている。

なのに、どうしてこの少年は知っているだ?少し探りを入れてみる。

「お客さん、どうしてこの娘の名前を知っているんですか?」

後ろから皐月が姿を現す。腰にある刀を一本抜きながらっておい、それはやめろ。

「皐月、抜刀はやめろ、構えるだけでいい」

皐月を後ろから抱きしめ刀を抜けないようにする。そうでもしないと、こいつ本当に斬りそうだからだ。

「あ、姉から、彩雲工房で作られた戦闘侍女人形、魔鬼型散火を買えって言われて、そこら中のお店をあたったけど見つけられなくて、もう一回姉に聞いたらここにあるって…」

「お姉さんの名前は?」

少年は、怖がって唾を飲み込みながら答える。

「岩本綾香です」

聞き覚えのある名がまた耳に入ってくる。

岩本綾香、うちの元テストマスターで今は引退して、ドールブレイクゾーン世界大会の選手をしているはず。

そして、俺の頭の中で、一つの名前が浮かび上がる。

「もしかして、お客さんの名は岩本燐ですか?」

少年の眉間に少ししわが寄る。

「はいそうですけど、なんで、俺の名を?」

「昔、綾香さんから聞いた事があってな、俺と同い年の弟がいると」

皐月は、警戒しながら刀から手を放し、少し考える。

「綾香って誰です?」

皐月は、綾香に出会ったことは無く、初めて聞くだろう。

「岩本綾香、元彩雲工房専属テストマスターだよ。

つっても、死んだ両親たちの代の話だからな、ちっさい時に面倒とか見てもらっていたんだよ。今は、たまに、うちの商品を買いにきたりしているね」

「いつも、姉さんがお世話になっています」

燐は、頭を下げる、皐月もつられた頭を下げた。

「皐月コーヒーを淹れてくれ、燐は、こっちに来て色々手続きをするから」

カウンターに案内させ、色んな書類を取り出す。

「ライセンスカード持ってる?」

ライセンスカード、戦闘侍女人形を購入したり所有するのに必要なものだ。

免許書みたいなものかな?」

「仮ライセンスですけど、どうぞ」

燐から、ライセンスカードを受け取る。

学生書みたいな大きさのカードには、少し笑っている燐の写真と、知っている高校名と仮免許の印があった。

「ほう、黒川学園に入学するのか、俺と同じだな」

ライセンスカードに書かれていることを幾つか、書類に書いてから渡す。

「そうなんですか。名前聞いてもいいですか?」

燐はカードを受け取りながら俺の名前を聞いてくる。

「彩雲辰人だ、よろしくな」

燐に手を差し出し握手をした。

その後の手続きは、何もなく順調に終わったのであった。

―――――――――

2055年4月5日午前 10時35分

 突如、腹部に強い衝撃が走り、夢から目覚める。

瞼を上げると散火の胸が視界に入り、少し目をそらした。

どうやら、散火の肩で寝ていたらしい、コロンの匂いが鼻をくすぐる。

「もう少しで、ラランディングゾーン(拠点E)です」

散火は、俺の頭を撫でながら、岩ばかりの坂を上る。

しばらく、坂を上っていると、大きな岩の影に、迷彩模様のテントが数か所張られていた。

中央にあるテントの中に入ると、4人の少年達が、長机に地図を広げ何やら言い争いをしており喧嘩寸前になっていた。

俺は、争いを止めるため、散火から降りて歩み寄ると再び視界が大きく揺らいだ。

――――――――

2055年4月1日 12時45分

 島根県黒川学園、それは、島根県内にたった二箇所存在する、ドールブレイクゾーンに出場が出来る選手を育成するための学園、そして、その学校の校門には「黒川学園入学式」と書かれた簡素な看板がかけれていた。

「でけぇ~」

俺は、校門をくぐりながらそう口から言葉をこぼした。

 正面玄関には、新入生の担任らしき人が新入生の名前を聞いたりクラスの位置を教えていた。

あそかに行けばいいのか、オレはゴマ塩頭の教師に歩み寄った。

「え…っと、古風五十鈴だね、はい、これ。クラスの名簿と地図ね。

教室は、このまま廊下を真っすぐに進んだら401に入ってね」

地図と名簿を渡される。体の向きを変えようとしたその時、後ろで何かがぶつかった。

「あう、ごめんよ~、お兄さん背が高くて見えなかったよ~」

後ろを振り返ると、小学生みたいな女の子が額を押さえながら立っていた。

「俺こそごめ…」

女の子の目線に合せようと屈んだ時、女の子の目が僅かに、不自然に反射していたそう、まるで、カメラのレンズみたいに反射していたのだ。

『マスター、何時まで立ち止まっているんですか?行きますよ』

突如校舎へと右腕を引っ張られる、視線を前に持っていくと光学迷彩が解けかかっているパートーナーが腕を引っ張っていった。

「痛いから、分かったから、分かったからもう腕を引っ張らないで、じゃあね」

少女の方を振り返ると、そこには

存在していなかった。イヤ、僅かにあの子の足くらいの足跡があった。

右肩に激痛が走ると同時に、足が前に出る。

俺の右腕を引っ張ってパートーナー、メアリーは、腕を引っ張る。

『行きましょうよ~』

メアリーに引っ張られながら、教室に入る。教室には、3人の少年が席に座っていた。

机の上に体を預け寝ている奴がいれば、髪をいじっている奴や何やら数を数えてはぶつぶつ言っている奴がいる。

オレは、辺りを見回し自分の席を見つけた。ちょうど、窓から二席目だ。

俺の隣の席に座っている奴に挨拶をしようと声をかけた。

「こんにちは、元気?オレの名は、古風五十鈴だ、よろしく」

ゆっくりと顔をこちらに向けた。

「‥‥こんにちは、黒塚友哉…よろしく。初対面で済まないが少しお願いしてもいいか?

何か、食べ物をくれ」

黒塚のお腹が小さく鳴った。なるほど、腹がすいているのか、確かメアリーが焼いたクッキーが、鞄に入っていたはず。

鞄を開けクッキーの袋を取り出す。

メアリーが友達作りにと昨夜焼いてくれたものだ。黒塚に渡すと袋から三枚取り出し食べる。

「お、旨いなこれ、五十鈴が焼いたのか?」

「俺が焼いたわけではないよ。俺の戦闘侍女人形が焼いてくれたんだ」

黒塚から袋を受け取る。

「へ―、世話好きないい戦闘侍女人形なんだね」

 席に座り、鞄を机に置くと、もう一人の少年と男の教師が教室に入ってくる。

「はいはい、席に座ってくださいって皆座っているね」

担任は、黒板に名前を書く。

『瑠璃川 恭平』と書かれていた。

「私の名前は、瑠璃川恭平。趣味は、釣りです」

先生は、釣りをしているふりをする。

「えー、皆さんは、もう挨拶をすましたと思いますが、もう一度、皆の前で、挨拶をしてくれるでしょうか?廊下側の人からお願いしますね」

「はい」

某戦闘民族のスーパーモードみたいな髪型の少年が立ち上がる。

「遠藤拓哉です‥‥」

遠藤は、困った顔で先生をみる。

「趣味とかを言ってくれるとうれしいですね」

遠藤はしばらく考えてから口を開いた。

「趣味は、オンラインゲームです。よろしく」

オンラインゲームが好きなのか、今度おすすめを教えてもらおうと。

次に、白髪に中二病全開のコートを着ている少年が立ち上がった。

「彩雲辰人 趣味は…ものを作るのが好きだ。何か質問はあるか?」

ものを作る?何を作るんだろうか?俺はいろいろ考えたが、結論がでなかった。

「質問、そのコートは何ですか?」

ピンク髪のオールバックの少年が質問する。

「これか?これは、リキッドアーマーだよ」

コートのチャックを開けコートの内側を見せた。内側には、信号弾や銃、さらには、人対装甲ナイフがぶら下げられていた。

ここで豆知識 アーマーとは、侍女戦闘での際、流れ弾などに当たって大けがをしないように着るもので、全身が装甲に覆われたタイプと胴体だけ装甲に覆われたタイプと必要最低限の所しか装甲がないタイプの三種類があるが、彩雲のアーマーだけは、どのタイプにも当てはまらなかった。

俺は、そのアーマーの事が気になり質問した。

「そのアーマー?装甲など見えないですが、どんなタイプなんですか?」

彩雲は、席に戻ると鞄からオレンジ色の物体を取り出した物体はスライムのようにぷにぷにしたっ物体を取り出した。

「瑠璃川先生これを伸ばして持っていてください」

先生は、それを伸ばして前に差し出す。それを確認した彩雲は、コートから銃を抜き銃口を先生に向けためらいもなく引き金を引いた。

教室中が静かになり、小さな鉄が二つ落ちる音が響き渡る。待てよ?二つだと?

先生の足元に視線を落とすと、そこに発射された弾が赤い煙を上げながら転がっていた。

教室中がざわめきだす。

「これは、ダイラータンシー現象で。波で濡れた砂浜があるだろ?濡れた所をそっと押すと沈むけど強く押したら沈まないだろ?あれを応用した防弾チョキなわけ」

先生が彩雲の頭を叩いて、次の人の紹介をさせる。

「岩本燐です、趣味はギターです」

岩本は、ギターを引いている物真似した。

「何か?質問はないですか?」

俺はとくに無かったので目をつぶって何を言うか考えた。

「特にないようなので終わります」

岩本が椅子に座った音が聞こえる。

よし、俺の番か。立ち上がり目を開ける。

「古風五十鈴です。趣味は……趣味は……」

やばい、何かを考えていたが、まだ決まってなかった。うぁ~、皆、早く言えって目をしてやがる。

とりあえず、何かを言おう。深呼吸をして口を開いた。

「いい天気ですね。連結しませんか?」

俺は何を言っている?頭の中が混乱しだし頭を激しく机に叩きつける。

額が割れ血が垂れてくる。前を見ると、顔を真っ青にいてドン引きしている先生が視界にはいる。

「趣味は、絵を描きます。よく書くのは、整備中の戦闘侍女人形の絵です」

血が足りなくなってきたんだろうか、視界が歪んで見える。そして、一瞬強い浮揚感を感じ床にたたきつけられる感覚と共に俺の意識が遠のいた。

―――――――――

2055年4月5日午前 11時5分 岩本燐視点

 重い瞼を起こすと共に電子音が聞こえてくれる。

「ここは、何処だ?」

ランディングゾーン(拠点え)の医療テントだ」

足元で、声が聞こえ首を上げるとそこには、辰人が立っていた。

そうだった。俺はあいつらの喧嘩を止めようとしたら意識を失たらしい。

辰人は、俺の元にくると、点滴を交換した。

「もう少し寝とけよ。…ここも相手にバレるかもしれない。運が良くても後50分くらいかな?

お前が寝ている間、五十鈴らと話しをしたよ。あと35分後、ここを破棄して全軍で敵拠点Aに総攻撃を仕掛ける。それまで十分に休め」

辰人がそう言い残し部屋から出ようとしたが、出口で何かを思い出したように振り返った。

「そうそう、散火の修理に関しては大丈夫だ。安心しろ」

親指を上に突き付けて辰人は笑い部屋を出た。さて、もう一度休むか。

―――――――――

2055年4月1日 15時41分 黒塚友哉

 残り1限で放課後に入ろうとしていた。

窓の外を眺めるも飽きて、教室を見渡す。

今朝のような張りつめた緊張はないが、やはり出逢ってから3時間たっても流石に緊張はしているようだ。

ふと、影が落ちているのに気づき、上を見上げると頭に包帯を巻いたセッチーが立っていた。

「よう、疲れたな」

セッチーはけだるそうに席に座った。

「‥‥そうだな‥‥腹が減ったんだ少しそっとしといてくれ」

「了解」

セッチーは、鞄からメモ帳を取り出し、何やら書き始めた。

僕は、そっと立ち上がりセッチーの後ろに回り込みメモ帳をのぞき込んだ。

「セッチー何を描いている?」

メモ帳には、デッサン絵が描かれていた。どこかの町の風景のような絵だ。

「人のメモ帳を覗くのが趣味なのか?拓哉よ。

後、セッチーって何?」

セッチーは、手を止めず鉛筆を動かしながら話をする。

「連結ってS○△の事だろ? それを略してさらに最後にチーをつけてセッチー」

連結とは、昼頃の自己紹介で言った言葉だ。

「ったく、やめろよな。それはこっちからしては傷口に塩を塗っている気分だ」

セッチーは手を止め、メモ帳を破り絵を僕に渡してきた。

「あげるよ」

絵を受け取ると共に教師の足音が聞こえてくる。僕は急いで席に座った。

瑠璃川先生が教室に入ってくる。

「えー、この3時限目はですね。この学校は全寮制となっております。

今から、寮へ案内しますね。今日はもう授業は終わりにしますので荷物は持っていきましょう」

 先生に、案内された量にたどり着く。

「ここは、男子と女子別館になっています。くれぐれも女子館には、いかないで下さないね?特に五十鈴君」

先生はセッチーを睨みつける。セッチーは気まずそうに口笛を吹いた。

僕たちは、寮館内に入りエレベーターに乗り二階に上がった。

コンクリートで作られた廊下を歩く。

「ここが皆さんの部屋です」

何回か曲がったあと、僕たちの部屋にたどり着き、彩雲→岩本→僕→遠藤→セッチーの順番に入った。

「おおすげ~、部屋の中に、個室を設けているのか~

しかし、これ誰が作ったんだ?おい」

彩雲は、本を持って寝ている羊の形をした物凄く可愛い木製の札が吊るされたドアに気づいた。

札には、丸いひらがなで「たつひとのへや」と書かれていた。

なんだろう、女の子の部屋のドアみたいだな。

僕は、自分の部屋を探した。

「ッチ、ここからだと、女子の部屋は見えないのか」

セッチーは、窓から外を見ながら舌打ちをした。僕たちの部屋からは見えず建物の端と非常階段しか見えなかった。

自分の部屋のドアを見つけた。何の変哲もない木製の札に自分の名前が書かれているドアを開き、部屋に入る。

部屋には、勉強机とベッドと戦闘侍女人形の整備水槽が置かれていた。

とりあえず、荷物をベッドの上に放り投げ水槽を覗き込む。

水槽の中では、愛機、シェルフが目を閉じていた。

しばらくシェルフを眺めて、荷物から本を取り出しベッドに寝ころびを開いた。ハンス=ウルリッヒ・ルーデルの伝記

―――――――――

2055年4月1日 15時45分

 自分の部屋を見渡す。壁際に簡素なベッドと机、散火を整備するための水槽みたいなのが部屋の隅に置かれていた。買ってからまだを開封すらしてない散火が入っている箱が部屋の真ん中に置かれていた。

買ってからは、入学準備などで忙しく開封すらしていなかった。そうだな…今からでも開けようか…やめとくか? 一人で、開けるのも面倒だし。

ふっと、左腹部の古傷が傷みだしたとたん後ろでドアをロックする音が聞こえた。

「どうした小年?」

後ろを振り返ると、軍服を着た女性がドアにもたれていた。いつの間に入ってきたんだか?

机の引き出しから、姉からもらった対装甲護衛ナイフを出し女性に向けるとそこには、誰もいなかった。

「後ろだよ」

後ろから、ナイフを持ってる方の腕を強く握られ上にあげられる。

「いつの間に後ろに」

後ろに向かって強く蹴ろうとするが腕をさらに強く握られ腕が鈍い音を立てる。

「っく」

腕に強い痛みが入るが声を上げなかった。

「ほう?少年、この痛みに声を上げないなとはな?」

「生憎、俺は、これぐらいの痛みじゃあ声をあげない主義でな。声を上げたら負けだと思うんだ。だから声をあげなのさ」

それを聞いた彼女は腕を解放した。

「ふん、面白くないな。私達と同じドラックタイプの娘がいると聞いていたがこんな少年がマスターだと‥‥」

彼女は、箱に近づき箱の封を勝手に切った。

「あ、忘れていた」

女性は俺の方を振り返る。

「私の名前は、スカイライナー卯月惨式だ。私のマスターの命令で、散火の開封を手伝えと言われてき」

卯月さんは、俺のほうに手を差し出すが俺は先ほどのことがあるから、少し警戒した。

「安心しろ少年、もう、痛いことはしない、いきなりナイフを向けられない限りはね」

っそっか、それで、さっきはいきなり攻撃して来たのか。

俺は、申し訳ない気持ちになりナイフを引き出しにしまい、卯月の手を握る。

「岩本燐だ。よろしく」

こうして、俺たちは、魔鬼型散火の開封作業をしたのであった。

 

 


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