呉に舞い降りた道化   作:ちょりあん

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昨日はお休みしてすいませんでした。
でも今日からはいつもどうりの更新です。よかったら見て下さい。


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「ほら、早く入って!男なんかを部屋に入れてるのを見られて変な噂でも流されたらどうするのよ!」

 

「おーやっぱ良いとこ住んでんだな」

 

「さっさと入れ!!」

 

「あだっ!?」

 

『ぷぎゅるっ!?』

 

 横島の尻を蹴飛ばし自らの部屋に蹴り入れる。横島が背負っていた半透明な少女も床に投げ出され変な声をあげた。

 

「何すんじゃー!?こっちは女の子背負ってんだぞ!」

 

「ふん!背中にあたるその無駄な脂肪の塊にイヤらしい顔させてたくせに。これだから男は嫌なのよ、何?そんなに大きな胸がいいわけ!?私への当て付けなの!?」

 

「いだっ、いだっ!か、堪忍してー!」

 

 少女は見た感じ十代後半で、黒髪のロングヘアー、前髪も目が隠れる程長く、顔にはそばかすもあり、着ている服から平民のようである。

 顔だけで言えば地味な印象だが、桂花の言う通りその胸は大きく、雪蓮より少し大きいぐらいのたわわな果実であった。

 

 ひとしきり横島を足蹴にしたあと、自室の椅子に座り一息つく。

 その間、横島は半透明の少女を寝台に寝かせ、自らも寝台に座り桂花に再び喚かれる。

 

「ちょっと!そこに座らないでよっ!」

 

「いや、他に座るとこないだろ」

 

「あんたなんか床で充分よ、そんなところに座ったら妊娠しちゃうじゃない!」

 

「ただ座っただけで妊娠なんかするかー!」

 

 ツッコミつつも律儀に床に座る横島。ふん!と鼻を鳴らして桂花は口を開いた。

 

「で、説明してもらうわよ。その女のこと……それからあんたのこと」

 

「つってもそんな難しいことじゃないぞ。まずその子だけど幽霊だよ」

 

「幽霊ぃ~?あんた頭おかしいんじゃないの?」

 

「じゃあ半透明の訳はなんだってんだよ」

 

「それは……体質とか?」

 

「それこそ人間じゃねぇじゃねぇか」

 

 反論が思い浮かばず苦虫をかむ。馬鹿にしたものの幽霊。人が半透明になるなんて聞いたこともない、なるほど幽霊と言われればそうとも思える。

 

「……じゃあ幽霊だとして、そいつは一体何?落ち着いて考えるとその女、私の体から出てきたように見えたんだけど?」

 

「そうだぜ、荀イクちゃんはこの子に取り憑かれてたんだよ」

 

「私が……そいつに?」

 

「で、これで追い出したって訳だ」

 

 そう言って桂花から少女を追い出した時にデコピンした中指を見せる。その指は霊気をマトイ、うっすらと光っていた。

 

「指が光って……!?あんた一体?」

 

「俺はGS なんだ」

 

「ごーすとすいーぱー?」

 

 それから横島はGS の事を説明し、霊能のことなどを説明する。

 初めは胡散臭げな顔をしていた桂花だったが、話を聞いていく内に表情を改めた。

 

 華琳が横島に何かあると感じていたのはコレだったのだと理解する。

 それからある事にも思い当たりがあり、

目の前の男を改めて見る。

 

(この全身精液で出来たような男が……)

 

 と、そこまでで考えを止め、今は自分のことが優先と切り替える。

 

「……つまりは私が男に対して憎しみや殺意が沸き上がって抑えきれなかったのはその女が私に取り憑いていたからってこと?」

 

「ああ、そういうこった。多分この子の怨みや感情が荀イクちゃんに影響を与えてたんだな」

 

 あどけない顔で寝る少女を見る。涎を垂らして呑気に寝てる姿に少し腹がたつ。

 ていうか、そもそも幽霊って寝るの?バカなの?死ぬの?

 そもそもが最近の感情を抑えられない衝動が、この少女が原因である事に、それこそ抑えきれない怒りを覚えた。

 が、グッとこらえ横島へと視線を戻す。

 

「大事な事を確認するけど、私の中から出ていったんだから、これで私は普通に戻るのよね?」

 

「いんや、今はまだ無理だな」

 

「はあ!?一体どういうことよ!?」

 

「今は俺がショックを与えて一時的に荀イクちゃんの体から追い出してるけど、意識が戻れば多分また荀イクちゃんに取り憑くと思うぞ。正直初めて会った時は気づけないくらい荀イクちゃんと一体化してた訳だし。多分相性がいいってやつだな」

 

 目の前のバカが呑気に話すが、堪ったもんじゃないのは桂花だ。

 下手をしなくても解雇手前まできていたのだ。原因が分かった今、放ってなどおけるわけがない。

 

「じゃあそのあんたの霊能で何とかしなさいよ!これ以上問題なんて起こせないのよ私は!!祓うとか出来るんでしょ?」

 

「いや、それが難しいんだ……」

 

「な、なんでよ……?」

 

 今まで見たことのない横島の真剣な表情に喉を鳴らす。この男が真面目な顔をするほど難しい事態なのだろうか?

 

「こ、」

 

「こ?」

 

「こんな巨乳の女の子を祓うなんて勿体ない事、俺に出来るわけないやろー!!これはワイだけやない、世界にとっての損失なんやーー!!」

 

「あ、アホかー!!」

 

「ずごっく!?」

 

「あんな脂肪の塊より、私の未来の方がどうでもいいって言うのー!?」

 

 物凄い剣幕の桂花に、横島は一度視線を桂花の顔から少し下げ、戻す。何処を見たのかは敢えて言わない。

 

「それでもワイには無理ー!!」

 

「なんで胸を見た?なんで胸を見た!!?」

 

「嫌やー!絶対嫌なんやー!!」

 

 勢いに任せて横島を蹴り続けるが、元々体力のない桂花は疲れ果て椅子に戻り肩で息をする。

 横島はそれを見て、騒ぎ立てるのを止めて座り直し時勢を正す。

 

「……まぁ真面目な話。出来るだけ無理矢理ってのはしたくねぇんだよ。悪霊ならともかくこの子はまだ悪霊にはなってない。寝覚めが悪ぃにも程があるって」

 

「変態なくせにまともな事を言うじゃない。でもね、時間がないのよ私には」

 

「分かってるって。だから別の方法でやる」

 

「……話を聞かせなさい」

 

 幽霊の少女が取り憑いていないお陰で、久しぶりにまともに頭を働かせる桂花。

 気に入らないが現状を打破するには目の前の男を頼る他ないだろう。霊能なんて流石の桂花も専門外なのだ。

 しかし、助けを乞う立場な筈な桂花の態度はふてぶてしいものである。横島は全く気にしてもいないが、男には強気な少女である。

 

「幽霊ってのはさ、基本的に何か未練を持ってる。それが間違った方向にいくと怨みを持っていつかは悪霊になっちまうわけだ。この子にも何かやり残した事や未練がある筈。それを解決してやりゃ成仏するだろうよ」

 

「ふーん、なるほどね。で、その未練って一体何なのよ?」

 

「さっきの荀イクちゃんを見てると何となく分かるけど、本人に聞くのが一番だな。お?噂をすりゃ、だな」

 

『ん……んん?』

 

 二人が寝台に目をやると幽霊少女がのそりと体を起こす。長い前髪が揺れる。隙間から見える瞳がやけに色っぽく、横島は鼻の穴が大きくなった。

 

 暫くボーっとした後、キョロキョロと辺りを見渡し横島を見つけると動きを止めた。

 

『お……』

 

「「お?」」

 

『男死ねぇええええ!!!』

 

「ぬおっ!やっぱりかー!!」

 

 少女はいきなり横島に襲いかかるが、ある程度予想していた横島は何なく避け、先程桂花にやったようにデコピンをかます。

 

「ていっ」

 

『あふんっ!?』

 

 少女は仰け反った後、額を抑え横島を睨む。

 

『お、己男めぇ!!』

 

「落ち着けって、こっちは話を聞きたいだけなんだよ」

 

『男なんかと話すことはねぇだ!』

 

 訛ったイントネーションにツーン!と首を横にふる幽霊。反動で胸が揺れ、おっぱいの神秘に内心号泣しながら感動する横島。その頭をパコーン!と叩かれる。額をピクピクさせた桂花だ。

 

「あんただと話が進まないわ。ちょっとそこの無駄な脂肪をつけた馬鹿!あんたのせいでこっちは大変な目にあってるのよ!!」

 

『あっ!タマでねぇか!』

 

「はぁ?タマぶっ!?」

 

『あーやっぱタマはめんこいなぁ!』

 

「ちょっ、やめ、抱きつかないで!胸が顔にあたって息が……!くっ、何この敗北感は?所詮は脂肪……脂肪なんだから!あ……あ……クソッタレー!!」

 

 

 

 

 

 

 それから数十分なんとか少女を落ち着け(桂花が)、ようやく話を出来る状態になる。

 ちなみに横島は変わらず床に、桂花は少し距離を置き椅子に座り、少女は宙に浮き桂花の後ろに隠れ横島を睨んでいた。

 

「ねぇ肩が重いんだけど?それに私また取り憑かれないでしょうね?また殺したくなってきたんだけどあんたを」

 

「影響は受けてるっぽいけど取り憑いてはいねぇよ。その子も話をする気はあるってこった」

 

「ならさっそく聞くけど、なんであんた私に取り憑いたのよ?ていうかタマって何よ」

 

『タマってのはあたすの可愛がってた猫の名前だ。くっついてたのはタマからあたすと同じニオイがしたからだぁ』

 

「同じ匂いですって」

 

「落ち着けって荀イクちゃん、質問を変えるぞ。自分が死んでることは分かるんだよな?」

 

 横島の質問に嫌々ながらも小さく頷く。それにふむ、と横島が続ける。

 

「じゃあ生きてた時のこと覚えてるか?なんで男嫌いなのか理由とかさ」

 

『…………良くは覚えてない。ただ強烈な男に対しての憎悪があった。何となく酷い事をされたのは覚えてる。多分……裏切られたような気がする』

 

「それで、荀イクちゃんに憑いたのは同じ男嫌いだからか?」

 

『……猫ちゃんを見た時、男を嫌っているって分かった。それから暫くは周りで見てただけだったけど、我慢出来なくて入ったら居心地よかった。だからお礼に男を排除する手伝いをしようと思った』

 

「お礼って……」

 

『どうしてか猫ちゃんは男を排除するのを我慢してたみたいだったからな、我慢しなくていいようにしてあげた』

 

 つまりは少女が桂花に取り憑き、余計なお世話なのだが、普段ああ見えて抑制していた男に対する嫌悪感を解放させ、恐らく少女自身の男に対する怨みを相乗させた結果が先程までの桂花ということだろう。

 横島はそういうことかと納得していたが、当の桂花にとってはとても聞き流せることではない。

 

「ふざけないで!余計な事をされたお陰で私は華琳様に捨てられるところだったのよ!?」

 

『……捨てる?』

 

「そうよ!いい?今すぐ私から出ていって!!これ以上取り憑かれるなんてごめんよ!」

 

『…………』

 

「ちょっと聞いてるの!?」

 

『猫ちゃん……。猫ちゃんも私をステルノカ?』

 

 少女の瞳が黒く濁り、空気が不穏なものに変わるのをいち早く察知した横島が慌てて立ち上がる。

 

「あーっと、そうだ!」

 

「っ!?な、何よ急に大声だして、驚くじゃない!」

 

 それが項をなし二人の気を横島に向ける。咄嗟のことだったため何も考えてなかった横島は必死に言葉を探す。

 

「名前!名前はなんていうんだ?」

 

『男に教える名前はない』

 

「いいから教えなさいよ。呼ぶ時困るでしょ」

 

『猫ちゃんがいうなら…………アイだ』

 

 何か考えたように言った名前に首をかしげるが、今は考えず話を続ける。

 

「いい名前じゃん。じゃあアイちゃん、荀イクちゃんから出ていくつもりはあんのか?」

 

『皆無だ』

 

「横島……」

 

 先程の少女の不穏な気配を感じていた桂花が目で、どうするのよ!と訴えてくる。

 

「ま、やることは一つだな」

 

「何をするつもり?祓うつもりは相変わらずなさそうだし、未練を解決するっていうのもアイは男に怨みを持っているんでしょ?まさかこの世の全ての男を皆殺しにでもするつもり?」

 

「んな物騒なことするわけあるかー!?逆だよ逆。アイちゃんは男に怨みを持ってる。それも無差別に。つまりは男全体が嫌いなわけだ。だからそれを無くせばいい」

 

 そう言って横島は二人に向けてニカッと笑う。我に天啓ありと言いたげな顔だ。

 

「つー訳で、デートしようぜアイちゃん!俺が男の良さを教えちゃる!」

 

『「…………でぇと?」』

 

 二人はデートの意味が分からず、キョトンと首をかしげた。

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、もしこの場に劉備やその家臣がいたのなら、幽霊の少女を見た時おったまげたことだろう。

 なぜなら少女の姿は劉備の片腕と呼ばれる武将、関羽の姿に瓜二つだったのだから。

 

 

 

 

 

 

続け!

 

 

 

 




この物語の伏線キャラが出てきました。
彼女は半オリキャラです。関羽そのものではありません。ですが無関係でもないので半オリキャラとして扱ってます。

ではまた明日。
前話での感想がすべてオマケに対して……私もですが皆さんフ○ーザ様大好きですね。笑
また、ああいうオマケはやりたいと思います。




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