呉に舞い降りた道化   作:ちょりあん

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本日の更新です。
昨日気づいたのですが、ハーメルン様は投稿の時、文字数が見れるんですが、小喬編に比べて黄巾党編は一話あたりの文字数が倍ぐらいありました。
なので黄巾党編、二倍お得です(意味不明)


2ー3

 

 

 

 

 

 

2-3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら小喬、何してるの?」

 

「うひゃいっ!?し、雪蓮さま!?」

 

 館の者がそれぞれ眠りにつこうかといった時間帯。渡り廊下を歩いていた小喬は後ろから雪蓮に声をかけられ、慌てた様子で振り向く。

 ついでに手に持っているものを後ろに隠しながら。

 

「ちょっとそんなに驚かなくてもいいじゃない」

 

「い、いえ別に驚いたというか何と言うか……」

 

 どう言い訳しようかと考えている途中、雪蓮は小喬が何か後ろに隠していることに気づき嫌らしい笑みを浮かべる。

 

「な・に・を・隠してるのかな~?」

 

「え?雪蓮さま……きゃっ!」

 

 そうしてすぐさま回り込み、小喬の腕を掴んだ。

 

「て、あら?」

 

「あ、あぅ~~、こ、これはその……」

 

 狼狽する小喬を他所に、雪蓮は少々ガッカリする。小喬が隠していたものは期待していた面白いものでも何でもなかったからだ。

 まぁ、狼狽する小喬は見てて可愛かったから別にいいかとも思っている。

 

「そんなに慌てなくても何も咎めたりしないわよ……お腹すいたんでしょ?」

 

 そう、小喬が持っていたのは肉まんなどの食べ物であった。

 

「あ、はい、ちょっと小腹が空いてしまって……申し訳ありません」

 

「いいわよ別に。だってほら」

 

 そう言って雪連も片手に持つ物を小喬に見せる。それは二瓶ほどのお酒だった。

 

「ちょ~っと眠る前に飲みたくなっちゃてね。

私も黙っておくから、冥琳には内緒よ?」

 

「はいっ、それはもちろん!」

 

「ふふ、ありがと。それじゃ私は部屋に戻るから。後、確かに小喬は体が細いと思うけど、あんまり食べ過ぎるとさすがに太るから気をつけなさい。横島に嫌われるわよ?」

 

 それから雪蓮は「ちょっ、なんでそこで横島が出てくるんですかー!?」という小喬の声を後ろに、部屋へと軽い足取りで戻っていった。

 

 ちなみに調子に乗って飲みすぎ、翌朝冥琳に怒られたのは割愛する。

 

「はぁ~心臓が止まるかと思ったわ……」

 

 雪蓮が見えなくなったところで、頬を赤くさせたまま小喬は呟く。そしてこれが切れ者であるが気まぐれな雪蓮でなく、冥琳だったら誤魔化せなかったかもしれない、と安堵の息を漏らした。

 

 それから、また誰かに出会わないようにと足早に小喬は自分の部屋を目指す。幸いにも途中で誰かに出会うことはなく、部屋へとたどり着くことが出来た。

 

 小喬はもう一度誰かいないかを確認して、部屋の扉をあけ中に入り扉を閉めたところで何かに襲われた。

 

「きゃっ!?」

 

 だが小喬を襲った何かは、尻餅をついた小喬には目もくれずある物に襲いかかった…………小喬がもって来た肉まんに。

 

「ちょっとアンタたちねぇ……いきなり襲ってこないでよ!」

 

「だってぇ」

 

「お腹すいてたんだから仕方ないでしょ?」

 

 そう、小喬に襲い掛かったのは天和と地和の二人だったのだ。

 

「だからって飛び掛ってくることないじゃない……」

 

 小喬の小言も右から左へ聞き流し二人は肉まんをぱく付く。

 

「まったく、今の姿を早く見せてたら黄巾党の連中も早く解散したかもね」

 

「ぶー、どういう意味よ」

 

「肉まんおいひ~」

 

 小喬の皮肉に地和は頬を膨らませ、天和はひたすら食べ続ける。

 

「まぁまぁ小喬ちゃん、二人とも俺たちに会うまでは碌にメシも食えてなかったらしいし大目にみてやろうぜ」

 

「それはそうだけ……ど……」

 

 そこに居るはずのない人物の声に気づき、小喬は部屋を見渡しソレを見つけた。

 

「何……やってるの?」

 

「おう!小喬ちゃんがいない間、二人が誰かに見つかったらヤバイからな。見張ってた!」

 

 元気な声で返す横島。だが小喬の目は冷たい。ちなみに他の二人も横島の登場に唖然としている。

 なぜなら横島が現れた場所は……

 

「へぇ~……寝台の下に隠れて?」

 

 そう、寝台の下からだった。そこから首だけを出して小喬と会話しているのだ。

 

「それに横島……あんた鼻血出てるわよ?」

 

「へ?あ、ああそういやさっき鼻を打っちまって……」

 

「それは大変ね……それで何色だった?」

 

「薄いピンクと縞々のストライプ………あ」

 

「やっぱり二人の下着覗いてたんじゃない!!」

 

「大丈夫、小喬ちゃんのは見て……あ、白」

 

「死ねぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 

「ぶぼばぁっ!!!?」

 

 小喬の踵落としが炸裂し、横島は床に顔を埋め込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~死ぬかと思った」

 

「いや、死なないまでも怪我してると思うんだけど……」

 

「コイツが簡単に怪我なんてするはずないでしょ」

 

 地和ちゃんの言葉に小喬ちゃんが俺を睨みながら答える。というか俺だって普通に怪我したりするんだが……。

 

 まぁ美神さんの折檻に比べればマシなのは確かだな。

 

「ところでこれからどうするか、そろそろお姉ちゃん話し合いたいなぁ」

 

「そうね、ちーたちの目的は人和を助けることだもん」

 

「まったく横島が余計なことするから」

 

「ぐ……」

 

 反論したいけど、黙っておいた方が身のためか。それにその通りやし……。

 

「とりあえずこれを見て」

 

 そう言って小喬ちゃんが床に紙を広げる。この大陸の地図だ。

 

「分かってるとは思うけど私たちがいる場所はここ」

 

 と地図の部分を指す。それから地和ちゃんが後を継いで他の場所を指す。

 

「ちーたちが逃げだす前にいたのはここだったかな」

 

「うんうん、確かそうだったよ」

 

「ふぇ~結構離れた所から来たんだな」

 

 歩いて二、三日でこれるような距離じゃない。良く悪霊たちからこの場所まで逃げられたもんだ。

 

「必死だったからね。捕まったら次はないだろうし」

 

「人和ちゃんのためだもんね」

 

 二人が揃って頷く。ほんと仲がいいもんだ。

 

「じゃあこの場所に行けばその人……張梁ちゃんがいるのか?」

 

 二人には真名を預けてもらったけど、張梁ちゃんとはまだ会ってないしな。二人に睨まれてビビッちまった。

 

「う~ん多分いないと思うよ」

 

「そうね、今までも同じ場所に長くなんていなかったし。絶対移動してる筈よ」

 

「じゃあ居場所が分からないってこと?」

 

 小喬ちゃんの言葉に二人が頷く。それはやっかいだな。場所が分からんなら除霊しようがないぞ。

 

「何か知らないのか?その……次どこへ行くとか」

 

「そんなの知ってたらもったいぶらず教えてるわよ」

 

 そりゃそうか。

 

「私とちーちゃん、逃げるのに必死だったから……」

 

「仕方ない……か、でも」

 

「困ったわね」

 

「ああ」

 

 助けたくても助けられない。それに霊に憑かれているのなら、なるべく早く祓ったほうがいい。長く憑かれているとそれだけで厄介な事になる。

 

 つっても二人の話しを聞く限り、かなりの間憑かれてるみたいだが……。

 

「あ!」

 

 と、小喬ちゃんが声を上げる。

 

「そうよ!黄巾党のことなら私たちより良く知ってる人がいるじゃない!」

 

「え!誰のこと??」

 

「……なるほど、雪蓮さんたちか」

 

 確かに、黄巾党と今も戦っている雪蓮さんたちなら俺たちより詳しく知っているか……でも。

 

「この前洩らしてたけど、もう黄巾党は大陸中に足を伸ばしていて、どこに本隊がいるのか分からないって言ってた」

 

 確かもう既に何十万って数とかなんとか。

 

「何よ~それじゃ結局分からないじゃない!」

 

 いや、地和ちゃん俺に文句を言われても……。逃げるように視線を天和ちゃんに移す。

 

 うん、相変わらずええ乳や!

 

 そんな天和ちゃんは話しを聞きながらも、まだ肉まんを食べていた。……俺が言うのもなんだが緊張感ねぇな。

 

 まぁこの時代は食べる物にも苦労してるからな。俺も毎日カップラーメンの貧困生活だったけど……。

 

 ん……食べ物?

 

「なぁ、憑かれているっても黄巾党の連中は人間だよな?」

 

「……?何当たり前のこと聞いてんのよ?」

 

「じゃあ、もちろんメシも食うよな?」

 

「あ、お姉ちゃん皆がご飯食べるとこ見たことあるかも。白目で涎たらしながら食べてて気持ち悪かったけど……」

 

 うげ…それは気持ち悪。じゃなくて、ってことは!

 

「じゃあさ、連中はどこから食料を調達してんだ?」

 

「え?」

 

「どこって……」

 

「っなるほど!」

 

 地和ちゃんは分かったみたいだな。

 

「どういうこと?」

 

「つまりよ、黄巾党は大きくなりすぎたってことでしょ?」

 

「そう、大きくなればなるほど、奪った村なんかの食料だけじゃ足りなくなってくる。ってことはどこかに補給地点があるってことだ!」

 

「じゃあそこを突き止めれば……」

 

「人和ちゃんの居場所が分かる!」

 

「凄いじゃない横島!」

 

 ……なんか素直に褒められると普段褒められてないぶん照れんな。

 

「コホン、まぁ問題はある。そもそも俺たちだけじゃそんなの調べる力も時間もない。それに第一俺が考えつくことなんてきっと他の奴も考えつく、それじゃ遅い」

 

「それじゃどうしたらいいの?」

 

「俺たちが達成しなけりゃならん条件は一つ、他の軍より先に本拠地に着いていること。そして張梁ちゃん救出条件も一つ、戦の混乱に乗じて助けること。流石に俺一人で恐らく数千、数万っている霊を相手にするのは無理だからな。

それを踏まえて出来ることで思いつくのは一つ」

 

 多分これでいけるはず……。

 

「まず、奴らの食料事情を冥琳さんに話す」

 

「ちょっ!それじゃ軍の方が先に人和の居場所に気づいちゃうでしょ!?」

 

「それでいいんだ」

 

「はぁ!?」

 

「小喬ちゃん、冥琳さんに話せばどうなると思う?」

 

「え?……当然、冥琳様なら地和の言った通り黄巾党の本拠地を探し出すと思うけど」

 

 絶対そうだろう。敵の本隊を叩けるチャンスを冥琳さんが見逃す筈がない。

 

 だからそれを利用する。

 

「俺は明日冥琳さんにこういうつもりだ。

『前に黄巾党の本隊がどこにいるか分からないって言ってましたよね?俺、あれから気になって考えてみたんですけど、分かったかもしれません』

ってね。そうすれば必ず冥琳さんは食いつく筈だ。そして奴らを見つけ出す筈。そうしたら絶対軍を動かすだろ?」

 

「まぁ……そうね」

 

「だったら俺たちにもそれは伝わる。その時に聞くんだ。

『見つかってよかったですね、ちなみに何処にいたんですか?』

って」

 

「「「!!」」」

 

「俺から教えて貰った事だし、俺は兵じゃない、そもそも俺は武力でも知力でも戦力として見られてない、そして少なからず信用もあるって思ってる。さぁそんな俺に冥琳さんが教えてくれないってことがあるか?後は簡単、軍の編成をしてる間に俺たちはさっさと本拠地へ向かえばいい。な、簡単だろ?」

 

 俺の問いかけに皆黙って俺を見つめる。それから暫くして小喬ちゃんが口を開いた。

 

「横島、あんた……悪どいわね」

 

「俺の元上司にとって最高の褒め言葉だよ小喬ちゃん」

 

 俺たちの作戦は決まった。

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺の作戦通り冥琳さんは奴らの補給地点を探し始め、無事発見。

 

 その際に居場所を聞くと、思ってた通り教えてくれた。まぁ騙すのは気が引けたけど、今回は仕方ねぇだろ。

 

 そして俺たちは雪蓮さんたちが軍を編成している間に一足先に目的地へと向かった。

 

 ちなみに馬を借りるために今まで稼いできた金がすっからかんになった。……俺が興奮するようなエロ本が無いから貯まってた金が……。

 

 こうなったら体で返して貰おうか!って天和ちゃんに飛び掛ったら小喬ちゃんと地和ちゃんにしこたま殴られた。ちくせう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く!

 

 

 


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