気軽に見て下さい。
頑張れ、大喬ちゃんっ!
某日、某場所、恋姫芸能事務所。そこに二人の少女が休憩室のソファに座りながら項垂れていた。
「暇……だね」
「うん、暇だねお姉ちゃん……」
「同期のタレントたちは皆引っ張りだこなのに私たちは暇だね……小喬ちゃん」
「うん、そだねお姉ちゃん……」
「「…………」」
何を隠そう双子タレントこと大喬と小喬である。
デビュー当時は双子タレントということで話題を集めたが今では仕事が激減し、世の中から忘れられつつある女優である。
数十秒沈黙が続くが、耐えられなくなったのか小喬がテーブルをばんっ!と、叩いた。
「そもそもなんで私たち真・恋姫†無双に出番がないのよ!?無印から出番があったのに!」
「……私たちだけだよね、無印からいなくなったキャラって」
「あり得ないじゃない!無印ではサクッと死んだ華雄は真・恋姫じゃ生きて何かネタキャラになってるのに、なんで私たちは存在自体消されてるのよ!?」
「一応アニメとかには出番があったものの、チョイ役みたいなものだったもんね」
彼女たちの代表作、恋姫†無双以降、その扱いは雑と言っていいだろう。
続編には登場させて貰えず、アニメも重要な位置にはいなかった。
正直、アニメで存在を完全に消された主人公の北郷一刀より扱いは悪いといえた。
「聞いてよお姉ちゃん。こないだ後輩の風とすれ違ったんだけどね」
『あ、風。今から仕事?』
『ええ。公式の仕事は落ち着きましたが、二次創作などの出演依頼が多いもので……小喬ちゃんは今日も休みですか~?羨ましいですね~』
「って言われたの!!今日もって何よ今日もって!!それに後輩なんだから、ちゃん付けじゃなく先輩って呼びなさいよね!!」
「風ちゃん本当に人気あるもんね。二次創作のお仕事でもほとんどがメインの役だし」
「悔しい!お姉ちゃん私悔しいよー!!」
ジタバタと暴れる妹を見ながら大喬は申し訳なさそうな顔をする。
恋姫以外の三国志を題材にした作品には、大なり小なり大喬小喬は登場する。必ずといっていい程だ。しかもどの作品でも美人、美女に描かれ一定の人気がある。
それなのに恋姫で人気が出ない理由に大喬は心当たりがあった。
「なんで私たちには二次創作からの依頼もないのよ!?あってもチョイ役ばっかりでメインになる話なんて極僅か!そもそも登場すらされないし!!」
「ファン人気……ないもんね私たち」
「やめて!そんな事実聞きたくないわっ!!」
なんて不毛なやり取りを続けていると、休憩室のドアが勢いよく開き、一人の男が入ってくる。
「聞いてくれ二人共!」
「あ、北郷プロデューサー。お疲れ様です」
「ちょっとプロデューサー!今日こそは仕事取ってきたんでしょーね!?」
噛みつくような勢いの小喬に北郷一刀プロデューサー……もとい一刀はニヤリと笑みを浮かべた。
「ああ、しかもデカイ仕事だ!」
「「……え?」」
「ちょ、ちょっとプロデューサー?こ、これメインヒロインって書いてあるんだけど?」
「見間違いじゃないぞ?二次創作、しかもクロスオーバー作品だけどメインヒロインの一人に選ばれたんだよ!」
小喬に渡された台本。そこにはメインヒロインの文字がデカデカと書かれていた。
小喬はワナワナと震えていたが、立ち上がり手を天へと上げた。
「よっしゃーー!!!!」
「しかもメインヒロインの中で一番最初に出てくるらしいぞ」
「キタキタキタキター!!!!」
「あの……」
「大変だとは思うけど、やってくれるか?小喬」
「あったり前じゃない!これを気に再ブレイクよ!」
「あの、プロデューサー……」
「ん?あ、ごめん。なんだい大喬」
「あっお姉ちゃんもメインヒロインってことよね!だって私たち双子だし出るタイミングは一緒のはずだもんね!」
嬉しそうな小喬を気まずそうに見ながら、小さく呟いた。
「私、幽霊役ってなってるんですが?というか幽霊ってことは死んでるってことですか?」
「「…………」」
「……ちょっと、どういうことプロデューサー?お姉ちゃん幽霊役なの?」
「あーまぁ、そんな感じ……かな」
「……理由とか、聞いてますか?」
「いや、えーとストーリー上仕方ないってのもあるんだけど、先方がその、な?」
ぼかすような言い方をする一刀だが、大喬の責めるような視線に真実を口にした。
「……ふたなりはちょっと無理。だそうだ」
「うあぁぁん!!やっぱりそれが理由なんだー!!!」
想像していた通りの理由に大喬はわんわんと大泣きした。
続く?
頑張れ大喬ちゃん!公式に負けるな!
って感じのオマケでしたw
話の区切りにまた続きを書くかもしれません。
では明日からは黄巾党編です。
また読んでくれると嬉しいです。
感想、評価ありがとうございます。力になります。