君の孫   作:JALBAS

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朝起きると、三葉は見ず知らずの男の子と体が入れ替わっています。その男の子は自分と同い年ですが、時間軸がずれています。本来は、その相手は瀧くんなのですが、このお話でのお相手は・・・・“ぬらりひょんの孫”の、奴良リクオです・・・・




《 第一話 》

かつて人は、妖怪を恐れた。その妖怪の先頭に立ち、百鬼夜行を率いる男。人々は、その者を妖怪の総大将・・・或いはこう呼んだ。魑魅魍魎の主、“ぬらりひょん”と・・・・

 

 

二百年前のある夜、山奥の村“糸守”で大火事が起こった。火元は、草履屋の繭五郎の家の風呂場だった。風の強い夜で、火は瞬く間に燃え広がり、宮水神社の本殿にも火の手が迫っていた。

「は・・・早く逃げるんや!」

「で・・でも、御神体を運び出さんと・・・」

「この火の勢いでは無理じゃ!」

宮水家の者達は、手に持てる僅かな物だけ抱えて避難した。皆、逃げるのに精一杯で、消化作業などままならなかった。

その様子を、少し離れた高台の上から、じっと見ている者が居た。

この火事を起こした張本人、草履屋の繭五郎であった。

「ふひひひひひひひひ・・・・」

繭五郎は、不気味な笑みを浮かべ、その光景をただ眺めていた・・・・

 

 

 

 

 

東京の浮世絵町にある、奴良組総本家。

縁側の廊下を、白い着物を着た髪の長い女性が歩いて来る。中央の部屋の襖の前で正座し、ゆっくりとその襖を開ける。

「若、そろそろ起きないと、学校に遅刻しますよ。」

「ん・・・んん・・・・」

広い部屋の中央に布団が一式敷かれており、高校生くらいの男子が、陽の光を受けて眩しそうに手を顔に翳す。彼は、ゆっくりと体を起こし、目を開く。

 

「・・・あれ?・・・・」

こ・・ここ、何処?私の部屋じゃ無いわよね・・・異様に広いし、家具も何にも無くて・・・・

ふと右に目をやると、見た事も無い女の子が廊下に正座して、じっとこちらを見つめている。

「?・・・どうされました?若?」

「わ・・・若?」

私が若?・・・何?それ?

きょとんとしている私を、彼女は首を傾げながら見つめ続ける。そうしている内に、私は自分の体の違和感に気付いた。

え?・・・何か、体が少し重いような・・・む・・胸は妙に軽い・・・・

視線を下に向けると、紺色の和服の寝巻きを着ている。いつもの私のパジャマじゃ無い。でも、問題はそこでは無く・・・胸が・・・無い・・・・そして、股間に盛り上がりが・・・・

「えええええええええっ?」

「ど・・・どうなさったんですか?若っ!」

思わず大声を上げてしまったので、その女の子が近づいて来て私の手に触れる。

「ひゃっ!」

な・・何?な・・・何でこんなに冷たいの?この娘の手?これで、本当に生きてるの?

「若っ!本当に、どうしたんですか?」

「わ・・・若って?私の事?」

「他に誰がいるんですか?」

「え?・・・わ・・・私は誰?こ・・ここは何処?」

頭が混乱して、思わずドラマのような台詞を口走ってしまった。

「何を言ってるんですか?ここは、奴良組総本家。あなたは、奴良組三代目“奴良リクオ”様じゃないですか!」

「ぬ・・・奴良組?・・・三代目?・・・り・・リクオって?じゃあ、私やっぱり男の子になっとるの?」

「なっとるのって・・・若は、生まれた時から男の子でしょ?」

話が、全く噛み合わない。

『どうした?どうした?』

私と女の子の騒ぎを聞きつけて、その家の住人達が手前の廊下に集まって来た・・・が、そこに集まった者達は・・・・子供の頃に、お伽話の本やテレビ等で見た空想の産物、およそこの世に実在するとは思えなかった、魑魅魍魎・・・・いわゆる、お・ば・け・・・・

「きゃああああああああああっ!」

私は、そのまま意識を失ってしまった。

 

 

 

「・・・・あれ?」

目が覚めると、そこはいつもの僕の部屋では無かった・・・・というか、僕の家でも無い。

部屋の家具や壁に掛かった制服を見る限り、女の子の部屋だ。

「?!」

妙な違和感を感じて視線を落とすと、胸に見慣れない膨らみが・・・・触って見ると、柔らかくて、感じる・・・・本物だ!

「お姉ちゃん、何しとんの?」

「え?」

声に気付いて右を向くと、右手の襖が開いていて、小学生くらいの女の子が立っていた。

「自分の胸が、そんなに珍しいの?ごはんやよ。」

そう言って、女の子は階段を降りて行った。

「お・・・お姉ちゃん?」

少し遅れて、彼女の言葉に反応した。良く部屋を見渡すと、目の前に大きな姿見があった。ゆっくりと姿見に近づいて、自分の姿を映す。

やっぱり、女の子になってる・・・・年は、同じくらいか?

 

「お姉ちゃん、遅い!」

「ご・・ごめん、ごめん!」

色々調べてから下に降りたので、さっきの女の子に怒られた。

居間では、“妹”であるさっきの子と、お婆さんが食事をしていた。どうやら、3人家族のようだ。

お婆さんにも挨拶をして食事をしていると、テレビのニュースが耳に入って来る。

『1200年に一度という彗星の来訪が、いよいよひと月後に迫っています・・・・』

彗星?そんな話あったっけ?・・・・1200年に一度?じゃあ、その前に来たのは1200年前?・・・というと、おじいちゃんもまだ生まれて無いな・・・・羽衣狐・・・ですら、生まれていないな・・・・

 

食事を終え、妹と共に通学の途に就く。少し歩いて妹と分かれ、ひとりで歩きながら考える。

これは夢でも幻でも無い、現実だ。僕はこの“宮水三葉”という女の子になっている・・・・いや、入れ替っているのだろうか?これも、ぬらりひょんの妖力?・・・・なわけないか!

でも、入れ替ってるんなら、今僕の体にはこの女の子が?・・・・

ふと想像して、非常に気の毒に思えた。普通の人間、それも女の子が、いきなりあんな妖怪屋敷に放り込まれたら・・・・

「三葉~っ!」

考え込んでいたところで、後ろから名を呼ばれる。でも、本当の自分の名前では無いので、最初は気が付かなかった。

「三葉ってば~っ!」

ようやく自分が呼ばれている事に気付き、振り返ると、自転車に2人乗りした男女がこちらに近づいて来る。多分、この女の子の親友の、テッシーとサヤちんだろう。部屋にあった日記や、スマホの着信もこの2人のことばかり書いてあった。

「おはよう!三葉!」

「おはよう!サヤちん、テッシー。」

ここは、無難に挨拶を返しておいた。入れ替っている可能性が高い以上、あまり異常な行動を取ると、後で三葉さんが困るだろう。ただでさえ、妖怪屋敷で悲惨な目に遭っているかもしれないのに・・・・

 

その後、3人で一緒に学校まで行った。三葉さんは髪を複雑に結っているようで、そこが違うのを指摘されたが、寝坊して時間が無かったと言って誤魔化した。

また、ここは北陸に近いようで、喋り方に独特の訛りがあった。標準語で話すと逆に違和感を持たれるので、出来るだけ会話は片言で済ませた。

 

学校に着き、HRが始まると、先生がひとりの生徒を連れて入って来たが・・・・僕は、その顔を見て仰天した。

「き・・・清継くん?」

「え?」

「三葉、知り合いやの?」

「そこ!静かにして!」

つい声を上げてしまい、サヤちん達共々先生に怒られた。

「今日はまず、転校生を紹介する・・・・じゃあ、清十字、自己紹介して!」

「はい!」

彼は、先生と入れ替わりで壇上に立つ。

「清十字清司です。親の仕事の都合で、千葉から引っ越して来ました。」

何だ、清継くんじゃ無かったのか。てっきり、パラレルワールドにでも迷い込んだのかと・・・・え?清十字って?

「趣味は、妖怪探索です!」

?!・・・・

『何じゃそりゃ?』

クラス内から、どよめきが起こる。

「妖怪です!妖怪!この世には、人知を超えた妖しい存在、妖怪が実在するんです!僕はその存在を証明し、世に広めようと・・・・」

いきなり熱弁を始めようとしたので、途中で先生に止められた。

ま・・・間違い無い・・・・彼は、清継くんの従兄弟か何かだ・・・・

「じゃあ席は、宮水の隣に座って!」

「はい!」

丁度、僕の隣が空いていたので、彼は僕の隣の席になった。

「よろしく!えっと・・・・」

「あ・・ああ、こちらこそ。ぼ・・僕は奴良・・・」

本名を言い掛けて、はっとして言い直す。

「わ・・私は、み・・宮水三葉です・・・・」

「よろしく、宮水くん!」

・・・・友人の呼び方まで、清継くんと同じだ・・・・

 

昼休み、僕らは校庭の端の木陰で昼食を取った。三葉さんとサヤちん、テッシーの3人は、いつもここで昼食を取っているようだ。ただ、今日はそこにもうひとり加わっている。もちろん、転校生の清司くんだ。仲良し3人組の新メンバーといったところだが、実際は僕も新メンバーだ。みんなの事をまだ良く知らないから、何を話すにも気を遣って疲れる。逆に、清司くんは、まるで昔からの仲間のように気兼ねなく皆に話し掛けて来る・・・・まるで、清継くんそのものだ。

「さて、腹も膨れたところで、清十字怪奇探偵団糸守支部、第一回総会を行おうか!」

「ぶっ!!」

思わず、お茶を噴いてしまった。

「清十字怪奇探偵団?」

「なんや?それ?」

「本家は僕の従兄弟の清継が、東京で立ち上げた。ここは地方だから、支部となる。要は、妖怪の目撃情報を元に、その詳細を確認して記録に残すんだ!」

やっぱり・・・・清継くんの従兄弟だったんだ・・・・

「そんな事言っても、糸守に妖怪なんかおんの?」

「何を言うんだ!このような自然に囲まれた土地にこそ、多くの妖怪伝説があるんじゃないか!」

「そうやった?」

「あんま、聞かんけどな。」

サヤちんに問われ、テッシーが答える。

僕も、ここには来た事が無いので良く知らないが、岐阜は確か天下布武組のナワバリだったよな・・・・総大将は、カワエロって言ってたか・・・・

「見たまえ!」

清司くんは、ノートパソコンで検索した妖怪情報のデータベースを、皆に見せて言う。

「糸守でも、これだけの妖怪目撃情報が投稿されているんだ!」

『へえ~っ・・・・』

皆、気の無い返事で画面を覗き込む。

「そういう訳で、今夜はこの廃屋の裏の大木を調査しよう!」

『え?』

「ここには“釣瓶落とし”という妖怪が出ると伝えられている!」

ま・・・まさか、いきなりこのパターンなの?

 

 

 

「・・・ん・・んんっ・・・・」

「・・・あら?気が付いた?」

目が覚めると、じっと私を見つめる、髪の短い女性の顔が目の前にあった。さっきの女の子とは違うが、やはり見た事が無い顔だ。体を起こして周りを見ると、さっきと同じ部屋だ・・・・と、いうことは・・・・脳裏に、先程の恐怖の光景が浮かび、私はがたがたと震え出した。

「あら?どうしたの、寒気がするの?」

その女性は、優しく私の額に手を当てる。

「熱は・・・無いわね?」

最初に顔を見た時は、同い年くらいかと思ったが、仕草を見ているとずっと年配そうだ。でも、随分若く見える人だ。こんな人が、妖怪とはとても思えない・・・さっき見たのは、幻だったのかな?・・・・いや、そもそも、これは夢なのかな?

「若菜様。」

すると、襖が開いて、青い羽織を着て黒い首巻をした男性が入って来る。良く見ると、かなりのイケメンだ。

「リクオ様の様子はどうですか?」

「う~ん・・・熱は無いけど、寒気がするみたい。今日は、学校は休ませた方がいいかしら?私、ごはんをここに持ってくるわね。」

そう言って、“若菜様”と呼ばれる彼女は立ち上がり、廊下に出ようとするが・・・・

「きゃっ!」

そこに置いてあったお盆を踏んでしまい、バランスを崩して倒れそうになってしまう。

「あ・・・あぶない!」

座りかけていたイケメンの人が慌てて支えようとするが、倒れてくるのが早かったため、2人の頭がぶつかってしまう。

「うわっ!」

次の瞬間、また、私の目にとんでも無い光景が飛び込んで来た。ぶつかった拍子に男の人の首が捥げ、私の布団の上に転がって来たのだ!

「きゃああああああああああああっ!」

私は、また意識を失ってしまった・・・・

 

その後、日が暮れても、リクオは気を失ったままだった。

奴良組の者達は心配して、リクオの周りに集まっていた。

「夜になったのに、人間の姿のままだぞ?」

「いったい、どうされたのだ?若は?」

「・・・ん・・んんっ・・・・」

すると、ようやくリクオが意識を取り戻す。

「若?!」

「大丈夫ですか?若っ!」

皆、一斉にリクオの顔を覗き込む。

「?!」

目を開けたリクオ(中身は三葉)は、三度妖怪の姿を見て・・・・

「・・・・」

もう悲鳴すら出せず、そのまま失神してしまう。そして、その夜は二度と目を覚ます事は無かった・・・・

 

 

 

その日の夜僕達は、町外れに長年放置されたままの廃屋に来ていた。

清司くんが、どうしても探索すると言い張って譲らないので、流石にひとりで向かわせるのは問題だと思って同行した。何しろ僕は、妖怪が実在する事を知っている・・・・というか、僕自身が妖怪なんだけど・・・・

「見たまえ、この異様な雰囲気、いかにも妖怪が現れそうじゃないか?」

「ほ・・・ほんまに不気味やわ・・・や・・やっぱ、帰ろ!」

サヤちんが、泣き出しそうな声で言う。

「お前、何で付いてきたんや。止めとけ言うたに。」

テッシーがそれに答える。

「だ・・だって・・・三葉が、どうしても行くって言うから・・・・」

「い・・いや、清司くん・・・放っておけないし・・・・」

「俺がおるやろ。」

「で・・でも、普通の人間じゃ・・・・」

『え?』

2人は、怪訝な顔をする。

「い・・・いや、な・・・何でもない・・・はははは・・・・」

「・・・・三葉、何か妙に落ち着いとるな?恐く無いんか?」

「え?」

「ほんまや・・・三葉、こういうの一番苦手やったのに・・・」

「そ・・・そうだった?」

やばい・・・ぼろが出てきたかも・・・・

「何をしてるんだ、君達?さっさと裏に回るぞ!問題の大木は、この廃屋の裏だ!」

既に清司くんは、廃屋の右手の小道に入ろうとしている。

「う・・うん、今行くよ!」

僕達は、慌てて清司くんの後を追う。お陰で、サヤちん達が感じた違和感については、うやむやにできた。

廃屋の裏手に回ると、そこは本当に真っ暗だった。ただでさえ、田舎で明かりが少ない。加えて、町外れで家の裏手となると、全く光が入って来ない。更に今夜は曇っていて、月が隠れているので、数メートル先は全然見えない。

「おお、あの木だ!」

清司くんが、懐中電灯で前方を照らす。そこには、一本の大きなカヤの木があった。

「いやっ!ほ・・ほんまに何か出そう・・・」

サヤちんが、僕の腕にしがみ付いてくる。

いや・・・出そうどころの話じゃ無い!こ・・・この妖気はやばい!

「清司くん!戻って!それ以上進んじゃダメだ!」

「は~ん?何を言ってるんだ宮水くん、近づかなきゃ妖怪に会えないじゃないか!」

「だから、この妖怪はまずいんだって!」

『え?』

――― しまった! ―――

また、サヤちんとテッシーが怪訝な顔をする。

慌てて口を押さえて、2人の顔色を伺っている間に、清司くんは木の根元付近まで行ってしまう。

「ほげえっ!」

その時、木の上から突然何かが落っこちて来て、清司くんの頭に直撃する。その衝撃で、清司くんはのびてしまう。

『な・・何?』

僕の方を向いていた、サヤちんとテッシーは、清司くんの声を聞いて木の方に向き直る。

次の瞬間、倒れた清司くんの上に浮いている物体を見て、2人は・・・・

「きゃああああああっ!」

「うわああああああっ!」

同時に大きな悲鳴を上げる。そこには、人間の数倍もの大きさの首が浮いていた。胴体は無く、首だけだ。鬼の面のような鋭い目に、耳まで裂けている大きな口、その口には鋭い牙が生えている。頭には長い髪が生えていて、尻尾のように長く伸びている。

「くくくくく・・・ここに、人が来るのは何年振りかのう?久しぶりの、ご馳走じゃ!」

こ・・・こいつが、“釣瓶落とし”か?

「・・・・」

「さ・・サヤちん?」

サヤちんは、とうとう気絶してしまった。

「ば・・・ばけもんがああっ!」

テッシーは、近くに落ちていた木片を拾って、勇猛果敢にも釣瓶落としに向かって行く。

「だ・・・ダメだ!テッシー!」

確かに彼はガタイが良くて、力もありそうだけど、普通の人間じゃ妖怪には敵わない。

「うおおおおおおっ!」

テッシーは、木片で殴りかかるが、あっさりと攻撃は交わされてしまう。

「?!」

テッシーの後ろに回り込んだ釣瓶落としは、尻尾のような髪をテッシーの首に巻き付ける。

「ぐわっ!」

苦しくて、木片を離してしまうテッシー。更に釣瓶落としは、そのままテッシーの体を振り回す。

「ぐうううううううっ!」

首が絞まり、苦しむテッシー。

「や・・・やめろおおおっ!」

釣瓶落としは、振り回したテッシーの体をカヤの木に叩き付ける。

「ぐはっ!」

ようやく、首に絡みついた髪の毛は解かれたが、テッシーもこの衝撃で気を失ってしまう。

「ぐふふふふふふふふふふ!」

不気味な笑い声を上げて、釣瓶落としは今度は僕達の方を向く。

「久々のご馳走は、やはり、若いおなごから頂くとしようかの!」

僕は、慌ててテッシーが落とした木片を拾い上げる。左手にサヤちんを抱え、右手で木片を構える。

まずい、このままじゃ皆やられる・・・・僕が、皆を助けないと・・・・でも、この体は僕の体じゃ無い・・・妖怪の血が無ければ、妖力は使えない・・・・

「ぐわあああああああっ!」

釣瓶落としが、僕らに向かって突進して来る。

「くそっ!」

僕は、木片で釣瓶落としに殴り掛かるが、大きな口に受け止められてしまう。動きの止まった僕に、釣瓶落としの長い髪が襲い掛かる。鞭のように撓った髪に吹き飛ばされ、僕は廃屋の壁に叩き付けられる。

「うぐっ!」

その時、体の中の血が騒ぎ出すのを感じた・・・・こ・・この感覚は?・・・で・・でも、これは僕の体じゃ無いのに・・・・

 

「まずは、お前から喰ろうてやるうううううううっ!」

釣瓶落としは、壁にもたれて項垂れている三葉に向かって来る。だが、その三葉の体が徐々に変化していく。髪の色が、見る見る内に銀色に染まっていく・・・・

「・・・い・・いい加減にしやがれ・・・」

「ぐわああああああっ!」

釣瓶落としは三葉の首筋に噛み付く・・・・が・・・三葉の体は、幻のように消え去ってしまう。

「な・・・何?ど・・・何処に行った?」

「ここだ!」

釣瓶落としの背後に、煙のように黒い闇が立ち昇り、その中から三葉が現れる。しかし、その姿は今迄の三葉のものでは無かった。

髪は銀色に染まり、元の倍の長さになって、風に棚引くように伸びている。身の丈は170cmを越え、成人男性のような体格になっている。そして、その顔にある細く鋭い目が、釣瓶落としを厳しく睨み付けている。

「人に仇なす妖怪は、この俺が許さねえ!」

 




さすがにもう“君の名は。”フィーバーは終わったかもしれませんが、また書いてしまいました。
今回の三葉は、気絶してるだけで何にもしていませんが・・・・
この話のリクオですが、三葉と同じ高校2年生になってます。
つまり、鵺との戦いの3年後くらいの設定です。
カナちゃん達も、リクオと同じ高校に通っています。今回は出てきませんでしたけど。
ただ、ゆらちゃんは花開院28代目を継いだ為、京都に居ます。
あと、糸守で妖怪騒動を起こすために、糸守にも清継くんキャラを出してしまいました。

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