錬鉄の魔術使いと魔法使い達〜異聞〜 剣の御子の道   作:シエロティエラ

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「リゼちゃん。今日この店にリゼちゃんの知り合いが来るって聞いたけど?」

「ああ。冬木の人なんだが、一度このラビットハウスの話をしたら来るって言っていたんだ。確か付き添いもいるとか」

「リゼさんの知り合いですか。どんな人なんでしょうか」

「とてもいい人だぞ。以前会ったが小さい妹がいてな、なんというかモカさんみたいな人だ。流石にモフモフはしないが」

「へぇ〜お姉ちゃんみたいな人か〜」

「なら安心ですね」

「あとお兄さんがいるらしいが、私はあったことない。大学行きながら世界中で仕事をしてるらしい」





剣の御子と兎の家

 

 

 

 石畳の道や木造の家々が並ぶ街並みは、日本ではなくヨーロッパの都市郊外にいるように錯覚させる。この街の名前は「木組みの街」。街全体が穏やかな空気に包まれ、都会では見られない、野生のウサギが堂々と闊歩している光景も眼に映る。

 その街にあるカフェ、「ラビットハウス」では、時間帯がお昼時であることや日中が暑くなってきたことが合わさり、多くの客でひしめき合っていた。店内では今亡きマスターの孫であるチノとその学友のマヤとメグ、アルバイトのリゼとココアが汗を浮かべながらせわしなく店内を動いていた。

 

 

「チノちゃん、3番のお客様にブルーマウンテンを一つ」

 

「リゼさん、5番のお客様がお会計です」

 

 

 いつもはそれほど混まない店内も、今日ばかりは混雑している。まるでクリスマスの時のような状況に、少女たちの疲労は確実に溜まっていた。途中シャロや千夜が助っ人として参戦し、昼時を過ぎた頃になんとか一息つけるようになった。店内にいる客もゆったりとコーヒーを飲む数組だけになり、助っ人要員は総じて休憩としてカウンターで一服していた。

 そんな時、カフェの入り口が鈴を鳴らして開かれた。そこに立っていたのは藤色の長髪と琥珀色の目が特徴の美少女、その傍に立つのは朱銀の髪に紅の目を持つ青年だった。二人とも顔が非常に整っており、且つ特徴的な外見のために、リゼ以外の客や店員は驚きの視線で彼らを見ていた。

 

 

「いらっしゃい紅葉。席はこっちだ」

 

「あら、ありがとうリゼちゃん」

 

 

 紅葉と呼ばれた少女は傍の男性と共にカウンター席に座った。昼時は過ぎたため、今メニューとしては軽食やデザートがメインとなっている。

 

 

「よく来てくれたな。それと彼女がこの店のオーナーの孫であるチノだ」

 

「よろしくお願いします」

 

「よろしくね。ふふふっ、しっかりしてるわね」

 

 

 しばらく紹介も兼ねてリゼと紅葉が話していると、ココアがメニューを聞きに三人に近寄った。

 

 

「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」

 

「はい。オリジナルブレンドとエスプレッソ、それとこのケーキをお願いします」

 

「かしこまりました‼︎ 彼氏さんは他のご注文はございますか?」

 

 

 ココアがそう発言した瞬間紅葉は声をあげて、しかし上品に笑い、青年は複雑そうな顔で後頭部を軽く掻いていた。リゼも下の妹は会ったことあるが、紅葉の男の関係者は初めて会うため、この青年を紅葉の恋人と考えていた。

 

 

「ふふふっ、彼氏ですって」

 

「まぁ外見が似てないからな。兄妹と言われてもわからないだろう」

 

「「兄妹⁉︎」」

 

 

 二人の言葉に店内は動揺が走った。リゼは兄の外見特徴を話しには聞いていたが、今ここで言われるまで気づかなかった。男の言う通り、外見は似ているとは言えず、兄妹よりも恋人と言われた方がしっくりくる。

 と、そこに今まで自室にいたチノの父親が顔を出した。

 

 

「何やら叫び声が聞こえたけど、どうしたん……」

 

 

 チノの父親であるタカヒロは、青年を見るなり固まった。いつもと違うタカヒロの様子にチノとその頭上のウサギがアタフタし、事情を飲み込めない他の面子も何事かと視線を彷徨わせる。周囲の状況が混乱する中、タカヒロは無言で青年の元に近寄り、顔をマジマジと見つめ始めた。

 

 

「……似ている。衛宮さんによく似ている」

 

「「ッ⁉︎」」

 

 

 タカヒロの発言に、今度は青年と紅葉が固まった。そしてウサギ、ティッピー衛宮と言う単語に反応し、そして納得がいったような表情を浮かべた。

 

 

「父と何かご関係がおありで?」

 

 

 探るように青年が聞くと、タカヒロは我に返って青年から距離を開けた。

 

 

「すまないね。僕の料理の師によく似ていたから」

 

「なるほど、父の弟子でしたか」

 

 

 意外にも判明した父との関係に、紅葉とチノは目を丸くしていた。

 

 

「初めまして、私は衛宮剣吾です。父は衛宮士郎で母はイリヤスフィール・フォン・アインツベルンです」

 

「同じく間桐紅葉です。父は衛宮士郎、母は間桐桜です」

 

 

 青年、剣吾と紅葉が自己紹介すると、店内が騒然とした雰囲気になった。当然である。彼らが今挙げた両親の名は、世界的に知られている「錬鉄の英雄」、「冬の聖女」、「落花繽紛の聖母」に他ならない。

 そのためか客は勿論、リゼやチノ、ココアといった面子も目をこぼす程に丸くし、口をポカンと開けていた。

 

 

「そうか、師の子供達か。師は元気にしているのだろうか?」

 

「父は元気にしております。次会った時に伝えておきますよ」

 

「ああ、ありがとう」

 

 

 店の中の空気は若干緊張を残したままだったが、その後タカヒロと剣吾、紅葉は衛宮士郎の今と昔の話で盛り上がり、ゆっくりとした時間を過ごしていた。

 

 

 






「り、リゼさんはすごい人たちと知り合いだったんですね」

「いや、私も初めて知った。偶々名字が同じだと思っていたんだ」

「この様子だと他の妹さんたちも」

「確実にそうでしょうね」

「遠坂、アインツベルン、間桐で冬木御三家と呼ばれてるそうよ」

「親が英雄だなんてカッコイイな、メグ‼︎」

「そうだねー」


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