新しい家族が増える。俺はその言葉にとても動揺していた。タダでさえ胡桃ちゃんと言う新しい家族が増えまたこれ以上増えるのかと思うと少し億劫だ。まぁ、少しだけどんな人かは気になるが。
「はぁ、あの両親なにがしたいのやら。」
俺は湯船に溜まったお湯を手のひらですくい顔をジャブジャブと洗って考えることを放棄した。
「とりあえず今の問題から解決していくか。」
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「おーい小麦、風呂空いたぞー。」
「んー後で入るー。」
俺が風呂から上がると小麦は珍しくリビングにいて携帯ゲーム機で遊んでいた。
って部屋から出てもやることは一緒なのかよ。
「あの、では私が先に入ってもいいでしょうか?」
「あ、あぁ、それじゃ先に胡桃ちゃんどうぞ。」
「すいません。お姉ちゃん、先に入りますね?」
「お、お姉ちゃんって呼ぶな!」
小麦の言葉を胡桃ちゃんは気にしないで風呂場に向かう。
何かこうして見ると小麦と胡桃ちゃん本当の姉妹みたいだな、いや、姉妹になったんだけどさ。
「ぐぬぬぬぬぬぬ……。」
尚、等の小麦はまるで威嚇している犬の様な表情で風呂場に続く扉を睨んでいた。うむうむ、その表情も可愛いぞ小麦。
「てか何でお前は今日自分の部屋じゃ無くてリビングにいるんだ?」
「い、いちゃだめなの?」
「いや、別にダメとは言ってないけど、」
「ふん!ばーかばーか!」
何なんだ?コイツ胡桃ちゃん家に来てからなんか変だぞ?
「よいしょっと。」
俺は小麦の座っているソファーの隣に腰掛ける。
「な、何で隣に座るのさ!」
「別にいいじゃん、たまに小麦を可愛がってあげようとおもってな。」
「そ、そんなこと別にたのんで、うにゃー。」
「うんうん、よしよし。」
俺は小麦を撫でてやる。と言うのも小麦は幼い頃から頭を撫でられるのが好きなのだ。どんなに怒っていてもこれをやるだけで小麦は機嫌が治る。
「や、やめてよ!もう子供じゃないんだから!」
「俺にとっちゃまだまだ可愛い子供だ!」
それから胡桃ちゃんがお風呂から上がるまで俺の小麦を撫で撫でするのは続いた。
「お風呂上がりました、って、何でお姉ちゃんがこんな猫のように脱力してるんですか?」
「あ、いや色々あってな。小麦風呂空いたぞ?」
「ふにゃーい」
やばいやりすぎたな。久しぶりに小麦を撫でたら楽しすぎて歯止めが聞かなくなったぜ。
「お兄様、何だか変態っぽいですね。」
「妹を愛でないお兄ちゃんなどいるはずが無い!」
小麦はフラフラな足取りで風呂場に入っていった。
「……何だか妬けますね。」
「ん?なんて?」
「いいえ、何でもありませんよ。」
そう言うと胡桃ちゃんはさっきまで小麦が座っていた所に座った。すなわち俺の隣に。
「隣失礼します。」
「お、おう。」
胡桃は湯上りと薄いパジャマという事もありとても色っぽい。
この子本当に小麦と同い年か?なんというかヤバすぎる。
「あ、お兄様、もし宜しかったら私も撫でて貰えませんか?」
「え?お、おらがですか?」
「なんで一人称がおらになってるんですか……。」
「あ、いやそのだな。だって胡桃ちゃんは小麦と近づきたくてこんなことしたんだろ?なのに俺が胡桃ちゃんを撫でるってのは……」
「い、嫌なんですか?私を撫でるのは……」
胡桃ちゃんは泣きそうな顔をし上目遣いで俺を見つめてくる。
うっ、その顔反則だろ。
「い、嫌じゃない。むしろ撫でたい。」
「で、ではどうぞ。」
胡桃ちゃんは俺の肩に頭を乗せ早く撫でるように促す。
ち、近い!これ俺の理性は持つのか!?
「し、失礼します!」
俺は恐る恐る胡桃ちゃんの頭に手を乗せ撫で撫でをする、
「…………。」
俺が撫でている間胡桃ちゃんは終始無言。あれ?気に食わなかったかな?
「あ、あの、嫌なら止めるけど……」
「続けてください。」
「え?あ、いやその。」
「続けてください。」
「あ、はい。」
何だろ、嬉しいのかな?胡桃ちゃんって何考えてるか分からんし、まるで本当に猫だな。
ソファーに座って俺が胡桃ちゃんに頭を撫で撫でしている図。しかもかなりの密着度でこれは何も知らない人から見たらまさにカップルに見えるだろう。まぁ、実際は妹なんだけど。
「もう大丈夫ですよ、お兄様。」
「あ、そうか。どうだったかな?俺の撫で撫では。」
「んーそうですね、30点と言ったところでしょうか?」
なかなか厳しい判定ですね。俺撫で撫で歴15年よ?いや、小麦にしかしてないんだけどさ。
「き、きびしいね。」
「まぁ、そんな所でしょう。でもなかなか気持ちのいいものですね。機会があればまたお願いしたい程に。」
「ま、まぁ、機会があればね!あ、そうだ、コーヒー飲む?」
「すいませんお兄様、では頂きます。」
「ん、了解。」
俺はコーヒーを入れるためキッチンに向かう。そしてマグカップを二つ取り出して袋からコーヒーを二つ取り出す。ちなみに我が家ではドリップコーヒーが主流だ。と言ってもコーヒーを飲むのはほとんど俺なので結局は俺の好みであるが……。そしてヤカンに水を入れて沸騰するのを待つ。俺はふとリビングにいる胡桃ちゃんに目をやるとさっき俺が撫で撫でしていた所を触って下を向いていた。あれ、やっぱり気に食わなかったのかな?
「と言うか明日は土曜日か、忙しくて忘れてたな。」
俺は掛けられていたカレンダーに目をやり明日の予定をどうするか悩む。そうしていると火に掛けておいた水が沸騰しているみたいなので俺は火を止めマグカップ二つにドリップコーヒーのセットをセットしゆっくりとヤカンのお湯をマグカップに注ぐ。
んーなんとも言えないこのコーヒーの香りがたまんないぜ。
俺は出来上がったコーヒーをリビングで待つ胡桃ちゃんに持っていく。
「はい、お待たせ。」
「あ、ありがとうございます。」
「いえいえ、熱いから気をつけてね?」
「アツッ、」
言わんこっちゃない。そりゃ出来立てのコーヒーは熱いに決まってるんだが。胡桃ちゃん案外おっちょこちょいなのかな?
「す、すいません。私猫舌なので。」
「あ、そうなんだ。なら言ってくれれば良かったのに。」
「いえ、わざわざお兄様が入れてくださるのにそんな事言えません。」
胡桃ちゃんまだ気を使ってるみたいだな。まぁ、仕方ないか。今日来たばかりだもんな。
「そんなに気を使わなくてもいいんだよ?」
「え?」
「だって胡桃ちゃんはもう俺達の家族なんだから。」
「は、はわわわわぁ……。」
「だから一応俺も、お兄ちゃん?なんだから胡桃ちゃんももっと俺に甘えてくれてもいいんだよ?」
「…………プシュー」
あれ?いきなり胡桃ちゃんの顔が赤くなったぞ?どうしたんだろ。もしかして、熱!?
「だ、大丈夫胡桃ちゃん!顔が赤いよ?もしかして熱あるんじゃ!」
「あ、い、いえ!問題にゃい、です!」
「口が回らないほど熱あるのか!ちょっとおでこ出してみろ!」
俺は胡桃ちゃんの前髪を上げて自分のおでこを胡桃ちゃんのおでこに合わせ熱を確かめる。
「は、はわわわわぁ…………プシュー」
「な!もっと熱上がったぞ!大丈夫か!」
「だ、大丈夫ですから、あの、少し離れて貰えると……」
胡桃ちゃんに言われて初めて気づく。
「あ、あ!ご、ごめん!気づかなくて!」
「い、いえ!私も、少し悪いので。」
すると胡桃ちゃんは顔を赤くして顔を背けてしまった。あーやばい。怒らせちゃったかな?
「わ、私もう寝ますね!」
「お、おう!それがいい!明日は休日だからゆっくり休めよ!」
「は、はい!おやすみなさい!お兄様。」
そうして胡桃ちゃんはリビングからでて2階の寝室へと上がって言った。
「ふ、ふぅー。何だか俺まで顔赤いきがする…………」
あれ?何だかいきなり部屋が暗くなったような……。
「……お兄ちゃん。」
な、何故だろう、愛くるしい妹の声のはずなのに体の震えがとまらん。
俺は恐る恐る声のした方へ振り返る。
「な、なにかな?ひぃ!」
そこに立っていたのは佐倉 小麦という名の鬼であった。
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「お兄ちゃんってやっぱり変態なんだね。」
「ご、ごめんなさい。」
あの後俺は小麦にめっちゃ謝った、と言うか現在進行形で土下座してる。ね、熱測ろうとしただけじゃないか!小麦にも小さい頃やったし!
「お兄ちゃん、年頃の女の子におでこくっつけるなんて犯罪だよ?…………私ならともかく。」
「さ、最後何て言ったんだ?」
「う、うるさい!とにかく、ちゃんと反省してる?」
「し、してます。めちゃくちゃしてます。」
「じゃ、じゃあ反省の代わりにあ、明日、ちょっと付き合って。」
俺が顔を上げると頬を少し染め恥ずかしそうに言う小麦がいた。
そうだ。これこそが俺の小麦!さっきの悪魔は小麦な理由ないじゃないか!全く笑わせてくれるぜ!
「あー明日はちょっと家でダラダラしたい……」
「あ?」
「……何て思ってません、予定ゼロです。」
「うん!よろしい!じゃあ明日朝の四時起きね!」
「な、何でそんな早いの!?」
「明日は小麦がやりたいゲームの発売日なの!だから一緒にいこ?」
どうやら休日に休めると思った俺は間違っていたらしい。
「返事は?」
「は、はい。」
仕方ない、明日は可愛い妹に付き合ってやるとしよう。てかせめて五時起きにしてくれないかな……。
「あ、お兄ちゃん今せめて五時起きにしてくれないかな?って思った?」
「ま、全くそんな事おもってましぇん!」
やっぱり俺は妹に弱い。
はぁ、ちなみに筆者の住んでいる所では桜が満開です。今頃カップル達はデートでもしてるんでしょうか?けっ、強風で花びらが散れば良いのに。(非リアの妬み)
評価、感想してくれたらリア充たちが爆発するかも知れません。