放課後とは学校の終わった学生達の夢と希望だ。そう、夢と希望出なくてはならないのだ。それなのに今俺は、
「……………………ゴクリ。」
非常に緊張しながら放課後を過ごしている。
『あーマイクテス、マイクテス、皆聞こえるか?』
右耳から修司の声が聞こえる、と言うのも小型無線機が演劇部にあったらしく人数分拝借したらしい。
てか今更だけど何で演劇部に小型無線機何てあるの?
「あぁ、バッチリ聞こえる。」
『若葉も聞こえてるよ!』
『こ、小麦も聞こえてます!』
『よし、準備は全部整った!さぁ、パーリーの時間だお前ら!』
「お、おー。」
『『おー!』』
やばい、こいつらのテンションについていけない……。
『こちら修司!目的との距離はおよそ60m!小麦大佐!突撃許可を!』
『宜しい、突撃だ!』
おいおい小麦大丈夫かよ、ゲームに毒されすぎだぞ。
『……あれ?てか無線機あるなら若葉の役割なくない?』
俺は聞かないことにした、うんそれが1番いい。
ふと廊下を見ると小麦と修司が仲良さそうに歩いている。だがそれは変装を知っている俺だからだ。クラスの奴らには決してバレやしないだろう…………
「おい!修司のヤツ俺達の小麦ちゃんと歩いてやがるぞ!」
「「「な、なんだと!!!」」」
……と思っていた時期が俺にもありました。
速攻バレてんじゃん!修司のあの自信は何だったの!あと俺達、じゃなくて俺の小麦だから!
『悪い!作戦失敗だ!後は何とかしてくれ!』
「そんな無茶苦茶な!」
『お兄ちゃん、後はよろしく。……それと、後でお話聞かせてね?』
「お、おう。」
うぅ、何だか寒気が……
「いけぇ!お前ら!俺達の小麦ちゃんに手を出す奴は全員敵だ!ぶち殺せ!」
「「「「おおー!」」」」
『うわぁ!何でこうな…………ズザザ、』
おや?通信が途切れたようだ、しかしナイスだ修司。作戦は失敗したが目標は達成だ!
クラスのヤツらは修司を追いかけてどこかに行ってしまった。んーでも少し悪い気がするから後でジュースでも奢ってやるか。
「……そんじゃ行きますか。」
俺は誰もいなくなった放課後の静かな廊下を1人でゆっくりと歩き屋上へと向かった。
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「はぁ、この向こうに手紙の差し出し主がいるのか。」
俺は今屋上に通じる扉の前に立ち尽くしている。まぁ、要はビビっている。
だってさ!今までこんなことないから緊張するじゃん!するよね?
「……おし!」
俺は自分の両頬を手のひらで叩いて気合をいれる。いけ!男佐倉 胚芽!お前の気合をみせてやれ!
俺は震える両手を抑えながら屋上の扉を開ける。
「あ、あのー誰かいます…………か、」
俺は一瞬息をすることを忘れた。何故ならそこにいたのは紛うことなき美少女だったからだ。顔はどことなくまだ幼さがあるが、ショートカットの銀色の髪は春の風に吹かれ、より魅力を倍増させていた。そして……デカイ、何がとは言わないが。
「あ、随分おそかったですね?待ってましたよ…………お兄様。」
「ご、こめん。クラスの人たちにおいかけられて、ってお兄様!?」
待て待て!俺こんな美少女を妹に持った覚えないぞ!あ、いや確かに小麦は美少女だけど。
「えーと、もしかして誰かと勘違いしてる?」
「いいえ?私は高校2年で佐倉 小麦を妹に持つ佐倉 胚芽さんに用事があるのです。」
「あ、そか。んで要件って何かな?」
あ、何かオチが見えたぞ。これ俺に興味あるとかじゃ無くて、
「はい、私小麦ちゃんと姉妹になるのでその報告のためにこんな手紙を出したんです。」
俺の妹に近づくために俺に近づいたパターンやないかい!
ってえぇ!姉妹!?
「いやいやいや!ちょっと待て!姉妹になるってどういう……」
「あ、ご心配には及びません、もう既に手続きは終わっておりますので。」
なんで!なにあのクソ両親!何勝手に書類に判子押しちゃってんの!?てか俺そんな事一言も聞いてないんだけど?
「そ、そうはいっても、えと、」
「胡桃です。」
「く、胡桃ちゃんの両親は何て言ってんだよ!」
「胚芽兄様と仲良く出来るなら許すって言ってました。」
なんでだよ!俺こんな美少女の両親と接点とか全くないんですけど!
「そう言う事なのでお兄様?今日からお世話になります。」
「え?あ、はい。」
この真相は後々両親に問い詰めよう。うん、そうしましょう。
「ところでお兄様?後ろでなにやらあなたを睨んでる人たちがいますけど、何かしたんですか?」
「え?」
俺は胡桃に言われて恐る恐る振り返る。
「「「「「佐倉、胚芽、抹殺、する、ベシ。」」」」」
『ズザ、ザ…………胚芽!すまん。そっちに向かわせちまった!』
あぁ、今まで楽しかったな。………………恨んでやる、修司。
「「「「殺、殺、害、害、抹殺、抹殺。」」」」
「あはは、胡桃ちゃんのお兄ちゃんは今現在持って現世から退場します。」
俺は震える目で胡桃ちゃんをみる。
「心配しないで下さい、応援は呼んでますよ?」
「え?」
胡桃ちゃんがそう言った瞬間屋上の扉が勢いよく開け放たれた。
「おらぁ!アンタら修兄の友達に何してくれとんだ!」
と、同時に入ってきたのは本作戦でまだ1度も活躍していない少女。
「「「「げ!やべぇぞ!アイツうちの学校の裏番、大麦 若葉アネキだ!」」」」
「フルネームで呼ぶな!!」
若葉ちゃんが入ってくると今まで平静を失っていたクラスの連中は途端に正気に戻り一目散に逃げてしまった。
若葉ちゃんって謎だな。
「クスクス、」
それを見て笑っている新しい妹?胡桃ちゃんはもっと謎だ。
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屋上での一幕が終わり本作戦は一応成功?を収めた。ちなみに結局修司はボコボコにされたらしい。哀れなこの後で若葉ちゃんにしごかれるなんて、そんなこんなで俺は今胡桃ちゃんと一緒に帰宅している。
「じゃあお兄様、帰りましょうか?」
「あの、帰るってやっぱり俺の家、だよな?」
「勿論ですよ?」
胡桃ちゃんは迷いなくそう答える、はぁ、何だか面倒くさくなりそうだな、小麦1人でも手が焼けるのに。
「あれ?そう言えば小麦どこいったんだ?」
「確かにそうですね、電話して見ればどうでしょうか、お兄様。」
「あ、う、うん。」
お兄様って言い方慣れないな。
そう思いながら俺はスマホを取り出してみるとメールが2件入っていた。一つは差出人小麦で二つ目は修司からだった。
「んー小麦は先に帰ってるらしい。」
「はぁ、そうですか。せっかくお姉ちゃんと一緒に帰れると思ったのに。」
「…………。」
もう何も言うまい、と心に誓った俺であった。
ちなみに修司からのメールはなにやら意味のわからない内容で今日見たものは忘れろ、と言う1文だけ書かれていた。
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「ただいまー。」
「お、お邪魔します。」
何で胡桃ちゃんが緊張してるんだ。さっきは堂々としてた癖に。
「あらぁーおかえりなさい2人とも。と言うかもう胚芽君胡桃ちゃんとあってたのね?」
何だか久しぶりに母親の元気な声を聞いた気がする。グス、な、涙何てでてないんからね。
「あぁ、ちょっと、たっぷりあってな。」
「あらそぅ、小麦ちゃんなら先に帰ってるわよ、ささ、胡桃ちゃんもあがってあがって!」
「し、失礼します。」
「もう、そんなに緊張しなくていいのよ?今日から胡桃ちゃんは佐倉家の家族なんだから。」
何か普通に家族とか言っちゃってるし!もはや聞く気も失せたし!はぁ、小麦に後で話し聞かせてって言われたからいくか。
「んじゃ、俺小麦に用事あるから2階上がってるわ。」
「あらそう?夕食の準備出来たら呼ぶから小麦ちゃんと一緒に降りてきてね?」
「んーわかったー。」
「ではお兄様、後で。」
「おーよ。」
母さんと胡桃ちゃんと別れて2階へと上がる、はぁ、何か今日はやけに疲れたな。
そんなこんなで小麦の部屋の前。
「…………ゴクリ。」
何でこんなに緊張してるんだよ。大丈夫だ佐倉 胚芽、俺は何もしてない、あ、いや。新しい妹は連れてきちゃったけど……。
「コンコン…………入るぞーってうわ!」
小麦の部屋に入ると何故か電気は付けていなくて真っ暗だった。なら俺は何に驚いたかと言うと、それは真っ暗な部屋の中で小麦が部屋の真ん中で仁王立ちしていたからだ。
「な、何してるんだ?」
「別に?んで、どうだったの?」
何だか真っ暗でよく見えないが小麦から紫色のオーラみたいなのが出てるようにみえるんだが……
「あ、いやーそのだな。告白はされなかったんだが……」
「え?そ、そうだったんだ……。」
途端に小麦の背後から出ていた紫色のオーラが消える。
「だけど、あの、なんと言いますか……。」
「え?告白されてないなら何言われたの?」
「……聞きたいか?」
なかなか言い出せないぜ、告白はされてないが代わりに妹が出来たなんて……。
「……そんなに言い難い事なの?」
はい!再び小麦の背後から紫色のオーラが発生!しかもさっきより何か濃いようなきがするんだけど!?
「言い難いって言うか、信じられない話といいますか……」
「早くいって。」
「い、妹が、で、出来ました。」
「は?」
その瞬間の小麦の顔を俺は忘れることはないであろう。
「えーと、そ、そう言うことなんで。」
「いや、ちょっと理解できないんだけど。」
そりゃそうだろうよ!俺だって今日知ったし!
「そ、それについては同感だ、実は俺も詳しい話は……」
「妹が出来たってそういうキャラの子に好かれたってこと?」
「いや、違うくてだな。その、本当にきっちり書類上この佐倉家の家族になった、らしい。」
「………………。」
小麦は口を開かない、俺は冷や汗が止まらない。このお互い沈黙の状況を先に覆したのは何かを思い出したかのような小麦だった。
「…………まさか、」
「ん?ど、どうした?」
「その子の名前、もしかして胡桃って子じゃ……」
「あ、あぁ!その通りだ!」
「……この前言ってたこと本当だったんだ。」
「え?何か知ってんのか?」
「いや、別に、とりあえずわかったよ。」
そう言うと小麦はお気に入りの椅子に座りヘッドホンを付けゲームをし始めた。なんだよ、めちゃくちゃ気になるじゃねーか。
「あ、小麦、もうちょいで夕食出来るらしいから準備しとけよ?」
すると小麦は後ろをむいたまま手を上げて返事をした。ちゃんとしてくれよ……
そして俺は妹の部屋を後にした。
その後俺は自分の部屋で着替えを済ませて夕食が出来るのをベットの上で本を読みながら待っていることにした。ちなみに読んでいる本はラノベの妹者である。まぁ、話としてはある日主人公に3人の妹が出来て振り回される。と言った話である、てかどことなく今の俺の状況に似てるな。まぁ、3人じゃなくて2人だけどさ。あれ?これフラグじゃね?
「そんなまさかな。」
そんな事考えていると母親から夕食が出来たとのメールが来たので俺は読んでいた本を閉じて1階に向かうことにした。
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現在佐倉家では夕食を食べている。メンバーは母、父、小麦、俺、そして、胡桃ちゃんである。母と父は何故か俺と胡桃ちゃんを見てはニヤニヤしている、そしてそれを見た小麦は少し不機嫌である。何だか居心地悪いな。
「ゴホン、えー今日から新しい家族の1員の佐倉 胡桃ちゃんだ。胚芽と小麦も仲良くしてやってくれ。」
珍しく寡黙な父が口を開く、小麦はまだ不機嫌だ。ちなみに今日の夕食はハンバーグでナイフとフォークが置いてある。
「今日からお世話になります、佐倉 胡桃です。皆さん仲良くしてくれると嬉しいです。」
「あ、ちなみに胡桃ちゃんの部屋はまだ片付けてないから少しの間胚芽君はリビングで寝て頂戴ね?」
「りょ、了解」
何気この母親酷くないか。いや、別に文句はないけどさ!ないけどさ!
「それじゃ食べるとしようか、頂きます。」
「「「「頂きます。」」」」
その後我が家の夕食は何事も無くおわ
「あ、それと皆に言い忘れてたけど今度また新しい家族が増えるから!」
るはずが無かった。
「「え、ぇええええぇぇええ!」」
俺と小麦は珍しく息ぴったりであった。
はぁ、妹が欲しい。
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