美少女な妹いるけど文句ある?   作:ainex

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開かない扉と俺の妹。

コンコン、と俺は自室のとある部屋をノックする。ノックしたものの中からは応答がない。聞こえてくるのはゲームの電子音だけである。

 

「おい!飯ドアの前にといとくからな!」

 

俺は少し大きめな声でそう言ってため息をつきながらその部屋の前を後にする。

 

俺の家には開かない扉がある、まぁ、開かないと言っても夜中になるとちょくちょく開いたりするのだが……。

そしてその開かない扉の部屋の宿主は我が家の妹である。

 

突然だが、我が妹は引きこもりである。まぁ、引きこもりと言っても学校にはしっかり行っているのだが。

我が妹は美少女である。引きこもりが美少女であるが故に両親は本当に心配している。

 

とにかく何が言いたいのかと言うと……我が妹の兄佐倉 胚芽は、と言うか俺は妹を凄く心配している。

 

 

××××××××××××××

 

 

現在俺はリビングで夕食を食べている、夕食の席に在席しているのは母、父、そして俺である、夕食の席に妹はいない。妹が今の状態、引きこもりになったのは俺が高校2年生になり、妹が高校1年生になった頃である。最初は両親も遂に反抗期が来たか!とか言って少しはしゃいでいたのだがいざ引きこもりが1ヶ月続くとさすがに両親も心配し始めて開かない部屋、もとい妹の部屋に入ろうと試みる。結果は言うまでもなく失敗、そして妹が引きこもり初めてから今が丁度2ヶ月目だ。

 

「小麦、大丈夫かしら?」

「あぁ、心配だな。」

「「はぁ、」」

 

両親は最近これしか喋らない。心なしか顔は少しやつれているように見えた。まぁ、母は家事をこなし、父はしっかりと働くのでまだ大丈夫だとは思うのだが。ちなみに小麦とはここ、佐倉家の妹の名前である。俺の名前が胚芽で妹の名前が小麦。俺は小学生の頃初めてこの名前の意味を知った時は両親を少しばかり恨んだ。と言うかネーミングセンス無さすぎだろ、と落胆した。

 

「まぁまぁ、そんなに心配するなって。そのうち小麦も出てくるだろ。」

「「はぁ、」」

 

俺はいつもと同じ言葉を両親に返す。すると両親は俺の言葉にため息で返す。

ため息を付きたいのは俺もだっての。

 

こうして佐倉家の夕食が終わる。俺は今日の夜に決行する作戦の為に早めに風呂に入って妹が部屋から出てくるであろう夜中を自室で待っていることにした。

 

××××××××××××××××

 

 

現時刻深夜2時半、この時間はいつも妹が開かずの間から出てくる時間だ。俺は自室の扉に耳を当て妹が出てくるのを待っていた。

 

開かない扉と俺の部屋は同じ2階にある。そして開かない扉は俺の部屋の向かい側だ。妹は部屋から出るといつも1階に向かうので俺は何をしているのか全く分からない。まぁ、多分と言うか確実につまみ食いだろうな、朝冷蔵庫開けると俺のプリンとか無くなってるし。

 

そのまま暫く待っていると開かない扉が開かれる音がした。それと同時に足音が2階に響く、足音からするとどうやら俺の想像通り1階へとむかっているようだ。

 

「よし、いくか。」

 

俺は気合を入れ直し自室の扉を静かに開けた。

 

どうやら妹はリビングにいるらしく、リビングからは妹が冷蔵庫をあさる音が聞こえる。俺は妹に会うためにリビングに入る、扉を開いた

 

「おい、小麦そこでなに、して、」

 

俺は言葉を失った、何故なら妹の小麦は口周りに赤い血の様なものをべっとりと付け今日の夕食の余りであるミートソーススパゲティを手を使わずまるで犬のように貪っていたからだ。ん?あぁ血じゃ無くてミートソースか。

 

「ん?あ、36日ぶりのお兄ちゃんだ、久しぶりー」

「お、おう!久しぶりだな!ってちがう!」

 

妹は俺に見られたことをまるで気にしていない様子で普通に話しかけられたので思わず俺も普通に言葉を返してしまった。

 

「もう、うるさいな、こっちは食事中だよ?」

「とりあえず口をふけ!それとちゃんと手を使って食え!」

 

妹の小麦は藍色の髪を面倒くさそうに掻きむしり食べ終わったスパゲティの皿を台所に置く。

 

「全く、お兄ちゃん久しぶりにあった妹に説教ってどうなの?」

「あ、あぁ、すまん。って違うから!話聞いて!」

 

俺は何だかんだで妹に弱い。と言うのも過去に色々あったのだが、まぁこの話は別の機会にするとしよう。

 

「とりあえずここに座れ!」

「はいはい、今行きますよーっと」

 

妹はだるそうに俺に言われたら場所へと移動し始める、そして妹が座った事を確認してから俺は腕を組んで妹を厳しい眼差しで見つめる。

 

「とりあえず、何でこうなった?」

 

俺は疑問を投げかける。

 

「いやいや、ただ腹減ったから降りてきただけだっての。」

「そう言う事じゃなくて!何で引きこもり見たいな感じになったってこと!」

「あーそういう事ね、理由は簡単だよ。ただ単に気分的な問題。」

 

俺はまたも言葉を失ってしまった。

 

「き、気分ってなんだ!お前は気分で自分の時間を無駄にしてんのか!?」

「うるさいよ、お母さん達が起きちゃうじゃん。」

「その心配より今のお前の状態を心配しろ!」

 

状態?と言って自分の格好を確認する妹。

 

「そう言う事じゃなくて!お前の今の生活が両親を心配させてんだよ!」

「え?でも小麦はちゃんと学校にはいってるよー?何か問題あるの?」

 

小麦は何を言っているのか分からない、と言った表情で首を傾げる。その仕草は美少女と言う属性も相まってか凄く魅力的だった。

 

っていかんいかん何妹に魅力を感じてんだ!今はコイツを説教しなくては!

 

「お前が両親に顔を出さないから二人共スゲー心配してんだぞ!」

「あーなるほど。じゃあ今顔だしてくるね?」

「さっきの起こしちゃうから静かにって言った気遣いはどこにいった!?」

「もう!じゃあ結局何を言いたいの?何も無いなら小麦部屋にもどるよ?」

 

どうやら小麦はご立腹らしい。……俺、そんなに怒らせることしたかな?

 

「わかった!じゃあ明日の朝飯にはちゃんと顔を出せよ?」

「んー顔出せばいいんでしょ。じゃあね!」

 

小麦はそう言うとドンドンと足音を大きくして2階へ上がっていった。

だからさっきまでの気遣いはどこに言ったんだ。と言うかこんなに騒いでるのに起きない両親も両親だな。

俺はそう思いながら自室へと向かいリビングを後にした。その後自室に戻った俺はベットに潜り込むとものの数秒で眠りに落ちた。

 

 

×××××××××××××

 

 

昨日のことも会ってか割と寝不足気味の俺は起きてすぐに冷たい水で目を覚まそうと思い風呂場件洗面所へと向かうことにした。部屋を出て妹の部屋に耳を済ますとまだゲーム特有の電子音がなったいたのでまだ部屋にいるのかと思い少しガッカリしながら洗面所がある1階へと目を擦りながら向かった。

 

てかもうそろそろ学校に行く時間なのにゲームやってて大丈夫なのかよ。俺は一階の洗面所の扉を欠伸をしながら開ける、

 

「あ…………。」

「ひゃ!…………。」

 

扉を開けるとそこには全裸の小麦がいた。

 

「お、お、お、」

「わ、悪い!悪気があった訳では!」

「お兄ちゃんのスケベ!!!!」

「グフぅ!」

 

俺は小麦に思いっきりビンタされた。

まぁ、俺が悪いからなんにも言えないんだけどさ。

ちなみに小麦はその後も顔を赤くしてわなわなと震えていた。

薄れていく意識の中で俺は怒ってる小麦も可愛いなぁーと思ってしまった。こりゃシスコンだな。

 

「………………。モグモグ」

「あ、あのう、こ、小麦さん?」

 

現在俺はリビングで朝食を食べている。今朝の朝食のメンバーは母、父、俺、そして一切言葉を発しない妹の小麦だ。心なしか両親は、いや、確実に両親は機嫌がいい。さっきから両親の笑顔がとまらない!

 

「今朝のことは悪かったって!俺もお前の部屋からゲームの音が聞こえてたからまだ部屋にいると思ってだな、」

「………………。モグモグ」

 

佐倉 小麦は口を開かない。両親は笑顔が止まらない。

 

「本当にごめんって!何でもするから!」

「………………。モグモグ」

 

すると小麦は箸を置いてこちらに顔を向け、口を開く。小麦の顔は笑顔だ。だが目の奥は全く笑っていない。

 

「お兄ちゃん?」

「は、はい?」

「キモイ。」

 

俺は朝から妹に物理的に傷つけられ、精神的に傷つけられた。尚その間も両親は笑顔が止まらなかった。

 

おい!あんたら絶対人でなしだろ!!

 

 

×××××××××××××××

 

 

朝食の後何とか妹に許して貰った俺は久しぶりに妹と一緒に登校していた。しかし妹は耳にイヤホンを突っ込んでいるため言葉を交わす暇さえない。

 

「………………。」

「はぁ、」

 

折角久しぶりに一緒に登校するのに会話一つもしないって、随分嫌われたもんだな。

 

すると前から手を振りながら走ってくる人物に気がついた。どうやら女の子らしく、俺の知り合いではないと気づく。はて?俺の知り合いじゃないとしたら……あぁ、小麦の友達か。

 

「こーむぎーん!おはよう!」

 

走ってきた少女は赤い髪の毛を短く切りそろえ、制服をきちんと着ていて、靴はよく見る運動靴。いかにもアウトドアが似合いそうな少女だ。インドア派の俺にとっては朝から走るとか考えられん。

小麦は少女を見ると付けていたイヤホンを外してさっきまでの不機嫌な顔は見間違いだったのかと思うほどの笑顔を見せる。

 

「もう、そのあだ名は止めてって言ったじゃん!若葉。」

 

若葉、というのはこの子の名前らしく呼ばれた少女は元気よくごめん、と謝る。てかこむぎんて、フッ。

 

「あれ?その隣のお兄さんは噂のこむぎんのお兄ちゃん?」

「ん?あぁそうだよ、俺が小麦の兄の佐倉 胚芽です。それで噂って?」

 

俺ってそんなに噂される様な人だっけ?

 

「もちろんですよ!こむぎんったら学校っでは大体お兄さんのこと、」

「わあぁあ!止めてって!早く学校いこ!」

 

若葉ちゃんが言い切る前に小麦が慌てて話題を逸らす、ふーん?小麦が俺のことをね。

 

「あ、若葉ちゃん。うちの妹を宜しくね、」

「はい!任されました!」

 

若葉ちゃんは俺に敬礼みたいな事をしてから周り右して方向を帰る。

何かこの子真面目過ぎて逆に面白いな。

 

「お、お兄ちゃんも後でね!」

「おーう、気をつけて学校いけよ?こむぎん。」

「そ、その名前で呼ぶなー!」

 

照れた顔も可愛いではないか。流石は我が妹、学校でもモテるってよく聞くしな。

 

そんなことを思いながら遠くに見える2人の少女の背中を見送り俺はまた学校に向けて歩き出した。

 

「そしてやはり妹と言うのはいいものだと思う胚芽であった。」

「ってうわぁ!いきなり後ろから喋るなよ!」

「悪い悪い、全く可愛い妹を持つお兄ちゃんってのは最高だな!」

「そんなんでもねーよ。修司」

 

この男は大麦 修司俺の1番の親友でクラスメイトだ。赤い髪を少し長めに伸ばし人懐っこい笑顔が特徴の奴だ。

 

「それにしても小麦にも友達いたんだな。」

「そりゃいるだろ!うちの若葉も世話になってるしな。」

 

ん?うちの若葉だって?

 

「は?お前って一人っ子じゃなかったの?」

「いやいや、誰もそんなこと言ってないから。」

「いやいや、妹いるとも聞いてないから!」

「あーそーだったな。」

 

大麦修司の妹って言うことはあの若葉ちゃんは大麦 若葉って名前になるのか!?親のネーミングに悪意感じるよ!

 

「あ、お前今大麦若葉になるのか?とかおもっただろ?」

「な、なぜそれを!」

「大体お前の顔見てればわかるっての!」

 

そう言いながら俺の頭に軽くチョップを食らわす修司。

 

「本人の前でそれ言うなよ?結構気にしてる見たいだからさ。」

「さすがに俺もそこまで人でなしじゃねーよ。」

「んま、そーだわな。さっさと学校いこーぜ?遅刻しちまうし。」

 

腕時計を見てみるともう8時を過ぎていた。でもここから学校まではそんなに遠くは無いのでまだ余裕がある。

 

「そーだな、んじゃいくか。」

 

そう言って俺は背伸びをしてから修司と共に学校へ向かうのであった。

 

 

 




これは作者の妄想です。可愛い妹っていいよね。

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