ニーズに噛み合ったのか多くの皆様が見てくださっているそうで。
感謝を。
では、YESというバンドのRoundaboutを聞きながら書いた3話です、どうぞ。
ノルデンの空からこんにちは、ティアナ・リースフェルトです。
開戦から帝国は好調に戦線を上げてきましたが、しばらくすれば兵站の関係もあり戦線の押し上げが止まり、この寒空の中仲良く戦争中でございます。
開戦直後、私は不眠による体調不良で観測任務後にノックアウトした次第ですが、親愛なる先輩様が居たことが何よりの不幸。
即座に回復され後方に下がることも出来ず、日々前線で医療班として従軍することとなっております。ふぁっく。
打撲創傷筋肉痛神経痛骨折火傷炎症麻痺胃潰瘍内臓損傷内臓破裂失血四十肩に五十肩に痔。
戦場で治療できるものはもう大抵は治した気がしますし、戦場で治すものではないものも治した気がします。
まあ治したからと言って次の患者が居なくなることは無く、痛みに暴れる患者にスタンガンを打ち込み今日も治療の日々です。
こうして労働に勤しんでいると、先輩の教えてくれた不眠術式のありがたさがわかるというもの。
激務で寝る時間も碌にないが、寝る時間を削ればなんと自分の時間が少し作れるんです。
ブラック企業かな?軍か。
こちらの治療練度を見ることなくなぜか一人前だと免許皆伝を与えてくださった先輩殿は、魔力無しの手術が思う存分に出来ると嬉々として別の場所で治療に勤しんでいる。
マッドにとってはここはきっと天国なのでしょう。
で、だ。
時折私が再び飛行術式を起動しているのは何故でしょうか。
この手には少々大きいライフルを抱え、中隊の一員として隊についていく。
3日に一度の睡眠後に召集されたため体調は良好、飛んで戦闘する分に不眠術式が無くとも支障は無い。
「中隊長より各位、間もなく敵砲兵地点へ到着する、装備の確認を怠るな」
今回の任務は別部隊が観測主狩りを行っており、敵魔導師がそちらに戦力を割いて防御の薄くなった砲兵隊を攻撃するというもの。
選ばれた部隊は歳食ったおっさん集団もといベテランが集う一個中隊、通称オールド部隊。
だがしかし、その中に何故私が入っているのか。私はピチピチぞ。
「ようリースフェルト准尉、昨日はよく眠れたか」
「ビンデバルト少尉、お久しぶりです」
最初の観測任務以来、“数度出撃”しているがあれ以来僚機として付いてくるおっさん。
名をハンス・ビンデバルト、30前半経験豊富のお人よし少尉殿。よくポーカーで毟られているのを見かける。
戦場では普段のお人よしを見せず冷静にやるべき役割を全うする良き兵士だ。私以外には。
「ビンデバルト少尉、私は見ての通り子供ではありますがその前に一兵士、そう心配せずとも十全に役割は果たせます」
「馬鹿野郎、子供を心配するのは大人の義務だ」
「そうそう、子供は後ろで菓子でも食ってゆっくり寝てろってんだ」
「中隊長まで、中隊長もこのまえ一緒に組んで飛びましたよね、その時私活躍しましたよね!?」
いや、別に前線で戦える兵士として評価され前線で撃ちまくりたいということではないが、活躍したという事実に目を向けられず子ども扱いされるのはどうも納得がいかない。
私を話の肴に緊張の緩和を図っているのは理解している。
それぞれ話し込んでいるおっさん共も馬鹿にするような意図は無く、むしろ子供に対する心配の色が濃く見える。
拗ねた振りを装い話の流れに乗りながらも装備の確認、地理や砲兵部隊の情報を頭の中で精査していく。
「そう拗ねるな嬢ちゃん、別に誰も本気で言っちゃいねえよ」
「ええそうですねー、わかってますよー」
「中隊長より各位、お喋りの時間はそこまでだ。CP、こちらオールド01、そろそろ作戦地域に到達する」
―こちらCP、了解した、砲撃開始まで所定の位置にて待機せよ。
「オールド01了解」
待機場所の塹壕に入るとピリリとした空気が隊を支配する、先ほどまで呑気に話し込んでいた姿とは打って変わり、戦の匂いで軍人と言う人を殺す精密機械と成り果てる。
人をこうまで切り替える戦の空気というものに思わずにやりと口が歪む。
人が変わっていく姿というのは前世前々世で散々見てきたが、所詮は平和の国でのこと。
それと比べてみるとなんと劇的なことか、人らしさというものを冷たい理性の仮面で覆うも、その内側の顔は最も感情を露わに現しそれはもうドロドロの感情を渦巻かせる。
その様が何よりも愉快でいつも堪え切れずクスクスと笑みを浮かべてしまう。
「リースフェルト准尉、いつも戦闘前は嗤われますが戦争はお好きで?」
「いえいえ、私はこの空気が変わる瞬間が好きなのですよ、普段だらしないおじ様方が格好良くなるこの瞬間が」
「おやおや、諸君。我々は普段だらしないおじ様と思われてるらしいぞ?」
小さな笑いが起こる中、定時、砲撃の轟音が連続して轟く。
我らが友砲兵部隊は的確に敵要点に弾をぶち込みその役割を果たしている。
「ええ、ですから。これから格好良い姿をたっぷり見せてくださいね、おじ様方」
ウィンク一つ、この体は良い。リップサービスは効果を発揮しやすいし体の未成熟から手を出す輩もほぼいない。
微かに存在する性倒錯者共は周りが勝手に排除してくれる。前世でこの体だったら以前の二倍の業績を稼げた。
やはり美人は得であり可愛いは正義。
ターニャには無理だろうがな。
あいつがこれをやったら精神崩壊ものだ、あと私の腹筋も崩壊する。
隊員が私の頭を乱暴に撫でまわすのを内心痛いからやめて欲しいが大人しく撫でられる。
そうだ!可愛がれ!いざという時に私を逃がす心構えをさせてやる!あ、髪が指に絡まってる痛い痛い。
「では中隊、時間だ」
演算宝珠に魔力を回し飛行術式と防核術式を起動、銃を構え突撃姿勢で指示を待つ。
「この可愛らしいお嬢さんに、我々の無様な姿を見せるでないぞ?年甲斐もなく気張りたまえ」
「オールド中隊我に続け!」
叫び声を上げ僚機と共に戦場に飛び出し、目に見える敵と砲に砲撃術式を打ち込み被害の拡大化に努める。
とはいっても大方は砲撃隊が耕した後なので残り物も少なく、抵抗も少なくちょろい仕事と言える。
「中隊長より各位、敵魔導師を確認、規模は中隊との報告、対魔導師戦闘用意!」
こうまでやられた陣地ならばさっさと放棄すればいいのにと思うが、敵さんは何故かやる気に満ち満ちている。
「CPによると敵はネームド部隊、各位注意せよ」
ネームド部隊。
人口の少ない航空魔導師、いずれも精鋭であり、その精鋭を5人でも落としたのなら気を付けるべき敵エースとして登録され、名前の覚えられるネームドとなる。
そのエース達を贅沢に複数有した精鋭。通称ネームド部隊。
こちらもベテラン揃いとはいえ苦戦は避けえないやもしれぬ。
「ビンデバルト小隊、これより戦闘に入る。やれるな嬢ちゃん」
「それが私の役割なれば」
それと四人一組の小隊で一人を贔屓するのは良くないと思いますよ?
近くの小隊と合流し2個小隊でまず突貫してくる敵の勢いを削ぐ。
「砲撃術式用意、これで仕留めるなんて思うな、時間を少し稼げば味方が包囲し奴らは籠の鳥だ、まず勢いを削れ!」
真正面からぶつかり合うような軌道をせず迂回する軌道をしつつ弾丸を交換し合う。
被弾ルートの隊員の防御を行いながら撃ち合うが、思ったより勢いが削がれず依然相手の士気は高い。
「やっこさん元気がいいなクソが」
駆け付けた小隊も攻撃に加わるが敵魔導師は衰えぬ速度と連携によって寄せ付けず籠に収まろうとはしない。
他小隊が頭を押さえつけようとするが逆に被害多数で撃破されている。あぁ、チョコ分けてくれるおっちゃんが!
数度の打ち合いで負傷兵多数、削れたには削れたがこちらの損傷の方が多い。
流石は練度の高いネームド部隊、敵ながら見事なものである。
(いいねぇ、若さ溢れるその気概、おじさん関心しちゃうわ)
「これはまずいな、一時後退し体勢を立て直す」
「ではその間の時間稼ぎは私にお任せを、ちょいとかき回して参りましょう」
演算宝珠を用いて脳内麻薬を生成、興奮作用と反応上昇を行い即座に突貫を開始する。
「おい、待て嬢ちゃん!」
真っ直ぐ敵に突っ込む私に向かって即座に9つの弾丸を認識。
体の周りに防護壁を生成する防殻術式をカット、防殻に引っ掛かってしまえばその衝撃により速度が殺され強襲の効果が削がれてしまう。
危険?いや、当たらなければいいだけの話だろう?
認識さえしてしまえば隙間だらけの弾丸の壁を小さい体を生かして擦り抜け敵左翼の敵を魔力で強化した銃剣で首を斬りつける。
「一対多は私が得意とするところでして、なに、落ちはしませんよ」
下に落ちていく死体の死角を取り下方より再度すれ違いざまに銃剣突撃するが防核術式を抜き相手に突き刺さる前にライフルに受け止められる。
「お兄さん方、ちょっと遊んでくださいな」
「なっ、子供!?」
動揺する敵魔導師を至近距離から顎に蹴りを入れる。この固い軍靴のことだ、子供の力とはいえ脳震盪が起きてもおかしくは無いはず。
間髪入れず手に宿した切断術式で心臓と宝珠を貫きとどめをさす。
生暖かい鮮血を顔面に浴びる童子の姿はさぞかし狂気じみていたのだろう、死体諸共多数の弾丸がこちらを消し飛ばそうと襲い掛かる。
多数の弾丸とすれ違い貫通術式を起動、ちまちま高速で移動しながら一人また一人と風穴を開けていく。
前世では痴情のもつれで夜道後ろから包丁で刺し殺そうとする女と営業くらいにしか使えなかった認識力だったが、今世では良く機能する。
魔力の起こりから後ろで術式の起動を認識、敵兵を巻き込む乱数回避機動を行い誤射を誘発。
フレンドリーファイヤーを視認。
「おやおや、どうやら小さな子供の苛め方はあなた方協商連合の教導には入ってなかったみたいですねぇ」
「黙れこのクソ餓鬼!」
クスクス嗤ってやるとぶつかるような勢いで肉弾戦を挑んできた敵兵、しかし激昂した相手ほど御しやすいものは無い。
刺突とすれ違いざまにスタンガンを打ち込み麻痺した相手の肩を銃座にする。
「ばぁん!ばぁん!アハハハ!」
術式で興奮しすぎたせいか笑いが止まらない。
後頭部にキスをして銃座から離脱、男の後頭部にキスなんぞしても気持ちが悪いだけだが撃ち抜かれて壊れてしまった銃座君の最後の顔が面白かったので良しとする。
「愉悦でありますな~!」キャハハハと自分が出しているとは思えない甲高い子供の笑い声を響かせ下方に重力も使い速度を稼ぎ全速離脱。
私を追いかけてくる銃弾の雨を擦り抜け防殻術式を起動、並びに調整術式を用いて普段のコンディションに戻していく。
ちょいと興奮作用が効き過ぎたか?未だ興奮が収まらなくて口角が下を向いてくれない。
子供一人に散々やられた敵ネームド部隊は隊列も整えず鬼の形相で追撃してくるが、それを体勢を整え終えたオールド部隊が横っ腹から銃弾で殴りつける。
時間稼ぎにしては暴れすぎた感はあるが、あのままただ引いて体勢を整えるには被害がさらに増えていただろうことは想像に難くない。
その時部隊の取る選択肢としては少数が死兵となり命を懸けた時間稼ぎ。
結果私の突貫により体制を整えるための被害は無く、上々の結果と言えるのではないか?
「ティアナ無事か!おい血塗れじゃないか!」
「ビンデバルト少尉、これ返り血ですから私は大丈夫ですよ?それよりもこの調子では無事勝てそうですね、いやーひやひやしましたよー」
「リースフェルト准尉、帰ったらお説教な」
「えー、小官は役割を十全に果たしたと思うのですがー」
敵部隊を単独で掻き乱し時間を稼ぎちょいちょい撃破して無傷で切り抜け部隊の勝利に導く。
普通に勲章ものじゃない?ねーなんで説教!
「中隊長よりリースフェルト准尉、貴官の貢献に甚く感謝する。この勝利は貴官の貢献あっての物と言えよう。だが、あとでお説教だ」
解せぬ。
「ところで先輩、なんで私時折前線に駆り出されてたんですかね」
お説教から解放されへとへとになりながら医療班宿舎に戻ると、親愛なるマッド先輩は湯浴みの最中であった。
普段白衣に隠れてはいるがプロポーションは抜群。しかし性格、てめーがダメだ。解剖したがるその性質、てめーもダメだ。
私もお湯を失敬しつつ返り血を洗い流しつつどうせ知っているというか元凶であろう先輩へ聞いてみる。
「ずっと治療ばかりだと気が滅入ると他の医療スタッフに聞いてな、気分転換として突っ込んでおいたぞ」
「やっぱり元凶でしたか」
これから何かあれば先輩のせいってことにしていいような気がしてきた。
罰としてちょっと揉ませて?敏感だからダメ?あ、そう。そのセリフ俺の心のお(自主規制
「楽しかったろう?」
何を言っている、命を懸けた戦場でそんな楽しむだなんて、うん、まあ。
「まあ、少しは」
素直に肯定するには不謹慎にも程があるセリフをそっぽを向いて答え、道徳心の欠けた先輩は綺麗に微笑んだ。
治した怪我―参考webサイト、温泉の効能。
現地医療班―絶対魔力足りないと思ったため魔力を使用しない普通の医術も活躍するだろうという勝手な設定。
オールド部隊―だんでぃー部隊。それとなく媚び媚びしてめっちゃ可愛がられている。
もちろん計算の元で。
可愛いは―正義。
(おじさん関心しちゃうわ)―てぃあな・りーすふぇると9ちゃい
戦闘描写―前書きで書いた通りRoundaboutを聞きながら戦闘描写に入っていたらティアナちゃん突貫してた。ちょっと待て作者はあんま戦闘描写やったことないんだから突っ込まないでティアナさん!?
前世で得たチート―もう書いたからわかっただろうけど作品でちゃんと書くべきだと書きながら気付いたのでいずれちゃんと作品内で書きます。
チートチートはしていない、はず、だよな?
「愉悦でありますな~」―愉悦した。
お説教―一旦引くと言ったのにいきなり部隊の一人が突貫しました。そらお説教。
おっぱい―美乳。
お気づきだろうか、ここまでターニャとの絡みが碌にないということに。