幼女の友人幼女戦記   作:AMEKO

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遅くなりました。
あとなんかもう、書き方忘れました。


9話 帝都の休日

前線で戦う者誰しもが羨み、そこに行くことを一度は望む場所はどこだろう?

そう、ここ安全な後方こと帝都である。

 

さわやかな目覚め、そこに血の匂いも砲撃音も聞こえない。

朝食、冷たいレーションや無駄に硬すぎるKパンなどではなく、しっかりと火で調理された真っ当な物。

食後のコーヒーは代用コーヒーではなく勿論泥水でもない。芳醇な香りのするちゃんと惹いたコーヒー。

 

ああ、穏やかなる日よ、永遠であれと戦争を経験した身からすると切に願わずにいられない。

 

尊き平和を守るため、私は今日も武器を取る。

 

 

今持つに相応しき我が武器、ペンを片手に陣形のお勉強、法律のお勉強、実戦シミュレーション。

前世で隠れミリオタやっていたターニャと違い、こちらは完全に知識不足により四苦八苦。

正直わからん。

 

昨日もターニャに泣きつきなかなか良いお値段のするコーヒー豆と引き換えに座学を教えてもらい、なんとか優等生の地位に齧りついている。

もはや知識を語りたいだけの絶好調のオタク化したターニャに時折付き合わされ、時折私の目に映るお日様は黄色くなりますが、私は元気です。

 

お久しぶりです皆様、ティアナ・リースフェルト少尉、軍大学一年生です。

 

 

軍大学というところは、誰しもが入れるわけではない。

情報部によって身の回りに不審な関係が無いか調査され、前線での声を聴き、現役の参謀や教導隊に議論され精査されて、ようやく軍大学に入ることが認められる。

 

ちなみにその大学入学審査というものは複数回行われ、私は二次審査合格とのこと。

別にそこに不満は無い、むしろ私のような齢11の子供を一次審査で合格させない正常な判断を評価すべきだろう。

 

 

軍大学の存在理由というのは、将来帝国軍を担う人材の育成となる。

人材育成に力を入れてきたからこそ、今の精強なる帝国が出来たため、その教育は高い水準を誇っている。

 

ターニャほどではないにしろ、喜ぶべきことなのだろう。

なにせ軍大学に入学したということは、エリート街道を歩み出したと明確に認識できる一歩なのだから。

 

未来への道が明確に見えないというものは心にじわじわと負担を掛けていく。

それが戦争中という暗い未来が見えるものであったのなら負荷は倍増、私より明確に帝国の未来を想像しうるターニャだったならば、負荷もまた大きかったのだろう。

軍大学入学の指令を受けとり部屋に戻った時の喜ぶ様は本当に珍しかった。

 

珍しすぎてつい一緒になって喜んでやってさりげないスキンシップという名のセクハラをしたが、今は後悔している。

 

 

さて、ところで皆様は勉学の話はお好きかな?

正直に言えば私はあまり好きではない。

自己投資としての勉学は確かに必要だろう、底辺の暮らしもしくは才能に任せてのごり押し人生で生きていけるのならば必要ないと切り捨ててもらって結構。

必要性を判断基準として生きているものとすればそれは己が考える有意義な人生にとって必須が故に励むのだが、好き嫌いの話をするのならば好きではない。

 

故に、休日の話をしよう。

 

休日は良い。

誰しもがこれには同意するはずだ。

同意できない者は休日にすることを見つけられない怠惰なる者、そもそも同意なぞ求めてはいないため返答は結構。

 

私は前世では複数の趣味を持っていた。

音楽に興じ、バイクで各地を観光し、ゲーセンに通い、読書に耽る。

 

しかしながら今の世の中その最もたる趣味、音楽は未発達なのだ。

エレキギターの原型は近代にはあるものの、主流の音楽は今でいうクラシック音楽。

それも悪くは無いのだが私が聞きたいのはロックであり、私が演奏したいのはロック。

 

それが聞けないことを大いに嘆いたものだが、嘆いていても現状は変わらない。

故に現状を打破するべく今日も技術棟へ通う。

 

望む機材が無いのならば作ってしまえと切り替え、機材のパーツを探し求めた先は帝国技術棟。

今の最新技術が詰まっているところならば望むパーツがあるやもしれぬ、無いのならば技術屋をそそのかし作らせるのみ。

 

技術屋というものは未知の技術があればそれに飛びつき研究し実験したがる生き物がほとんど、私の持つ知識はまさしく未知、誘導することは容易い。

 

「おお、そこにおるのはティアナ殿ではないか!」

 

「げっ、シューゲル主任技師」

 

特にマッドなサイエンティストというものを乗せることは実に容易い、問題は思うように誘導されず爆走し事故ることだ。

その爆速爆走し爆発する筆頭マッドサイエンティスト、アーデルハイト・フォン・シューゲルと縁を結べたことは果たして幸か不幸か。

 

第一声からしてよろしくない声を上げたのだが、マッドは気にせずズカズカとこちらに距離を詰めてくる。

こっちくんなという心の声は届かない。

 

「今日はどうされたのかね、またパーツ探しかね?それともこの前のような試作品を持ってきているのかね?」

 

「いえ、シューゲル殿はお気になさらずお仕事にお戻りください」

 

「以前の試作品と設計図には今までにない着想を得てな、あの増幅回路は実に良かった。着想を元に新兵器を試作したのだがどうだね!見ていくかね!」

 

以前私が作ったエフェクターとその設計図を手に技術棟に向かった時のことだ。

私の持つ知識を元に試作のエフェクターとその設計図を持ち、まずはこれをエサにコネクションを繋げようと技術棟に向かった。

軍人が技術棟に赴くのは珍しいが、無いことでは無いため普通に棟に入り、そこいらの技術屋を捕まえエサを見せびらかた。

まずは客を集め、勝手に一室を借り付けプレゼンをしている時。このクソマッドは設計図とエフェクターを勝手にバラし始めやがったのだ。

 

設計図と見比べればパーツの関係もあり完成度が低いのは自覚しているが、伝手が無い中頑張って作ったものを許可無くばらされれば誰だって怒る。無論私は怒った。

しかしながら常識や倫理観など当然のように喪失しているこのマッド、言うだけ無駄。渋々諦めて渋々質問に答えた。

他の技術屋からも彼は忌避されているのか遠巻きに試作品について議論しているのみだった。

その一件から、シューゲル技師はこちらに対する好感度が高い。

 

個人的にこのシューゲルという人物は暑苦しくてウザいと思うものの嫌いではないのだ。

出歩けば普通の人などどこにでもいて見飽きているが、こういう突飛な人物は有害である可能性が高いもののその人格は希少。

一言で言えば、見ている限りは実に面白い。

 

だがしかし、今軍大学で被っている仮面というのは常識人の仮面。

常識を語るなぞ詰まらなくて仕方ないのだが、軍大学ではそれが最適なのだからしょうがない。

 

「見ていきません、それよりもシューゲル技師、以前お話しした集積回路の進行はどうです?」

 

「うむ、正直に言うと難航しているな。しかしティアナ殿はどこであのような知識を?」

 

「...いえ、回路が集まっていたら便利だろうと思いついただけですよ」

 

現世で当たり前に使われていた集積回路、いわゆるICチップ。

クレジットカードやメモリーカードに使われているものと言えば想像しやすいか。

現代で当たり前のように使われていたものだが、これも今の時代には存在しえない物だったため、技術棟に制作依頼を出している。

機材的に言えばオペアンプというものになる。効果、音が変わる。

 

「しかしそれが難航しているとなると、私の夢は未だ遠いようですな」

 

「これこれ、そう未来を悲観するでない。神は乗り越えられる試練しか与えないのだぞ?神を信じ目標に邁進するのだティアナ少尉」

 

自身の耳と脳味噌に掛けている毒電波フィルターにより不要なナニカを排除すれば、珍しくこちらを励ますような言葉。

このシューゲルという男は哀れにも存在Xの毒電波によって信仰心を植え付けられた被害者なのだ。

恐らくは帝国のトップに位置する高い技術力、奇特な人格、自分の趣味的な開発に協力的な姿勢。

好きな部類かと言われれば素直に頷けはしないが、嫌いな人物ではないのだ。

ただ嫌いな部分が無いかと言われれば、存在Xによる汚染を受けているというところか。

 

「まあ進行具合が聞けたのなら何より、今日は退散しておきます」

 

「うむ、是非試作品を見てもらいたかったのだがな」

 

子供の様に残念がるシューゲル技師にすみません、とさして心の籠っていない謝罪をして技術棟を去った。

開発の進み具合を聞ければこの技術棟に用は無い。

 

 

 

 

 

今日は技術棟を出たのだが、普段であればこのマッドと会話し奇天烈な発言を愉しむこともある。

しかしながら今日はまずいのだ。

 

軍大学では変わった人格によって幼女と侮られずに不足を補うということを行わず、極めて真っ当な人格を有していると周りにアピールする必要性が現れたのだ。

一癖も二癖もある上司など、面倒くさくて仕方がないだろう?

シューゲルという帝国筆頭マッドと和やかに会話する姿を見て、果たして周りはどう思うだろうか。

マッドとお仲間と認定されるのは多くの場合マイナス評価になりかねない。

それを見られるわけにはいかない。

 

 

技術棟から出た私はフラフラと市場を物色しながら今日の予定を考える。

本来は技術棟で一日を過ごすつもりだったのだが、シューゲルと接触した場合、高確率でこいつに引っ張りまわされる。

ちゃんと話を聞く人間というのは彼にとって珍しいのだろうな。

 

だが今日は私が宿舎を出た時から一人、後を付けてくる輩が少なくとも一人いるのだ。

そこいらの服屋に入り適当に服を見繕い個室に入る。

 

私の予想では今日尾行してきた輩はおそらくは情報部の調査員なのだろう。

このような幼子が軍人として今後やっていけるかどうか、普通はまあやっていけないだろう。当たり前の話だ。

しかしながらこうして私とターニャは軍の上に食い込む有益な人材となっている。それが本当に大丈夫か調査する必要性は十二分にあるため、今日こうして私を尾行し調査しているのだろう。

 

着替えた服に隠しナイフや演算宝珠を仕込み、全体のコーディネートを整える。

ふむ、雰囲気を変えるためと装備を扱いやすい服装にするためややボーイッシュなファッションとなったが、やはり私は可愛いな。

 

「すみませーん、会計をお願いします」

 

店を出ると外に待機していた尾行犯と思われる者は案の定着いてきた。

露店などで買い食いしながら帝都の地図を思い浮かべ、釣りに最適なポイントを思い浮かべる。

 

会話をするもの、露店で売買するもの、ラジオを聴くもの、

流石に人が多いと情報量が増し、尾行犯がどれだかわからなくなる。

どうやら尾行犯はなかなかに腕が良いようだ、これは諜報員とみて間違いはないだろう。

 

しばらく歩き人通りの少ない道から路地に入っていき足を速める。

数度路地を曲がり人の来ないであろう細い路地に入ったところで事を仕掛ける。

 

強く地面を蹴りつけ、パルクールの要領で壁を登り、二階ほどの高さで待機。

ほとんど足音のしない尾行犯だが、全認識はその小さな足音を拾いおおよその場所を暴き出す。

上から観察していると、帽子を被った者が小さな鏡で路地を確認し、用心深く進んでいる。

その息遣いからして緊張状態にあるのだろうが、まさか対象がその上から観察しているなど思うまい。

 

「ごきげんよう、お兄さん」

 

壁から手を放し、位置エネルギーを用いて上から押し潰し拘束。

相手の上に乗りながら挨拶など淑女のやることではないが、安心してほしい、私は淑女ではない。

 

「本日のご用件は?場合によってはアレしてコレしてチョメチョメしちゃうぞ?」

 

ナイフをちらつかせオハナシを開始する。

一応ある程度の予測は立てているが、もしかしたら他国の諜報員という可能性も無くは無いのだ。

 

「お転婆さんだなぁ随分と、とりあえずこの物騒な物を仕舞ってくれない?」

 

「チョメチョメしちゃうぞ?」

 

「待った待った!落ち着いて、質問には答える」

 

ナイフを近づけ害意を見せると男は慌てたように落ち着けと言葉を重ねる。

後の印象を考えると、相手の正体のわかっていないこの段階で過激なことを行うのはリスクがあるため出来ないが、威圧することには何の問題も無い。

 

「俺については、お嬢ちゃんなら想像がついてるんじゃないか?」

 

「まあ、多少は」

 

「なら放してくれねえかな、荒事は専門外なんだ」

 

そうは言うものの、この男は今のところ何一つを明言していない。

相手に思考を誘導し、自分の持つ情報を何も明かさずに勝手に相手に勘違いさせる。諜報員の嗜みだろうか。

 

「いや、明言していただかねば拘束は解けませんよ。それと証拠もお願いします」

 

「用心深いな、悪くないぜ」

 

ぼったくれないから好きでもないけどな、と嘯く男は背広の裏側にあるインカムを漁らせ、私はそれで情報部と連絡を取った。

帝国のダミー暗号やら照合で確認を取り、ようやく男の拘束を解く。

なにやら情報部から色よい返答を期待するなどと言われたが、厄介事の気配がした。

このまま何も聞かず帰ってよいだろうか。

 

「見つかっちまったが、今日の仕事はティアナ・リースフェルトの素行調査と、勧誘だ」

 

「勧誘?」

 

素行調査は予想していた、だが勧誘とはいったい。

ますます厄介事の匂いが増してきたぞ。

 

「演技、尾行への察知力と対応力、変装もちゃんとやればいけそうだな、何よりその年齢は武器になる。ちっとばかしそのお顔は綺麗すぎるがな」

 

情報部が言っていたことはこれか。

諜報員、所謂スパイ。

情報工作をする上での手足となる人員。

とはいえスパイの仕事なぞ前世で映画を見た程度、情報不足が否めない。

仕事内容を確認せずに転属はあまり望ましいことではなく、事前情報は多いに越したことはない。

 

「勧誘を受けた場合の私の仕事内容とは?」

 

「基本的には以前と変わりなく軍務についてもらうが、潜入、隠蔽、暗殺が特務として入る。言っちゃなんだが、なかなかハードな役割を求められているな」

 

「どうやら情報部は私を相当評価されているようで」

 

ブラック業務というか、闇だな。厨二病患者大喜びの暗部ではないか、大喜べない。

 

「評価していただきありがたい限りですが、今回の件はお断り...」

 

「ちなみにだ、今日の調査なんだがな、ティアナ・リースフェルト少尉に多重人格の疑いが出てる。今回はその調査も含まれている」

 

言葉を被せるように言い放つ男の言葉は、それはもう悪辣なものだった。

軍大学再選考審議会という場にて、私は二次選考に拾われ大学へ入学することとなったのだが、一次選考に落ちた原因の大きなものとして、精神異常持ちと判断されたことによる。

多重人格という精神異常をきたしている者が上官になることなど無い、その疑いを否定したのは情報部であった。

私の仮面を見抜き、情報部の押しがあったためこうして帝都でぬくぬくとしていられることになる。

 

そしてその情報をこちらに話すということは、つまりこの男はこう言っているのだ。

 

情報部に入るか、精神異常有りと報告され前線に戻るか。好きな方を選べと。

 

私の素直な心の声を言おう。

くたばれ。

 

長い、長い溜息を吐き、私は情報部に入ることとなった。

 

 

 

 

 

「聞けティアナ!参謀入りだ!私は参謀に、後方に入るぞー!」

 

「どうしたよターニャ」

 

「ああ、大学図書室で参謀のトップにいきなりだがプレゼンすることになったんだがな、あの反応は大成功と言っていいはずだ、私の参謀入りは間違いないはずだ!」

 

部屋に帰ってくると完全に浮かれハイテンションのターニャがいた、こういった姿を見るのはいつ振りだろうか。

可愛い子供がはしゃいでいる姿は私の精神に癒しを与えるが、そうやってはしゃいだ姿を見るのは前世で大手企業という名のブラックに入るまえのこと。

 

多分ダメなんだろうなー、と愉悦しメンタル回復の一手を担った。

 

「まあ古い友人のよしみだ、私が上に立ったらお前を秘書として扱き使ってやらんこともない」

 

「ふっ、そりゃどーも」

 

ターニャのプレゼン内容を聞き、自分はきっとその大隊に入るのだろうことを予想し、苦難多き未来に思いを馳せ、私の休日は終えた。




うん、会議で9話するつもりだったけど折れちゃった。
諦めてこんな感じで書いてたけどなんか違うって書き直して迷走しちゃった。
あとストV始めちゃった(戦犯

例のごとくおまけは気力回復してから書きます。

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