紅蓮の闘志、黄金の牡丹   作:ザキール本多

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第四話 狩る者、狩られる者 後編

 さて、投降という選択肢はないのですけれど。どうしましょうかねぇ……交渉の糸口はありそうですけども……

 

「ほう、まだやるか。そこまでナンバーズに囚われていたとはな……しかたあるまい、冥土の土産に一つ教えてやる。この〈The Despair URANUS〉はフィールド上に存在する限り、俺のフィールド上の表側表示の魔法・罠カードを破壊できなくなる効果を持っている。つまり、俺の〈The Despair URANUS〉は無敵だ!」

 

 無言を都合のいいように解釈されてしまったようです。全く、こういう手合いは厄介で頭に血が上りますよ。

 

「ナンバーズに囚われた少女よ、お前の魂は俺が解き放ってやる……ターンエンドだ」

 

 完全に聞く耳もたずってところですね。頭抱えていいですかね?

 

織姫 ぼたん

  LP4000

  〈一族の結束〉

  〈「A」細胞増殖装置〉

  手札

   カゲトカゲ

   エーリアン・ドッグ

   エーリアン・ソルジャー

 

 茂部 一郎

  LP2500 手札3

  〈The Despair URANUS〉攻撃力4300

  〈岩投げエリア〉

  〈安全地帯〉

  〈一族の結束〉

 

「私のターン、ドロー」

 

 ドローカードは〈二重召喚〉。当たりですね、計画を一気に前倒しできます。

 

「スタンバイフェイズには〈「A」細胞増殖装置〉の効果で〈The Despair URANUS〉にAカウンターが乗るはずですが……」

 

 ケースが開き、実に体に悪そうな紫色の霧がプシューと漏れ出すが……

 

「残念だが、〈安全地帯〉の効果により〈The Despair URANUS〉は効果対象にならない」

 

 紫の霧は燦然と光を放つ黄金の仮面を避けるようにあたりに漂っていく。効果は不発だ。

 

「メインフェイズに移行。私は手札の〈エーリアン・ソルジャー〉を召喚。さらに手札の〈カゲトカゲ〉の効果によってレベル4モンスターが召喚されたとき、自身を特殊召喚します。そして〈エーリアン・ソルジャー〉と〈カゲトカゲ〉でオーバーレイ!」

 

「来るか、ナンバーズ!」

 

 あ、盛り上げてもらって悪いんですけど来ません。ごめんなさいね。

 

「群れなす蜥蜴の王よ、鱗まといし冷血の王よ。我が呼び声に答えよ。エクシーズ召喚〈キングレムリン〉」

 

 〈キングレムリン〉攻撃力3100

 

「ナンバーズではない……だと?」

 

「すまない、この効果はサービスだから受け取って欲しい。うん、また……なんだ。でも君はこのエクシーズ召喚を見たとき、言い表せない“ときめき”みたいなものを感じてくれたと思う」

 

「ええい、黙れ!」

 

「では効果処理を、〈キングレムリン〉の効果により、エクシーズ素材を一つ取り除き、デッキから〈エーリアンモナイト〉を手札に加えます」

 

 爬虫類限定万能サーチャーキングレムリンさん、サーチャーの割にステータス高いのも魅力の一つ。いきなり地面を掘りだしたかと思えば、まるで「とったどー」とでも言わんばかりに掘り出したアンモナイトを手渡してくる。一応笑顔で受け取っておこう。

 

「そして〈二重召喚〉を発動、今手札に加えた〈エーリアンモナイト〉を召喚します。〈エーリアンモナイト〉は召喚時に墓地のレベル4以下の「エーリアン」モンスター一体を特殊召喚できます。対象は〈エーリアン・ウォリアー〉」

 

 床に突如として穴が開き、蜥蜴男の亡骸が運ばれてきたかと思うとアンモナイトが触手をフルに活用し手術じみたなにかをして、ウォリアーを無理やり生き返らした。ごめんね、エーリアン使い荒くて。でもすぐ墓地に行くのよ、貴方。

 

「私はレベル4〈エーリアン・ウォリアー〉にレベル1〈エーリアンモナイト〉をチューニング!」

 

 ☆4+☆1=☆5

 

「星海に漂う侵略者の砦よ、銀の腕もて鎖を引き払え!シンクロ召喚!〈宇宙砦ゴルガー〉!」

 

 〈宇宙砦ゴルガー〉攻撃力3400

 

「シンクロ……召喚だと!?なんだその召喚方法は!」

 

 ハートランド周辺では流行ってませんからねぇ、シンクロ。こかげちゃんとか普通に使ってますから、認知はされてるはずなんですけどね……認知度低いんでしょうか?

 

「〈宇宙砦ゴルガー〉の効果でフィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを全て手札に戻します。この効果により手札に戻したカードの数だけAカウンターをフィールド上のモンスターに付与します。〈キングレムリン〉に5つのAカウンターを付与、〈安全地帯〉のデメリット効果により〈The Despair URANUS〉は除外されます」

 

 まさに形勢逆転。相手フィールドの魔法・罠は全て消滅し、さらにモンスターまで排除。ここまで文字通りの逆転というのも珍しいでしょうね。

 

「馬鹿な!この俺の完璧な布陣が!」

 

「ええ、貴方の戦略は完璧でした。だが、しかし。まるで全然、この私にとどかないんですよねぇ!〈宇宙砦ゴルガー〉と〈キングレムリン〉で直接攻撃。受け取りなさい、この熱い一撃を!」

 

「ぐああああっ!」

 

 デュエルが終了すると、少年が吹き飛ばされたのと真逆……つまり私の手元に3枚のカードが飛んでくる。夕方の出来事といい、ナンバーズとよばれるカード群は勝者の元へ移動するような意思、いえ生存本能のようなものがあるんでしょうか?しっかしどうしたもんですかねぇ?オートアンティルール(相手によっては魂まで掛け金になるらしい)の結果がここまで使いにくいカードとは……ついていませんね。うーん、アムドゥシアス2体で無理やり出せますが……出した後は単体の性能でがんばってもらうほか無いんですよねぇ。

 

「ぐっ、まさか貴様もナンバーズを狩る者か!?」

 

「さぁて、ね。敗者に話すことは何もありませんよ。ちゃあんとオネンネしてくださいね?」

 

 意味深な台詞を匂わせておいて、注意が逸れたところを蹴り飛ばして黙らせる。シンプル故に便利な手段です。特にポリ公に引き渡す相手に薬物なんて使えませんからねぇ……ああ、そういえば何匹か検体の確保もお願いとか言ってたような気もするし、2、3匹パクっておきますか。この倉庫に防犯カメラはありませんし、正確に何人いたかを把握するのって難しいのでまずバレないでしょう。バレたらバレたで揉み消しが大変でしょうが……彼に丸投げしましょう。私の知ったことではありません。

 

 

 

「全く、君は粗暴だな」

 

 彼は、このハートランドに居を構える自称医者。スライダー瓶田。前衛的な医療形態であるデュエル医療の完成を目指すこの男は、医学界から白い目で見られ、ついには追放されたらしい。こんな状況でもちゃんと医師免状が有効な辺り、医者は医者なんですよねぇ。

 

「む、ちゃんと見繕ってきましたし。いいじゃないですか」

 

「ふむ……確かに素晴らしいデュエルマッスルの持ち主だ。彼らからは素晴らしいデュエルエナジーが期待できそうだ。だが、それとこれとは話が別だ。あまりに外傷がひどければ生命活動に支障をきたすのは明白。君はもう少し丁重な扱いというものを覚えたまえ」

 

 この自称医者はデュエリストがデュエルする際に発するというデュエルエナジーを用いて医療を行うというトンデモな医者である。ちなみに診察とかいてデュエルと読むレベルのデュエル脳でもある。彼曰く、デュエル中のデュエルエナジーの発散は代謝のようなものであり、デュエルにぶつける感情とデュエリストの肉体的な代謝がうんたらかんたらと言っていた。ぶっちゃけ話が長いので覚えてない。ようはムキムキマッチョなら素人同然だろうとデュエルエナジーが一杯でる、ガリガリのチビだろうと逆境で折れなければデュエルエナジーが一杯出る、マッチョが逆境で燃えてるとやばい量のデュエルエナジーが出るってことらしいです。ちなみに私は闘志とデュエルマッスルを高いレベルで兼ね備えている素晴らしい固体らしいですよ?鍛えてはいるけど私って目に見えてムキムキ系じゃないから筋肉があるって触らずにばれたのって実はこの自称医者だけだと思う。

 

「さて、報酬はいつもの口座でかまわないな?」

 

「ええ、お願いしますね」

 

 まぁ、これは副業の人身売買もどきである。別に奴隷としてデュエルエナジーを吸い尽くすとかそんなんじゃなくてある程度デュエルして満足したら一般社会に返してる(らしい)し、そもそも裏社会にいたようなのをカウンセリングして表社会(定職にはまず就けないらしいけど)に復帰させてるので一応社会貢献してると言えなくは無い事業です。まず認可は下りないでしょうけどね。

 私はこんなことをして金を稼がなくてはならないほど貧困であるかといえば、答えは否である。叔父から普通に生活する分には問題ない程度のお金はもらっているのだが、残念ながらデュエリスト生活には不足しているのでこうやって地道に小遣い稼ぎをしている次第である。普通に叔父さんにいったら増額してもらえそうですが、叔父さんには神代家の親族が色々ちょっかい掛けようとしてくるのを片っ端から潰すために一杯お金を使ってもらってるはずですので、これ以上負担をかけてはいけませんしね。




ぼたん「今回紹介するのは茂部少年の【岩石族】デッキです。今回はあっさり倒してしまったので出せませんでしたが、メガロックドラゴンなどのエース次々にを繰り出していく戦術でこれまでナンバーズを回収してきたそうですよ。ただ、今回はただただ相性が悪かったというだけの話で実はかなりの強者という設定、だそうですよ。それでは、次回も紅牡丹をよろしくおねがいします」



ぼたん「あー、ストックが切れたので投稿頻度は低下するそうです。あんまり期待せずに待ってあげてくださいね。それでは、また」

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