紅蓮の闘志、黄金の牡丹   作:ザキール本多

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 基本アニメ効果とは書きましたが、原作効果とは書いてないので……
 まぁ作者のデュエルスフィンクス的に今後もOCG効果のほうが都合がいいときはOCG効果でいくと思いますのでなにとぞ御容赦を


第三話 狩る者、狩られるもの 前編

「ん、んん?」

 

 目を覚ますと、私はかなりおおきな部屋にいた。リビング、なんだろうけど凄く上品な家具や絵画の数々はまるで中世のお屋敷をそのまま持ってきたみたいな雰囲気がある。

 

「目が覚めたみたいですね」

 

 きょろきょろと辺りを見回している私の目の前に現れたのは綺麗な黒髪の少女、澱姫ぼたん。彼女は中等部の有名人“シャーク”の恋人と目されていて、私は彼女にコイバナを聞きにいって……それからどうしたんだっけ?

 

「親御さんには連絡を入れておきましたが……体のほうに異常が無いようでしたら帰っていただいてもかまいませんし、送って欲しいのであれば人を呼びますが」

 

 何か……記憶があいまいだけど、彼女にとんでもなく失礼なことをしたような気がする。

 

「ああ、そういえばこのカードは返しておきますね」

 

 彼女がそういって手渡してきたのは〈No.49 秘鳥フォーチュンチュン〉というカード。クローバーを咥えた可愛らしい小鳥のカード、このカードが私のものだった?

 

「返すって何のことなの?私はこんなカード知らないなの」

 

 そもそも私のデッキは【デーモン】であんな可愛らしいカードは似合わないし、それにこのカード自身も私の手の中から逃げ出そうとしているように見える。

 

「この子は私より貴女が持ってたほうが幸せなはずなの!受け取れないなの!」

 

 澱姫さんにカードを押し付けてその場から逃亡。Dパッドに地図を写して、なんとか見知ったところまで走ってきたけど、もう日は完全に落ちてて午後8時って言ったところだと思う。

 

「澱姫さん、素敵な人なの」

 

 なんていうかお母さんみたいな人だと思う。とっても優しくて、綺麗で、勉強も凄いし、デュエルもかなり強いらしい。らしい、というのは彼女は学校のデュエルスペースではデュエルしないのでほとんどの人がその実力をしらないからだ。勿論、私も知らない。

 

「勿体無いこと、しちゃったなの」

 

 ちょっとよくわからない人だったけど、凄く優しそうだったし、頼んだら一回くらいデュエルしてもらえたかもしれないのに。

 

 

 

 不思議ちゃんな化野さんに挑まれた日の、午後11時。私は港湾区にいました。

 

「ぼたんさん、その倉庫で奴らの取引があるはずだよ。負けるなんてないと思うけど、十二分に気をつけてね!」

 

「大丈夫ですよ、こかげ。あまりうじうじ考えていると足元掻っ攫われますからね、精々暴れまわってきますよ」

 

 理由は単純。ひなたさんがまた善意で首を突っ込んだ出来事が、アブない系だったからであり、彼女のおかげで成立してしまった取引をデュエル(リアルファイト含む)でどうにかするためである。

 

「おい、貴様!」

 

 全力全壊、次々に挑まれるデュエルを後攻ワンキルでなぎ倒していくだけの簡単なお仕事。以前は乱闘ルールとやらを利用して延々挑んで着ていましたが、さすがに場が整った状態で襲い掛かるのは単なる下策と気づいたようで最近ではそんな事も滅多になくなりました。

 

「やめろ!それに触るな!」

 

 あらかた片付けた後で、取引されていたものと思しきトランクに向かって歩みを進める。途中、足に縋り付いてくる汚らしい汚物がいたが鍛え上げられたデュエルマッスルの前には障害にもならず、ちょっと遠心力を利用して下腹部に抉りこむように踵を入れたら悶絶して吹っ飛んでいった。壁が微妙にひしゃげたような気がしたが、この倉庫に何かがあってもまっさきに疑われるのはこの屑どもですし、疑われればまずブタ箱行きでしょう。まぁ、こかげのおかげでどの道彼らはブタ箱行きですがね。

 トランクに鍵は掛かっておらず、簡単なロックを外すとそれ以上の抵抗なく開きました。

 

「白紙のカード?」

 

 トランクの中でさも大事そうに仕舞われていた3枚の白紙のカード。何かはわからないがよからぬ取引に使われていたことだけは間違いない。3枚ともデッキケースのエクストラエリアに収納しておく。何故かはわからないけれど、そうするのが正しいと思われたからだ。

 

「……ここでナンバーズの取引が行われることは分かっている!誰だ!誰が所持している!」

 

 突如として現れた一人の少年。彼の言葉に先ほど蹴飛ばしておいた汚らしいおっさんが声を上げる。どうやらもっと痛い目にあいたいらしいですね。

 

「そいつだ!その女が持っている!」

 

 ナンバーズ、とは先ほどの白紙のカードだろうか?そうであるか否かに関わらず〈No. 49 秘鳥 フォーチュンチュン〉は持っているからナンバーズと名のつくカードはどのみち持っていることになるけど。

 

「女、ナンバーズを渡せ」

 

 闇取引の材料になるようなカードがただのカードであるはずが無い。ただ渡す、という選択肢は毛頭ない。

 

「では、貴方はその対価として何を支払いますか?」

 

「ナンバーズは所有者の精神を汚染し、平和を脅かすカードだ。だから我々が回収している。我々が厳重に管理すると約束しよう、だからこちらに渡せ!」

 

 質問と的外れな答えが返ってきますね。デュエリストはこういう生き物だと分かっていても頭に血が上ります。

 

「私は貴方がこのカードの対価に何を払うかという交渉の話をしているのであって、貴方の理念なんぞどうでもいいんですよ」

 

「すでにナンバーズに囚われてしまっているのか、こうなっては奪い取るしかない。デュエルだ!」

 

 あるぇ?今、私が正気を失ってるって判断されるところありましたか?そんなことを考えている間にも少年はデュエルの準備を進めている。受けて立つしかないようです。

 

「「決闘!」」

 

 澱姫 ぼたん

  LP4000

 手札

  エーリアン・ウォリアー

  一族の結束

  カゲトカゲ

  エーリアン・リベンジャー

  「A」細胞増殖装置

 

 茂部 一郎

  LP4000 手札5

 

「私のターン、ドロー」

 

 ドローカードは〈エーリアン・ドッグ〉、悪くない引きですね。

 

「スタンバイはなし、メインフェイズにモンスターをセット」

 

 増殖装置は……やめておきましょうか。次のターンに「エーリアン」モンスターが引ける確証はないですし、ウォリアーを勘ぐられる真似は避けるべきです。

 

「……ターンを終了します」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 さて、どう出てきますかね……

 

「俺は、〈ゴゴゴゴーレム〉を召喚!バトルだ!裏守備モンスターに攻撃!」

 

 〈ゴゴゴゴーレム〉攻撃力1800

 

 増殖装置を出さなかったためか、無策で突っ込んできましたね。あとは効果でリリースされたりしないことを祈るばかりです。

 

「私のモンスターは〈エーリアン・ウォリアー〉戦闘破壊されますが、破壊されるときにあなたの〈ゴゴゴゴーレム〉にAカウンターを2つ載せます」

 

 〈エーリアン・ウォリアー〉守備力1000

 

「エーリアンだと!?」

 

 妙にオーバーリアクションですねぇ。エーリアンなんて……珍しいとは思いますがそこまでレアでもないでしょうに。

 

「俺は〈岩投げエリア〉を発動!さらにカードを一枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

 織姫 ぼたん

  LP4000

   手札

    カゲトカゲ

    エーリアン・リベンジャー

    「A」細胞増殖装置

    エーリアン・ドッグ

    一族の結束

   

 

 茂部 一郎

  LP4000 手札3

   〈ゴゴゴゴーレム〉 攻撃力1800

   〈岩投げエリア〉

   セットカード1

 

「私のターン、ドロー」

 

 ドローカードは〈エーリアン・ソルジャー〉、あのセットカードがミラーフォースじゃなければいいのですが……通称お漏らしこと激流葬の危険もありますし、ここはカードを温存しましょうかね……

 

「スタンバイは処理なし。メインフェイズ、私は手札の〈エーリアン・リベンジャー〉の効果を発動、フィールド上から2つのAカウンターを取り除くことでこのカードを特殊召喚します」

 

 〈エーリアン・リベンジャー〉攻撃力2200

 

 無反応。召喚反応系ではないということでしょうか?

 

「私は〈エーリアン・リベンジャー〉の効果により、あなたのフィールド上のすべてのモンスター……この場合は〈ゴゴゴゴーレム〉にAカウンターを付与します。行きなさい、ドミネーション・スコール!」

 

 リベンジャーの甲殻がぶわっと開き、そこからフィールド全体に胞子がまき散らされてゴゴゴゴーレムの体が腐食していきます。さすがソリッドビジョン、無駄に凝っていますねぇ。

 

「さらに、私は〈一族の結束〉を発動。私の墓地には〈エーリアン・ウォリアー〉のみ、よって爬虫類族モンスターの攻撃力を800ポイント上昇させます」

 

 〈エーリアン・リベンジャー〉攻撃力3000

 

「攻撃力3000か……」

 

 相手の場には開かずの罠が一枚。ここまで動かなかったということはホントにミラフォの危険がありますね……ここはひとまずリベンジャーだけで様子を見ましょうか。表情からは焦ってそうですが……相手が演☆技☆王でないという確証もありませんしね。

 

「〈エーリアン・リベンジャー〉で攻撃するとき、Aカウンターの数に比例してゴゴゴゴーレムの攻撃力が低下します。インヴェイド・ネイル!」

 

「いいだろう、俺は〈岩投げエリア〉の効果を発動。デッキから〈リバイバルゴーレム〉を墓地へ送ることで、〈ゴゴゴゴーレム〉を戦闘破壊から保護する。さらに〈リバイバルゴーレム〉の効果を発動、守備表示で特殊召喚する!」

 

 ここまできて使わないとは……ブラフでしたね。してやられました。

 

「メインフェイズ2、〈「A」細胞増殖装置〉を発動してターン終了です」

 

 織姫 ぼたん

  LP4000

  〈エーリアン・リベンジャー〉攻撃力3000

  〈一族の結束〉

  〈「A」細胞増殖装置〉

  手札

   カゲトカゲ

   エーリアン・ドッグ

   エーリアン・ソルジャー

 

 茂部 一郎

  LP2500 手札3

  〈ゴゴゴゴーレム〉攻撃力1800

  〈リバイバルゴーレム〉守備力2100

  〈岩投げエリア〉

  セットカード1

 

「俺のターン、ドロー!どうした?おびえているのか?安心しろ、お前のナンバーズは俺が正しく処理してやる」

 

 盤面的には互角、手札も同数、ライフはこちらに軍配が上がっている。つまり相手は状況を覆せる何かを握っているということなんでしょうね。

 

「俺は〈ゴゴゴゴーレム〉と〈リバイバルゴーレム〉をリリース!汝は絶望の権化、我が敵を絶望の舞台で躍らせろ!〈The Despair URANUS〉!」

 

 〈The Despair URANUS〉攻撃力2900

 

 二体のゴーレムが崩れ落ち、その瓦礫の中から黄金の仮面が姿を現す。

 

「〈The Despair URANUS〉は世界に一枚だけのモンスターカード、プラネットシリーズの一角!その力、とくと見るがいい!〈The Despair URANUS〉の召喚時、相手は永続魔法か永続罠、いずれかを選択する。そして俺は選択されたほうのカードを1枚、デッキからセットできる」

 

 永続魔法と永続罠、永続魔法はおそらく一族の結束あたりが飛んでくるだろう。では永続罠は?一体何がくる?エースを守護する進撃の帝王などでしょうか?だとすると、永続魔法のほうがローリスクでしょうかね。

 

「私は、永続魔法を選択します」

 

 相手は召喚権を使っている。これ以上モンスターが出てくるとは考えにくい、ならば一族の結束でリベンジャーが突破されようと問題は無い……はずです。

 

「俺はデッキから永続魔法〈一族の結束〉をセット、発動する!」

 

 〈The Despair URANUS〉攻撃力3700

 

 黄金の仮面がカパッと口を開くと、一枚のカードがフィールドに舞い降りる。そして地面についたと思った矢先、魔法陣が広がり、二体のゴーレムの幻影が黄金の仮面に吸収される。

 

 やはり、ですか。これで向こうのモンスターの攻撃力は3700、戦闘破壊しようとは思えなくなるラインですかね。

 

「そして俺は、永続罠〈安全地帯〉を発動!これで俺の〈The Despair URANUS〉は効果対象にならず、〈岩投げエリア〉の効果で戦闘破壊されない。神と同等の耐性を手にいれた!」

 

「何ですって!?」

 

 くっ、事前に伏せてあったのですか。あと、戦闘破壊耐性は〈安全地帯〉にもあるはずなんですが……いえ、突っ込むだけ野暮というものでしょう。

 

「さらに〈The Despair URANUS〉は魔法&罠ゾーンの表側表示のカード一枚につき、300ポイント攻守が上昇する!この効果により、〈The Despair URANUS〉の攻撃力は4300だ!今、このカードはまさに天空神ウラヌスそのものとなったのだ!」

 

 これは本格的にまずいですかね?確かに神と豪語するだけはあって、神と同等といっても差し支えないほどの耐性を与えてありますし、純粋に上から殴り殺すという手も潰しに掛かっていますね。

 

「バトルだ!〈エーリアン・リベンジャー〉に攻撃!さぁ力の差に絶望せよ!ヴェール・オブ・ディスピアー!」

 

 仮面の口から今度は黒い靄が吐き出される。その靄の中でリベンジャーは苦しみもがいて、体がボロボロと崩れ落ちていく。なんでこうエグイほうに力入ってんですかね、このソリッドビジョンは……

 

「さぁ、大人しくナンバーズを渡せ。そうすれば魂を取る必要も無い」

 

 まさに絶体絶命ってやつですかね。いつのまにやら魂が掛け金になってたみたいですけど……残念ながらどこぞのアホ一名のおかげで命がけなんて珍しいことでもありません。というか今日も一応命がけの仕事ではありましたし、ただの延長戦です。

 行きますよ茂部とやら、手札反応の貯蔵は十分ですか?




ぼたん「すみませんね、今回使用しているデッキは次回のネタに繋がってくるので紹介できないんですよ。代わりに前回のデュエルで化野さんが使用した【デーモン】デッキを見てみましょうか。使用カードからは判明しませんでしたが、デッキとしては【チェスデーモン】に分類されるデッキでした。ちなみに〈出たら目〉を使用していましたが、フォーチュンチュンにラッキーストライプばりの悪さをしてもらうという手もありました。こちらのパターンを採用していれば、もっとチェスデーモンを出せたかもしれませんが……まぁ、作者の気が向いたら番外編とかで書くんじゃないですかね?書かない可能性も大いにありますけど」

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