血走った人々の目、彼らは口々に×××を非難し、投石する。
彼が、×××が罪人だなんて、そんなことはありえない。
そんな私の想いを、言葉を否定する様に磔にされた×××の背から真紅のマントが飛び去ってゆく。真紅のマントは英雄の証。そう言って彼の背に真紅の翼を与えたのはかつての私。×××は静かに、それでいて確かに、私を見て首を横に振った。まるでもういいんだとでも言うかのように、それでも私は×××の無実を信じた、叫び続けた。
「彼が罪を犯すような人ではないと、貴方がたがよく知っているのではないですか!」
人々の目は悪意をなみなみと注いだような暗い赤色に染まっていて、誰一人として私の言葉に耳を傾けるものはいない。だとしても、それでも、私は彼の親友として止まるわけには行かない。止めるわけにはいかない。必死に説得を繰り返した、何度も何度も同じ言葉を繰り返した。彼は、×××は無実だと誠意をこめて、何度も繰り返した。だが、熱狂した人々にその言葉は届かない。やがて日が落ち、彼は引き立てられ、処刑された。処刑人の腕が悪いのか、斧が何度も彼を×××に振り下ろされる。いっそ一回目で死ねたらどれだけ幸せだっただろう。だが彼は一度たりとも悲鳴を上げなかった。それは×××の×××としての誇りか、それとも……
「ッッ!」
夢、とてもいやな夢。たびたび見るけれど、なぜこんな夢を見るのかわからないしそもそも建物や処刑手段からして現代のものではない。
そう、あれは何も関係ないこと。私には何の接点も無いただの夢。
頭を振ってずるずると堂々巡りを始めそうな思考を断ち切る。そんなことを考えるより先にやることがいくらもある。
朝食はいつもどおり、買い置きのサンドイッチで済ませ、鏡の前に立つ。髪型にこだわりがあるわけでもないのでひっつめにする。どうせ愉快なクラスメイトたちにいじられるのだからいろいろこだわっても仕方ないとあきらめているのもある。地味な私の胸元で光るのは妙に凝ったロケット。家族がいるわけでもないし、だからといってあの家族の写真をこれの中に入れようとは思わない。そもそも家族の写真がこの家にあるかも怪しい。
脱線した思考を矯正し、かばんの中を確認する。忘れているものは無いようだ。寝る前にもやっているのだが2度やってしまうのはもはや癖になっているからだろう。ここまでやって始業80分前、少々早起きしてしまったらしい。
時間はある。気になる話を耳に挟んだし、彼を訪ねてもいいだろう。
コンとドアをノックし、家から徒歩五分のところに住む不良少年の家を訪ねる。返事が無いうえ起きてくる気配も無い。合鍵を使って容赦なく乗りこんで不良少年をたたき起こす。
「一体誰……ぼたんか」
「凌牙が先日も学校に来なかったと聞きましてね。私としても一度引っ叩いておかなくてはと思いまして」
不良少年こと神代凌牙は寝ぼけ眼のままでおそらく私の話を聞いていません。頭の上に疑問符が見えそうなくらいに現状を把握していません。
こうなったら一度決闘して目を覚まさせる必要があります。まったく面倒な人です。
「「決闘!」」
・
・・
・・・
「オーバーレイユニットを一つ使い、潜行母艦エアロ・シャークの効果を発動!俺の手札は4枚、よって1600ポイントのダメージを相手に与える!」
Win 神代 凌牙
私はパタパタと制服についた埃を払いながら立ち上がる。
「目は覚めましたか、凌牙」
「ああ、十分だぜ」
神代くんが家から出てくるのを見届け、手首の時計に目を落とし、走れば閉門には間に合うかな。などと考えていると
「乗れよ、俺のせいで時間を取らせたみたいだしな」
「凌牙。貴方、意外と気が利くんですね」
折角なので凌牙のバイク(のような何かであり、免許はいらないと本人は言い張っている)の後ろに乗って登校。彼が登校するところも見届けられるし、私は遅れない。一石二鳥というヤツですね。
思いつきではじめたのでどこまで続くかわかりません。それでも応援していただける方に私は最大限の感謝を送ります。
初回デュエルは熱くしたいので次話に回します。