アルマロスinゼロの使い魔   作:蜜柑ブタ

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最終回です。

また特急で終わらせました。書けるうちに書かないとスランプに陥りそうだったので。

注意。アルマロスが、普通に喋りだします。


最終話  神の国へ

『な…。』

 氷の堕天使は、光を腕で遮った。

 バサリッと羽ばたく音が聞こえた。

 光がやがておさまり、見ると、そこには一人の天使が立っていた。

 ただの天使じゃない。

 白い翼と、黒い翼。

 二色の翼を持つ天使がそこにいた。

 その天使はルイズを抱きかかえていた。

「……アルマロス?」

「…ルイズ。」

「!? あなた、声が…。」

「ああ、君のおかげだ。ありがとう。」

 初めて名前を呼ばれて、ルイズは涙を零した。

 アルマロスは、ルイズを降ろし、氷の堕天使を見据えた。

『ふ…、翼が戻ったようだが、片方は黒いじゃないかい。まだ不完全ということだね。』

「……。」

 アルマロスは、黙ったまま堕天使を見つめていた。

 氷の堕天使は、たらりと一筋の汗をかいた。

 明らかに違う。それは分かる。

 何かが根本から変わったかのようなアルマロスの様に、なぜか圧倒された。

 自分よりも格下の天使でしなかったはずのアルマロスになぜ自分が圧倒されるのだと、氷の堕天使は拳を握った。

『死ね…。』

 指を鳴らすと、アルマロスの周囲に、無数の氷のつららが現れ、アルマロスに殺到した。

 だが氷は一つもアルマロスには当たらなかった。

 いつの間にか持っていたベイルにより、すべて砕かれ、氷のちりとなった。

 ベイル。あの武器はそんなにスピードはなかったはずだ。

 そして何よりも以前まで持っていたベイルよりも白く輝いていた。

『ハハハ…、力が随分と戻っているようだが、我には及ばない!』

 そう叫んだ、氷の堕天使が、氷の剣を握って、アルマロスに襲い掛かった。

 アルマロスは、表情一つ変えずアーチに持ち替え、氷の剣を受け止めた。

 アーチは穢れることなく、むしろ輝きを増して、氷の剣を砕いた。

『なんだと!?』

「僕は負けない。負けるわけにはいかない。」

 アルマロスは、力強い口調で言った。

 距離を取った氷の堕天使は、汗をダラダラとかきながら、氷の剣を再び生成した。

 ニヤリっと口元歪めた堕天使は。

『貴様に我を倒すことはできん!』

 雲が裂け、大陸の先端が見えた。

 アルビオンだ。

「アルビオン?」

『我は、あの大陸を支える力そのもの! 我を打ち倒せば、大陸はこのトリスティンに落下する! そうなれば、ガリアもゲルマニアも無事ではすむまい! さあ、どうする!?』

『おいおい、そんな大事なこと言っていいのか?』

『なっ…。』

『なあ、相棒。俺思い出したぜ。あいつ、アルビオンの王家の先祖にアルビオンに封印された後、アルビオンの大陸を浮かせる原動力にされてたんだってな。それもこれも全部、あいつをこの世に出さないための配置だったんだぜ。』

「なるほど。それで?」

『アルビオンを落っことさないようするにゃ…。もう一回封印するしかねーだろ。相棒、俺を使いな!』

「ああ。デルフ。頼む。」

『へへ、名前を初めて呼ばれたぜ。』

 アルマロスは、デルフリンガーを握った。

『そんなボロ剣で何をする気だ?』

『まあ、待て。俺はな。思い出したんだぜ?』

 するとデルフリンガーが光り輝き、美しい刀身となった。

『俺は、てめーを封印する手助けをしたことがあったんだぜ! 忘れたか、堕天使さんよぉ!』

『!』

「行くぞ、デルフ。」

『おおよ!』

 アルマロスがデルフリンガーを構え、駆けだした。

『く、来るな! 来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 堕天使が氷の塊を乱発した。

『今のテメーは、単なる端末! 本体はまだアルビオンの中だ! 出て来るにゃ相当な量の王家の血を吸わなきゃなんねーだろーな!』

 だからアンリエッタを家畜にしようとしたのだ。

 あまりにも長くアルビオンの大地に縛られ続けて、アルビオンの王家が滅んで封印が解けても抜け出せなくなっていたのだ。

 逃げだそうとする堕天使だが、水の壁が発生して阻まれた。

『なら俺様でも吸い取れるぜ!』

 アルマロスが構えたデルフリンガーが真っ直ぐに、堕天使の胸に突き刺さった。

『吸い尽して、二度と出られなくしてやるぜ! 俺の中で永遠になぁ!!』

『や、やめ…。うぐ…、あ…あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』

 堕天使は、断末魔の声を上げながら、ドロドロに溶け、デルフリンガーに吸い取られていった。

 吸い尽した後、アルマロスは、デルフリンガーを見た。

「デルフ?」

『…おお。大丈夫だ。ちっとばっかし奥の方でギャーギャー騒いでっが、なんともねーよ。』

「そうか…。終わったんだな。」

『おお、終わりだ。これでちっとは平和になるだろ。』

「アルマロス…。」

「ルイズ。」

 アルマロスは、ルイズの方に振り向いた。

 ルイズは、アンリエッタの介抱をしていた。

「…姫様。」

「ウェールズ様は…、本当に死んでしまっていたのね…。」

「はい…。申し訳ありません。」

「私は…悪夢を見ていたのですね。堕天使に騙されて…。」

「僕が堕天使だということを黙っていたのは本当のことです。」

 アルマロスが言った。

「あなた…翼が…。でもその翼は…。」

「翼を失った僕の、新しい翼です。ルイズがくれた…、新しい翼です。」

 アルマロスは、新しい翼を愛おしそうに撫でた。

「アルマロスさん…、あなたは確かに堕天使でした…。でも…、あの冷たい堕天使とは違う…。それがよく分かります。」

「僕は堕天使だ。その事実は変わりません。」

「いいえ…。そんな綺麗な目をした堕天使を、私は知りません…。」

 アンリエッタは、首を振ってそう言った。

 

 やがて、アンリエッタの救出に来た、魔法衛士隊が駆けつけ、アンリエッタは無事に保護された。

 彼らは、アルマロスの姿を見ると驚愕した顔をした。

 そりゃ、二色の翼を持つ天使がいたら、驚くだろう。

 アルマロスは、彼らの反応を見て笑った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「えーーー! ダーリン、出ていくの!?」

 キュルケが叫んだ。

 あれから数週間たち、すべてが落ち着いたころ、アルマロスが急に言い出したのだ。

「僕は、神の国へ行くよ。」

 っと。

「せっかく、ダーリンとお喋りできるようなったのに…残念だわ。」

「ごめんね。でも、僕を呼ぶ声が聞こえるんだ。あの時…、デルフと出会うきっかけになった時のように。」

「アルマロス…。」

「ルイズ。」

 そこへルイズがやってきた。

 なぜか旅支度をした格好で。大きな荷物を持って。

「私も行くわよ。」

「なんで!?」

 キュルケが叫んだ。

 ルイズは、微笑み。

「あのね、あれから私、全然魔法が使えなくなっちゃったの。」

「いつもの失敗魔法でしょ?」

「違うの。爆発もおこらなくなっちゃった。」

 あっけらかんと、ルイズは、言った。

「アルマロスのルーンも、消えちゃったしね…。」

 アルマロスの体にあった、ルーン。ガンダールヴとリーヴスラシルのルーンは、なくなっていた。

 あの時、アルマロスが翼を手に入れた時に砕け散ってしまったのだ。

 …ルイズの虚無の力と共に。

「だから、事実上の退学。家も勘当ね。メイジとしての生命はあの時終わっちゃった。」

「あんたそう言う割には嬉しそうね。」

「そう? なんだか色々重荷がなくなって軽くなったからかしら?」

 ルイズは、うきうきした様子だ。

「ルイズ、本当にいいのかい?」

「何言ってんのよ。もう主従関係じゃないけど、私、あなたについていくって決めたの。私のメイジとしての人生を捧げたんだから、責任取ってよね?」

「うう…、そうだね。」

「なーんて、嘘よ。ただついていきたいだけ。ずっと一緒にいたいの。それじゃ、ダメ?」

「…そんなことないよ。」

 アルマロスは、微笑んだ。

「じゃあ、行きましょう。もう退学届けも出したし、家にも手紙が届いている頃だろうし。追手が来る前に行きましょう。」

「追手って…。」

「私の親厳しいのよ。天使とはいえ、誰かと一緒に駆け落ちしたなんて聞いたら、閉じ込められちゃうわ。」

「そ、そうなの?」

「早く行きましょう!」

「ちょっと、ルイズ!」

「なによ?」

「…神の国に着いたら、手紙寄越しなさいよ。あとお土産の一つや二つくれると嬉しいわね。」

「観光じゃないのよ。」

「なにが欲しいんだい?」

「アルマロス!」

「ふふ、ははは。」

 アルマロスは、笑った。

『相棒、早く行こうぜ。』

 アルマロスの腰にあるデルフリンガーが言った。

 神の国へ行くのは、封印した堕天使のことをどうにかするためでもある。このまま地上に封印していてもいずれまた何かの拍子に出てくるかもしれないからだ。

「じゃあ、行こう。ルイズ。」

「ええ、アルマロス。」

 二人は手をつなぎ、旅立って行った。

 

 

 

 

 その後、こんな神話が生まれた。

 異界から来た堕天使は、ハルケギニアの神によって神の国に招かれ新たな天使となり、その堕天使を呼び出した人間が、神の国に召し上げられた。

 その人間は、新たな天使と共に、アルビオンの大陸に封印されていた堕天使を神の国の牢獄に永遠に封印したという。

 ハルケギニアの神の国に召し上げられたのは、人間の少女で、名を、ルイズといった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ああ、うまくいったよ。無事にこの世界の神に気に入ってもらえたようだ。…なんだって? 娘は余計だったって? 別にいいじゃないか。結果オーライだよ。じゃ、またかける。」

 黒い衣装をまとった、美しい男がひとり、携帯電話というもので電話をしていた。

「まさかこんなことになろうとはのう…。」

「結果良ければすべてよしさ。それはそうと、ちょっと見ない間に随分と年を取ったね?」

「そりゃそうじゃ、あれから三十年も経ったんじゃからのう! お主はちっっっっっとも変わっとらんな! 憎らしいほどに!」

「三十年か。私にとっては、つい昨日のことだ。」

「憎らしい! まったくもってもって憎らしい力じゃわい! 時間操作と時間移動とはのう! それに異世界にも渡れるとは、どこまでハイスペックなんじゃ!」

「ふふふ、羨ましいかい? そーかそーか。」

「ああ、憎たらしい笑い方じゃ! 美しいだけに余計にな!」

 オスマンは、ギャーギャーと騒ぎ、目の前にいる美しい男に文句を言っていた。

「まあ…、これで、多少は、イーノックも許してくれるかな? 散々グチグチ言われたからね、“あいつ”について…。」

 男は、面倒くさそうに頭をかいた。

 男は、やがて学院長室から姿を消した。

「あっ、こら! 消えるんじゃない! まったく、突然きて、突然帰っていきおって! ちっとも変わっとらん! ちーっとも変わっとらん!」

 オスマンは、男が消えた後も、ぶつぶつ言っていた。

 

 

 

 

 

 新たな神話の裏にあった、黒い天使の暗躍については、どこにも記されることはなかった。

 

 




ハルケギニアの堕天使。存在感の割に、あっさりと終わらせちゃいました。

アルマロスは、ガンダールヴとリーヴスラシルのルーンを犠牲にして、天使としての力を新たに手に入れました。
そしてルイズ自身も代償にメイジとしての力を失いました。

神の国へ行った二人がその後どうなったかは、ご想像にお任せします。


あと最後に無理やり、黒い天使さんを出しました。

アルマロスは最後までフォォォンって喋るほうがよかったですかね?
最初のネタ設定では、新しく新生したら喋れるようなったということにしていたので、喋られるようにしましたが…。


なんとか無事に終わらせること出来ました。ありがとうございます。

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