アルマロスinゼロの使い魔   作:蜜柑ブタ

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シエスタとの交流。


第十四話  堕天使とメイド

 その日の夕方。

 アルマロスは、踊っていた。

 するとそこへ。

「あ…、あの…。」

「フォ?」

「先日はすみませんでした!」

 メイドに急に頭を下げられた。

 アルマロスは、首を傾げた。謝られるようなことはしてないはずだがっと思っていたら、どこかで見覚えがある顔だった。

 ああ、そういえば前に一人で踊っていた時、洗濯籠を落して逃げ去っていったメイドだ。

 アルマロスは、頭を下げたままのメイドの手を取り、そこに字を書いた。

 『怒ってはいないよ。』っと書いた。

「ほ、本当ですか?」

「フォォン。」

「あの…、そのお声って地声なんですか?」

 アルマロスは、少し考えて頷いた。

 彼女の名前は、シエスタというらしい。

 この学院でご奉仕の仕事をしている平民だそうだ。

「あの…、ミス・ヴァリエールの使い魔だって噂…本当なんですか?」

 アルマロスは頷いた。

「大変ですね。貴族の方の使い魔だなんて…。」

「フォオン。」

 そんなことはないとアルマロスは首を振った。

「あの、すごい踊りがお上手ですね。どこかで踊り子でもしていたんですか?」

 そう言われるとちょっと迷う。自分を崇拝する人間達の前でダンスを披露していたことを思えば、踊り子といえば踊り子だった。

「あ、聞かれたらイヤなことでしたか? すみません。」

「フォオン。」

 そんなことはないとアルマロスは身振り手振りで伝えた。

「でも素敵ですね。あんなに素敵なダンス…、私初めて見ました。貴族の方たちの講師を頼まれるのも当然ですよね。すごいですよ。」

「フォオン。」

 そんなことはないと、アルマロスは首を振った。

 アルマロスは、手に指で字を書き。

 『よかったら、一緒に踊る?』っと聞いた。

「えっ! わ、私は、ダンスなんて踊ったことないし…。」

 教えるよっと書いて伝えた。

 シエスタは、オロオロとしていたが、アルマロスを上目づかいで見上げて、小さく、お願いします…っと言った。

 

 

「アルマロスー。どこー? あら?」

「フォォン。」

「あっ!」

 ルイズがメイドと踊るアルマロスを発見した。

 メイドの少女は慌ててアルマロスから離れて、ルイズに深々と頭を下げた。

 キョトンっとしているルイズに、アルマロスは、手に字を書いて、この子に踊りを教えていたと伝えた。

「あらそうなの? よかったじゃない。」

「いえ…、あの…その…。」

「そんな怯えなくてもいいわよ。誰かにダンスを教えちゃダメって禁止なんてしてないんだから。」

「そ、そうなんですか?」

「中々上手だったわよ。」

「滅相もありません。」

 シエスタは、恐縮したままだった。

「フォオン。」

 アルマロスは、シエスタの手を取り、字を書いた。

 『また暇があったら教えてあげる』っと書いた。

「あ、ありがとうございます。」

 シエスタは、頬を染めてお礼を言った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 あの日の夕方から、シエスタとは、親しくなった。

 彼女の仕事の合間にデザートや果物の切れ端を持ってきて談笑(筆談)したり、踊りを教えたりした。

「アルマロスさんって、どこから来られたんですか?」

「フォォ…。」

 それを言われると困る。

 なんと説明したらいいか分からないからだ。

「もしかして、ロバ・アル・カリイエから来られたんですか?」

 なんだそれっと思ったが、聞いたら東方の未開の地らしい。

 とりあえずそこから来たということにした。自分の正体を隠しているのもあるので。堕天使だなんて言ったらまた怯えられちゃうかもしれない。

「そうなんですか? でもアルマロスさんって、その…、なんというか…。」

 おっとばれたかっと思ったら違った。

「ゲルマニア系とも違いますし、やっぱり東方から来られたんですね。」

「フォォン。」

 君は、どこから来たのっと聞いてみた(筆談)。

「私ですか。私は、タルブという村からこの学院にご奉仕に来ています。辺鄙な村ですが、草原が綺麗で…。」

 故郷を思い出し、目を閉じて語る彼女の言葉。アルマロスはほのぼのした気持ちで聞いていた。

「あの…アルマロスさん…。」

「フォ?」

「よかったら、私の村に来ませんか?」

「フォォン?」

「…あ、あの…変な意味じゃないんです。ただ踊り教えてもらったお礼なんて私にできることなんて限られてて…、でも今の季節、草原のお花が綺麗で…、その……。故郷の弟達にも教えてあげたいなって思って…。」

 なるほどっと、アルマロスは思った。

 しかしそうなるとルイズからの許可が必要だ。

 果たして許可が下りるだろうか?

 キュルケをライバル視して、必死にアルマロスを取られまいと強い気に出ている彼女だ。さすがにシエスタにそんな態度は…、とるまい。

 ルイズに聞いてみると、アルマロスは返答した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その夜。

 早速ルイズに、シエスタの故郷に行ってみてもいいかと聞いてみた。

「ダメよ。」

 速攻で却下された。

 なんでっと聞こうとすると、ルイズは、アルマロスの目の前に、古い本をずいっと見せてきた。

「使い魔わね。主と一心同体なの。それなのに離れるなんて許さないんだから。」

「フォオン…。」

「それと、私、大役を任じられたの。」

「フォ?」

「姫様の結婚式の際の巫女に選ばれたの。この本は始祖の祈祷書っていう本よ。」

 それは大役だ。

「巫女はね。式の前からこの始祖の祈祷書を肌身離さず持ち歩いて、式では始祖の祈祷書を手に、式の詔を読み上げるの。詔は、自分で考えなきゃならないの。」

 そりゃ大変だ。

「というわけで、私は手が離せないの。だから行くのは禁止。」

「フォオン…。」

 アルマロスは、がっくりと肩を落とした。

 シエスタには悪いが断るしかないようだ。

「……そんなにあのメイドが気にかかるの?」

「フォ?」

「別にいいけど…。あんまり色目振りまかないでよ。」

 それはどういう意味だと思ったが、ルイズが却下するなら仕方がないかと、アルマロスは、シエスタに伝えるべく部屋を出ようとした。

「どこ行くの?」

「フォオン。」

「あのメイドのところ? 今行くの? 別に明日でもいいじゃない。」

 なんだか最近ルイズの様子が変な気がする。

 なんと言えばいいのか分からないが、なんとなくそう思う。

 

 

 




シエスタとの絡みは難しいことに気付いた。

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