ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
「このぉ!!」
ブースターを吹かしながら、目の前に迫ろうとする白亜の機体……ファントムガンダムベース『レイスガンダム』へ手持ち武装のビームライフルを射ちながら、私はどうしたものかと考えを走らせる。
『ほらほら、梨子先輩こっちですよ!!』
まるで煽るように言ってくる檎花ちゃんだけど、その煽りにも負けない実力は、私が最後に会ったときよりも格段に上手くなってる。
こちらの動きを的確に見極めた射撃だけじゃない、こちらの攻撃を回避するところ、機体そのものの動きや位置取り、さらにはこちらの行動の先読みをしながら接近してきたりと、私にとってはかなり不利な状況。
「アルフ、ブラックマンバを使う、準備して」
『けど相手に当たるかは分からないよ?』
「牽制目的よ。あの子だってミサイル四発を迎撃ないし回避するのは結構難しいはずよ」
何せ本来のファントムガンダムには迎撃用バルカンシステムは搭載されてない。改造機体とはいえ、そんな小細工程度の武装を追加するくらいなら、それ以外の武装を追加するのが普通だ。
『りょーかい、ブラックマンバ一番から四番、全部発射!!』
展開済みの機動翼に取り付けていたブラックマンバ誘導ミサイルを全て発射すると、檎花ちゃんから『げっ』と苦虫を噛んだような声が聞こえた。
『こんのぉ!!』
彼女は腰に手を当てたかと思うと、腰の変形翼を取り出し、まるでワイヤーブレードのように振り回してミサイルを全て切り裂き迎撃する。
「GNカタールを装備してたのね」
まぁベース機体のファントムの腰の突起物は、正直翼以外の役目が無かったので、改造する内容としては王道と言えば王道だった。
『さっきからガトリングやらミサイルやら、GATシリーズなのに実弾武装ばかり!!デュエルじゃなくてバスターですよそれは!!』
「逆にビームだとこっちは打つ手ないから丁度良かったわ。まぁ接近されたら終わるけど」
こちらの近接戦装備はビームナイフが2本とアーマーシュナイダーが2本だけで、
「アルフ、ガンランチャーを連結展開、弾丸は炸裂徹甲弾を」
『徹甲榴弾じゃなくて?』
「どのみち避けられるなら、かすって貰ってダメージを与えた方がいいわ」
それにあのファントムガンダム……いや、あの後輩に、下手な高火力武器は意味をなさない。そんなことは、昔から知ってる私が良く熟知してる。
『ガンランチャーは使わせないです!!』
あちらもガンランチャーの接続に気づいたようで、カタールをしまうと懐から『クジャク』を抜いて発射してくる。
「Iフィールド展開!!」
けどそれは予想の範囲内。取り付けてるIフィールドを発生させビームを無効化し、此方はサブアームのガトリング砲と手持ちのビームライフルで迎撃する。
『っ、ファントムライト起動!!』
ダダダダッと発射されるガトリングとビームに嫌気がさしたのか、檎花はファントムガンダム特有の特殊システム、ファントムライトを発動させた。
途端、白亜に彩られた機体から青紫の炎が吹き荒れ、直撃するであろうビームを無効化、さらにガトリング弾もその吹き荒れる炎で文字通り消し飛ばした。
「ッ、アルフ!!」
『ガンランチャー炸裂徹甲弾、発射!!』
右肩に展開されたガンランチャーを掴み、サポートAIのアルフの声と共に発射されたそれは当たる直前で無数の散弾へと変化するが、
『その程度!!』
持っていたクジャクをブレードモードに変形、そこから吹き荒れる炎の一閃で全てを叩き落とし、燃やし尽くした。
「そんな!?っ!?」
驚いてるその一瞬、たったその一瞬が決定的な隙で、目の前のレイスガンダムは文字通り、
一体何が、そう思ってレーダーを確認した次の瞬間、
『マスター!!後ろから来る!!』
『もう遅い!!』
アルフの一言で後ろに気づいた私だが、そこにはまるで幽霊のように突然現れたレイスガンダムが、その右手に炎の剣を握っていて、
「ッ!!」
私は急いでバックパックをパージしその場から離脱する。当然、斬られたバックパックは爆発し、私の手元にはビームライフルとアーマーシュナイダー、そしてビームナイフしか残らなかった。
『ちぇ~今ので先輩を確実に仕留めたと思ったんだけどな~』
軽口を叩く彼女だが、ビルダーとして、彼女の行った行為に気づいた私は思わず舌を巻いた。
「驚いた、まさかファントムライト中にミラージュコロイドを仕掛けてくるなんて、流石に予想外だったわ」
あの消えた方法、恐らく私が驚いた一瞬にミラージュコロイドを展開し、その直後に高速で移動して私の裏に回ったのだろう。
単純と言えば単純、けど、例外を覗いて基本的に『特殊システム中に別の特殊システム』は使えない筈のガンプラバトルでそれを行えるというそれに、1ビルダーとして大いに興味が湧いた。
『いや~、実はミラージュコロイドの粒子がファントムライトのIフィールドの嵐と奇跡的に組合わさりまして、Iフィールド発動中は任意でミラージュコロイドを使えるんです』
「……だからレイス……『亡霊のガンダム』ってわけね」
『元々ファントムガンダムも亡霊みたいなもんですから、皮肉が効いててちょうど良い塩梅でしょ?』
その皮肉に主武装の大半を持っていかれたこっちとしてはたまったものじゃない。こっちはIフィールドが使えるだけの、ほぼ丸腰の状態にさせられたんだから尚更だ。
『けど先輩、相変わらずファイターとしては強くないですね』
「……どういう意味?事によっては買うわよ、その挑発」
『いえいえ、あくまでもファイターとしてはって話です。ビルダーとしての腕前は前以上、セミプロ並みにありますよ』
だから、と彼女は続け
『先輩、Lyluckに戻ってきてください』
「……私はLyluckの一員じゃないわ」
『いくらおバカな私でも知ってますよ。Lyluckのガンプラ、ビルダーチームの一年生でリーダーを勤めた先輩の力をもう一度……』
その瞬間私はビームライフルを撃った。Iフィールドに防がれ、ビームは辺りに四散する。
「檎花ちゃん、私にだってプライドがあるの。Lyluck……いえ、
『先輩……』
「ごめんなさい、Lyluck自体に恨みあるわけじゃないし、あの人以外の皆はとてもいい人ばかりで、先輩たちも優しくて……けど、あの人のあの姿勢だけは……μ'sの皆さんに泥を塗るあの人だけは」
思い出したくもない、あの人と戦って、そして戻ってこれなくなった姿を。楽しむためのバトルじゃなくて、ただひたすらに勝つためにバトルするあの人の姿を。
笑顔ではなく、恐怖を植え付けるあの人のバトルを、私は絶対許すつもりはない。
『……分かりました、では私は、アナタを
そういうと檎花ちゃんはブレードを抜き、一気にこちらに迫ってきた。
「!!」
私は慌ててビームナイフを抜き、ぶつかりそうになったブレードを受け止める
『すみません、ですが私にも、守りたいものがあるんです』
「檎花ちゃん、貴女まさか!!」
『お願いです先輩、もう東京に戻ってこないでください――』
――私は、先輩の事を裏切りたく無いんです。
その一言を最後、彼女の剣が私の機体を貫き、途端バトル終了のアラートが鳴り響いた。