ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
飛び出したバトルフィールドはなんというか、まさしくジャングルというようなフィールドだった。
「うーん、これじゃ空からじゃ狙いがつけられないよ」
昴君曰く、空戦可能機体の一番の死角は密林と水中らしく、前者は地上の相手は隠れて射撃できて、逆に此方は木々が邪魔して射撃のロックシステムが簡単に外れてしまう。
後者なら水中に全身が浸かると対応するセッティングしてないと移動速度や装甲にデバフが入り、さらに機体によっては長時間水中に沈められたことで撃沈判定が入るらしい。
「っ!?いきなり!?」
そんなことを思ってるうちにアラートが鳴り響き、下から大型の実弾……というよりロケットランチャーみたいなのが飛んできて、慌てて頭部C.I.W.S.を発射して迎撃、大爆発を引き起こした。
「下から来たってことは!!」
すぐにモニターを確認すると、少し開けた場所でクリーム色をした重たそうなガンプラが、左肩のキャノン砲を構えて鎮座していた。
「そこ!!」
ライフルなんてしてる暇は無いと思って、私はバスターライフルを肩掛けの形で発射する。
『その程度!!』
「!?」
しかし、相手のガンプラは手に持っていた大きな軍配みたいなものを構えてシールドのようにする。
当然ながら直撃したそれを受けた相手の姿を見て愕然とした。流石に威力で後退こそしてるが、ほぼ無傷というその姿に私は下を巻いた。
「射撃が効かない!?だったら!!」
翼から大型対鑑刀を抜き、地上付近に降りつつ、その勢いを利用して切り下ろす。が、それも読んでたというように軍配で防ぎ、一進一退の鍔迫り合いになった。
『うん、機体も実力も粗削りだけど、確かに良いものを持ってるね』
「あ、ありがとうございます」
対戦相手の彼は通信越しに誉めてくれる。
『けど、ボクの『ガルバルディリベイク』に不用意に接近戦をしたのは不味かったね』
次の瞬間、その機体に似つかわしいほどのパワーで鍔迫り合いを弾き飛ばすと、その軍配が一瞬にして、ハサミのように開いた。
「!?この」
狙いに気づいた私はすぐに後ろに下がりつつもう一度C.I.W.S.を射って牽制する。するとまた軍配の姿に戻りシールドとしてバルカンを防いだ。
『うん、瞬時の状況判断も良い。よく下がれたね』
「今のを食らったら、真っ二つになってましたから」
恐らく果南ちゃんの使ってる機体が出てたシリーズの、所謂『鉄血ペンチ』という風になっていたかもしれない。そう思うとこの直感に感謝するしかなかった。
というか、昴くんなら機体名に『リベイク』なんて使ってるところから気づけって言うと思うけど、正直現状厳しい。
バスターライフルの一撃は防がれ、接近戦をすればペンチされる、しかもあの重装甲からみて並みの攻撃じゃ傷つけられないのは明らか。
だからこそ
「面白い!!」
私はもう一本の対鑑刀をぬき、それぞれにビームの刃を展開させる。
(ここでもう一本抜いてきた?手数で押すつもりかな)
相手は恐らく手数をと考えてるはず、だからこそこの攻撃は
「くらえぇ!!」
『!?そんな破れかぶれの!!』
相手の言う通り、こんなことをしても普通なら弾かれる。現にあの軍配を弾き返そうと構えて振りかぶり、
「いまだ!!」
『な!?』
付けてある大型ブースターの勢いで加速したそれが、軍配を持っていた左肩を貫いた。
元々『フォースシルエット』の下翼をカスタマイズして作り上げた対鑑刀は、その唾に元からある可動用パーツが取り付けられていた。
それを元にブースター機能を追加し、対鑑刀としてだけでなく投槍ならぬ投剣としての機能を加えたこれは、知らない相手にならほぼ確実に決まる鬼札、必殺の一撃だった。
『左肩から先がやられた!?く!!』
流石の異常に気付き、相手はすぐ左肩をパージする。これでキャノン砲とペンチ攻撃は防いだ。
「はぁぁぁ!!」
そしてパージしてるうちに私はもう一本の対鑑刀をしまって、肩付けしてあるブーメランをビームサーベルにして両手に構えて突撃する。
『させないよ!!』
相手も爆発しなかった私の対鑑刀を抜き、残った右腕で振るう。再びの鍔迫り合いに私は、なんとなく
互いの攻撃がぶつかり合えばぶつかり合うほど、その思いは強くなる。
「もっと!!もっと!!」
この戦いを続けたい、楽しみたい、そんな感情が爆発するように私の心が熱くなって――
『――システム、
――私の中で何かが弾けた。
浩一視点
『システム、
その音声を聞いたボクは戦慄を覚えた。あり得ない、そんなはずはない、そんな感情を覚えずには居られなかった。
「まさか選ばれたのか、彼女は」
否定したいが、その存在を知ってる人間は数多い。何故ならば――
「『A-RISE』と『μ's』のエースと同じ力を、彼女が!!」
だとすれば不味い、ボクの予想通りなら間違いなく彼女は……
「っ!!」
その瞬間は一瞬だった。さっきまでの素人臭い動きじゃない、まるで荒々しく戦う戦士のごとく、その両手の剣を振ってくる。
「く!!」
慌てつつも手に持ってるね対鑑刀で、確実に捌く。荒々しい動きで、中々に読めないけど、少なくとも予測できない程じゃない。
と、ブーメランを片方投げてきたのを弾いて防いだ瞬間に懐に飛び込まれ、その左脚が真横から振り抜かれる。
すぐに後ろに下がったが、次の瞬間、足の裏から突然ビームサーベルのような剣が出てきて、『ガルバルディリベイク』の頭部を潰された。
「パルマキオフィーナの応用か!!」
ガンプラバトルではあまり関係ないけど、流石の不意打ちに驚いたボクはさらに機体を後ろへ下がらせる。
(頭を潰されて、尚且つ武器も相手の剣だけってのは厳しいかな)
しかも相手は『因果の戦巫女』なんて力を使ってきてる、正直八方塞がりにも程がある。
「けど、穴がない訳じゃない」
右手に握る対鑑刀を握り直し、今度は此方から突撃する。
飛び上がって振り下ろした攻撃を、彼女(?)は予想通り手に持った二振りのビームブーメランを交差させて防ぐ。
一進一退、どちらも動けないこの状況、だがだからこそ、此方に理がある。
「うぉぉぉぉ!!」
剣先のビーム刃を展開する部分、これの予想が正しければ、そう思って拾った武器に着いてきたボタンを押し込む。
すると剣先の部分から勢いよく小型ブースターの炎が吹き出し、元々上回っていたパワーと共に一刀両断、彼女の『インパルス』を叩ききった。
「やっぱり、予想通りだった」
フォースシルエットの下翼を使っているなら、当然ながら剣先の部分の姿勢制御用のブースターをどうするのか、そう思ったボクはそれに掛けた。
結果はこの通り、下翼先からの勢いを利用した一撃は彼女のガンプラを一閃した。恐らく一撃の手段として取り付けられたこれを、本人より先に使ってしまったが、あの状況だとそれしかなかった。
『BATTLE END』
「……とりあえず、
恐らくそこにいるだろう、彼女の知人に知らせる事を考えた僕は少しだけ憂鬱な気分になるのだった。
千歌ちゃんが目覚めた能力についてはまた後程説明回がありますので、ご容赦のほどを。
次回からはヨハネ&リリィのギルキスコンビに視点を起きます