ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
バトルフィールドに入り、起動されたそれは『ガンダムUC』のダカールという市街地だった。
「相手は……ッ!!」
すぐさま相手を確認しようとした瞬間、正しく狙ったようにアラートが鳴り響き急いで確認してみれば、まるで狙い済ましたかのように始まりから重粒子系ビームの砲撃が飛んできた。
「危な‼」
慌てて回避し、直撃は避けられたもののそれを受けた道路は一瞬にして粉々に砕け散った。
そしてこんな砲撃をしてきた犯人の方を望遠拡大してみると、やはりというかその姿があった。
「アレが相手のガンプラ……」
まるで紅い角を持ったガンダム。その右手には砲撃を射ったであろう砲身がまざまざと見せつけられていた。
『ハ、雑魚でも流石にこれぐらいは簡単に避けられるよな』
「雑魚じゃないしあれぐらい当然だよ‼」
すぐさま両手にムラマサを二本、ライフルモードで相手に向けて構えて発射する。が、
『ハ、洒落クセェ‼』
なんと砲身が分裂しガンプラの翼になったと思うと、超速のスラスターと共にビームサーベルを抜いて駆け抜けてきた。
「ッ!?」
私もすぐにムラマサをブレードモードに直し、それを慌てずに正面から斬り結ぶ。
一瞬の鍔迫り合いのあとすぐに離れ、左からもう一本のムラマサを抜いて、今度はこちらから突撃し、再び剣同士がぶつかり合う。
『ほう、反応は悪くねぇ、機体も作り込みからして素人じゃねぇ……』
「そりゃどうも‼」
お礼ついでにヴェスパーを展開、両方を腰から二連発で射ち出したが、まるでそれを読んでたかのように空中で翻るように回避した。
さらにムラマサをライフルモードへ変更して連射するが、それさえも当たる直前でスルリと回避され、逆にビームを射ってきた。
「この人、強い……!?」
昴君とまでは行かないけど、果南ちゃんやダイヤさん、それに練習に付き合ってもらったセミプロのファイターと同じぐらいに。
『強いじゃねぇ……てめぇより上手いんだ‼』
そして翼のそれを今度はファンネルのように飛ばしてきたのを見て、私は慌てて市街地を這うように撤退する。
「あの手の大きいのは路地を曲がり続ければ撒け……うぁぁぁぁ!?」
そう思ってたその時、まるで狙い通りとでも言うようにあのガンプラの蹴りが機体のコックピットブロックに直撃した。
『やっぱりてめぇはそっちのタイプだと思った通りだ‼』
「ぐうっ!?」
体勢を崩したものの、すぐに立て直してムラマサを握り直して、それを振りかぶった。
『チッ!?優等生かってんだよ‼』
だがそれを読んでたかのようにビームサーベル片手で防ぎ、尚且つ振り払って再び蹴りを見舞ってきた。
『良いこと教えといてやる。ガンプラバトルじゃあな……てめぇみたいな優等生ほど簡単に墜ちてくってのが相場が決まってんだよ‼』
「何を‼」
ムカつきながらもヴェスパーを展開しようとした瞬間、まるでわかってたかのようにドラグーンの熱線が砲身を貫き、爆発する。
「そんな、なんで!?」
この人と戦うのは今回が初めて。なのになんでこんなに簡単に行動が読まれる。
『言ったろ、優等生ほどドツボに嵌まるんだよ。戦いにセオリー通りの行動しかしない……いや、できねぇから圧倒的強者に対してもセオリー通りでしか動けねぇ、だから弱いんだよ』
「優等生……」
『テメェの知り合いのジン使いなら言ってるぜ、戦いにセオリーも定石も存在しねぇってな。テメェらホントにあの流星からバトル学んでるのか疑いたくなるぜ』
それは確かに昴が練習で口を酸っぱくするほど言ってた。
ガンプラバトルでは相手が使う機体、能力、性能、そしてファイターの癖の全てがほぼ初見で、だからこそ自分自身が得意な戦法……セオリーが通じる事は殆ど無いって。
「だったら……ッ」
『HADES』を、とそう思ったが、その時
『良いか、意識無意識に関わらずアシムレイトを使えるやつは、果南みたいな例外を除いて大概の強化システム……EXAMやゼロシステムは当然、トランザムでさえ使うのは危険なんだ』
昴君が言っていたその言葉をふと思い出してしまった。
同じアシムレイトを、しかも無意識に使う私を戒めるように注意された言葉に思考を迷わせた一瞬、その一瞬で相手のビームサーベルがコックピットブロックに突きつけられた。
『そういうわけで、ゲームセットだ』
私は、結局なにもできず、中途半端に敗北するだけだった。
「えっと……曜ちゃん」
私は今やったバトルに少しだけ身震いした。曜ちゃんはどちらかと言えばビルダー寄りだけど、ファイターとしても決して弱くないのは知ってる。
なのに、それを簡単に倒しちゃったあの司波って人はとんでもなく強い。それだけの、たったそれだけの事実がどうしても受け止められなかった。
「……ごめん千歌ちゃん」
バトルが終わった曜ちゃんは何に謝ってるのか分からなくて、けどどう声をかけて良いか私は分からなくて……
「……私もバトルしてくるね」
何も言えなくて、私は逃げるようにバトルフィールドへ向かった。
けど、もしこのとき私が、曜ちゃんとちゃんと話をできていれば、あんなことにはならなかったのかもしれない。
「司、幾らなんでもあそこまでやる必要は」
康一の言葉に少しだけ睨むと、俺は頭を引っ掻きながらため息をついた。
「アホかお前、あのバトル、あそこまでやるなって言う方が無理だ」
「え?」
「確かに結果で言えば今回は俺の圧勝だった。けど、それはあくまで現時点の技量だとっての話だ」
言った通り、まだまだ動きにムラがあって、行動も優等生染みた中途半端。が、あの機体を見た感じだと奴のポジションはガンガン戦いにいくタイプじゃない。断言できる。
奴が自分の役割と動きを理解して、俺がその土俵で戦ってたら、正直勝てるかどうかは微妙なところ。さらに言えば、
「あれで、もっとバトルの研鑽を積んでたら……少なくともセミプロは優に越える実力はあるだろ」
「そこまで言うかい?」
「順当に成長すればの話だがな。状況判断は一級品だし、機体さえもう少ししっかりすれば……」
そこまで言ってふと気付く。
「って!!なんで俺が相手の評価下してるんだよ!!」
「えぇ!!いや、司が勝手にやってたんじゃ」
「五月蝿ぇ!!忘れろ、すぐに忘れろォォォォ!!」
「そっちが五月蝿いよ司!!」
司の肩を掴んでブンブン振り回してると、次の瞬間バシンッ!!と良い音が後頭部に直撃した。
「司!?」
「ヌォォォォ……!?」
あまりの痛みに蹲ってると、後頭部攻撃の張本人……同じバイトの藤沢綾が不機嫌という表情で、どこから持ってきたのか大型のハリセンを持って立っていた。
「綾てめぇ……いきなりハリセンって何をしやがるんだ!!」
「バイト中にふざけてるそっちが悪いんでしょ。それに、せっかく決まったバイトクビになったら、また菜々美ちゃんに怒られるわよ。康一も」
「「うっ……」」
綾の言う通り、確かに菜々美のお説教は色々と堪えるから勘弁して欲しいのは確かだ。
どうやったら康一の妹が、あんなに強気な女になるのか、昔から知ってる仲とはいえ毎回疑問に思う。
「分かったら康一はさっさとバトルフィールドに行く。司はレンタルガンプラの整備に行きなさい!!」
「ちっ、分かったよ」
綾からもう一発ハリセンを食らう前にさっさと俺は退場する。しかし、
「まぁ、あの程度で潰れるようなら、本当に雑魚になるがな」