ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
私、高海千歌は現在いろんな意味で修羅場になっていた。というのも
「何よ!!」
「ヤんのか!?」
なぜか普段はどちらかと言えば空気の読める曜ちゃんが、身長一回りほど大きい赤い髪の男の子とメンチきってるんだもん!!
事の発端は昴くんと別れて暫くしてからのこと。私と曜ちゃんの二人はとあるガンプラショップにやって来ていた。
「うわぁ~、やっぱり東京だね。今までのスクールファイターのガンプラのレプリカがいっぱいあるよ~」
かのμ'sが当時使っていたガンプラは勿論、A-RISEや他のチームの機体のレプリカは普通のガンプラに比べたら結構な値段だけど、それでもファンとしては買っておきたいものばかり。
「こっちにはファイターのバトルコスチュームまで……うう、心が踊りまくりであります!!」
曜ちゃんは曜ちゃんで制服コスプレイヤーの血が騒いでるのか、何種類かバトルコスチュームのレプリカを持っては目を輝かせていた。
「あ、矢澤にこさんと小泉花陽さんの最新のガンプラのレプリカまである!!」
積まれていた新発売のガンプラキットの中に、かつてのμ'sで昴くんと同じ現役プロのファイターである二人のレプリカを見つけると、私は懐の中身を確認する。
東京ということで多めに持ってきてはいたけど、やはり元μ'sの二人のガンプラはお高くて、無駄に散財して昴くんに睨まれたくない為諦めると、既に何着かコスチュームを買ってなおかつちゃっかりカタログまで貰ってる親友と一緒にショップから出る。
「うぅ、流石は元μ'sの機体、レプリカでもかなり作り込まれてたよ」
「けど買わなくて良かったの?」
「うん、あんまり使いすぎると大変なことになりそうだし」
そんな他愛もない話をしていたその時、私たちの耳にふと聞き覚えのある音が耳元に聞こえてきて振り向いてみると、先程のショップのすぐそばでなんとガンプラバトル専用のお店があるではないか。
「……千歌ちゃん?」
「曜ちゃん、少し腕試ししてみない?」
「えぇ!?」
私の提案に声は驚いてるが、曜ちゃんは言うと思ってましたとでも言いたいように笑っていた。
「私は別にいいけど……壊したら昴くんに怒られるよ?」
「そこは一応梨子ちゃんに頼んで一緒に予備パーツ何個か作ってあるから大丈夫……多分」
「ふーん?」
なんか曜ちゃんの目が明らかに鋭いジト目だけど、気にしたら負けということでそのお店に入ってみる。
「いらっしゃい、お、珍しいね。女子高生かい?」
入って早々店長らしきおじさんが声をかけてきた。
「はい、ちょっと東京にきてみたんで自分の実力を確かめてみようかな~なんて」
「アハハ、なるほどね。しかし……女子高生ってことは明日の大会の出場者かな?」
おじさんは思い出すように聞いてきたので、私は素直に頷いた。
「なら壊すわけにはいかないからダメージレベルはCだね……明日の大会はチームVSルールだったはずだから……ちょうど良いし二人に頼むか」
「二人……ですか?」
「おう、うちのバイトでな。大学生だがプロ並みに強い奴がタッグ組んでるんだ。今日は丁度二人ともいるから、そいつらに揉んでもらえばいいだろ」
そう言うと店長は一旦奥の部屋に入ると、すぐに年上の男の人二人と一緒に戻ってきた。
「お二人さん、バトルの登録するからGPベースを貸してくれないかい?」
「「分かりました!!」」
私達がGPベースを取り出そうとしたそのときだった。
「……店長、なんで俺らがこんな雑魚の相手してやらなきゃいけないんだよ」
二人いた片方……赤い髪に鋭い目付きをした人が呆れるように呟いた。
「司波、お客様の前だぞ」
「そうだよ司。それに幾らなんでもそういうことは……」
「うるせぇ康一。そっちのオレンジ頭はまぁまだ見込みがありそうだから良いだろうが、もう片方は見るからに小者……雑魚の気配しかしねぇよ」
店長ともう一人の方……黒髪に眼鏡をかけた優等生のような彼が注意するが、我関せずという風に彼は続けた。
「……どういうこと? 私達のどこが雑魚なの」
ムカッとしたのか曜ちゃんは食って掛かるように聞くと、彼は笑いながら答えた。
「見ただけで分かるさ。テメェみたいな仲良しこよしで、流されて始めたようなファイターほど弱い雑魚はいねぇっての」
「ふざけないで!!」
怒髪天にきた曜ちゃんは持っていた荷物(さっき買った紙袋)を私に押し付けると、自らのガンプラ『カノーニア』を突き出す。
「そこまで言うならバトルで証明して見せるから!! 貴女が言うほど私は弱くないって!!」
「へぇ、良いぜ別に。あとで泣いても知らねぇぞ」
「何よ!!」
「ヤンのか!!」
と、漸く現在に戻る。私はどうすればいいのかさっぱり分からずオロオロしていると、
「ゴメンね、司があんなこと言って」
もう一人の黒髪の人がまさしく頭が下がるように謝罪してきた。
「い、いえ……あの人って強いんですか?」
「あはは……身内贔屓になるけど司は強いよ。僕はタッグを組んでるけど、アイツのおかげで勝てた試合は多いからね」
「タッグ……」
どこをどうしたらこの粗暴な人とほんわか優等生が組むことになったのか訳がわからなかったけど、
「昴くんと果南ちゃんみたいなものかな」
「昴?……もしかして、あの『灰光の流星』の天ノ川昴プロとそのもう片方の事?」
「あ、はい。知ってるんですか?」
「知ってるも何も、タッグバトルで無敗のコンビで有名だったからね。一昨年の春に一度だけ……まだプロになってなかった時期に……大会でぶつかったけど、あそこまで苛烈なバトルは忘れられないよ」
まさかの言葉に私は頭を抱えた。まさか知り合いがこうも縁を結ぶとはどうなってるんだ、と。
「けど最近はあんまりタッグでは見ないんだけど……よく知ってたね」
「えっと……私達、一応幼馴染みのクラスメイトなんで」
「んだと!?」
「えぇ!?そういう繋がり!?」
これには曜ちゃんと視線をぶつけていた司さんも驚いてこちらを見るくらいで、私は言ってから冷や汗が止まらなくなった。
(これ、絶対曜ちゃんが昴くんと従姉弟だって言わない方が良さそう)
間違いなく面倒なことになりそうだし。
「おもしれぇ、オイ康一。この雑魚は俺がぶっ潰すから、そっちは任せた」
「え、まさかシングルでやるつもり!?」
「たりめぇだ!!幼馴染みとはいえあの灰光の流星の知り合いと戦うんだ……すぐに終わったらつまんねぇだろ!!」
まさかの展開にもう頭の中がパンクしそうで、もうどうにでもなれと、考えることを放棄した私だった。