ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~ 作:ドロイデン
「なぁダイヤさんよ……これは流石にどうかと思うぞ」
冬休み……というより大晦日の三日前、俺は先輩であり生徒会長である彼女の家に来ていた……というより呼びつけられていた。というのも
「いったいどうやったら積みガンプラで一部屋埋まるんだよ!!」
至るところ置かれたガンプラの山に俺はジトリとした目で突っ込んだ。その数、優に百は下らないのは間違いない。
「し、仕方ありませんでしょ!!機体の修理やパーツを集める為に買い込んでしまったのですから」
「そりゃパーツを個々で買うよりは経済的だけどさ、幾らなんでもこれはやりすぎだって!!ルビィなんか隣の部屋で別のところに運んでる途中でガンプラの山が崩れて生き埋め状態だぞ」
しかもさっき見に行ったら寄りによってスカートだから目を向けられないし、目を向けたら最後果南にナニをされるか分かったもんじゃない。
「ぴ、ピギィ……たしゅけて~」
「ちょっとまってろルビィ、すぐにこの駄姉をそっちに向かわせるから」
「ちょ、誰が駄姉ですのよ!!」
「Aqours一のポンコツするダイヤさんが駄姉じゃなかったらなんなんですか!!ほら、さっさとルビィの助けに行く!!」
グヌヌ、と唸ってるが正論の為にダイヤさんはすぐに発掘作業に取り掛かる。
(……しっかし)
チラリと詰まれてるガンプラを眺めてみると、俺は少しだけ肩を竦める。『イージス』や『スローネ』系列のガンプラがあるのは当然だが、『1.5ガンダム』や『デスティニー』といった本人は使わないようなガンプラまで、数多く重ねられている。
しかも今では販売すらされてないだろう『ゴールドスモー』までだ。それだけめここが何のためのガンプラなのか分かってしまう。
「Aqoursの為のガンプラ、か」
思えばメンバーの機体が破損しても大丈夫なようにと、ダイヤさんは予備パーツを必ずケースに入れて持ってきていた。
メンバーでも梨子、花丸に勝るとも劣らない作成技術を持つダイヤさんの、ここは仕事場であり、その為の倉庫なのだった。
「言っておきますけど、昴さんのパーツも作成してますわよ」
心外だと言うように採掘作業を終えたダイヤさんがため息をつきながらジトリと睨む。
「ルビィは?」
「お昼も近いので作りにお母様のお手伝いを、最近家事にも積極的になってきまして」
「そっか」
その言葉で二人きりということに気づく前に、ダイヤさんは俺の隣に自然と立っていた。
「……ありがとな、千歌達を支えてくれて」
「そう思うんでしたら、少しはマネージャーとしての仕事をしてくれれば良かったんですが?」
「悪い、でも高校生でプロなんて物珍しいのに、ガンプライブのマネージャーまでしてたら色々週刊誌がな」
実際1度それで問題が起こりかけたしな。
「けど、なんだか懐かしいですわね。この部屋に昴さんと一緒に入るのも」
「……そうだったか?」
「そうですわよ。昔は果南さんに連れられて来て、ここで鞠莉さんと一緒にプロのガンプラバトルの映像を見たりしてましたわ」
「今じゃ鞠莉は新しく会社作ること決めて、俺はそこで果南とタッグプロとして所属、ダイヤさんも新人プロとして鞠莉さんとこの実家の所属として研鑽を積む……まるで夢物語みたいだよな」
それだけじゃない、とダイヤさんは肩を竦める。
「恐らく二年もすれば千歌さん達から数人は所属するらしいですし、浦の星は仕方ありませんでしたが、Aqoursは形を変えても残りますわよ」
「ま、ルビィはどうやら理亞ちゃんとコンビ作るみたいだけどな」
「確かに、聖良さんもそう笑ってましたわね」
互いの言葉が、話を聞くことがこんなにも楽しい。そんな気分だった。
「……そろそろだろ、ガンプライブ決勝大会」
「……そういう昴さんこそ、ウィンターカップの決勝リーグですわよね」
「……互いに悔いのない戦いをしようぜ」
「……そう、ですわね」
アキバドームと世界大会専用ドーム、戦う舞台は違っても、チームメイトであることには変わりはしない。
「けど、昴さん」
「ん?」
「悔いのない戦いをする、それはつまり優勝するということですわよね」
「……あー、そうだな」
結局、悔いのない戦いをするなら優勝するのはある意味一番の答えだから当然と言えば当然だ。
「なんだ、自信がないのか?」
「それはこっちの台詞ですわよ」
「なら問題ない、俺はもう吹っ切れてるから」
それをしてくれたのは、我らがチームリーダーなんだがな。
「なぁ、ダイヤ」
「はい」
「千歌にさ、最高の景色を見せてやってほしい。俺を救ってくれたリーダーに、最高に輝いた世界ってやつを」
「――」
俺のその言葉に、ダイヤさんは少し唖然とするが、すぐに俺の脇腹に肘内を入れる。
「イッテ!!」
「そんなこと、言われるまでもありませんわよ……だから、昴さんも負けないでくださいね」
「……おう」
年の瀬も近いその日の夜、内浦へ久しぶりに吹いた雪がすぐに溶ける程の熱気が、数週間後に東京と静岡の聖地を覆うのは、まだ未来の話。