ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~   作:ドロイデン

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嵐の前の闇 その二

 フィールドは至って普通のコロニー宙域で、俺は漸く使うのにも馴れた『ジン・AHM』に増設された頭部センサーを展開し敵を探る。

 

「……見つけた!!」

 

 真っ正面からやって来たのは『バルバトスルプスレクス』の改造機だろうか?黒と紫のツートンカラー塗られたその機体の手に握られた二本のソードメイスを振りかぶりながら突撃してきた。

 

「アレを直接受けるのは厳しい、な!!」

 

 俺は両手の突撃銃を構えて後ろに下がりながら打ちまくる。重斬刀の代わりに新に装備された刀系ブレードで受ければ、弾かれるどころか壊されるのは目に見えていた。

 

「そんな豆鉄砲が、この『ベリアル』に効くものか!!」

 

 奴はそう叫び、その装甲で銃弾を受けながらなんと、ソードメイスの柄同士をドッキングさせるとそれをまるでブーメランか何かのように投げてきた。

 

「ぐっ!?」

 

 思わずブレードを二つとも抜いて交差ガードするが、やはり重たいソードメイスを投げつけられたせいで体勢を崩す。が、それ以上に

 

(手の痺れがヤバイ!!アシムレイトは使ってないのに!?)

 

 アシムレイトを使える人間には二つのパターンがある。バトル中ずっと発動し続けるタイプと、任意で発動し解除するタイプ。俺の場合は後者で、相手の機体を見てからアシムレイトを発動する。

 

 なぜなら俺のアシムレイトは異様も異様で、相手も強制的にアシムレイトにするもの。だから半アシムレイト化する阿頼耶識持ち機体(オルフェンズ系統)未来予測(ゼロシステム)持ちと戦う際には、相手を強化させることになりかねないからだ。

 

 今回の敵に関しても『ベリアル』と名乗ってはいるが、ベースはどう見ても『バルバトスルプス』及び『ルプスレクス』、翼の形状から見て『バエル』も組み込んでるのだろう、ガチガチの阿頼耶識機体だ。

 

 故に今日も今日とて縛りプレイを余儀なくされてるというのに、アシムレイト特有のフィードバックを受ければ驚くなと言う方が不可能だ。

 

「ちぃ!!」

 

 ブレードを再びしまい、今度はバズーカ砲(キャットゥス無反動砲)を抜いて放つが、それも今度は掌が光ったと思いきや、当たる数メートル前で弾頭が爆発する。

 

「パルマキオフィーナか!?厄介なものまで!!」

 

 パルマキオは射程こそそこまで長くはないが、その威力はビームライフルと同等、ここまできて俺の背中に嫌な汗が流れ始める。

 

(武器が殆ど全て封殺されてるか!?)

 

 オルフェンズ系統の機体にはナノラミネートアーマーという耐ビームコーティングがあるせいでビームキャノンは効かない、重突撃銃も多少は聞くが殆ど弾かれるのはさっきの通り、加えて接近戦を仕掛けようものなら腰のテイルブレードに切り裂かれる。普通なら詰みとしか言いようがない。

 

 そう、()()()()

 

「その作り込みとバトルセンス、並みのファイターじゃねぇよな?」

 

「……」

 

「目的はなんだ?俺は誰かに恨まれるような事はしてないぜ?」

 

「それを私が言うとでも?」

 

 奴は腰に伸縮してマウントしてたのだろう、『ウヴァル』のハンマーを改造したのだろう双刃の大鎌を取り出すと、頭上にてそれを回転させ構える。

 

「だろうな。けど、俺もただで負けてやるほどプロとして堕ちたわけでもねぇんだよ」

 

 だから

 

「ここから先は、少しばかりギアを上げるぞ!!」

 

 俺はアシムレイトを最大発動し、ブレードを抜いて一気にスラスターを全力で吹かせた。

 

「馬鹿め!!破れかぶれの突撃など!!」

 

 奴も此方に向かって突撃、その鋭い大鎌を瞬く間に振り上げた……が、

 

「遅い!!」

 

 俺は右手のブレードを下から振り上げるように切り抜く。ブレードの刃は宙を空振り、大鎌の刃が降り下ろされたその時、

 

「な!?」

 

 パキン!!という甲高い音と共に刃の二つが根元から切り裂かれていて、吹き飛んだ刃がそこらを飛んでいたデブリに突き刺さる。

 

「なんだ!?貴様……いったい何を!?」

 

「あ?その鎌の刃と(ポール)()()()()()()()()()()()()()

 

「な!?」

 

 奴は驚いてるが、すぐにおかしいと気付いたのか声を荒らげる。

 

「だ、だが貴様のブレードは空振りしたはず!!それなのにどうやって!?」

 

「高校生とはいえプロの俺が近接武器で、PS装甲系の対策をしてないとでも思ったか?」

 

 俺は距離を取り、近くの暗礁に向かってブレードを空振るう。そこからまるで流れるような灰色の粒子の光が出現し、それは暗礁を一刀両断に切り裂いた。

 

「俺のブレードには薄く纏う程度だが、粒子の刃を展開できるようにしてある。そしてこいつは、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 かの『アーリージーニアス』こと八島ニルスも使っていた技術だが、勿論若干覆う程度の粒子を飛ばしてるのだから威力は低い。が、機動性を極限にまで高め、アシムレイトを発動してるからこそできた技。

 

「まさか貴様の『合わせ目斬り』の正体は!?」

 

「その通りさ!!アシムレイトを使うことで限界まで加速させたビームの刃を、ガンプラという機体のうちでどうしても脆弱になる合わせ目に合わせて切り裂く!!ただそれだけの、誰にでもできる技だよ」

 

「誰にでもできるわけあるか!!」

 

 そんなことはない。同じアシムレイト使いのメイジンならコツさえ掴めば多分できる。

 

「そんな悠長に叫んでて良いのか……よ!!」

 

「な!?しまっァァァァァ!?」

 

 できた隙に超高速移動を繰り返しながら斬撃の雨霰を至るところにぶつける。元々装甲のプラスチックが外しやすいオルフェンズ系だ、しかもパーツこそ様々なものだが、フルスクラッチ機体じゃないために、ある程度元になった機体を思い出せば簡単に合わせ目を切り裂ける。

 

「ぐ!!このぉ!!」

 

 怒り心頭とでも言うが如く、パルマキオフィーナを放ってくるが、極限にまで加速した機体には掠りもせず、そむしろ伸ばした腕の装甲をまるごと合わせ目斬る。

 

「グァァァァ!!」

 

「ち、さすがに(パルマキオフィーナ)は合わせ目が無いから斬れないか。だが」

 

 仕方ないので掌を腕から両方とも切り裂くが、すでに装甲は上半身と右足を全て切り裂き、憐れガンダムフレームそのものの姿が剥き出しになってしまっていた。

 

「さて、お前の知ってる情報、全て話して貰おうか?」

 

「……貴様に話すことなど一つもない!!」

 

「そうかよ!!」

 

 俺はブレードを奴の胸部中央に突き刺す。途端奴のつんざくような悲鳴が聞こえ、すぐにバトル終了の表示が出た。

 

 バトルが終わった直後に謎の空間とバトルフィールドは消滅し、目の前に座り込む奴の姿だけがのこる。

 

「さて、奴さんは……」

 

 確かめるように倒れてる奴のフードを取っ払うと、そこにいたのはまるで薬でもキメたような虚ろな瞳をした青年で、少なくとも俺と同い年ぐらいだと思う。

 

「息は……してるけど」

 

 どう見ても目の焦点が合ってない。幾らアシムレイトのフィードバックがあったとしても、ここまで酷くなるなら普通気絶してる。

 

「……きな臭い事になりそうだな」

 

 嫌な予感を感じながら、俺は警察に通報する。

 

 後日知ったことだが、この青年は行方不明届けが出てはいたのだが、なんと届け出がでていたのは東北のとある都市だったという。

 

 その時の俺は知らなかった。狙われていたのが俺だけではないということと、そしてこれが、この激動の一年の本当の開幕の烽だということに。




今回のオリジナル機体『ガンダムベリアル』を考えてくださったmasayaさん。少し機体に合うように修正はしましたが、貴重なオリジナル機体をありがとうございます。

またまだまだ募集はしてますので、よろしくお願いいたします。可能な限り出していけるようにしていきたいと思っています。

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