ガンプライブ!サンシャイン!!~水の乙女と宇宙を求めるもの~   作:ドロイデン

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東京の前に数話のオリジナルです。ある意味この作品の中心にもなります。


嵐の前の闇 その一

 真央さんがコーチに就任してはや一ヶ月、もう七月の海開き近くになった俺達はというと、

 

「ずら丸動き遅い!!敵に囲まれてるわよ!!ルビィ……じゃなくてサフィは動きすぎよ!!援護するこっちが当てそうじゃない!!」

 

「ずら!?でもこの機体はまだ遅くて」

 

「寧ろ善子の方が何もしてないでしょうが!!バスターライフルバカスカ撃ってるだけで!!」

 

「何ですってこのコランダム娘が!!それと、私は善子じゃなくてヨハネって呼びなさいよ!!」

 

「廚二発言してる暇あったらもうちょっとマシな指揮しろや!!」

 

「……まぁたやってるよ」

 

 俺はドリンクを飲みながら目の前で『エンドレスハイモック』という、十秒置きと倒すごとに新に強化されて出てくるハイモックをチームで無限に倒しまくるという苛酷練習を、喧嘩しながらもほぼ毎日やってるアイツらに呆れていた。

 

「せやけど、これって結構ソロでも練習になりますし、昴はんも良くやってらっしゃったでしょ?」

 

「そりゃ機体の慣らしには丁度良いですからね。このモードだとダメージゲージはカウントされますけど、基本的に粒子無限なんで。真央さんは?」

 

「ワイの場合サテライトスマッシャー作ってからは殆ど作業ゲーのようになってしもうたので」

 

 肩をすくめてるが、俺からしたらあんな変態兵器を作ればそりゃさもありなんとしか言えない。

 

「で、どうなんです真央さんの目から見て一年生の実力は」

 

「……正直言うと、チーム戦には向かないメンバーばかり集まったっていうのが的確でしょうな」

 

 ため息でもつくように真央さんは呟く。

 

「まず津島善子ちゃん。彼女とエンゼロの改造機の『ウィングL(ロスト)0シフェル』はまさしく人機一体となった、粒子の動きを読める彼女のためだけのオリジナルって言ってもええ機体ですわ。多分これ以上のカスタマイズは無理、完成された究極の一というべきや」

 

「次に国木田花丸ちゃん。師匠が言うてた国木田流の正当後継者言うだけに、どんな機体を乗せても殆ど対戦動画さえ1度見れば大抵動かせるのはある種恐ろしいです。これでつい最近までまともにバトルに触れてなかったんやから、もしもを考えるとゾッとしません」

 

「そして黒澤ルビィちゃん。昴はんの弟子一号だけいうに、器用にそつなくこなせるうえに、人格入れ替わって遠近の対応が変わるオールラウンダー。しかもガンプラ作成の技術でも昴はんとタメ張れるんやから、正直この三人がうまく作用したら多分化けまっせ?」

 

「そのための課題は山ほどありますけどね」

 

 津島の場合はコミュニケーション能力と指揮能力、花丸ちゃんはガンダムについての知識と彼女自身のオリジナル機体、そしてルビィは……

 

「……まぁアクは強いですけど実力と将来性は抜群でっしゃろ。多分そこだけ見れば二年生三人よりも強いのは明確」

 

「それでもアイツらに勝てない。単純にチームワークがなってないからな」

 

 千歌、曜、桜内さんの三人はどちらかと言えばバトル初心者に近かったが、それでも付き合いの良い三人だからか、練習では基本的に桜内さんの指揮で二人がきっちり動くのをこなすのは何度も見てきた。

 

 事実、近接戦闘で扱いづらい対艦刀を主軸に場を荒らす千歌、中距離戦闘で撹乱する曜、そして圧倒的な弾幕と火力と指揮で支える桜内さん、まるで初めから決まってたかのように歯車が回る三人に、俺は1度負けたのだ。

 

「そういえば、その件の三人は何処へ?」

 

「鞠莉に話があるんだと。おおかた今日の朝の統廃合について聞きに行ったんだろ」

 

「そういう昴はんはまるで知ってたかのような口ぶりですな?」

 

「そりゃ俺のスポンサーは小原財閥だからな」

 

 まぁ最近ちょっと考えてることもあるがな。

 

「それに……いや、これは関係ないか」

 

 

 

 それはあの日、果南に連行された日まで遡る。

 

「……鞠莉から聞いたよ。昴、千歌達を東京に連れてくって」

 

 寝起き、同じベッドの隣で俺に抱きつきながら果南は俺に聞いてきた。

 

「……元々は俺がプロとして出るだけだったんだけどな。千歌が実力を知りたいって」

 

「けどそれじゃあ……」

 

「大丈夫だ、その日にはメイジンも居るんだ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 俺の言葉を聞いても不安なのか、直に触れあってる肌をさらに密着させてきた。

 

「心配するな、アイツらならお前が俺に言ってくれた()()()()を見つけられる……そんな気がするんだよ」

 

「……でもそれで千歌達が立ち直れなかったら?」

 

「怖いのか?」

 

「……」

 

 顔を背ける相棒に苦笑しながら、俺は優しくその髪を撫でる。

 

「千歌の強さはお前が一番知ってるだろ?それにもし何かあったら、今度は俺が――」

 

 

 

「――今度は、俺が支えてやる。助けられてばかりは、カッコ悪いしな」

 

 空を見上げ、雲一つ無い蒼穹に笑みを浮かべながら、俺は久しぶりの一人の家路に――

 

「……天ノ川昴、だな」

 

 その時、木陰から聞きなれない声を掛けられ俺は自転車を止めると、そこには真夏近いというのに全身フードの何者かが立っていた。

 

「……なんだ?」

 

「……貴様は我々の邪魔になる。故に!!」

 

 そう言うと奴は懐から謎のボールを取りだし地面に落とす。するとまるで周囲を覆うように謎の緑の壁が現れ、さらに小型のガンプラバトル装置が出現していた。

 

「これは!?」

 

「さぁ、バトルだ!!」

 

「ぐっ!!」

 

 逃げられない、そう悟った俺は鞄から愛機を取りだし、GPベースをセットする。

 

「天ノ川昴、『ジン・AHM verⅡ』出るぞ!!」


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